BLOG

定期検査報告書の排煙設備の概要欄はどう記入すればよいのか|避難安全検証法から予備電源の種別まで解説

排煙設備の概要欄の記入方法を解説するアイキャッチ画像

建築設備の定期検査報告書の第二面には、排煙設備を検査対象にした建物だけが記入する「排煙設備の概要」というブロックがあります。
避難安全検証法等の適用から、特別避難階段の付室、非常用エレベーターの乗降ロビー、居室等、予備電源まで、6つの欄に分かれています。
この記事では東京都建築設備定期検査報告実務マニュアルの記入例をもとに、吸引式給気式加圧式という3つの排煙方式の使い分けから、非常用エレベーターの乗降ロビーと付室の書き分けまで解説します。
排煙設備の概要欄は、避難安全検証法の適用状況と排煙方式を正しく書き分けて初めて後続の検査結果表とつながる欄です。

排煙設備の概要欄には吸引式とか給気式とか聞き慣れない言葉が並んでいて、どれにチェックすればいいのか分かりません。

吸引式・給気式・加圧式は排煙の仕組みそのものが違うので、まず建物にどの方式が入っているかを整理しましょう。
非常用エレベーターの欄も順番に見ていきます。

非常用エレベーターの乗降ロビーと、乗降ロビー用の付室って、同じ場所じゃないんですか。

兼用しているケースが多いですが、書く欄は使い分けが決まっています。
最後の予備電源の欄までまとめて確認しましょう。

この記事の結論
  • 「避難安全検証法等の適用」欄でチェックが入ると、令第126条の2・第126条の3の排煙設備の規定そのものが適用除外になります
  • 「特別避難階段の階段室又は付室」欄の吸引式は排煙機で直接排出する第三種排煙、給気式は間接的に押し出す第二種排煙です
  • 「非常用エレベーターの乗降ロビーの用に供する付室」が特別避難階段の付室と兼用の場合は、重複記入せずこの欄にだけ記入します
  • 「居室等」欄には加圧式の選択肢がなく、吸引式か給気式のいずれかで記入します
  • 「予備電源」で自家用発電装置か直結エンジンかで、後続の検査項目の範囲が変わります

定期検査報告書第二面の排煙設備の概要欄の記入項目を示す図解

避難安全検証法等の適用欄はなぜ他の欄の記入を省略できるのか

区画避難安全検証法や全館避難安全検証法のチェックボックスを確認する検査員
排煙設備の概要欄の最初の区分は「避難安全検証法等の適用」で、区画・階・全館という3つの検証法のどれかが使われているかを確認します。
ここにチェックが入っている建物では、排煙設備そのものの規定が一部適用されないことがあります。
「イ.避難安全検証法等の適用」は、令第128条の7第1項に規定する区画避難安全検証法により区画避難安全性能が確かめられた建築物のときは「区画避難安全検証法」のチェックボックスに、令第129条第3項に規定する階避難安全検証法により階避難安全性能が確かめられた建築物のときは「階避難安全検証法」のチェックボックスに、令第129条の2第3項に規定する全館避難安全検証法により全館避難安全性能が確かめられた建築物のときは「全館避難安全検証法」のチェックボックスに、それぞれ「レ」マークを入れてください。避難安全検証法等を適用しており、機械排煙設備が設けられている場合は、「ロ」から「ヘ」までの該当するところを記入してください。
避難安全検証法は、計算によって煙やガスの降下が避難上支障ない範囲に収まることを確かめる方法です。
区画避難安全検証法は1つの区画部分、階避難安全検証法は1つの階、全館避難安全検証法は建築物全体を対象に、火災が発生しても避難が終わるまで煙やガスが避難上支障がある高さまで降下しないことを検証します。
これらの検証法が認められた区画・階・建築物では、令第126条の2・第126条の3の排煙設備に関する規定そのものが適用されません。
ただし検証法を適用しながら機械排煙設備を実際に設けている建物もあるため、その場合は「ロ」から「ヘ」までの該当欄も記入が必要です。
法第38条や旧法第38条、法第68条の25第1項の構造方法等認定を受けた建築物で報告が必要なものは「その他」のチェックボックスに記入します。

