11階建て以上のオフィスビルや共同住宅で、10階までは天井にスプリンクラーヘッドが無いのに、11階だけ天井にヘッドが並んでいることに気づいた方は少なくありません。
これは工事の抜けや設計ミスではなく、消防法施行令が階数だけで区切っているためです。
用途がオフィスでも共同住宅でも、10階以下でどう判定されていたかにはかかわりません。
この記事では11階から上だけ一律に設置義務が生じる仕組みを条文だけで確かめます。
うちのビルは11階建てなのですが、11階だけ天井にヘッドがあるのはなぜですか。
消防法施行令第12条第1項第12号が、11階以上の階を階数だけで区切っているからです。
用途を問わず、前の号に当てはまらない建物ならこの号がかかります。
うちはオフィスビルですが、それでも同じ扱いになるのでしょうか。
はい、用途を問いません。
共同住宅でも工場でも、11階建て以上なら11階から上は同じ号がかかります。
- 11階建て以上のビルは、11階から上の階に一律でスプリンクラー設備の設置義務が生じます
- 根拠は消防法施行令第12条第1項第12号です
- 第12号は前の号(第1号から第11号)に当てはまらない建物だけを拾う受け皿の規定です
- 用途を問わず階数だけで判断される点が、10階以下の号と大きく違います
- 耐火構造で区画すれば設置義務が外れる部分もあります

目次
11階建て以上のビルはなぜ上の階だけスプリンクラーが要るのか

そのうち最後に置かれた号だけが、用途を指定せず階数だけで区切っています。
【同項第12号】前各号に掲げる防火対象物又はその部分以外の別表第一に掲げる防火対象物の十一階以上の階(総務省令で定める部分を除く。)
第1号から第11号までは、劇場や病院や工場といった用途や、建物全体の床面積・階数を条件にしています。
第12号だけは、それらのどれにも当てはまらない建物であっても、十一階以上の階という条件だけで対象になります。
つまり最初にどの用途かを見るのではなく、まず建物の高さを見る号だということです。
用途を見るのではなく、まず高さを見るということですね。
そのとおりです。
図面を開いたら、まず地階を除く階数が十一階以上あるかを確認してください。
10階以下とは対象になる条件がどう違うのか

その代表が第3号で、第12号とはここが違います。
劇場や病院や複合用途ビルなど、条文が名指しした用途でなければ第3号は当てはまりません。
一方の第12号は、第3号を含む第1号から第11号までのどれにも当てはまらない建物のうち、十一階以上の階だけを対象にします。
オフィスビルや事務所は第3号の用途に含まれていないので、11階建てのオフィスビルは第12号の対象になります。
用途が第3号に入っていなければ、第12号のほうを見ればよいのですね。
はい、第1号から第11号のどれにも当てはまらなければ、十一階以上の階すべてが第12号の対象です。
11階以上でも設置義務が外れる部分はあるのか

無条件に見える号にも、除かれる部分が用意されています。
一 耐火構造の壁及び床で区画された部分で、次に該当するもの(略)
区画の中身は、開口部の面積や防火戸の構造まで細かく条件が決まっており、既存記事「耐火構造で区画した部屋にスプリンクラーヘッドは要らないのか」で詳しく解説しています。
ここで押さえておきたいのは、区画さえすれば自動的に外れるのではなく、特定主要構造部が耐火構造であることが前提になっている点です。
木造や一部が耐火構造でない建物では、この除外規定そのものが使えません。
区画さえ作れば、うちのビルでも外せる部分があるということでしょうか。
特定主要構造部が耐火構造であることが前提です。
該当するかどうかは図面を持って所轄消防署に確認してください。
実務で見落としやすいのはどこか

第12号は「前各号に当てはまらない」ことが条件なので、増築後に第3号や第4号など他の号が新たに当てはまるかどうかを先に確認しなければなりません。
階数だけを見て「11階建てになったから第12号」と決めつけると、本来は別の号が優先して適用される用途を見落とすことがあります。
用途変更で第1号から第11号のどれかに当てはまるようになった場合も、判定をやり直す必要があります。
増築して11階建てになったら、それだけで第12号が決まるわけではないのですね。
はい。
先に第1号から第11号のどれかに当てはまらないかを確認するのが順番です。
明日からなにを確認すればよいのか

まず建物の階数を数え、次に用途を照らし合わせるのが正しい順番です。
- 図面で地階を除く階数を数え、十一階以上かどうかを確認する
- 建物の用途が第1号から第11号のいずれかに当てはまらないかを先に確認する
- 当てはまる号が無ければ、十一階以上の各階すべてが第12号の対象になる
- 耐火構造で区画された部屋があれば、その区画が規則第13条第2項の条件を満たすか所轄消防署に確認する
まず階数を数えて、それから用途を確認すればよいのですね。
階数と用途の両方を確認するのが確実です。
不明な点は所轄消防署へご相談ください。
よくある質問
まとめ
これで11階から上だけ扱いが変わる理由がすっきりしました!
階数と用途の両方を確認するのが確実です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第12条第1項(スプリンクラー設備を設置する防火対象物)
- 消防法施行令第12条第1項第3号・第12号
- 消防法施行規則第13条第2項(総務省令で定める部分=区画の要件)
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。




