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耐震基準に適合しない特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根はどう守るのか|浮力確保の応急対策と点検のあり方を解説

耐震基準に適合しない特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根の浮力確保と点検のあり方を解説する記事のアイキャッチ画像

南海トラフ巨大地震や首都直下地震など、大規模地震の発生が懸念されています。
屋外に大量の危険物を貯蔵する浮き屋根式のタンクも、早期の耐震安全性の確保が求められています。
ところが、基準に届かない浮き屋根をそのまま放置してよいと誤解している担当者は少なくありません。
この記事では、基準に適合するまでの間に浮き屋根の浮力をどう守るかを解説します

うちの特定屋外貯蔵タンク、浮き屋根が古い設計で耐震基準を満たしていないかもしれません。
放置していて大丈夫でしょうか。

放置は禁物です。
浮力を確保する応急対策が示されています。

具体的にはどんな対策があるんでしょうか。

浮き室に浮力体を入れる方法など複数あります。
今日はその中身を見ていきましょう。

この記事の結論
  • 耐震基準に適合しない特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根には、浮力を確保する応急対策として缶工法とバルーン工法が示されています
  • 浮き室に浮力体を挿入することで、浮き屋根の沈下事故を防止できます。
  • 応急対策を行った浮き屋根でも、破損や危険物の滲みが見つかれば速やかに恒久的な補修が必要です
  • 沈下事故を防ぐには、年1回以上の定期点検に加え、大地震や台風のあとの緊急点検も欠かせません。
  • 対象は危険物の最大数量が1000キロリットル以上の特定屋外貯蔵タンクで、判断に迷ったら所轄消防署への確認が確実です。

特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根の浮力確保方策と点検の流れを示す図解

なぜ浮き屋根タンクにも浮力確保対策が求められるのか

地震で揺れる浮き屋根付き屋外貯蔵タンクのアイソメ図
南海トラフ巨大地震や首都直下地震など、大規模地震の発生が懸念されています。
浮き屋根式の屋外貯蔵タンクも、早期の耐震安全性の確保が求められるようになりました。
危険物の規制に関する規則第二十条の四第二項 特定屋外貯蔵タンクの構造は、次に定める基準に適合するものでなければならない。 三 特定屋外貯蔵タンクのうち告示で定めるものの浮き屋根は、液面揺動により損傷を生じない構造を有するものであること。
浮き屋根には、地震による液面の揺れで損傷しない構造が求められています。
消防庁は「東日本大震災を踏まえた危険物施設の地震・津波対策の推進について」(平成24年1月31日付け消防危第28号)等で、地震対策の推進をお願いしてきました。
これを受け、危険物保安技術協会に屋外貯蔵タンクの耐震安全性の確保方策に係る検討会が設置され、所有者等が自主的に取り組むべき事項の提言が取りまとめられました。
これをもとに消防庁が発した通知が「屋外貯蔵タンクの耐震安全性の確保方策等の推進について」(平成25年11月20日付け消防危第197号)で、準特定屋外貯蔵タンクの液面管理とあわせて、特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根の浮力確保方策も示されました。
まずはどのタンクが対象になるかを確認しましょう。

浮き屋根がある大きいタンクなので、これも対象になりそうです。

対象になるかは貯蔵量で決まります。
次に確認方法を見ていきましょう。

どのタンクの浮き屋根が対象になるのか

大型タンクと小型タンクの浮き屋根の浮き室構造を比べるアイソメ図
浮力確保の応急対策は、すべての浮き屋根タンクに関係するわけではありません。
まず対象になるタンクの範囲を確認します。
危険物の規制に関する政令第八条の二の三第三項 法第十一条の三第二号の政令で定める屋外タンク貯蔵所は、屋外タンク貯蔵所で、その貯蔵し、又は取り扱う液体の危険物の最大数量が千キロリットル以上のもの(以下「特定屋外タンク貯蔵所」という。)とする。
対象になるのは、危険物の最大数量が1000キロリットル以上の特定屋外貯蔵タンクです。
以前取り上げた準特定屋外貯蔵タンク(500キロリットル以上1000キロリットル未満)とは基準も対策も異なる点に注意してください。
特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根の維持管理や事故防止については、「浮き屋根式屋外タンク貯蔵所の保安対策の徹底及び応急措置体制の整備について(通知)」(平成25年7月31日付け消防危第141号、消防特第154号。以下「141号通知」)ですでに対策をお願いしています。
197号通知の第2は、この141号通知を踏まえ、耐震安全性が確保されていない浮き屋根について、浮力確保の応急対策と点検のあり方を追加で示したものです。
自社のタンクが対象に当たるかは、まず貯蔵する危険物の最大数量から確認しましょう。

