「排気筒にふたをして何が悪いのか」——そう思う方もいるかもしれません。
昭和63年、神奈川県相模原市と鹿児島県鹿児島市の共同住宅で、給湯器の排気筒がふさがれたことが原因で4人が死亡する事故が起きました。
消防庁と建設省は、この事故を受けて排気筒の安全対策を通知しています。
この記事では、その通知が定める「してはいけないこと」と「するべきこと」を㈱防災屋がわかりやすく解説します。
うちのマンションにもガス給湯器がありますが、排気筒なんて気にしたことがありませんでした。
排気筒の中に金属の板(ダンパー)を入れてしまうと、排気がふさがれて一酸化炭素中毒につながることがあるんです。
それは怖いですね。
うちの設備は大丈夫でしょうか。
消防庁の通知を見ながら、確認すべきポイントを一緒に整理していきましょう。
- 昭和63年、共同住宅の給湯器の排気筒をふさいだことが原因で4人が一酸化炭素中毒で死亡する事故が起きました。
- 消防庁と建設省は、密閉式・半密閉式の燃焼機器に直結する排気筒の中に防火ダンパー等を設けてはならないと通知しています。
- 延焼のおそれのある部分の外壁を排気筒が貫通する場合は、開口面積を100平方センチメートル以内とし、防火おおいで対応します。
- 既存の建物にすでにダンパー等が設置されている場合は、早急な取り外しが求められています。
- 防火管理者は、燃焼機器の排気筒にダンパー等が設けられていないかを日常点検で確認する必要があります。
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目次
給湯器の排気筒はなぜ安全対策の通知が出たのか

きっかけは昭和63年に起きた2件の死亡事故でした。
どちらも共同住宅の給湯器がからんでいます。
延焼を防ぐために付けた部品が、逆に人の命を奪ってしまいました。
排気筒の先に取り付けられていた延焼防止用の防火ダンパーが閉じたまま動かなくなり、給湯器から出る排気ガスの逃げ場がなくなったことが原因と推定されています。
建設省住宅局建築指導課長もこの事故を受け、同じ昭和63年6月27日付けで「燃焼機器等に直結する排気筒に対する安全対策について」(住指発第228号)を特定行政庁の建築主務部長あてに発出しました。
消防庁はこの建設省通知を都道府県消防主管部長あてに送付し、燃焼機器等の設置を指導する際の参考とするよう求めています。
つまりこの通知は、消防と建築の両方から出た再発防止策なのです。
防火のために付けたダンパーが事故の原因だったなんて、皮肉ですね。
だからこそ、排気筒の役割そのものを正しく理解しておく必要があるんです。
どんな設備の排気筒が対象になるのか

対象になるのは、屋内の空気を使わずに燃焼する機器です。
給湯器やふろがまが代表例です。
ここでいう密閉式は屋外の空気を吸って屋外へ排気するタイプ、半密閉式は屋内の空気を吸って排気筒で屋外へ排気するタイプを指します。
どちらも排気筒(煙突)を経由してガスを外に出す構造なので、この経路がふさがれると排気ガスが室内側にとどまりやすくなります。
共同住宅の各戸に設置されたガス給湯器やふろがまは、まさにこの半密閉式が多く使われている設備です。
マンションやアパートのオーナー・管理者は、他人事ではありません。
一戸だけの問題ではなく、同じ建物の他の住戸にも同じ機器が並んでいることが多いためです。
密閉式と半密閉式、うちの給湯器がどちらか分からないです。
本体の銘板や取扱説明書に書かれています。
分からなければ設置した業者に確認してみましょう。
通知は排気筒に何を求めているのか

求めていることは大きく分けて2つです。
「ふさがない」ことと「小さな穴で処理する」ことです。
排気筒はもともと煙突であり、正常な排気を妨げてはいけません。
だからこそ、途中にダンパーのような弁を組み込むこと自体を通知は禁止しています。
一方で建築基準法上は、隣地境界線に近い外壁(延焼のおそれのある部分)を貫通する開口部には防火設備が要求されることがあります。
そこで通知は、排気筒がその壁を貫通する場合に限り、開口面積を100平方センチメートル以内に抑えたうえで鉄板やモルタル板の防火おおいを設ける、という代替策を示しました。
弁でふさぐのではなく、開口自体を小さくして延焼のリスクを下げる考え方です。
ダンパーで守るんじゃなくて、穴を小さくして守るんですね。
そのとおりです。
排気を止めない工夫と延焼を防ぐ工夫を両立させているんです。
実務で見落としやすいのはどこか

見落としやすいのは「既存の建物」です。
通知は新築だけでなく、すでに建っている建物にも対応を求めています。
「昔からある設備だから」は理由になりません。
事故は新築マンションではなく、すでに人が住んでいる建物の給湯器で起きました。
通知が求めているのは、既存の建物であっても排気筒にダンパー等が付いていれば取り外すという対応です。
また通知の時点では、開口面積が100平方センチメートルを超えてしまう場合の具体的な改善方法は「改めて通知する予定」とされ、当面は延焼のおそれのある部分の外壁を貫通しないよう計画することが望ましいとされていました。
現在の建物でこの数値を超えるおそれがある場合は、所轄消防署や建築士に個別に相談するのが安全です。
うちの建物にも、古いダンパーが残っているかもしれません。
古い設備ほど、一度専門業者に排気筒の中まで見てもらうことをおすすめします。
明日からなにを確認すればよいのか

難しい工事の話ではありません。
まず「見る」ことから始められます。
まずは自分の建物の給湯器まわりを見てみましょう。
①給湯器やふろがまが密閉式・半密閉式かどうかを確認する。
②排気筒の途中や先端に板状の弁(ダンパー)が組み込まれていないか目視で確認する。
③外壁の貫通部にすき間なく防火おおいが付いているかを確認する。
④判断がつかないときは、設置した施工業者や所轄消防署に相談する。
この4点を消防計画の日常点検の一項目に加えておくと、次の点検のたびに見落としを防げます。
今日の点検から、排気筒も見る項目に加えてみます。
それが一番の再発防止です。
小さな確認の積み重ねが事故を防ぎます。
よくある質問
まとめ
排気筒の中を見るだけでいいなら、私にもできそうです。
はい、まずは目視の確認から始めれば十分です。
設備の入れ替えなど本格的な対応が必要なときは、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 燃焼機器等の設置に係る安全対策について(通知)(昭和63年7月5日 消防予第96号 消防庁予防課長)
- 燃焼機器等に直結する排気筒に対する安全対策について(昭和63年6月27日 建設省住指発第228号 建設省住宅局建築指導課長)
- 建築基準法第2条第6号(延焼のおそれのある部分)
- 建築基準法第2条第9号の2ロ(防火設備)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





