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浮き蓋付きタンクの配管はなぜ気体対策が必要なのか|簡易フロート型に限られる噴き上げ防止設備を解説

配管のバルブを点検する作業員のイメージ写真

屋外の大きな貯蔵タンクには、屋根の下に浮き蓋を浮かべる特定屋外貯蔵タンクという形式があります。
このタンクには、通常の屋外タンク貯蔵所の基準に加えて上乗せの基準が課されます。
危険物の規制に関する政令第十一条第二項が、その上乗せ基準を定めているためです。
この記事では、上乗せ基準のうち配管から気体が入り込むのを防ぐ設備にしぼって条文から整理します。

浮き蓋があるタンクなら、みんな同じ基準が上乗せされるんですよね。

いいえ、浮き蓋の構造の種類によって変わる項目があります。

具体的にはどの設備が変わるんですか。

配管に取り付ける気体対策の設備です。
条文の順番で見ていきましょう。

この記事の結論
  • 浮き蓋付きの特定屋外タンク貯蔵所には、政令第十一条第二項に基づく四つの上乗せ基準が定められています。
  • 四つ目の基準である配管の気体対策は、浮き蓋の構造によって必要かどうかが変わります。
  • 一枚板構造・二枚板構造の浮き蓋は対象外で、簡易フロート型の浮き蓋だけが対象になります。
  • 規則第二十二条の二の二は、配管に三つの設備のいずれかを設けることを求めています。
  • 三つの設備は選択制であり、すべてを重ねて備える必要はありません。

浮き蓋の構造の違いによって配管の噴き上げ防止設備が必要かどうかが分かれることを示す図解

浮き蓋付きの特定屋外タンク貯蔵所には何が上乗せされるのか

特定屋外貯蔵タンクの内部に浮き蓋が浮かぶ断面のイメージ
まず、浮き蓋があることで基準がどう変わるのかを確認します。
根拠になる条文の全体像を押さえます。
危険物の規制に関する政令第十一条第二項 屋外タンク貯蔵所(浮き蓋付きの特定屋外貯蔵タンクに係る特定屋外タンク貯蔵所に限る。)の位置、構造及び設備の技術上の基準は、(略)次のとおりとする。一 浮き蓋は、地震等による振動及び衝撃に耐えることができる総務省令で定める構造とすること。二 浮き蓋付きの特定屋外貯蔵タンク(略)には、可燃性の蒸気を屋外に有効に排出するための設備を設けること。三 浮き蓋付きの特定屋外貯蔵タンクには、浮き蓋の状態を点検するための設備を設けること。四 浮き蓋付きの特定屋外貯蔵タンクのうち、その配管内に気体が滞留するおそれがあり、かつ、当該気体がタンク内に流入することにより損傷を受けるおそれがある浮き蓋として総務省令で定めるものを備えたものの配管には、当該気体がタンク内に流入することにより浮き蓋に損傷を与えることを防止するための総務省令で定める設備を設けること。
浮き蓋付きのタンクには四つの基準が上乗せされます。
一つ目は浮き蓋の耐震構造、二つ目は可燃性蒸気の排出設備、三つ目は浮き蓋の点検設備です。
四つ目が今回取り上げる、配管から気体が入り込むのを防ぐ設備です。
一号から三号までは浮き蓋付きのタンクなら一律に課されますが、四号だけは条文に「総務省令で定めるものを備えたもの」という限定が付いています。
この限定にあたるかどうかは、浮き蓋の構造の種類で決まります。

四号だけ限定が付いているのは、なぜなんでしょう。

配管の気体対策が要る浮き蓋とそうでない浮き蓋があるからです。
次はその区分を見ましょう。

噴き上げ防止の対象になる浮き蓋はどれか

一枚板構造の浮き蓋と簡易フロート型の浮き蓋を並べて比較するイメージ
浮き蓋には構造ごとにいくつかの区分があります。
この区分によって、配管の対策が必要かどうかが変わります。
危険物の規制に関する規則第二十二条の二(浮き蓋の構造) (略)浮き蓋の構造は、次の各号に掲げる当該浮き蓋の区分に応じ、当該各号に定める技術上の基準に適合するものでなければならない。一 一枚板構造の浮き蓋にあつては、(略)。二 二枚板構造の浮き蓋にあつては、前号(略)の規定の例によるものとする。三 簡易フロート型の浮き蓋(ステンレス製のものに限る。)にあつては、(略)。四 簡易フロート型の浮き蓋(前号に掲げるものを除く。)にあつては、(略)。
浮き蓋は四つの区分に分かれます。
一号の一枚板構造と二号の二枚板構造は、鋼板一枚または二枚を溶接してつくる大型の浮き蓋です。
三号と四号は簡易フロート型で、外周のリング状の浮きだけで浮力を確保する構造です(三号はステンレス製、四号はそれ以外)。
規則第二十二条の二の二は、対象となる浮き蓋を「前条第三号及び第四号に規定するもの」と明示しています。
つまり配管の気体対策が必要になるのは、四区分のうち簡易フロート型の二つだけです。