避難安全検証法が適用されていれば、排煙設備の欄はまるごと書かなくていいということですか。

いいえ、機械排煙設備が実際に設けられていれば「ロ」から「ヘ」までは記入が必要です。
検証法の適用は、あくまで規定の一部が除外されるという意味です。

特別避難階段の階段室又は付室欄はどの排煙方式を選べばよいのか

特別避難階段の付室に設けられた排煙設備の方式を確認する検査員
2つ目の区分「特別避難階段の階段室又は付室」は、火災時の避難経路そのものを守る排煙設備で、吸引式・給気式・加圧式という3つの方式のどれかにチェックを入れます。
方式によって根拠になる告示や検査結果表の対象項目が変わるため、まず建物にどの方式が入っているかを確認します。
「特別避難階段の階段室又は付室」とは、令第123条第3項で廊下と階段室間に設置が義務づけられた付室のことで、排煙設備や非常用の照明装置等を有し、耐火構造の壁と特定防火設備の扉によって囲まれ、仕上げ下地を不燃材料としたものをいいます。「吸引式」とは、煙を排煙機で排出する方式で、第三種排煙ともいいます。「給気式」とは、「特殊な構造の排煙設備」のことで、外気を給気機で当該区画に給気して、区画内の圧力を高めて間接的に煙を押し出す方式で、押出し排煙設備又は第二種排煙ともいいます。
吸引式と給気式は、煙を追い出す向きがそもそも逆の方式です。
吸引式は排煙機で煙を直接吸い出す第三種排煙、給気式は外気を給気機で送り込んで区画内の圧力を高め、間接的に煙を押し出す押出し排煙設備(第二種排煙)です。
昭和44年建設省告示第1728号(現・平成28年国土交通省告示第696号)による付室が加圧防排煙方式の場合は、「加圧式」のチェックボックスに記入します。
15階以上または地下3階以下の階に通じる直通階段は、原則として特別避難階段としなければならないため、高層のビルほどこの欄の記入対象になりやすい設備です。
該当する室がない場合は「無」のチェックボックスに記入すればよく、方式ごとの区画数まで無理に推測して書く必要はありません。

うちのビルは煙を吸い出すタイプだと思っていましたが、給気式という仕組みもあるんですね。

はい、給気式は空気を送り込んで圧力で煙を押し出す仕組みです。
どちらの方式かは設計図書や過去の報告書で確認できます。

非常用エレベーターの昇降路又は乗降ロビーと付室はどう書き分けるのか

非常用エレベーターの乗降ロビーと付室の排煙方式を確認する検査員
3つ目と4つ目の区分は「非常用エレベーターの昇降路又は乗降ロビー」と「非常用エレベーターの乗降ロビーの用に供する付室」で、似た名前ですが書く欄が決まっています。
乗降ロビーが特別避難階段の付室と兼用されているケースでは、記入する欄を間違えやすいので注意が必要です。
「非常用エレベーターの乗降ロビー」とは、令第129条の13の3第13項に規定されている非常用エレベーター専用の乗降ロビーをいいます。耐火構造の壁と特定防火設備の扉によって囲まれ、特別避難階段の付室と同様に排煙設備や非常用の照明装置等の設置を要し、原則として法第34条第2項により高さ31mを超える建築物に義務づけられています。「非常用エレベーターの乗降ロビー」が「特別避難階段の付室」と兼用されている場合は、この欄に区画(数)を記入してください。付室と兼用する乗降ロビーの場合は、「特別避難階段の付室」及び「非常用エレベーターの乗降ロビー」に重複して記入せず、この欄に記入します。
乗降ロビーが付室を兼ねている場合は、記入する欄を1つに絞ります。
非常用エレベーターは高さ31mを超える建築物に義務づけられる設備で、乗降ロビーには特別避難階段の付室と同じく排煙設備や非常用照明の設置が求められます。
乗降ロビーが特別避難階段の付室を兼ねている場合は、「ロ.特別避難階段の階段室又は付室」と「ハ.非常用エレベーターの昇降路又は乗降ロビー」のどちらにも書かず、「ニ.非常用エレベーターの乗降ロビーの用に供する付室」の欄だけに区画数を記入します。
吸引式・給気式・加圧式という排煙方式の考え方は「ロ」の欄と共通で、令第129条の13の3第13項が定める煙の流入防止構造を満たせば加圧式に記入します。
兼用かどうか分からないときは、設計図書の平面図で付室と乗降ロビーの位置関係を確認すると判断しやすくなります。

