高齢者が主に入居するシルバーマンションや、週単位で貸し出すウイークリーマンションもあります。
観光地に多いリゾートマンションも、法令上は同じ共同住宅の一種です。
どれも見た目は住宅ですが、火災対策の面では普通のマンションと同じに扱えない場合があります。
消防庁は平成4年と平成6年の通知で、誰が防火管理者を選ぶかをこの違いに合わせて整理しました。
うちのマンション、住人の半分近くが高齢者なんですが、防火管理者の選び方は普通のマンションと同じでいいんでしょうか。
建物の実態によっては別扱いになります。
まずは通知が示した区分を確認しましょう。
うちは管理会社に委託していて、誰が防火管理者になるのか分からなくなっています。
委託の仕方にも満たすべき条件があります。
順番に見ていきましょう。
この記事の結論
- 消防庁は平成4年の通知で一般的な共同住宅、平成6年の通知でシルバーマンション・ウイークリーマンション・リゾートマンション等の特殊な形態の共同住宅の防火管理体制を整理しました
- 区分所有の共同住宅は区分所有者の総意、賃貸用の共同住宅は所有者が防火管理者を選任します
- 管理会社の従業員を防火管理者にするには委託契約への権限明記など3つの要件をすべて満たす必要があります
- 特殊な形態の共同住宅は原則として防火管理者の常駐が求められ、代行者も一定の資格者に限られます
- 管理会社に委託しても管理権原者は最終的な防火管理責任を免れません
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なぜ共同住宅の防火管理に2つの通知が要ったのか
共同住宅の防火管理は、昭和62年の通知でいったん整理されていました。
ところが平成に入り、その枠に収まらない共同住宅が増えていきます。
「共同住宅における防火管理に関する運用について」(平成4年9月11日 消防予第187号 消防庁予防課長通知)=共同住宅は個人住宅等の集合体であること、その構造によっては火災の延焼危険が著しく少ない等他の防火対象物と大きく異なる点があること等に鑑み、共同住宅の防火管理体制については、「防火管理に関する消防法令の運用について」(昭和62年1月24日付け消防予第13号)等によって、共同住宅の実態に応じた取扱いを行ってきたところである。(略)一般的な共同住宅における防火管理体制の指導指針について別添のとおり定めたので(略)通知する。
「共同住宅における防火管理に関する運用について」(平成6年10月19日 消防予第271号 消防庁予防課長通知)=しかし、近年、共同住宅においては、高齢者が主に入居する施設(いわゆるシルバーマンション)、住戸を極めて短期間の賃貸に供する施設(いわゆるウイークリーマンション)、観光地等に存し、住戸の多くが通年居住されず多数の者の宿泊に供される施設(いわゆるリゾートマンション)等の特殊な形態の共同住宅が多数出現するなどその多様化が進展しており(略)防火管理者の選任を含めた防火管理体制について対応方針を明確にする必要がある。
背景にあるのは共同住宅の使われ方そのものの変化です。
平成4年の
187号は「一般的な共同住宅」を対象にした指導指針で、シルバーマンション等の特殊な形態は最初から適用対象外とされていました。
高齢者向け住宅や短期賃貸、宿泊利用といった特殊な形態が増えたことで、そこだけを補う
271号が2年後に追加されたのです。
つまり自分の建物がどちらの通知の対象かを最初に見極めないと、防火管理者の選び方を間違える可能性があります。
うちは分譲マンションで高齢の住人も多いんですが、どちらの通知に当てはまるのか迷います。
まずはシルバーマンション等の定義に当てはまるかを確認しましょう。
次に定義を詳しく見ていきます。
どんな共同住宅がシルバーマンションやリゾートマンションにあたるのか
名称でなく、入居や利用の実態で判定されます。
通知は3つの類型を具体的に定義しています。
「特殊な形態の共同住宅における防火管理体制の指導指針」(平成6年10月19日 消防予第271号)別添=(1)高齢者が主に入居する共同住宅(以下「シルバーマンション」という。)=一般に老人福祉関係の法律の適用を受けず、入居の条件として居住者の全部又は一部について最低年齢の制限を設ける等、主として、高齢者の入居を目的としたもののうち、入居形態が一般の共同住宅と変わらないものにあっては令別表第一(5)項ロとして扱われるものであるが、ケア付きで自力避難困難者等の入居を主としている場合にあっては(略)(6)項ロとして扱うべき場合もあること。(2)住戸を短期間の賃貸に供する共同住宅(以下「ウイークリーマンション」という。)=一般に旅館業法の適用を受けず、共同住宅の住戸単位で比較的短期間の契約により賃貸を行うものは令別表第一(5)項ロとして扱われるが、リネンの提供等、明らかにホテル等と同等の宿泊形態をとるものにあっては(5)項イとして扱うべき場合もあること。(3)観光地等に存し住戸の多くが通年居住されず、宿泊の用に供される共同住宅(以下「リゾートマンション」という。)=(略)一の住戸に不特定の者が宿泊する形態をとるものにあっては(5)項イとして扱うべき場合もあること。
