危険物保安監督者や危険物施設保安員を置くかどうかは条文の数字を読むだけでは決まりません。
引火点のない危険物をどう数えるのか、同じ敷地に施設が並んでいるときに合算するのか、といった判断が先に立ちます。
共同住宅の燃料供給施設のように新しい形の施設をどちらに分類するかという問題もあります。
この記事では選任と設置の線引きを消防庁の通達に沿って整理します。
扱っている危険物には引火点そのものがありません。
これは40度以上に入るのでしょうか。
入りません。
昭和56年1月19日付け消防危第7号で、引火点のない危険物は引火点が40度以上には該当しないと示されています。
危険物施設保安員はどうでしょうか。
敷地にいくつか工場があれば合算になりますか。
そこが逆なんです。
危険物施設保安員は単独で指定数量の100倍以上を取り扱うものだけが対象で、敷地内での合算はしません。
この記事でまとめて解説します!
- 引火点のない危険物は危険物の規制に関する政令第31条の2でいう引火点が40度以上の危険物には該当しない
- この解釈は許可等の通報を必要とする製造所等の指定と予防規程を定めなければならない製造所等の指定にも同じように及ぶ
- 共同住宅等の燃料供給施設は消費施設ではなく供給施設なので危険物保安監督者の選任が必要になる
- 危険物施設保安員の指定数量の100倍は単独で100倍以上のものだけが対象で同一敷地内の施設を合算しない
▼
目次
引火点のない危険物は引火点が40度以上には当たらない

危険物の規制に関する政令第31条の2は危険物保安監督者を定めなければならない製造所等を挙げていますが、そこには引火点が40度以上という限定が付いた号があります。
昭和56年1月19日付け消防危第7号は、生石灰や第6類のようにそもそも引火点を有しない危険物をこの限定にどう当てはめるのかを問うたものです。
- 読み方ア 引火点が40度以上とは引火点を有する危険物についての限定規定であるから、引火点のない危険物については同号の規定の適用はないと解する
- 読み方イ 危険物を危険性により区分し高引火点の危険物については危険性が少ないものとして限定的に取り扱うこととした趣旨のものであるから、引火点のない危険物は引火点が40度以上のものに相当すると解する
読み方アが採られたということです。
引火点という物差しを持たない危険物に対して、その物差しでできた枠を当てはめることはしないという整理になります。
照会ではあわせて、この読み方が採られる場合に引火点がなく分解爆発等の危険性を有する第1類及び第5類の危険物についても同様と解してよいかという問いも立てられています。
危険性の高さと引火点の有無は別の話であり、危険性があるからといって引火点が40度以上のものに読み替えるわけではないという構成です。
引火点がなければ、40度以上には当たらないのですね。
そう示されています。
扱う危険物の性状を、資料で確かめておいてください。
同じ解釈は許可等の通報と予防規程の指定にも及ぶ

同じ昭和56年1月19日付け消防危第7号では続けて、この解釈が他の条文にも及ぶのかが問われています。
具体的には危険物の規制に関する政令第7条の3(許可等の通報を必要とする製造所等の指定)および同令第37条(予防規程を定めなければならない製造所等の指定)の規定についても同様と解してよいか、という照会です。
引火点の限定はどの条文でも同じ読み方になります。
保安監督者の話として答えを出しておきながら、通報や予防規程の場面では違う読み方をする、ということにはしないという判断です。
同じ言葉が複数の条文に出てくるとき、片方だけ別の意味で読むと現場が混乱します。
条文ごとに解釈が割れないよう、まとめて確認しておくという姿勢がこの照会の作り方に表れています。
同じ読み方が、ほかの条文にも及ぶのですね。
予防規程の指定などにも及びます。
該当するかどうかを、条文ごとに確認してください。
共同住宅等の燃料供給施設は保安監督者の選任が必要になる

平成15年8月6日付け消防危第81号は共同住宅等の燃料供給施設に関する運用上の指針を示した通知ですが、この指針をめぐって平成16年6月4日付け消防危第62号で照会が出されています。
問われたのは燃料供給施設にあっては危険物保安監督者を選任する義務があるかという点です。
当該施設は消費施設ではなく供給施設です。
したがって危険物の規制に関する政令第31条の2第6号イに該当せず、保安監督者の選任が必要であるとされました。
政令第31条の2には保安監督者を定めなくてよい場合が並んでいますが、その適用を受けるには施設の性格が条文の想定に合っている必要があります。
燃料を建物内で使い切る消費施設なのか、各戸へ配って供給する施設なのかで扱いが分かれ、供給施設と位置づけられたことで除外の枠から外れたという流れです。
共同住宅の燃料供給施設でも、保安監督者が要るのですね。
選任の義務があります。
選任と届出が済んでいるか、書類を確かめてください。
外部委託先の危険物取扱者が荷下ろしすれば双方の立会いになる