うちのビルは乗降ロビーがそのまま付室になっているんですが、両方の欄に書いた方が確実ではないですか。

いいえ、兼用の場合は「乗降ロビーの用に供する付室」の欄だけに書きます。
重複記入は書類の整合性を崩すので避けてください。

居室等欄はなぜ加圧式を選べないのか

居室等の排煙設備が吸引式か給気式かを確認する検査員
5つ目の区分「居室等」は、特別避難階段や非常用エレベーター以外の一般の居室・廊下に設ける排煙設備を書く欄で、選べる方式が2つしかありません。
可動防煙壁がある居室では、確認する検査結果表の項目も変わります。
「ホ.居室等」は、「ロ.特別避難階段の階段室又は付室」及び「ハ.非常用エレベーターの昇降路又は乗降ロビー」以外の居室、廊下等の用に供する部分について記入してください。「ホ.居室等」の「吸引式」又は「給気式」のチェックボックスに「レ」マークが入り、かつ「可動防煙壁」がある場合は、排煙設備検査結果表の「3.令第126条の2第1項に規定する居室等」の検査項目について記入します。
居室等の欄には加圧式の選択肢がなく、吸引式か給気式のどちらかで記入します。
特別避難階段の付室や非常用エレベーターの乗降ロビーと違い、令第126条の2第1項に規定する一般の居室等は加圧防排煙という選択肢そのものがありません
該当する室がなければ「無」のチェックボックスに記入すればよく、区画数は排煙機や給気機の系統ごとに数えます。
可動防煙壁を備えた居室は、通常の排煙設備検査結果表とは別に「3.令第126条の2第1項に規定する居室等」という専用の検査項目が用意されています。
どの居室が可動防煙壁を備えているかは設計図書で確認し、検査者にも事前に伝えておくと検査当日の手戻りを防げます。

うちのオフィスの排煙は加圧式だと聞いたんですが、居室等の欄に書けばいいですか。

居室等の欄には加圧式の選択肢がないので、実際には吸引式か給気式のどちらかのはずです。
設計図書で方式を確認してから記入しましょう。

予備電源欄はなぜ蓄電池と発電装置で書き方が変わるのか

排煙設備の予備電源が蓄電池か自家用発電装置かを確認する検査員
最後の区分「予備電源」は、商用電源が断たれたときに排煙設備を動かす電源の種類を書く欄で、選んだ種類によって後続の検査結果表で確認する項目の範囲が変わります。
他棟から電源の供給を受けている建物では、備考欄への記入もあわせて必要です。
「へ.予備電源」の「予備電源」とは、商用電源が断たれたときに排煙設備を作動させる設備をいいます。ただし、他の防災設備等と兼用して使用するシステムもあります。「へ.予備電源」の「自家用発電装置」のチェックボックスに「レ」マークが入る場合は、排煙設備検査結果表の「4.予備電源」の(1)から(17)の検査項目について記入します。「へ.予備電源」の「直結エンジン」のチェックボックスに「レ」マークが入る場合は、排煙設備検査結果表の「4.予備電源」の(18)から(26)の検査項目について記入します。
予備電源は蓄電池・自家用発電装置・直結エンジンのどれを選ぶかで、後に確認する検査項目の範囲が変わります。
「自家用発電装置」にチェックが入る建物は排煙設備検査結果表「4.予備電源」の(1)から(17)、「直結エンジン」にチェックが入る建物は同じく(18)から(26)の検査項目がそれぞれ対象になります。
「その他」を選ぶ設備や、他の防災設備と兼用しているシステムもあるため、選択肢だけで判断がつかないときは設計図書や既存の検査記録を確認します。
排煙設備の予備電源を他の建物(他棟)から供給を受けている場合は、この欄に供給元の種別を記入したうえで、第二面20.備考欄にも供給元を記入する必要があります。
予備電源の種類を取り違えて記入すると、後続の検査結果表で見るべき項目そのものが変わってしまうため、この欄は特に慎重に確認します。

