高層ビルや大規模施設の防災センターには、様々な消防用設備等を一括で監視・操作できる総合操作盤が置かれています。
この盤は平成9年から令和5年にかけて、表示の細かさやソフトウェアの管理者、夜間の当直の要否まで、細かい運用上の疑問が消防庁に寄せられ続けてきました。
そこから読み取れるのは盤が監視する中身は細かく詰められている一方で、運用の負担は必要以上に広げないという考え方です。
うちの防災センターには総合操作盤がありますが、夜間は誰もいません。
これだけで消防法上は足りているのでしょうか。
総合操作盤そのものは夜間の当直を義務づける規定ではないと示されています。
ただしソフトウェアの管理者や遠隔監視の要件など、別の疑問がいくつも積み重なっています。
表示の細かさやソフトウェアの管理者まで、そんなに論点があるんですか。
はい。
順番に見ていきましょう。
- 加圧送水装置の電源断表示は電源が断となったときに表示すればよく、水槽の減水状態はおおむね2分の1以下で信号を発します
- スプリンクラー設備を設置すること自体を要しない部分は、設置されているものとしては扱えません
- 離れた建物を1か所で遠隔監視する場合は令第8条の区画が無い限り対象物全体を一の監視対象とします
- 総合操作盤のソフトウェア管理は第4類消防設備士の資格と7項目の研修で足りるとされました
- 総合操作盤があっても夜間の当直等を強制するものではないとされています
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目次
加圧送水装置の電源断や水槽の減水はどこまで細かく表示させるか

その運用の境目がいくつも照会されました。
(1)表示項目のうち「加圧送水装置の電源断の状態」は、電源が断となったときに表示を行えばよいものである。
(2)表示項目及び警報項目のうち(各種水槽の)「減水状態」が掲げられている場合には、当該水槽の水量がおおむね1/2以下となったときに信号を発する等の措置を講じる必要がある。
(3)誘導灯の操作項目のうち「手動消灯」は、「劇場、映画館等の誘導灯を消灯する場合の取扱いについて」(平成5年12月7日消防予第326号)第2、1ただし書きにより誘導灯の消灯を自動で行う方式とする場合にあっては、必要としないものとする。
電源断の表示は常時点灯させておく必要はなく、電源が切れた瞬間に出せば足ります。
減水の表示は満水を基準にするのではなく、水量がおおむね2分の1以下になった時点で信号を発する設計が前提です。
誘導灯の手動消灯は、平成5年の326号通知が示す自動消灯方式(劇場や映画館で客席の照明と連動させる方式)を採っている場合に限り、手動で消す操作自体を省いてよいとされました。
防災センターの当番の方は、水槽の減水警報が実際に2分の1付近で作動するか、点検のときに合わせて確認しておくと安心です。
減水表示が出てから慌てて水を足すのではなく、2分の1という数字を先に知っておけば余裕を持てますね。
そのとおりです。
点検報告書に減水表示の作動水位が書かれているか、次の機会に確認してみてください。
スプリンクラー設備が無い部分があっても監視場所は認められるか

建物には浴室や更衣室のようにヘッドを設けない部分も含まれるため、扱いが問われました。
(1)規則第13条第1項に掲げるスプリンクラー設備を設置することを要しない部分
(2)規則第13条第3項に掲げるスプリンクラーヘッドを設置することを要しない部分
(3)令第12条に定める技術上の基準により、開放型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備が設置されている部分
(4)令第12条に定める技術上の基準により、放水型ヘッド等を用いるスプリンクラー設備が設置されている部分
(5)令第13条から第18条までに定める技術上の基準により、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備が設置されている部分
(2)規則第13条第3項第11号及び第12号に掲げる部分を除き、お見込みのとおり。
(3)から(5)まで お見込みのとおり。
規則第13条第1項が定める「設置すること自体を要しない部分」は、条文上ヘッドどころかスプリンクラー設備そのものを想定していない場所なので、設置されているとはみなせません。
一方、規則第13条第3項の「ヘッドを設置することを要しない部分」(浴室や便所など一部の11号・12号を除く)はみなしの対象に含まれます。
開放型・放水型のヘッドや、水噴霧・泡・不活性ガス・ハロゲン化物・粉末といった代替の消火設備が入っている部分も同様にみなされます。
監視対象物を選ぶ担当者は、まず建物のどの部分がスプリンクラー設備を要しない設計なのかを図面で確認するところから始めてください。
同じ「ヘッドが無い部分」でも、理由によって扱いが違うのですね。
そのとおりです。
規則第13条の第1項なのか第3項なのか、根拠の項番号まで確認してください。
離れた建物を1か所で遠隔監視するときの条件は何か

