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圧縮天然ガスを併設する給油取扱所はなぜ漏れを止める装置が必要なのか|配置による分離と一斉停止装置を解説

圧縮天然ガスを併設する給油取扱所はなぜ漏れを止める装置が必要なのかを解説する記事のアイキャッチ画像

給油取扱所の中には、ガソリンの計量機のすぐそばに圧縮天然ガス(CNG)を車に充塡する設備を併設しているところが増えてきました。
性質の違う危険物とガスを同じ敷地で扱うことになるため、消防法令にはこの組み合わせに専用の安全対策が定められています。
実は転倒したときの備えだけでは、この対策を満たしたことになりません。
今回は、ガソリンの漏れをガス側に近づけないための仕組みを解説します

うちのスタンドにもCNGの設備を併設する話が出ているんですが。
ガソリンと一緒に置いても大丈夫なんでしょうか?

配置と設備の両方に基準があります。
順番に見ていきましょう。

転倒したときの対策さえしておけば十分ですか?

いいえ、それとは別に配置そのものを分ける対策も必要なんですよ。

この記事の結論
  • 圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所では、ガソリン等の漏れがガス側に届かないよう配置を分ける対策が義務付けられています
  • 根拠は危険物の規制に関する規則第27条の3第8項第2号です。
  • 転倒時の漏えい拡散防止措置(第1号)と配置分離(第2号)は別々に満たす必要があります
  • 給油取扱所内の全ての固定給油設備・固定注油設備を止める一斉停止装置の設置も義務です。
  • この指針は平成29年に改正されており、現行の規則と整合していることを確認済みです

ガソリンの漏れをガスに近づけないための流れを示した図解

圧縮天然ガスを併設する給油取扱所はなぜ指針が必要になったのか

ガソリンの計量機と圧縮天然ガスの充塡設備を並べて設置した給油所のイラスト
天然ガス自動車の普及とともに、ガソリンスタンドの中にも圧縮天然ガス(CNG)を充塡できる設備を併設するところが出てきました。
性質の異なる危険物とガスを同じ敷地に置くことになるため、専用の技術基準が必要になりました。
圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所の技術上の基準に係る運用上の指針について(平成10年3月11日消防危第22号消防庁危険物保安室長、改正:平成29年1月消防危第31号) 危険物の規制に関する政令第17条第3項第4号並びに危険物の規制に関する規則第27条の3及び第27条の4に基づく圧縮天然ガス又は液化石油ガスを内燃機関の燃料として用いる自動車等に当該ガスを充塡するための設備を設ける給油取扱所の技術上の基準については、下記のとおり運用上の指針を定めることとした
ガソリンとCNGは、漏れたときの性質がまったく違います
ガソリンは液体で低い場所にたまりやすく、CNGは気体の自動車燃料として使われる圧縮天然ガスです。
同じ敷地でこの2つを扱うと、ガソリンの漏れがCNGの充塡設備側に流れ着く可能性が生まれます。
そこで消防庁は、位置・構造・設備の基準を運用面から具体化するため、この指針を示しました。
指針は平成29年にも改正されており、現在も生きている基準です。

ガソリンとガスを同じ場所に置くのは、ちょっと怖い気もします。

配置と設備、両方の基準を満たせば安全に運用できますよ。

どんな給油取扱所のどんな設備が対象になるのか

ガソリンの給油区画と圧縮天然ガススタンドの区画を分けたイラスト
対象になるのは、ガソリン等の固定給油設備とCNGの設備を同じ敷地に持つ給油取扱所です。
まずは条文で範囲を確認します。
危険物の規制に関する政令第17条第3項第4号 圧縮天然ガスその他の総務省令で定めるガスを内燃機関の燃料として用いる自動車等に当該ガスを充てんするための設備を設ける給油取扱所(第六号に掲げるものを除く。)
対象は圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所と呼ばれる形態です
ガソリン等の固定給油設備に加えて、CNGスタンドの圧縮機・貯蔵設備・ディスペンサー・ガス配管を同一敷地内に設ける給油取扱所を指します。
液化石油ガス(LPG)を充塡する設備を併設する場合も、同じ枠組みで扱われます。
ホース機器の周囲にある給油空地に、CNGのディスペンサー及びガス配管まで置く場合は、危険物の規制に関する規則第27条の3第8項の基準が上乗せでかかります。
この号に当たるかどうかは、敷地図でガソリンとガスの設備の位置関係を確認すればわかります。

うちは給油機とCNGのディスペンサーが同じ空地の中にあります。
これも対象になりますか?

