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ラック式倉庫の火災はなぜ消火が難しいのか|出火防止から自主点検まで防火安全対策ガイドラインを解説

天井近くまでパレットラックが並ぶ物流倉庫の内部通路

「ラック式倉庫」と聞いて、天井近くまで積み上げられた棚と自動搬送装置を思い浮かべる方は多いかもしれません。
物流の効率化に優れた構造である一方、いったん火災が起きると煙突効果で燃え広がりが速く、消火活動も難しいという弱点を抱えています。
消防庁は実際に起きた倉庫火災を教訓に、スプリンクラー設備の技術基準とは別に防火安全対策ガイドラインをまとめました。
この記事では、ガイドラインが求める出火防止対策と、設置義務がない倉庫でも押さえておきたいポイントを解説します。

うちの倉庫、天井近くまで棚を積んでいるので、火災のときが心配です。

ラック式倉庫は煙突効果で燃え広がりが速く消火が難しいという弱点があります。
だからこそ専用のガイドラインが定められています。

うちの倉庫にスプリンクラー設備の義務があるかどうかも分かっていません。

天井の高さと延べ面積で決まります。
義務がない場合でも自主的な対策が求められているので、順に見ていきましょう。

この記事の結論
  • ガイドラインは平成7年11月に埼玉県の製缶工場で起きたラック式倉庫火災を教訓に策定された
  • スプリンクラー設備の設置義務は天井の高さが10メートルを超え延べ面積が700平方メートル以上のラック式倉庫に生じる
  • ガイドラインの中身は出火防止対策延焼拡大防止対策の2本柱で構成される
  • 設置義務がない倉庫にもガイドラインを参考にした自主的な対策が求められている
  • 実務では倉庫の天井高さと延べ面積の実測から確認を始めるのが近道である

ラック式倉庫を守る二本柱|規模で判定・出火防止・延焼防止・日常点検の4ステップと義務がなくても自主点検をという結論を示す図解

ラック式倉庫の防火安全対策ガイドラインはなぜ作られたのか

天井近くまでラックを積み上げたラック式倉庫の内部と自動搬送装置のイラスト

ラック式倉庫は、物流の効率化を背景に設置数が増えてきました。
一方でその構造ゆえに、火災のときの危険性は他の倉庫と一線を画します。

「ラック式倉庫の防火安全対策ガイドラインについて」(平成10年7月24日 消防予第119号 消防庁予防課長) 平成7年11月に埼玉県の製缶工場で発生したラック式倉庫の火災を踏まえ、消防庁では、学識経験者、消防関係者等から構成される「ラック式倉庫のスプリンクラー設備あり方検討委員会」を設置してラック式倉庫におけるスプリンクラー設備に係る技術基準のあり方について検討を行い、平成9年4月にその検討結果がとりまとめられた。(略)今般、検討委員会における検討結果等を踏まえ、ラック式倉庫に係るなお一層の防火安全対策の充実を図るため、「ラック式倉庫の防火安全対策ガイドライン」を別添のとおりとりまとめた。

背景にあるのは実際に起きた火災です。
床を設けずラック等を天井付近まで組み、物品を集積・搬送するラック式倉庫は、火災時に煙突効果で燃焼速度が非常に速くなり、天井が高いために屋内消火栓では届かず、消防活動そのものが難しいという弱点を抱えています。
そこで消防庁は技術基準の整備にとどまらず、出火を防ぐ段階からの対策までを一冊のガイドラインにまとめました。
「設備さえ付ければ安心」ではなく、日々の管理も含めた総合的な対策が最初から想定されていたわけです。

うちの倉庫もラック等を高く積んでいますが、火災のことは意識していませんでした。

まずは天井の高さと延べ面積で、義務の有無を確認しましょう。

スプリンクラー設備の設置義務があるラック式倉庫はどこからか

倉庫の天井の高さと床面積をメジャーで測るイラスト

義務の有無を分けるのは、建物の用途ではなく規模です。
基準を超えるかどうかで、その先の対応がまったく変わります。

消防法施行令(昭和36年政令第37号)第12条第1項第5号 別表第一(14)項に掲げる防火対象物のうち、天井(天井のない場合にあつては、屋根の下面)の高さが10メートルを超え、かつ、延べ面積が700平方メートル以上のラック式倉庫(棚又はこれに類するものを設け、昇降機により収納物の搬送を行う装置を備えた倉庫をいう。)

基準は天井高10メートル超・延べ面積700平方メートル以上のかけ合わせで判定します。
どちらか一方だけ超えていても義務は生じません。
この規模に達すると、令第12条第1項第5号によりスプリンクラー設備の設置が法的義務になり、ラック等を設けた部分の配置間隔まで細かく定めた専用の技術基準(施行規則第13条の5)が適用されます。
なおガイドライン発出当時の号数は第4号でしたが、これは後の政令改正で号が繰り下がっただけで、基準となる数値そのものは現在も変わっていません。
自社の倉庫がこの規模に該当するかどうかは、図面ではなく実測で確かめるのが確実です。

うちの倉庫は天井が8メートルほどなので、義務の対象ではなさそうです。

義務がなくても、ガイドラインが求める対策は別にあります。
次で見ていきましょう。

ガイドラインは出火防止と延焼拡大防止になにを求めているのか

電気設備の点検と倉庫内を巡回点検するイラスト

ガイドラインの柱は大きく2つです。
どちらも設備ではなく、日々の運用に関わる対策です。

「ラック式倉庫の防火安全対策ガイドライン」第2 出火原因としては、①内部からの出火及び②外部から持ち込まれる火源の二つが考えられるが、これらを防止する対策が特に重要となる。(略)火災の発生を未然に防止するとともに、万一出火しても本格的な火災にまで拡大させないための対策として、内部からの出火防止、外部からの火源の持ち込み防止、管理上の対策、延焼拡大防止対策及び防災体制の充実を掲げる。