その条件は通知で細かく定められました。
遠隔監視場所において監視、操作等を行う場合(第6関係)
遠隔監視対象物は、令第8条の規定による区画がなされている場合を除き、当該対象物全体を一の監視対象とすること。この場合において、一の遠隔監視対象物の監視等は、一の遠隔監視場所において行うこと。
監視対象物にはスプリンクラー設備が設置されていることとしているが、規則13条3項に掲げるスプリンクラーヘッドを設置することを要しない部分(同項11号及び12号に掲げる部分を除く。)、令12条に定める開放型・放水型ヘッド等を用いるスプリンクラー設備が設置されている部分、令13条から18条までに定める水噴霧消火設備等が設置されている部分は、スプリンクラー設備が設置されているものとして取り扱って差し支えない。
遠隔監視場所の要員は、監視対象物に設置される総合操作盤における監視、操作等に習熟していることが必要であり、規則3条8項に規定する防災センター要員の講習を受けた者を従事させることが必要であること。
監視対象物の防災監視場所には、一定時間以内に遠隔監視場所の要員が到着できることが必要とされる。
令第8条の防火上有効な区画がされている場合を除き、遠隔監視対象物は建物全体で一つの監視対象として扱われ、それを見る遠隔監視場所も一つに絞られます。
つまり同じ建物の一部だけを別々の遠隔監視場所に振り分けることは想定されていません。
要員についても、総合操作盤の操作に習熟し防災センター要員講習を受けた者を置くことが求められ、監視対象物側には一定時間以内に要員が駆けつけられる体制が必要です。
複数の建物を一つの拠点でまとめて見る計画を立てるときは、令第8条の区画の有無を最初に確認してください。
建物の一部屋だけを遠隔で見る、という切り分け方はできないのですね。
できません。
令第8条の区画が無い限り、建物全体をひとまとまりとして考えてください。
総合操作盤のソフトウェアは誰が管理してよいか

その入力や変更を誰に任せてよいかが問われました。
第4類消防設備士免状(甲種又は乙種)保有者で次の内容の研修を受講した者
(1)ソフトウェアの重要性と自主管理制度の仕組み (2)担当技術者の役割と責務 (3)ソフトウェアを有する総合操作盤等の周辺装置・システムに関する知識 (4)ソフトウェアの構成と個別ソフトウェアの取り扱いに関する実務 (5)個別ソフトウェア仕様の技術調整に必要な知識 (6)総合操作盤等の工事、整備及び点検に関する知識 (7)研修後の効果測定
土台になるのは第4類消防設備士(甲種または乙種)の免状で、自動火災報知設備を中心とした知識を前提にしています。
そのうえで、ソフトウェアの重要性から工事・整備・点検の知識まで7項目を含む研修を受け、最後に効果測定まで行った者であれば、告示が求める「精通した技術者」の要件を満たすとされました。
建物の関係者としては、ソフトウェアの入力や変更を依頼する業者に、担当者が第4類消防設備士の免状とこの研修修了を持っているかを確認しておくとよいでしょう。
免状だけでなく、研修を修了しているかまで確認する必要があるのですね。
そのとおりです。
ソフトウェアの改修工事のときは、この二つを合わせて業者に確認してください。
総合操作盤があれば夜間の当直はいらないのか

総合操作盤についても同じ考え方でよいかが、令和になってから改めて問われました。
総合操作盤について、消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条第1項第8号は、夜間における当直等を強制するものではないと解してよいか。
総合操作盤の設置根拠である規則第12条第1項第8号は、防災センター等に盤を設けることを求めていますが、そこに常に人を配置し続けることまでは書かれていません。
昭和45年の227号通知が自動火災報知設備の受信機について示した考え方を、令和5年になって総合操作盤にもそのまま当てはめたのがこの回答です。
ただし当直が不要という結論は、防火管理体制そのものが不要という意味ではありません。
夜間の体制は防火対象物の規模や用途、自衛消防組織の編成によって別途求められることがあるため、消防計画で夜間の対応を定めているかを合わせて確認してください。
盤の設置義務と、夜間に人を置く義務は別ものということですね。
そのとおりです。
夜間の体制は消防計画のほうで定めているかを、防火管理者に確認してみてください。
よくある質問
まとめ
総合操作盤まわりで積み重なった疑問が整理できました。
まずは消防計画で夜間の体制がどう定められているか見直してみます。
盤の設置義務と夜間の当直義務は別のものと考えるのが基本です。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 操作盤の表示項目及び警報項目、操作項目について(平成10年5月1日事務連絡)
- 監視対象物においてスプリンクラー設備が設置されているものとして扱ってよい部分について(平成10年5月1日事務連絡)
- 総合操作盤の基準及び設置方法に係る運用について(通知)(平成16年5月31日消防予第93号)
- 総合操作盤について(平成16年12月24日消防予第258号)
- 総合操作盤について(令和5年3月30日消防予第213号)
- 消防法施行規則第12条第1項第8号
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は各通知が発出された当時のもので、通知番号や機関の名称等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。