予備電源が蓄電池と自家用発電装置の両方ある建物は、どう書けばいいですか。

実際に設置されている電源の種類すべてにチェックを入れて構いません。
該当する検査項目もそれぞれの範囲を確認してください。

よくある質問

Q避難安全検証法が適用されている建物でも、排煙設備の概要欄への記入が必要になることはありますか。
Aあります。機械排煙設備が実際に設けられている場合は、「ロ」から「ヘ」までの該当する欄を記入する必要があります。
Q吸引式と給気式はどちらが優れているという違いですか。
A優劣ではなく仕組みの違いです。吸引式は排煙機で直接吸い出す方式、給気式は圧力で間接的に押し出す方式で、建物の構造に応じて採用されます。
Q非常用エレベーターの乗降ロビーが特別避難階段の付室を兼ねている場合、どちらの欄に書けばよいですか。
A「ニ.非常用エレベーターの乗降ロビーの用に供する付室」の欄だけに区画数を記入し、「ロ」と「ハ」には重複して記入しません
Q居室等の欄で加圧式を選ぶことはできますか。
Aできません。居室等の欄の選択肢は吸引式と給気式の2つだけで、加圧防排煙は特別避難階段の付室や非常用エレベーターの乗降ロビーだけの選択肢です。

まとめ

避難安全検証法等の適用が確かめられた区画・階・建築物では令第126条の2・第126条の3の排煙設備規定が適用されない
検証法を適用していても機械排煙設備が実際にあれば「ロ」から「ヘ」までの記入が必要
吸引式は排煙機で直接吸い出す第三種排煙、給気式は圧力で間接的に押し出す第二種排煙
特別避難階段の付室が加圧防排煙方式の場合は平成28年国土交通省告示第696号に基づき「加圧式」に記入
非常用エレベーターの乗降ロビーが付室を兼ねる場合は「乗降ロビーの用に供する付室」の欄だけに記入し重複記入しない
居室等の欄には加圧式の選択肢がなく、吸引式か給気式のどちらかで記入する
予備電源は自家用発電装置なら(1)〜(17)、直結エンジンなら(18)〜(26)の検査項目が対象になる

吸引式・給気式・加圧式の違いも、乗降ロビーと付室の書き分けも初めて理解できました

報告書の記入に不安な点があるときはいつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第12条第3項・第34条第2項
  • 建築基準法施行令第123条第3項・第126条の2・第128条の7第1項・第129条第3項・第129条の2第3項・第129条の13の3第13項
  • 平成28年国土交通省告示第696号・第697号
  • 東京都建築設備定期検査報告実務マニュアル2025年版(記入例と記入方法の解説)

※本記事は東京都建築設備定期検査報告実務マニュアル2025年版の記入例と、公表されている建築基準法令に基づく一般的な解説です。報告書の様式や運用は特定行政庁ごとに異なる場合があります。個別の記入方法については、報告先の特定行政庁または日本建築設備・昇降機センターにご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
排煙設備の概要欄の記入方法を解説するアイキャッチ画像
建築設備の定期検査報告書の第二面には、排煙設備を検査対象にした建物だけが記入する「排煙設備の概要」というブロックがあります。 避難安全検証法等の適用から、特別避難階段の付室、非常用エレベーターの乗降ロビー、居室等、予備電...