消防法施行令別表第一(五)=ロ 寄宿舎、下宿又は共同住宅/消防法第8条の2第1項=高層建築物(略)その他政令で定める防火対象物で、その管理について権原が分かれているもの(略)のうち消防長若しくは消防署長が指定するものの管理について権原を有する者は(略)統括防火管理者を(略)定め(略)なければならない。
言葉のイメージだけで判定してはいけません。
シルバーマンションは、入居形態が一般の共同住宅と変わらなければ(5)項ロのままですが、ケア付きで自力避難が難しい人の入居が中心なら(6)項ロに変わります。
ウイークリーマンションとリゾートマンションも同じ考え方で、住戸単位の賃貸なら(5)項ロ、ホテル同等の宿泊形態や不特定者の宿泊が中心なら(5)項イに変わります。
この指導指針が使えるのは、さらに主要構造部が
耐火構造であり、消防法第8条の2の
共同防火管理の対象にならない建物に限られる点も見落とせません。
うちは高齢者向けですが、普通のマンションと同じように暮らしている住人がほとんどです。
それでもシルバーマンション扱いになりますか。
入居形態が一般の共同住宅と変わらなければ(5)項ロのままで大丈夫です。
自力避難が難しい方の入居が中心になったときが分かれ目です。
防火管理者は誰がどう選任するのか
選任の主体は、所有の形によって変わります。
通知は区分所有と賃貸の2パターンに分けて示しました。
「一般的な共同住宅における防火管理体制の指導指針」(平成4年9月11日 消防予第187号)別添=2 防火管理者の選任について (1)区分所有された共同住宅の場合=区分所有者の総意に基づき防火管理者を選任すること。管理組合の存するものは、管理組合において選任することとなる。届け出はその代表者1名で足りるものとし、全員の連名による届け出は必要ないものとする。(2)賃貸用の共同住宅の場合=所有者が防火管理者を選任し、届け出るものとすること。公的な賃貸住宅についても同様とする。
所有の形が違えば、選ぶ手続きも変わります。
区分所有のマンションは
区分所有者の総意で選び、管理組合があればそこで決めれば足り、届出は代表者1名で構いません。
賃貸マンションはシンプルで、
所有者本人が選任し届け出るだけです。公営住宅などの公的な賃貸住宅も同じ扱いです。
シルバーマンション等の特殊な形態では、これに加えて
防火管理者の常駐が原則になり、常駐が難しいときは令第3条第1項第2号イ又はロに該当する代行者を置く必要があります。
うちの管理組合、まだ総会で防火管理者を決めたことがありません。
全員のハンコが要るんでしょうか。
いいえ、届出は代表者1名で足ります。
総会で総意として決めれば全員の連名は不要です。
管理会社に委託すれば安心といえるのか
管理を任せている分譲マンションでは、管理会社の従業員を防火管理者にできる場合があります。
ただし誰でもよいわけではなく、3つの要件がそろって初めて認められます。
「一般的な共同住宅における防火管理体制の指導指針」(平成4年9月11日 消防予第187号)別添=3 防火管理者を管理会社の従業員の中から選任することについて (1)(略)以下に掲げるすべての要件を満たす場合は、共同住宅の管理業務全般について受託している管理会社の従業員の中から(略)防火管理者として選任することとしても差し支えないものであること。①管理業務の委託契約等において実質的な防火管理業務全般についての権限が明確に規定されていること。②防火管理業務の実務を担当する者等に対して、防火、防災に関する知識、技能の向上を図るため(略)教育の担当者による教育を定期的に行うことのできる体制が確立されていること。③防火管理者として選任される従業員の勤務する管理会社の事務所の所在地について、防火管理者としての責務を果たすことが可能であると消防長(略)又は消防署長が認めるものであること。(2)複数の共同住宅について同一者を防火管理者として選任(重複選任)することについて=管理会社が複数の共同住宅の管理業務全般について受託している場合、防火管理者としての職務を遂行しうる範囲において、同一人を重複して防火管理者として選任することとしても差し支えないものであること。(3)③管理権原者の責任について=管理権原者は、管理会社の従業員を防火管理者として選任した場合においても、当然ながら、最終的な防火管理責任を免れないものであること。
3つの要件は、どれか1つでも欠けると成り立ちません。
契約書に
権限が明記されていること、教育担当者による定期的な教育の体制があること、事務所の所在地が消防署に認められることの3点セットです。
複数の共同住宅を受託している管理会社なら、
同一の従業員を複数の建物で重複して選任することも認められています。
ただし委託したからといって
管理権原者の最終的な防火管理責任は消えません。管理会社の従業員が的確に業務を行えるよう、要請等に対処する義務が残ります。
管理会社に委託した時点で、うちの責任はなくなると思っていました。
そこが誤解されやすい点で、最終的な責任は管理権原者に残ります。
委託後も要請には対応する必要があります。
明日から何を確認すればよいのか
選任の話が済んだら、次は実際の業務の中身です。
