建築設備定期検査の報告書には、換気設備の「系統数」や「室数」を記入する欄があります。
数え方を知らないまま現場に立つと、パッケージ方式やファンコイルダクト併用方式のように機械室と居室が複雑に絡む建物で迷ってしまいます。
系統数や室数は感覚で数えるものではなく、建築基準法や施行令が示す換気設備の構造そのものに沿った数え方があります。
この記事では、自然換気と機械換気の違いから、系統数・室数の数え方、必要換気量の計算式まで整理して解説します。
換気設備の検査報告書に「系統数」と「室数」を書く欄があるんですが、正直言われるままに数字を入れているだけで数え方の根拠がよく分かっていません。
パッケージ型のエアコンがたくさんある建物なので、余計に自信がないです。
系統数や室数は感覚ではなく、換気設備の構造をどう区切るかというルールに沿って数えるものです。
まずは自然換気と機械換気の違いから順番に整理していきましょう。
換気の方式によって数え方が変わるということですか。
うちは天井にファンコイルがたくさんついているタイプなので気になります。
その通りです、空調方式によって1系統とみなす範囲が変わります。
必要な換気量の計算式まで含めて、この記事で一つずつ確認していきましょう。
- 建築基準法上、居室の換気は床面積の20分の1以上の開口部を設けるのが原則だが、政令で定める技術的基準に従った換気設備を設ければこの開口部は不要になる
- 機械換気設備は給気と排気の組み合わせにより第1種・第2種・第3種の3方式に分かれ、室内の圧力の向きがそれぞれ異なる
- 空気調和設備の系統数は空調方式によって数え方が変わり、同じ台数の機器でも系統数が一致しないことがある
- 換気系統の数は発停の制御単位で数え、複数の換気扇を1つのスイッチで一括発停する場合は1系統とまとめる
- 必要有効換気量はV=20Af/Nという式で算定し、Nは実況に応じた1人あたりの占有面積を表す
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目次
自然換気設備と機械換気設備はどこで検査対象が分かれるのか

ただし換気設備を設ければ、この開口部を省略できる場合があります。
開口部だけで20分の1ルールを満たす居室には、そもそも換気設備の設置義務がなく検査対象外になります。
風力や浮力など自然の力だけで換気する設備は自然換気設備と呼ばれ、給気口と排気筒の組み合わせのみで構成されるものに限られます。
送風機など機械の力を使うものは機械換気設備と呼ばれ、これが定期検査の対象になります。
まずは自分の建物のどの居室が開口部だけで足りているのか、どの居室に機械換気設備が付いているのかを設備図面で切り分けることから始めましょう。
うちのビルは窓が小さい部屋にだけ換気扇が付いています。
それ以外の部屋は窓だけで大丈夫ということですか。
その部屋の窓の面積が床面積の20分の1以上あれば、原則として換気設備は不要です。
不安であれば図面で開口部の面積を一度確認してみましょう。
機械換気設備の第1種第2種第3種はどう使い分けられているのか

どの方式かによって、室内の空気の流れる向きが変わります。
第1種換気は給気・排気の両方を機械で制御でき、集会場や劇場など換気量を多く必要とする用途に使われます。
第2種換気は室内を正圧に保てるため、食品店舗やボイラー室のように外気の侵入を防ぎたい用途に向きます。
第3種換気は室内が負圧になるため、便所や浴室など臭気や蒸気を室外に漏らしたくない用途で使われます。
検査の際はまずその居室がどの方式で作られているかを確認すると、給気口・排気口のどちらを重点的に見るべきかが判断しやすくなります。
台所は換気扇が回っているだけで給気口が無い気がします。
これも換気設備として正しい形なんでしょうか。
それは典型的な第3種換気です。
排気だけを機械で行い、給気は別の開口部から自然に取り入れる仕組みなので問題ありません。
空気調和設備の系統数はなぜ空調方式によって数え方が変わるのか

空調の方式によって、1系統とみなす範囲そのものが変わります。
居室ごとに屋外機と室内機を分ける個別パッケージ方式では、機器の台数に近い系統数になりやすい構造です。
一方、機械室の空調機1台で複数の居室にまとめて送風する全空気方式では、居室の数が多くても系統数は少なく数えられます。
ヒートポンプ方式やファンコイルダクト併用方式のように機器の組み合わせが複雑な建物ほど、思い込みで数えると実態とずれやすくなります。
検査の際は空調図面で機械室から居室までの配管・ダクトのつながりをたどり、どの機器がどの居室を受け持っているかを確認しましょう。
屋外機がたくさん並んでいるので、その台数をそのまま系統数として書いていました。
方式によって数え方が違うとは知りませんでした。
屋外機の台数と系統数が一致するとは限りません。
空調図面で機械室と居室のつながりを一緒に確認しましょう。
換気系統と居室の数はどうやって数えるのか

建物の間取りによっては、意外なところで数え方に迷うことがあります。
壁・床・天井で明確に区画された空間を1室と数えるのが基本で、欄間が開放されて空間がつながっている場合も統合して1室とします。
一方で系統数は部屋の数ではなく発停の制御単位で数え、1つのスイッチで複数台の換気扇がまとめて動く場合は1系統、個別のスイッチで動かす場合はその台数分の系統があるとみなします。
半密閉式の湯沸器の排気に使う送風機や煙突も、機械の力で排気する以上は第3種換気の1系統として数えます。
現場では図面の部屋割りだけでなく、実際のスイッチやブレーカーの配線を確認して系統を切り分けるのが確実です。
1つのスイッチで全部の換気扇が一斉に動くタイプなので、これは1系統ということですね。
個別に動かせる部屋は別々に数えないといけないんですね。
その理解で合っています。
配線図とスイッチの実物を照らし合わせて確認すると間違いがありません。
必要換気量はどうやって計算するのか

式の意味を知っておくと、検査結果の数値が妥当かどうかを判断しやすくなります。
床面積Afが大きいほど、また1人あたりの占有面積Nが小さい(人が密集する)用途ほど、必要な換気量は大きくなります。
劇場や映画館のように大勢が密集する特殊建築物の居室ではNの上限が3とされ、少人数の事務所などその他の居室では上限が10までとされています。
この式で決まる数値はあくまで設計段階で満たすべき下限であり、検査で実測するのは実際に機器が発揮している有効換気量です。
検査結果の数値だけを見て一喜一憂せず、まずは設計時にどのNの値で計算されているかを設備図書で確認しておくと理解が深まります。
うちは事務所ですが、上の階はほぼ無人の倉庫として使っています。
それでも同じ計算式で良いんでしょうか。
用途によって実際の人数密度が違えば、Nの値も変わってきます。
正確な数値は設計図書に基づいて設備士が算定していますので、気になれば設計時の計算根拠を確認してみましょう。
よくある質問
まとめ
感覚で数えていた系統数と室数に、ちゃんとしたルールがあるとわかって安心しました。
今度の検査では図面とスイッチを照らし合わせて確認します。
それが一番確実な方法です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第28条
- 建築基準法施行令第20条の2
※本記事は建築基準法及び同施行令の現行規定にもとづき、㈱防災屋が独自に解説を作成したものです。系統数・室数の具体的な記入方法は報告書を受け付ける特定行政庁や検査機関によって運用が異なる場合がありますので、個別の判断は所管の特定行政庁又は検査機関に必ずご確認ください。





