屋上に、階段が畳んで置いてあると聞いたら驚きませんか。
屋外に新しく避難階段を造る余地がない建物のために、消防研究所が開発した装置があります。
平常時は屋上に収納しておき、火災が起きると自重で降りて建物の外壁沿いに階段を作ります。
通達が示したのは一定の仕様を満たせば避難器具そのものとして扱ってよいという線引きです。
うちのビル、屋外に避難階段を増やす場所がなくて悩んでいます。
避難器具をたくさん置くしかないのでしょうか。
その形だけが答えではありません。
屋上に収納しておいて必要なときだけ伸びる階段という装置もあります。
階段が伸びてくるなんて、本当に避難器具として認められるんですか。
条件を満たせば認められます。
置き場所と強度と非常電源の3つを、通達の中身で順に見ていきましょう。
- 収納型屋外避難階段は令第32条の特例基準を適用し避難器具と同等以上の効力を有するものとして扱われます
- 対象になるのは令第25条第1項各号に掲げる避難器具設置義務のある階です
- 仕様は踊場の大きさ・階段の幅・けあげ寸法・伸張速度などが細かく定められています
- 降下空間の1メートル以内には樹木や電柱などの障害物を置いてはいけません
- 伸張する操作に電力を用いる場合は非常電源を附置することが必要です
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目次
屋外に階段を新設できない建物はなぜ収納型に道が開かれたのか

けれど敷地や建物の意匠の都合で、後から階段を増やせない建物もあります。
消防研究所が開発したのは、平常時は屋上などにたたんで収納しておき、火災が起きると自重で建築物の外壁に沿って降下し、階段の形になる装置です。
本来なら避難器具は令第25条第2項第1号の表に載っている種類(避難はしごや避難橋など)から選びますが、この装置は表に無い新顔でした。
そこで通達は令第32条の特例基準を持ち出し、要件を満たす設置であれば避難器具と同等以上の効力を有するものとして扱ってよいとしました。
つまり屋外に新しい階段を造る代わりに、この装置を選ぶという第三の道が開かれたということです。
屋上に階段をしまっておくなんて、想像したこともありませんでした。
珍しい設備ですが、条件を満たせば正式な避難器具として扱われます。
収納型屋外避難階段はどんな建物のどの階で避難器具の代わりになるのか

数の考え方も、ふつうの避難器具と同じ土台の上に乗っています。
令第25条第1項各号が挙げる、収容人員に応じて避難器具の設置を義務づけられた階が土台になります。
その上で、収納型屋外避難階段を利用できる階についてはそれぞれ避難器具を設けたものとみなすという扱いです。
複数の階にまたがって同時に降下できる装置なので、1台で複数階ぶんの避難器具をまかなえる場合がある点が屋外避難階段らしい強みです。
自分の建物のどの階が令第25条第1項各号に当たるのか、まずはそこから消防計画で確認しておいてください。
うちは何階からが対象になるのか、正直あいまいです。
収容人員と用途で決まります。
消防計画に書いてある階数を、一度たどってみてください。
収納型屋外避難階段にはどんな仕様基準が定められているのか

一部を抜き出すと、次のような数字が並びます。
踊場の大きさや階段の幅だけでなく、伸張速度や踊場・階段が支える荷重まで数値で定められました。
特に伸張速度は毎分25メートル以上30メートル以下という範囲があり、速すぎても遅すぎても認められません。
主要部分の材料は日本工業規格に適合する鋼材とされ、構造計算による強度確認も欠かせません。
数字を暗記する必要はありませんが、設置業者から見せてもらう仕様書がこの表と対応しているかは確認しておきたいところです。
これだけ数字が並ぶと、素人には見分けがつきません。
見るところは1つです。
構造計算書が仕様書とセットで残っているかを確認してください。
設置しても見落としやすい条件はどこにあるのか

通達の記書きには、見落としやすい条件がいくつも並んでいます。
降下する空間の1メートル以内に樹木や電柱、ひさしなどがあれば、それだけで条件から外れます。
出口の扉も見落としやすい点です。階段が伸びきるまで扉を開けてはいけないという順番が決められています。
そして操作に電力を使うタイプは非常電源の設置が必須です。停電時に階段が動かなければ意味がありません。
増築や植栽の変更で周辺環境は変わります。定期点検のたびに、降下空間の周りを見渡す習慣をつけてください。
隣の敷地に木が植えられただけでも、影響が出るということですか。
そのとおりです。
降下空間の1メートル以内は常に空けておく必要があります。
収納型屋外避難階段がある建物では明日から何を確認すればよいのか

通達の内容を、点検の目線で並べ直してみます。
1つ目は降下空間の1メートル以内に障害物が増えていないか。2つ目は非常電源が作動する状態にあるか。
3つ目は階段の最下部から道路や避難空地まで、通路がふさがれていないかです。
これらは特別な資格が無くても目視で確認できます。消防計画の自主点検項目に加えておくと、担当者が変わっても引き継げます。
装置そのものの精密な点検は業者に任せるとしても、周りの環境が条件を崩していないかは建物側で見張る必要があります。
資格がなくてもできる点検があるなら、今日からでも始められますね。
そうです。
降下空間・非常電源・最下部の通路の3つを、次の巡回から加えてみてください。
よくある質問
まとめ
装置の存在を知れただけでも安心できました。
点検のときに何を見ればいいかも分かりました。
降下空間・非常電源・最下部の通路の3つを、次の点検から確認してみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 収納型屋外避難階段の取扱いについて(昭和48年8月9日 消防安第12号 消防庁安全救急課長通達)
- 消防法施行令第25条(避難器具に関する基準)
- 消防法施行令第32条(特例基準)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