共用部分中心か、専用部分まで踏み込むかで役割が分かれます。
「一般的な共同住宅における防火管理体制の指導指針」(平成4年9月11日 消防予第187号)別添=4 共同住宅において防火管理者が実施する防火管理業務について(略)(1)消防計画の作成=共同住宅等の全体にわたる消防用設備等の点検及び整備、避難施設等の維持管理、消防機関との連絡等を中心に当該共同住宅において特に必要と認められる事項を定めることで足りるものとし(略)(2)消火、通報及び避難の訓練(略)(3)火気の使用又は取扱いに関する監督=防火管理者は、共用室・共用部分について火気の使用又は取扱いに関する監督を行うこと。各住戸内の火気の使用又は取扱いについては、それぞれの居住者の責任において実施するものとし(略)
防火管理者の業務は、共用部分が中心です。
消防計画は共用部分の消防用設備等の点検・整備や避難施設の維持管理を中心に定めれば足り、各住戸内の火気管理までは防火管理者が直接担いません。
ただし各住戸の火気管理は
居住者本人の責任であることを周知徹底する役割は、防火管理者に残ります。
シルバーマンション等の特殊な形態では、これに加えて
パンフレットの各室備え付けや避難経路図の掲示など、情報伝達と避難誘導を厚くする業務が追加されます。まずは自分の建物の消防計画がこの区分に沿っているかを見直してください。
各部屋の中の火の始末まで、防火管理者が見回らないといけないと思っていました。
そこは各居住者の責任です。
防火管理者の役目は、その周知徹底までです。
よくある質問
Qシルバーマンションはどんな基準で判定されますか?
A回答は、入居形態が一般の共同住宅と変わらなければ令別表第一(5)項ロのままですが、ケア付きで自力避難困難者の入居を主としている場合は(6)項ロとして扱うべき場合があるとしています。名称ではなく実態で判定されます。
Q賃貸マンションでも管理組合が防火管理者を選ぶのですか?
A回答は、賃貸用の共同住宅は所有者が防火管理者を選任し届け出るものとしています。管理組合の総意が必要になるのは区分所有された共同住宅の場合です。
Q管理会社の従業員を防火管理者にすれば管理権原者は責任を負わなくてよいですか?
A回答は、管理会社の従業員を防火管理者として選任した場合でも、管理権原者は最終的な防火管理責任を免れないとしています。防火管理者からの要請等には的確に対処する必要があります。
Qシルバーマンションでも防火管理者を管理会社の従業員以外から選べますか?
A回答は、特殊な形態の共同住宅では防火管理者の常駐を原則としつつ、常駐が難しい場合は令第3条第1項第2号イ又はロに該当する者を代行者として置くことを認めています。管理会社の従業員に限定されるものではありません。
まとめ
✔消防庁は平成4年の消防予187号で一般的な共同住宅、平成6年の消防予271号でシルバーマンション等の特殊な形態の共同住宅の防火管理体制を示しました
✔シルバーマンション・ウイークリーマンション・リゾートマンションは名称ではなく入居や利用の実態で(5)項ロか(6)項ロ・イかが決まります
✔区分所有の共同住宅は区分所有者の総意、賃貸用の共同住宅は所有者が防火管理者を選任します
✔管理会社の従業員を防火管理者にするには委託契約への権限明記など3つの要件をすべて満たす必要があります
✔管理会社に委託しても管理権原者は最終的な防火管理責任を免れません
✔特殊な形態の共同住宅は防火管理者の常駐が原則で代行者も資格者に限られます
✔防火管理業務は共用部分が中心ですが、専用部分の火気管理は居住者への周知徹底が防火管理者の役目です
マンションといっても、中身によって防火管理のルールがこんなに変わるとは思いませんでした。
そうなんです、まずは自分の建物がどの区分にあたるかを確認するところからです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
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この記事を書いた人
㈱防災屋Web編集部
元消防士、行政書士、高専卒など
防火管理者には「セルフ選任」と「プロ代行」の2択があることをもっと多くの方々に知ってもらい、世の中の防火管理レベルをもっと上げていきたい。
0にはできない火災リスクとの向き合い方を伝え、救える命を増やし、悲しみの総量を減らしたい。
後悔してからでは遅すぎる火災予防に、Webの力で取り組む㈱防災屋の編集部です。
監修・編集者
青木 俊輔
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
主な活動
参考・出典
- 「共同住宅における防火管理に関する運用について」(平成4年9月11日 消防予第187号 消防庁予防課長通知)
- 「共同住宅における防火管理に関する運用について」(平成6年10月19日 消防予第271号 消防庁予防課長通知)
- 消防法施行令別表第一(五)項ロ
- 消防法第8条の2
- 消防法施行令第3条第1項第1号・第2項
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。