危険物を扱う製造所や一般取扱所では、危険物保安監督者とは別に「危険物施設保安員」という役職の選任を義務づけられることがあります。
名前が似ているため、危険物保安監督者と同じ仕事をする人だと誤解されがちですが、法令上の位置づけはまったく別です。
どの施設に置く必要があり、選任されたら具体的に何をするのかを知らないまま現場に立つと、点検や記録の抜け漏れにつながります。
この記事では消防法第14条が求める選任対象と、規則第59条が定める6つの業務を確認します。
うちの一般取扱所は指定数量の倍数が高いんですが、危険物保安監督者のほかに危険物施設保安員も置かないといけないんですか。
監督者だけではだめなんでしょうか。
施設の規模によっては、危険物施設保安員という別の役職の選任が必要です。
条文から確認しましょう。
恥ずかしながら、保安員が具体的に何をする人なのか分かっていませんでした。
点検や記録づくりだけでなく、異常時の対応まで業務に含まれています。
規則第59条を1つずつ見ていきましょう。
- 指定数量の倍数が100以上の製造所・一般取扱所や一部の移送取扱所には、危険物施設保安員の選任が消防法第14条で義務づけられています
- ボイラー等で危険物を消費する一般取扱所など規則第60条が定める6類型に該当する施設は、指定数量の倍数が100以上でも選任の対象から外れます
- 保安員の業務は製造所等の構造・設備を技術上の基準に適合させるための定期及び臨時の点検が中心です
- 点検を行った場所の状況や講じた措置は記録して保存しなければなりません
- 異常を発見したときの連絡や、火災発生時に危険物保安監督者と協力して応急の措置を講じることも業務に含まれます
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目次
危険物施設保安員はどんな仕事をする人なのか

危険物保安監督者が施設全体の保安業務を統括する立場であるのに対し、保安員は構造や設備そのものの維持管理を担います。
危険物施設保安員がいる施設では、保安員へ必要な指示を行うことが危険物保安監督者自身の業務になります。
つまり保安員は監督者の指示のもとで、点検・記録・異常時対応という実務を直接担う役割です。
どちらも危険物取扱者の資格とは別の役職で、選任するかどうかは施設の規模や種類によって決まります。
まずは自分の施設が選任の対象になるかどうかを確認しましょう。
監督者と保安員は、上下関係みたいなものなんですね。
保安員がいる施設では、監督者は保安員に指示を出す立場になります。
次は対象施設の条件を見ていきましょう。
どんな施設に危険物施設保安員を置かなければならないのか

政令が原則を定め、規則がそこから除外される施設を列挙する構造です。
100倍以上の製造所・一般取扱所と一部の移送取扱所が対象になりますが、規則第60条が定める6つの施設類型に当たる一般取扱所は、倍数が100以上でも選任の対象から除かれます。
除外されるのはボイラー等で危険物を消費する一般取扱所、車両に固定されたタンクへ注入する一般取扱所、容器へ詰め替える一般取扱所、油圧装置等で危険物を取り扱う一般取扱所、そして鉱山保安法や火薬類取締法の適用を受ける施設です。
自分の施設がこの6類型のどれかに当てはまれば、倍数だけを見て選任の要否を判断してはいけません。
用途と倍数の両方を確認することが出発点になります。
うちは油圧装置で潤滑油を扱う一般取扱所なんですが、これも除外の対象になりますか。
油圧装置等以外で危険物を取り扱わない一般取扱所は、規則第60条の除外に当たります。
倍数だけで判断しないよう注意してください。
点検と記録づくりでは具体的に何をするのか

最初の2号は、点検とその記録づくりに関するものです。
一 製造所等の構造及び設備を法第十条第四項の技術上の基準に適合するように維持するため、定期及び臨時の点検を行なうこと。
二 前号の点検を行なつたときは、点検を行なつた場所の状況及び保安のために行なつた措置を記録し、保存すること。
第一号が求める点検には、あらかじめ日程を決めて行う定期点検だけでなく、必要に応じて行う臨時の点検も含まれます。
そして点検をしたら終わりではなく、点検を行った場所の状況と、そこで講じた保安上の措置を記録して保存することまでが第二号の業務です。
どちらも技術上の基準に適合しているかどうかを維持するための業務で、記録を残さなければ点検をした証拠が残りません。
点検の様式をあらかじめ用意しておくと、記録の抜け漏れを防げます。
定期点検の記録と、保安員の点検記録は別に作るということですね。
そのとおりです。
保安員の記録は構造・設備の維持管理そのものを裏づける記録になります。
異常時の対応まで保安員の仕事に入っているのか

異常時の対応まで含めて理解しておかないと、実務で見落としが起きます。
四 火災が発生したとき又は火災発生の危険性が著しいときは、危険物保安監督者と協力して、応急の措置を講ずること。
五 製造所等の計測装置、制御装置、安全装置等の機能が適正に保持されるようにこれを保安管理すること。
第三号は異常を発見した場合に危険物保安監督者その他関係者へ連絡し、状況を判断して適当な措置を講ずることを求めています。
第四号はさらに踏み込み、火災が発生したときや発生の危険性が著しいときに監督者と協力して応急の措置を講ずることまでを業務に含めています。
第五号は計測装置・制御装置・安全装置等の機能を適正に保持するための保安管理で、平時から異常を出さないための業務です。
点検・記録・連絡・応急措置・機能保持のすべてが、日常の維持管理としてつながっています。
異常を見つけたら、保安員が自分で直してしまってもいいんでしょうか。
いいえ、まず監督者へ連絡して状況を判断することが先です。
その上で適当な措置を講じます。
明日からなにを確認すればよいのか

最後に、明日から確認できることを整理します。
- 自施設の指定数量の倍数と用途を確認し、政令第36条の対象に当たるかを確認する
- 規則第60条の6類型(ボイラー等消費・車両固定タンク注入・容器詰替え・油圧装置等取扱い・鉱山保安法適用・火薬類取締法適用)に当てはまらないかを確認する
- 危険物保安監督者との役割分担(指示を受ける関係かどうか)を確認する
- 点検記録の様式と保存方法が規則第59条第二号を満たしているかを確認する
- 異常発見時・火災発生時の連絡体制と応急措置の手順を確認する
選任の要否を見誤ると、規則第59条が求める業務そのものが行われないまま放置されることになります。
定期的に、対象施設の一覧と保安員の業務分担を見直すことをおすすめします。
うちの施設が対象かどうか、もう一度確認してみます。
倍数と用途の両方を確認してください。
不明な点があれば所轄消防署にご相談ください。
よくある質問
まとめ
監督者と保安員の役割の違いが、やっと整理できました!
選任の要否や業務分担で迷ったときは、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第14条(危険物施設保安員)
- 危険物の規制に関する政令第36条(危険物施設保安員を定めなければならない製造所等の指定)
- 危険物の規制に関する規則第59条(危険物施設保安員の業務)
- 危険物の規制に関する規則第60条(危険物施設保安員等の設置対象から除かれる製造所、移送取扱所又は一般取扱所)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