中身は出火防止対策延焼拡大防止対策の2本柱です。
出火防止では、出火しにくい設備・機器の選定や電気設備の安全制御に加え、無人搬入時の火災感知手段の整備、倉庫内の巡回監視や入出庫管理といった管理面の対策まで求めています。
延焼拡大防止では、ラック等の設置部分と他部分との防火区画、倉庫周囲への防火塀や空地の確保に加え、可搬消防ポンプなど自衛防災資機材を備えた防災体制の整備までが対象です。
設備の基準だけを満たして終わりにせず、日常の管理体制まで含めて初めてガイドラインの狙いを満たします。

対策の範囲がかなり広いんですね。

設備と管理の両輪です。
次は義務がない倉庫の扱いを見てみましょう。

設置義務がない小規模なラック式倉庫はなにもしなくてよいのか

防火区画の壁と可搬消防ポンプによる延焼拡大防止のイラスト

ここが最も誤解されやすい点です。
義務がないことと、危険性が低いことはイコールではありません。

既存のラック式倉庫及び消防法施行令第12条第1項第5号(策定当時は第4号)に規定する規模に達しないラック式倉庫については、改正後のスプリンクラー設備の設置及び維持に関する技術上の基準に適合させる法的義務は存しないものであり、スプリンクラー設備の整備等はラック式倉庫の関係者の自主的な判断により実施されるべきものであるが、その際にはガイドライン第2に掲げる防火安全対策を参考にされたい。

つまり法令上の義務がなくても、対策そのものは免除されていません。
ラック式倉庫は規模にかかわらず、床を設けずラック等を天井付近まで積み上げる構造そのものが煙突効果を生み、消火活動を難しくします。
「うちは基準未満だから何もしなくてよい」と考えるのではなく、出火防止対策と延焼拡大防止対策を自主点検する対象として扱う必要があります。
特に、あらかじめ警防計画等を作成しておくことが望ましいとガイドライン本文でも触れられている点は見落とされがちです。

義務がないから安心、というわけではないんですね。

規模にかかわらず、構造そのものにリスクがあります。
自主点検のつもりで確認してください。

明日からなにを確認すればよいのか

防火管理者が消防計画に点検結果を書き込むイラスト

最後に、実際にやることを整理します。
規模の確認から始めれば、必要な対応が見えてきます。

ラック式倉庫について、設置に係る事前相談等がなされた場合にあつては、次の事項に留意して対応すること。(略)ラック式倉庫において火災が発生した場合には、消火活動に困難が伴うことが考えられることから、当該ラック式倉庫の実態等を把握するとともに、あらかじめ警防計画等を作成しておくことが望ましいものであること。

まず倉庫の天井の高さと延べ面積を実測し、令第12条第1項第5号の基準に該当するか確認してください。
該当する場合は、ラック等の配置間隔や水平遮へい板の設置状況が施行規則第13条の5の基準に適合しているかを点検します。
該当しない場合でも、出火防止対策と延焼拡大防止対策をガイドライン第2に沿って自主点検し、所轄消防署へ倉庫の実態を伝えておくと安心です。
規模に関わらず、消防計画や警防計画への記載を通じて、日常の管理体制に落とし込むところまでが実務の到達点です。

まずは天井の高さを測るところから始めます。

それが一番確実な第一歩です。
点検の結果は消防計画にも反映しておきましょう。

よくある質問

Q天井の高さはどこから測ればよいですか?
A天井がない場合は屋根の下面までの高さで判定します。ラック等の最上段ではなく、建物としての天井(または屋根裏面)までの高さで700平方メートル以上・10メートル超の両方を満たすかどうかを確認してください。
Q延べ面積が基準未満なら点検も不要ですか?
A法令上の設置義務は生じませんが、ガイドラインは規模に関わらず出火防止対策と延焼拡大防止対策を関係者の自主的な判断で実施するよう求めています。義務がないことは、対策が不要という意味ではありません。
Q既存のラック式倉庫にも技術基準は遡って適用されますか?
Aガイドライン本文では、既存のラック式倉庫や基準未達の倉庫について、改正後の技術基準に適合させる法的義務はないとされています。ただし自主的な対策の対象になる点は同じです。
Q水平遮へい板とはどのような設備ですか?
Aラック等を設けた部分の内部を水平方向に区切る板で、火災が上下方向へ広がるのを防ぐための設備です。詳しい設置間隔は等級区分や配置基準によって定められています。

まとめ

ガイドラインは平成7年11月の製缶工場火災を教訓に平成10年に策定された
スプリンクラー設備の設置義務は天井高10メートル超・延べ面積700平方メートル以上のラック式倉庫に生じる
根拠は消防法施行令第12条第1項第5号施行規則第13条の5である
対策は出火防止対策延焼拡大防止対策の2本柱で構成される
基準未満の倉庫にもガイドラインを参考にした自主的な対策が求められている
ラック式倉庫は規模にかかわらず煙突効果による消火活動の困難性を抱える
実務は天井高さと延べ面積の実測から始めるのが確実である

天井の高さを測るところから始めます。
対策の順番がよく分かりました。

それが一番の近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「ラック式倉庫の防火安全対策ガイドラインについて」(平成10年7月24日 消防予第119号 消防庁予防課長)
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第12条第1項第5号
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第13条の5

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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