消防計画で加圧防排煙設備を扱うとき、「起動装置はどこに置けばよいのか」という質問を受けることがあります。
一般の排煙設備なら防煙区画ごとに1つで足りますが、加圧防排煙設備はそれだけでは足りません。
排煙口用と給気口用、それぞれの起動装置を置く場所と数が個別に定められているためです。
この記事では、防災センター等にも起動装置が必要になる理由から自動起動装置の扱いまで整理して解説します。
うちのビル、加圧防排煙設備の起動装置なんですが。
防煙区画に1つ置けば大丈夫ですよね。
いいえ、それだけでは足りません。
防災センター等にも同じ起動装置を置く必要があります。
防災センターと現場の両方に置くということですか。
はい、排煙口用と給気口用で置き方が少し違います。
順番に確認していきましょう。
- 加圧防排煙設備の手動起動装置は、排煙口用・給気口用ともに防災センター等と現場の2か所に設ける必要があります
- 手動起動装置は、防煙区画(または加圧式消火活動拠点)だけでなく防災センター等にも設けます
- 排煙口の起動装置を作動させると、排煙機は自動的に作動する仕組みになっています
- 給気口の起動装置を作動させると、給気機は自動的に作動する仕組みになっています
- 自動起動装置を設ける場合は、規則の規定を「排煙口が開放」したときに読み替えた基準に適合させなければなりません
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目次
加圧防排煙設備の起動装置は普通の排煙設備と何が違うのか

一般の排煙設備と加圧防排煙設備とでは、置く場所の考え方が違います。
加圧防排煙設備の設置及び維持に関する技術上の基準(平成二十一年消防庁告示第十六号)第三 十 起動装置は、次に定めるところによること。
(一) 排煙口の手動起動装置は、規則第三十条第四号イの規定の例によるほか、排煙機により排煙する防煙区画にあっては、排煙口の開放に伴い、排煙機が自動的に作動するよう設けること。この場合において、同号イ(イ)中「一の防煙区画ごと」とあるのは「防災センター等及び一の防煙区画ごと」と(略)読み替えるものとする。
一般の排煙設備は規則第三十条第四号イ(イ)により防煙区画ごとに1つで足りますが、加圧防排煙設備はこの条文の一部を告示が読み替えています。
読み替え後は「一の防煙区画ごと」ではなく「防災センター等及び一の防煙区画ごと」となり、設置場所が実質的に2か所に増えます。
さらに、排煙口を起動すると排煙機が自動的に作動する仕組みまで求められている点も、一般の排煙設備には無い規定です。
まずはこの「2か所・自動作動」という骨組みを押さえておきます。
普通の排煙設備は区画に1つでいいのに、加圧防排煙設備は違うんですね。
はい、告示が条文の言葉を読み替えているので、原文どおりには読めません。
次は排煙口側を具体的に見ていきましょう。
排煙口の手動起動装置はどこに何個必要になるのか

図面に落とし込む前に、条文の要求を分けて確認します。
(参考:規則第三十条第四号イ(ハ) 操作部は、壁に設けるものにあつては床面からの高さが〇・八メートル以上一・五メートル以下の箇所、天井からつり下げて設けるものにあつては床面からの高さがおおむね一・八メートルの箇所に設けること。)
防煙区画側の操作部は、壁付けなら床面から0.8メートル以上1.5メートル以下、天井からつり下げるならおおむね1.8メートルの高さに設けます。
この高さや表示の規定そのものは告示で読み替えられておらず、一般の排煙設備と同じ基準がそのまま適用されます。
違うのは設置箇所の数だけでなく、排煙口の開放に伴って排煙機が自動的に作動する仕組みを備えなければならない点です。
手動起動装置を押す=排煙口が開く=排煙機が回る、という一連の連動を設計段階で確認してください。
操作部の高さは、普通の排煙設備と同じでいいんですね。
はい、高さと表示の基準は変わりません。
変わるのは設置箇所の数と自動作動の仕組みです。
給気口の手動起動装置はどこに何個必要になるのか

ただし読み替えられる言葉が少し違うので、混同しないよう整理します。
排煙口側が「防煙区画」を単位にするのに対し、給気口側は「加圧式消火活動拠点」を単位にする点が異なります。
操作部を見とおせる場所に設けることや、火災のとき容易に接近できることといった要求は同号イの例によるので、排煙口側と共通です。
そして給気口を起動すると、給気機が自動的に作動する仕組みを備えなければならない点も排煙口側と対をなしています。
排煙口用と給気口用を同じ起動盤にまとめる設計も見かけますが、読み替えの単位が違うことは覚えておく必要があります。
排煙口用と給気口用、単位が違うんですね。
はい、防煙区画と加圧式消火活動拠点で単位が分かれています。
次は見落としやすい点を確認しましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

ただしこちらは、告示の読み替えが排煙口側にしか置かれていません。
(参考:規則第三十条第四号ロ(イ) 自動火災報知設備の感知器の作動、閉鎖型スプリンクラーヘッドの開放又は火災感知用ヘッドの作動若しくは開放と連動して起動するものであること。)
設けるなら感知器の作動等と連動する点は一般の排煙設備と同じですが、告示は「起動」という言葉を「排煙口が開放」に読み替えています。
つまり感知器が作動したら排煙口自体が開放し、それに伴って排煙機が動く、という順序で条文が組み立てられています。
一方でこの告示には、給気口用の自動起動装置を読み替える規定が見当たりません。
給気口側に自動起動装置を設けたい場合は、思い込みで排煙口側と同じ扱いにせず、規則の原則規定に立ち返って個別に確認してください。
給気口にも自動起動装置を付けたくなりますが、そのまま真似ていいのか不安です。
その勘は正しいです。
給気口用の読み替え規定は無いので、設計時に個別確認をおすすめします。
明日からなにを確認すればよいのか

図面を前に、順番にあてはめていけば判断できます。
・排煙口用の手動起動装置が、防煙区画の中と防災センター等の両方にあるか
・給気口用の手動起動装置が、加圧式消火活動拠点ごとと防災センター等の両方にあるか
・操作部の高さと表示が規則第三十条第四号イの基準どおりか
・排煙口・給気口の開放に伴い、排煙機・給気機が自動的に作動する設計になっているか
・自動起動装置を設ける場合、給気口用まで排煙口側と同じに扱っていないか
①まず防災センター等側に排煙口用・給気口用それぞれの起動盤があるかを確認し、②現場側の防煙区画・拠点にも同じものがあるかを見ます。
③操作部の高さと表示が規則第三十条第四号イの基準どおりかも忘れずに確認します。
④起動と同時に対応する排煙機・給気機が自動的に作動する設計になっているかを図面で追います。
判断に迷う点があれば、所轄消防署に事前相談することをおすすめします。
チェックリストにすれば、設計者にもそのまま伝えられそうです。
そのとおりです。
次はよくある質問もあわせて確認しておきましょう。
よくある質問
まとめ
起動装置の置き場所、よくわかりました。
これで設計者にも確認できそうです。
起動装置の配置や連動の取り扱いで判断に迷ったら、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 加圧防排煙設備の設置及び維持に関する技術上の基準(平成21年9月15日消防庁告示第16号、最終改正:令和6年3月29日消防庁告示第6号)第三 十
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第30条第4号
- 排煙設備に代えて用いることができる必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成21年総務省令第88号)第2条第3項
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。




