BLOG

卸売専業店舗はなぜスプリンクラー設備の免除を受けられることがあるのか|消防法施行令第32条と代替対策の条件を解説

卸売専業店舗はなぜ免除の対象になるのか

百貨店やスーパーなどの物品販売店舗には、延べ面積などに応じてスプリンクラー設備の設置が義務づけられています。
ところが、同じ(4)項に区分される店舗の中でも、卸売専業店舗だけはこの基準どおりに設置しなくても済む場合があります。
これは消防法施行令第32条が消防長・消防署長に認める裁量と、その運用を具体化した消防庁の通知によるものです。
この記事では、免除の対象になる店舗の条件と、免除された後も必要になる代替対策を、条文にもとづいて解説します。

うちは卸売中心の店で、一般のお客さんへの販売はしていません。
それでもスプリンクラーは必要なんでしょうか。

取扱う商品や利用者が限られた卸売専業店舗なら、免除される場合があります。

免除されるなら、設置しなくてもそのままで大丈夫ということですか。

いいえ、代わりの対策が必要です。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 令別表第一(4)項の物品販売店舗のうち、卸売専業店舗だけがスプリンクラー設備の設置基準について特例の対象になります
  • 対象になるのは、利用者が卸売業者など特定の者に限られ、一般消費者向けの販売を兼ねない店舗だけです
  • この特例は消防法施行令第32条の裁量規定を、消防庁の通知が具体化したものです
  • 免除は区画や避難経路などの代替対策を講じることが前提で、無条件に設置義務が消えるわけではありません
  • スプリンクラー設備以外の消火器・自動火災報知設備・避難器具などの義務は、免除の対象外としてそのまま残ります

一般の物品販売店舗はスプリンクラー設置が必要だが卸売専業店舗は区画避難経路防火戸消火器増強の代替対策で免除される仕組みを示す図解

なぜ物品販売店舗だけ設置の免除に個別の基準があるのか

倉庫状の店舗建物から消防署の建物へ矢印がつながり消防署の上に判断を示す天秤のアイコンが浮かぶイラスト
百貨店やスーパーには、延べ面積などで決まるスプリンクラー設備の設置基準があります。
ところが、卸売専業店舗だけは、この基準どおりに設置しなくても済むことがあります。
この節の規定は、消防用設備等について、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、この節の規定による消防用設備等の基準によらなくとも、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ、火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるときにおいては、適用しない。(消防法施行令第32条)
個別の事情を見てから判断する、という条文です。
令第32条は消防長や消防署長に、基準どおりでなくても安全を確保できると認めたときは適用しない、という裁量を与えています。
ただし条文自体は「著しく少ない」としか書いておらず、どの建物にどの基準で運用するかまでは決まっていません。
そこを埋めるのが、消防庁が発する通知です。
卸売専業店舗のスプリンクラー設備には、この令第32条を適用するための具体的な運用基準を定めた通知があります。

「著しく少ない」だけでは、実際どう判断されるのか分かりませんね。

はい、そこを埋めるのが消防庁の通知です。
次で具体的に見ていきます。

どんな店舗ならこの特例の対象になるのか

買い物かごのある店舗建物に禁止マーク、シャッター付きの倉庫店舗建物にチェックマークが並ぶイラスト
令第32条の対象になるのは、令別表第一(4)項の物品販売店舗のうち、さらに絞られた一部です。
まずは(4)項そのものの範囲を確認します。
百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗又は展示場(消防法施行令別表第一(4)項)
一般消費者向けの販売をしていないことが分かれ目です。
(4)項には百貨店やスーパーだけでなく、マーケットや展示場も含まれ、業種も規模も幅広く含まれます。
このうち特例の対象になるのは、利用者が卸売業者や小売業者など特定の者に限られ、取扱う商品も限定されていて、もっぱら卸売のみを営む店舗です。
一般消費者への販売を兼ねている店舗や、その他の業態が混在する店舗は対象になりません
自分の店舗がどちらに当たるかは、実際の営業形態で判断されます。
  • 利用者が卸売業や小売業を営む特定の者に限られている
  • 取扱う商品の種類が限定されている
  • 一般消費者を対象とした販売を兼ねていない

うちは業者さん向けの販売だけなんですが、一般のお客さんも時々来ます。
それでも対象になりますか。

一般消費者向けの販売を兼ねていると、対象外になる可能性があります。

スプリンクラー設備の基準はどのように免除されるのか

倉庫店舗建物の屋根を外し内部が仕切り壁と出口へ向かう避難経路で示されたイラスト
原則の基準がどう決まっているかを見た上で、そこからどう免除されるのかを確認します。
まずは(4)項の店舗に一般的に適用されるスプリンクラー設備の基準です。
別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項及び(九)項イに掲げる防火対象物(前号に掲げるものを除く。)のうち、平屋建以外の防火対象物で、総務省令で定める部分以外の部分の床面積の合計が、同表(四)項及び(六)項イ(1)から(3)までに掲げる防火対象物にあつては三千平方メートル以上、その他の防火対象物にあつては六千平方メートル以上のもの(消防法施行令第12条第1項第4号)
原則は延べ面積で決まりますが、卸売専業店舗にはこの数字がそのまま当てはまりません。
(4)項の店舗は、床面積の合計が3,000平方メートル以上になると、原則としてスプリンクラー設備の設置が義務づけられます。
卸売専業店舗については、この基準どおりに設置することが難しい場合に備えて、区画・避難経路・防火戸などの代替対策を条件に、消防庁の通知が個別の免除基準を認めています。
つまり基準そのものが無くなるわけではなく、別の方法で同じ安全性を確保する仕組みに置き換わるということです。
どんな代替対策が求められるのかは、次の見出しで確認します。