うちは1000キロリットルを超えているので、141号通知にも該当しています。

それなら浮力確保の応急対策も確認しておきましょう。

浮力確保にはどんな応急対策があるのか

浮き屋根の浮き室に浮力体を挿入する技術者のアイソメ図
耐震安全性が確保されていない浮き屋根にも、対応策が用意されています。
浮き室に浮力を追加する方法です。
  • 浮き室に浮力補助容器を敷き詰める「缶工法」と、浮き室内でバルーンを膨らませる「バルーン工法」の2つが例示されています
  • どちらも、破損した浮き室に危険物が浸入した場合でも浮き屋根の沈下事故を防ぐことを目的にした応急対策です。
缶工法は浮力補助容器を、バルーン工法は空気で膨らませるバルーンを、あらかじめ浮き室に設置しておく方法です。
消防庁の検討結果では、水衝撃試験や耐油性試験など複数の安全性評価を経て、応急措置としての適用が可能とされています。
浮き室に破損や危険物の滲みなどの異常が見つかった場合は、対策を行っていても放置せず、速やかに恒久的な補修を行うことが必要です。

浮力体を入れておけば、それで安心という理解でよいでしょうか。

いいえ、あくまで応急対策です。
異常が見つかれば速やかな補修が必要です。

点検を怠るとどうなるのか

ガス検知器で浮き室を点検する技術者のアイソメ図
浮力確保の応急対策をしていても、点検まで省略してよいわけではありません。
見落としやすいのは、点検が年に1回だけで済むと思い込むことです。
危険物の規制に関する規則第六十二条の四第一項 法第十四条の三の二の規定による定期点検は、一年(告示で定める構造又は設備にあつては告示で定める期間)に一回以上行わなければならない。
定期点検は年1回以上が基本ですが、これだけで浮き屋根の異常を防げるわけではありません。
197号通知は、定期点検に加えて緊急点検の実施を示しています。
大きな地震の発生後や、浮き屋根の排水能力を超えるような台風・大雨のあとは、浮き室の異常の有無を速やかに確認することが必要です。
点検の方法は、目視による危険物の滞留・滲みの確認、浮き室内の臭気の確認、ガス検知器による可燃性蒸気濃度の測定の3つが示されています。
点検で不具合が見つかった場合は、直ちに応急の措置を講じたうえで、恒久的な改修計画を所轄消防本部と協議する必要があります。

台風のあとは、次の点検の時期まで様子を見ればいいと思っていました。

いいえ、台風や大雨のあとは緊急点検が必要です。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストと浮き屋根タンクを確認する場面のアイソメ図
浮力確保の応急対策や点検を検討する前に、順番に確認しておきたい項目があります。
最後に手順を整理します。
  • 自社の屋外貯蔵タンクが、貯蔵する危険物の最大数量1000キロリットル以上の特定屋外貯蔵タンクに該当するかを確認します
  • 該当する場合は、浮き屋根の耐震安全性が確保されているかを確認します。
確保されていない場合は、缶工法やバルーン工法による浮力確保の応急対策を検討しつつ、恒久的な耐震改修の計画も並行して進めます。
点検は年1回以上の定期点検に加え、大地震や台風・大雨のあとの緊急点検を欠かさないようにしましょう。
異常が見つかった場合の対応や改修計画は、所轄消防本部と協議しながら進めます。
判断に迷う項目があれば、早めに所轄消防署へ相談することをおすすめします。

まずは自社タンクの貯蔵量と浮き屋根の状態から確認してみます。

耐震安全性の確認から一緒に進めましょう。

よくある質問

Q浮力確保の応急対策をしていれば、耐震改修をしなくてよいのですか?
Aいいえ。浮力確保の応急対策はあくまで恒久的な耐震改修を実施するまでの応急措置です。並行して改修計画を進める必要があります。
Q浮力確保にはどんな方法がありますか?
A浮き室に浮力補助容器を敷き詰める缶工法と、浮き室内でバルーンを膨らませるバルーン工法の2つが例示されています。
Q点検は年に1回で十分ですか?
Aいいえ。年1回以上の定期点検に加え、大きな地震や台風・大雨のあとには緊急点検を行うことが必要です。
Q対象になるのはどんなタンクですか?
A貯蔵し、または取り扱う危険物の最大数量が1000キロリットル以上の特定屋外貯蔵タンクが対象です。

まとめ

耐震基準に適合しない特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根には、浮力を確保する応急対策として缶工法とバルーン工法が示されています。
根拠は危険物の規制に関する規則第20条の4と、これを受けた消防庁の通知(平成25年11月20日付け消防危第197号)です。
浮き室に浮力体を挿入することで、浮き屋根の沈下事故を防止できます。
応急対策を行った浮き屋根でも、異常が見つかれば速やかに恒久的な補修が必要です。
点検は年1回以上の定期点検に加え、大地震や台風・大雨のあとの緊急点検も欠かせません。
対象は危険物の最大数量が1000キロリットル以上の特定屋外貯蔵タンクです。
判断に迷ったら所轄消防署または所轄消防本部への確認が確実です。

浮き室の点検からやってみます!

缶工法やバルーン工法の検討からお手伝いします。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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