同じ平成16年6月4日付け消防危第62号ではもう一つ、実務に直結する問いが立てられています。
運用上の指針中第2の2の(2)のイにより燃料の販売店等に燃料供給施設の危険物取扱業務を外部委託している場合、委託を受けた燃料の販売店等の当該委託業務の実施を担当する危険物取扱者が委託元の専用タンクに移動タンク貯蔵所から荷下ろしを行う行為は、移動タンク貯蔵所および一般取扱所双方の立会いのもとに危険物の取扱いを行っていると解してよいか、というものです。
一人で両方の立会いを兼ねられます。
移動タンク貯蔵所の側と一般取扱所の側にそれぞれ別の人を立たせなければならない、という運用にはしないという判断です。
荷下ろしという一つの行為に二つの施設が関わるとき、形式的に考えれば立会いも二人分必要に見えます。
しかし委託を受けた危険物取扱者が現に危険物の取扱いを行っている以上、その一人の行為が双方の立会いを満たしていると整理されました。
委託先の取扱者が行えば、立会いになるのですね。
双方の立会いとして扱われます。
委託の契約に、担当者の資格を明記しておきましょう。
危険物施設保安員の100倍は同一敷地内でも合算しない

危険物の規制に関する政令第36条は危険物施設保安員を定めなければならない製造所として指定数量の100倍以上の危険物を取り扱う製造所又は一般取扱所を挙げています。
昭和40年10月21日付け自消丙予発第164号では、この100倍を敷地単位で見るのかどうかが問われました。
- 照会イ 同一敷地内に2以上の製造所又は一般取扱所があり個々の場合の取り扱い数量は100倍未満であるが、これらを合算すると100倍以上となるとき
- 照会ロ イの場合で2以上の製造所等の存する敷地が広く、これらの間に危険物を取り扱わない建築物その他の工作物が存在する場合
したがってイとロはいずれも該当しません。
あわせて政令第37条の予防規程を定めなければならない製造所等についても同様の解釈でよいかと問われ、この回答により承知されたいとされています。
指定数量の倍数は施設を一つの単位として数えるという原則がここでも貫かれています。
敷地が広いか狭いか、間に別の建物があるかどうかといった敷地の状況は判断材料になりません。
倍数は施設ごとに見るのですね。
合算はしません。
施設ごとの倍数を一覧にして、選任の要否を整理してください。
よくある質問
まとめ
- 引火点のない危険物は危険物の規制に関する政令第31条の2でいう引火点が40度以上の危険物には該当しない
- 引火点が40度以上という限定は引火点を有する危険物についての規定であり引火点という物差しを持たない危険物には当てはめない
- この解釈は許可等の通報を必要とする製造所等の指定と予防規程を定めなければならない製造所等の指定についても同様と解してさしつかえない
- 共同住宅等の燃料供給施設は消費施設ではなく供給施設であるから政令第31条の2第6号イに該当せず保安監督者の選任が必要になる
- 外部委託を受けた危険物取扱者が委託元の専用タンクへ荷下ろしを行う行為は移動タンク貯蔵所および一般取扱所双方の立会いのもとに取扱いを行っていると解される
- 危険物施設保安員を定める政令第36条の対象は単独で指定数量の100倍以上を取り扱うもののみで同一敷地内の合算はしない
- 敷地が広く間に危険物を取り扱わない建築物その他の工作物がある場合も合算の結論は変わらない
合算しないというのが意外でした。
すっきりしました。
人を置く義務の話はまず施設を一つずつ見るのが基本です。
そのうえで条文の限定が自分の施設に当てはまるかどうかを、言葉の趣旨までさかのぼって確かめる順番になります。
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第7条の3・第31条の2・第36条・第37条 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する政令等の運用上の疑義について(昭和56年1月19日付け消防危第7号 危険物規制課長から大阪府あて回答)〔昭和56年3月9日付け消防危第21号「8」〕
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成16年6月4日付け消防危第62号 消防庁危険物保安室長から各都道府県消防主管部長あて)
- 共同住宅等の燃料供給施設に関する運用上の指針について(平成15年8月6日付け消防危第81号 消防庁危険物保安室長通知)
- 危険物施設保安員設置の製造所等について(昭和40年10月21日付け自消丙予発第164号 予防課長から大阪市消防局長あて回答)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の危険物保安監督者および危険物施設保安員に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