面積の基準を満たせないなら、諦めるしかないんでしょうか。

区画や避難経路などの代替対策を講じれば免除される場合があります。

免除は消防用設備等の義務がすべて消えるという意味なのか

消火器1本の壁掛けと消火器3本が並ぶ壁掛けを見比べるイラスト
免除という言葉から、義務がすべて無くなると考えてしまいがちですが、そうではありません。
免除されるのはスプリンクラー設備の設置基準だけです。
  • 建物を耐火構造の壁などで区画する
  • 避難経路の幅や数を確保する
  • 特定防火設備である防火戸を設ける
  • 消火器の能力を通常より高めに確保する
免除は代替対策とセットになって初めて成り立つ仕組みです。
区画や避難経路の確保に加えて、消火器の能力を通常より高めに備えることも代替対策の一つとされています。
これらの対策を欠いたまま「免除されているから何もしなくていい」と考えるのは誤りです。
また、免除の対象はスプリンクラー設備に限られ、自動火災報知設備や避難器具など他の消防用設備等の義務はそのまま残ります。
増改築や用途変更で店舗の実態が変わると、免除の前提そのものが崩れることにも注意が必要です。

免除されているからスプリンクラーの点検もしなくていいと思っていました。

いいえ、代替対策の維持と他の設備の義務は別に続きます。

明日から何を確認しておけばよいのか

チェックリストと電話を経て倉庫店舗建物に至る様子を示すイラスト
ここまでの内容を踏まえて、実際に確認すべき手順を整理します。
免除の適用は建物ごとの実態で判断されるため、早めの確認が近道です。
  • 自分の店舗が令別表第一(4)項に該当するか、その中で卸売専業店舗といえるかを確認する
  • 一般消費者向けの販売を兼ねていないか、実際の営業形態を見直す
  • 免除を受けている場合、区画・避難経路・防火戸などの代替対策が現状も維持されているかを点検する
  • 増改築や用途変更を予定している場合は、免除の前提が崩れないかを事前に確認する
確認を怠ると、免除されているつもりで対策が抜け落ちる恐れがあります。
特に代替対策として区画や防火戸を設けている場合は、工事や改装のたびに区画が壊れていないかを見ておく必要があります。
自分の店舗が特例の対象になるかどうかを自己判断せず、所轄の消防署に事前相談しておくのが確実です。
免除の適用は建物ごとの構造や利用形態によって変わるため、同業の他店舗の扱いをそのまま当てはめることもできません。

免除を受けている店舗を増築するときも、確認が必要なんですね。

はい、増築や用途変更の前に相談しておくと安心です。

よくある質問

Q卸売専業店舗に当たるかどうかは誰が判断するのですか?
A最終的には所轄の消防署が、営業実態を確認して判断します。店舗側の自己判断だけで免除を主張することはできません。
Q免除を受けている店舗が業態を変えたらどうなりますか?
A一般消費者向けの販売を始めるなど卸売専業店舗の条件から外れると、免除の前提が崩れ、通常の設置基準に戻ることがあります。
Q代替対策として求められる内容は、すべての卸売専業店舗で同じですか?
A建物の構造や規模によって求められる対策の組み合わせは変わります。個別の建物ごとに消防署の確認が必要です。
Qこの特例は新しく建てる店舗にも使えますか?
Aこの特例はもともと既存の店舗を念頭に置いた運用です。新築の場合は原則どおりの基準で計画するのが基本です。

まとめ

令別表第一(4)項の物品販売店舗のうち卸売専業店舗だけがスプリンクラー設備の免除の対象になり得る
免除は消防法施行令第32条の裁量規定を通知が具体化したもの
対象になるのは利用者が卸売業者など特定の者に限られ一般消費者向け販売を兼ねない店舗だけ
原則の基準は延べ面積3,000平方メートル以上でスプリンクラー設備の設置が義務づけられる
免除には区画・避難経路・防火戸などの代替対策を講じることが前提になる
免除されるのはスプリンクラー設備だけで他の消防用設備等の義務は残る
増改築や用途変更で実態が変わったら所轄の消防署に確認するのが確実

うちの店が対象かどうか、これで自信を持って確認できそうです!

㈱防災屋でもご相談を承っております

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第32条(消防用設備等の特例)
  • 消防法施行令別表第一(4)項
  • 消防法施行令第12条第1項第4号(スプリンクラー設備の設置基準)
  • 既存の卸売専業店舗に対する消防用設備等の技術上の基準の特例について(昭和51年9月27日消防予第73号)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
卸売専業店舗はなぜ免除の対象になるのか
百貨店やスーパーなどの物品販売店舗には、延べ面積などに応じてスプリンクラー設備の設置が義務づけられています。 ところが、同じ(4)項に区分される店舗の中でも、卸売専業店舗だけはこの基準どおりに設置しなくても済む場合があり...
リクルート 採用情報はこちら →
採用ページ 一緒に働く仲間を募集中 → フランチャイズ (株)防災屋と一緒に開業する → 協力業者 協力業者さん募集中 →