排煙風量測定記録表(別表3)には、通常の排煙機だけでなく、給気式や加圧式といった特殊な構造の排煙設備向けの記入例も用意されています。
特別避難階段の付室や非常用エレベーターの乗降ロビーでは、居室とは違う記入ルールが適用されます。
方式ごとの違いを知らずに数字を当てはめると、判定そのものを誤ってしまいます。
本記事では、排煙口の同時開放検査・付室と乗降ロビー編・給気式編・加圧式編の記入方法と算定式を、方式ごとに整理して解説します。
うちのビルは加圧防排煙という方式らしいのですが、記録表の書き方が普通の排煙機と違うと言われました。
はい、給気式や加圧式には専用の記入例が別表3に用意されていますので、順番に見ていきましょう。
付室のところは排煙口の欄が空欄になっていて、書き方が分からず困っています。
付室や乗降ロビーには排煙口という考え方自体がありませんので、そこも含めて整理しますね。
- 排煙口の同時開放による性能検査は、排煙機の規定風量に見合う排煙口を同時に開き、各排煙口の測定風量の合計値で判定する方法である
- 付室・乗降ロビーの記録表には排煙口の風量を書かず、排煙機の風量だけを固定の規定値で判定する
- 付室・乗降ロビー単独は毎分240立方メートル以上、付室兼用乗降ロビーは毎分360立方メートル以上が規定風量になる
- 給気式は測定風量が上限と下限の範囲に収まっているかで判定し、多ければよいわけではない
- 加圧式の規定排出風速は隣接する室の区画の仕様によって異なる計算式を使い分ける
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目次
排煙口を同時に開放して排煙機の性能を確認する方法とはどんな検査か

機外静圧が高い箇所など、その測定が難しい現場向けに、別表3には代わりの検査方法も用意されています。
各排煙口の測定風量は、排煙口の面積(平方メートル)に平均風速(メートル毎秒)を掛けて60倍した値として算出します。
記入例では、2階の事務室と1階の事務室、1階と地下1階の廊下という4か所の排煙口を同時に開放し、測定風量の合計405立方メートル毎分が規定風量386立方メートル毎分を上回ったため「指摘なし」と判定されました。
この方法を使う場合、排煙機の測定風量欄には合計値であることが分かるよう※印を付けて記入し、測定風速の欄はハイフンで空欄にします。
排煙口の合計で排煙機を判定できるとは知りませんでした。
はい、通常の測定が難しい現場のための代替手段ですので、記録表にどちらの方法を使ったかを明記しておきましょう。
付室や乗降ロビーの記録表はなぜ排煙口の風量を書かないのか

別表3の記入欄も、居室向けとは扱いが変わります。
外部から給気して煙の流入を防ぐ仕組み(建築基準法施行令第123条第3項第二号・第129条の13の3第13項)で機能するため、別表3の排煙口の欄は使わず、排煙機(実質は給気送風機)の風量欄だけを埋めます。
規定風量は床面積から計算する値ではなく、固定値です。
付室単独または乗降ロビー単独を受け持つ場合は毎分240立方メートル以上、付室と乗降ロビーを兼ねる場合は毎分360立方メートル以上が基準になります。
記入例では、測定風量268立方メートル毎分が規定風量240立方メートル毎分を上回ったため「指摘なし」と判定されました。
付室兼用の乗降ロビーは、基準が引き上がるということですね。
そのとおりです。
兼用かどうかをまず確認してから、規定風量の欄を埋めましょう。
給気式(特殊な構造の排煙設備)の規定風量はなぜ上限と下限の幅で判定するのか

判定の考え方が、一般の排煙機とは大きく異なります。
下限は、その室の防煙区画面積(平方メートル)に毎分1立方メートルを掛けた値です。
上限は、その室の排煙口面積(平方メートル)に毎分550立方メートルを掛けた値です。
記入例では、防煙区画面積15平方メートルの乗降ロビーで下限15立方メートル毎分、排煙口面積0.25平方メートルの排煙口で上限137.5立方メートル毎分となり、測定風量がこの範囲に収まっているため「指摘なし」と判定されました。
給気送風機側の風量は、排煙口の風量と排煙口以外の隙間からの漏れ量を合計した能力で選定されている点も覚えておくと理解しやすくなります。
風量が多いほど安心だと思っていました。
給気式に限っては、多すぎても要是正になりますので注意しましょう。
加圧式(加圧防排煙設備)の規定排出風速はどの計算式で求めるのか

この規定排出風速の計算式は、部屋ごとに条件で変わります。
隣接室が一時間準耐火基準を満たす準耐火構造の壁や特定防火設備で区画されている場合は、遮煙開口部の高さ(メートル)の平方根に2.7を掛けた値になります。
不燃材料の壁や防火設備で区画されている場合は3.3を、それ以外の場合は3.8を掛けた値になり、単位はいずれも毎秒メートルです。
記入例では、遮煙開口部の高さ2メートルの乗降ロビーで規定排出風速が毎秒4.67メートルとなり、各階の測定排出風速がこれを上回っているため「指摘なし」と判定されました。
別表3には、この3つの計算式のうちどれを使ったかを記入する欄もあります。
隣の部屋の壁の作り方で計算式が変わるとは思いませんでした。
設計図書でどの式を使っているかを確認してから、検査に臨むとよいでしょう。
排煙機の風量測定はなぜ毎年と3年に一度で頻度が分かれるのか

どちらも定期検査報告の一部ですが、根拠になる規定が別です。
報告の周期は原則6か月から1年までですが、国土交通大臣が定める検査項目に限っては1年から3年までの間隔で抽出検査ができます。
排煙機側(煙排出口)の風量測定はこの大臣指定に含まれないため、原則どおり毎年すべての排煙機を検査します。
排煙口側の風量測定は大臣指定項目にあたるため、3年以内に全数を検査すればよい抽出検査の対象になります。
当該年度に排煙口の測定が難しい場合でも、次年度以降に測定できるよう所有者等と打合せのうえ、3年以内に完了する検査計画を立てておく必要があります。複数台の排煙機がある建物では、別表3も台数分作成し、すべての測定結果が揃っていないと報告書自体が受け付けられません。
排煙機の風量は毎年見てもらう必要があるのですね。
はい、排煙口側は3年計画で構いませんので、今年どこまで測ったかを記録に残しておきましょう。
よくある質問
まとめ
方式ごとに考え方が違うとよく分かりました!
給気式の上限と下限、今度の検査の前にもう一度確認しておきます。
それは安心です。
記入や判定にお困りの際は㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法施行令第123条第3項(特別避難階段の構造。e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行令第129条の13の3第13項(非常用エレベーターの乗降ロビー。e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行規則第6条第1項(定期検査報告の時期。e-Gov法令検索)
- 平成12年建設省告示第1437号(特殊な構造の排煙設備の構造方法を定める件)
- 平成28年国土交通省告示第696号(特別避難階段の階段室又は付室の構造方法等を定める件)
- 東京都建築設備定期検査報告実務マニュアル2025年版(別表3排煙風量測定記録表の記入例)
※本記事は公表されている法令および東京都の実務マニュアルにもとづく一般的な解説です。記録表の様式や運用は特定行政庁によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門業者にご確認ください。