はい、その配置なら第27条の3第8項の基準がそのままかかります。

規則が求める3つの安全対策とは何か

給油ホースの安全継手と緊急停止スイッチを並べたイラスト
ここからが本題です。
規則第27条の3第8項は、大きく分けて3つの対策を求めています。
危険物の規制に関する規則第27条の3第8項第2号 固定給油設備又は給油中の自動車等から漏れたガソリン、メタノール等又はエタノール等が、当該給油空地内の圧縮天然ガスを充塡するために自動車等が停車する場所、圧縮天然ガススタンドのディスペンサー及びガス配管が設置されている部分に達することを防止するための措置を講ずること
圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所の技術上の基準に係る運用上の指針について 当該措置の例として、給油空地に傾斜を付けるとともに、当該傾斜に応じ圧縮天然ガス充填場所等を適切に配置すること等により、ガソリン等の漏えいが想定される範囲と圧縮天然ガス充填場所等とが重複しないようにする方法がある
1つ目は給油ノズルの安全装置、2つ目は配置による分離、3つ目は一斉停止装置です
第1号は、給油ホースの手動開閉装置や自動停止機能、転倒したときの漏えい拡散防止など、ガソリン側の設備そのものを対象にしています。
第2号は、漏れたガソリン等がCNGの充塡場所に届かないようにする配置の対策で、給油空地の傾斜を利用して漏えい想定範囲とガス側の場所が重ならないようにする方法が示されています。
第3号は、火災その他の災害のときに給油取扱所内の全ての固定給油設備・固定注油設備を止められる一斉停止装置です。
3つとも独立した基準なので、どれか1つを満たしただけで済ませることはできません。

対策は1つだけかと思ってました。
3つも基準があるんですね。

はい、それぞれ別の号で定められているので、まとめて確認する必要があります。

転倒対策だけでは何を見落とすのか

仕切りのない配置と仕切りのある配置を比べたイラスト
現場でとくに見落とされやすいのが、この配置分離の対策です。
転倒対策だけを整えて安心してしまうケースがあります。
圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所の技術上の基準に係る運用上の指針について 火災その他の災害に際し速やかに操作することができる箇所とは、給油空地等に所在する従業員等においても速やかに操作することができる箇所をいうものであり、給油取扱所の事務所の給油空地に面する外壁等が想定されるものであること。
見落としやすいのは、対策どうしが別物だという点です
給油ノズルの自動停止や転倒時の漏えい防止(第1号)を整えても、それは配置による分離(第2号)を満たしたことにはなりません。
また一斉停止装置(第3号)は、ただ設置すればよいわけではなく、給油空地にいる従業員等が速やかに操作できる場所に置く必要があります。
事務所の給油空地に面した外壁など、とっさに手が届く位置かどうかを確認してください。
3つの対策を1つにまとめて考えてしまうと、いずれかが抜け落ちたまま運用してしまう危険があります。

停止スイッチは付いているんですが、事務所の裏側に付けてしまっています。

それだと速やかに操作できないおそれがあります。
給油空地に面した位置への付け替えをおすすめします。

明日から何を確認すればよいのか

緊急停止スイッチを指差し確認する作業着姿の人物のイラスト
最後に、現場でできる確認の手順を整理します。
むずかしい判断はここまでの内容で足ります。
圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所の技術上の基準に係る運用上の指針について 平成10年3月11日消防危第22号(消防庁危険物保安室長) 改正 平成29年1月消防危第31号
確認は敷地図を広げるところから始めます
ガソリン等の固定給油設備からの漏えい想定範囲と、CNGの充塡場所等の範囲が重なっていないか図面で確認してください。
重なりそうな場合は、給油空地の傾斜や排水溝の配置を見直す必要があります。
あわせて一斉停止装置が給油空地に面した操作しやすい位置にあるかも点検してください。
判断に迷う場合は、自己判断せず所轄の消防署へ相談することをおすすめします。

敷地図を見直してみます。
重なっていたらどうすればいいですか?

給油空地の傾斜や設備の配置を変える工事が必要になります。
まずは所轄の消防署に相談してみましょう。

よくある質問

Q圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所とはどんな施設ですか?
Aガソリン等の固定給油設備に加えて、圧縮天然ガス(CNG)や液化石油ガス(LPG)を自動車に充塡する設備を同じ敷地内に設ける給油取扱所のことです。
Q転倒時の漏えい防止措置と配置による分離は、どちらか一方でよいですか?
Aいいえ、危険物の規制に関する規則第27条の3第8項の第1号と第2号はそれぞれ別の措置として求められているため、両方を満たす必要があります。
Q一斉停止装置はどこに設置すればよいですか?
A火災その他の災害の際に給油空地にいる従業員等が速やかに操作できる場所とされており、給油取扱所の事務所の給油空地に面する外壁等が想定されています。
Qこの指針は今も有効ですか?
A平成10年に示された指針ですが、平成29年に改正されており、現行の危険物の規制に関する規則と整合していることを確認しています。

まとめ

圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所は、ガソリン等とCNG等を同じ敷地で扱う給油取扱所です
根拠は危険物の規制に関する規則第27条の3第8項です。
第1号は給油ノズルの安全装置や転倒時の漏えい拡散防止措置を定めています。
第2号は、漏れたガソリン等がCNGの充塡場所に届かないようにする配置の分離を求めています。
第3号の一斉停止装置は、給油空地に面した速やかに操作できる場所に設置します
3つの対策はそれぞれ独立しており、どれか1つでは足りません。
判断に迷う場合は自己判断せず、所轄の消防署に確認することが確実です

敷地図をもう一度見直してみます!
配置の分離、大事なんですね。

ご不明な点があれば、いつでもお尋ねください。
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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所の技術上の基準に係る運用上の指針について(平成10年3月11日消防危第22号消防庁危険物保安室長、改正:平成29年1月消防危第31号)
  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第17条第3項第4号
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第27条の3第8項
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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