うちのタンクがどちらの区分か、図面で確認したほうがよさそうですね。

はい、浮き蓋の型式は完成検査の書類で確認できます。
次は具体的な設備の中身です。

配管に求められる設備とはどのようなものか

配管の中に気体がたまりタンク壁に近づいているイメージ
簡易フロート型の浮き蓋に、なぜ配管の対策が必要なのかを確認します。
条文が挙げる三つの設備を見ていきます。
危険物の規制に関する規則第二十二条の二の二(噴き上げ防止措置) 令第十一条第二項第四号の総務省令で定める浮き蓋は、前条第三号及び第四号に規定するものとし、当該浮き蓋を備えた特定屋外貯蔵タンクの配管には、次に掲げるいずれかの設備を設けなければならない。一 当該配管内に滞留した気体がタンク内に流入することを防止するための設備 二 当該配管内に滞留した気体がタンク内に流入するものとした場合において当該気体を分散させるための設備 三 前二号に掲げるもののほか、当該配管内に滞留した気体がタンク内に流入することにより浮き蓋に損傷を与えることを防止するための設備
配管内にたまった気体が、浮き蓋を傷つけるおそれがあるための対策です。
簡易フロート型はリング状の浮きが液面に接する構造で、配管内に気体がたまりやすく、その気体がタンク内へ流れ込むと浮き蓋を傷つけるおそれがあります。
一号は気体を配管内で止めて流入させない設備、二号は流入する前提で気体を分散させる設備です。
三号は一号・二号以外の方法でも、結果として浮き蓋への損傷を防げればよいという受け皿の規定です。
どの設備を選ぶかは、配管の形状やタンクの規模に応じて設計段階で検討することになります。

気体をせき止めるか、逃がすか、それ以外か、という三択なんですね。

はい、三つの選択肢という形です。
ここで見落としやすい点を確認しましょう。

三つの設備はすべて備える必要があるのか

配管に弁とベント設備が取り付けられているイメージ
条文の書き方を丁寧に読むと、勘違いしやすい点があります。
ここを取り違えると、不要な設備を重ねて設計してしまいます。
危険物の規制に関する規則第二十二条の二の二 (略)当該浮き蓋を備えた特定屋外貯蔵タンクの配管には、次に掲げるいずれかの設備を設けなければならない。
条文が求めているのは「いずれか」であって、三つ全部ではありません。
一号(流入防止)・二号(気体の分散)・三号(損傷防止の受け皿)は、並列の選択肢として並べられています。
三つとも備えなければならないと誤解し、配管に対策を重ねて設置してしまう例が想定されます。
一つの設備で条文の趣旨(気体による浮き蓋の損傷を防ぐこと)を満たせるなら、それで基準は足ります。
新設・改修の設計段階では、どの設備を選ぶかを一つに絞って明確にしておいてください。 自分のタンクの浮き蓋が簡易フロート型(三号・四号)にあたるかをまず確認してください。
一枚板構造・二枚板構造なら、この配管対策は不要と判断してよいということです。
配管に設ける設備は一号から三号のうちどれか一つで足りることを、設計図書で確認してください。
既存の配管に複数の対策を重ねて設けていないかも、あわせて見ておくとよいでしょう。

てっきり三つとも備えるものだと思っていました。

条文の「いずれか」という一言が鍵です。
最後に確認の手順をまとめます。

明日から何を確認すればよいのか

チェックリストを持つ作業員がタンクのそばに立つイメージ
ここまでの内容を、現場で確認する手順に落とし込みます。
タンクの図面と配管の設計図の両方を見ながら進めてください。 完成検査の書類等で自分のタンクの浮き蓋の区分(一号〜四号のどれか)を確認してください。
簡易フロート型にあたる場合は、配管の気体対策の有無を必ず確認します。
配管に設けられている設備が、流入防止・気体の分散・損傷防止のどれにあたるかを整理しておきましょう。
一枚板構造・二枚板構造のタンクにこの設備が付いていなくても、規則違反ではないと理解しておいてください。
タンクの改修や浮き蓋の型式変更を検討するときは、事前に所轄消防署へ相談してください。

まずは自分のタンクの浮き蓋がどの区分か、書類で確かめてみます。

それが一番確実です。
よくある質問もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q浮き蓋付きのタンクなら、配管の気体対策は必ず必要ですか?
Aいいえ。規則第二十二条の二の二の対象は簡易フロート型(前条第三号・第四号)に限られます。一枚板構造・二枚板構造の浮き蓋には課されません。
Q三つの設備を組み合わせて設けてもよいですか?
A条文上は差し支えありません。ただし条文が求めるのはいずれか一つで足りるという水準であり、複数設けることが義務ではありません。
Q浮き蓋の耐震構造や点検設備も、簡易フロート型だけの基準ですか?
Aいいえ。政令第十一条第二項第一号から第三号までは、浮き蓋の構造にかかわらず浮き蓋付きの特定屋外貯蔵タンク全般に課されます。限定が付くのは第四号だけです。
Q自分のタンクの浮き蓋の区分はどこで確認できますか?
A設置許可や完成検査の際の設計図書・検査済証に浮き蓋の型式が記載されています。不明な場合は施工業者または所轄消防署に確認してください。

まとめ

浮き蓋付きの特定屋外タンク貯蔵所には、政令第十一条第二項に基づく四つの基準が上乗せされます
耐震構造・蒸気排出設備・点検設備の三つは浮き蓋の構造にかかわらず課されます
四つ目の配管の気体対策だけは、簡易フロート型(規則第二十二条の二第三号・第四号)に限られます
一枚板構造・二枚板構造の浮き蓋にはこの配管対策は課されません
規則第二十二条の二の二が挙げる三つの設備は、流入防止・気体の分散・損傷防止の受け皿という並列の選択肢です
条文は「いずれかの設備」なので、三つとも備える義務はありません
自分のタンクの浮き蓋の区分は設計図書・検査済証で確認してください

浮き蓋の型式で必要な設備が変わること、よく分かりました。
助かります

まずは浮き蓋の区分の確認から始めてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第十一条第二項
  • 危険物の規制に関する規則第二十二条の二(浮き蓋の構造)
  • 危険物の規制に関する規則第二十二条の二の二(噴き上げ防止措置)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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