大きな地震の直後、駅前の施設へ帰宅困難者が集まってきたら、すぐ館内へ案内してよいのでしょうか。
善意で扉を開けても、天井材の落下や消防用設備等の損傷を見落とすと、受け入れた人を別の危険へさらします。
一方、判断する人や点検順序が決まっていなければ、安全な施設でも開設が遅れます。
BCPには建物と消防設備の安全を確認してから一時滞在施設を開ける手順を定めます。
人が集まってきたら、すぐ中へ入れた方がええんですか。
まず施設の安全確認が先です。
消防設備が壊れていたら、全部閉めるんですか。
使用できる区画と代替措置を確認して判断します。
- 一時滞在施設は安全を確認してから開設します。
- 建物だけでなく消防用設備等も確認します。
- 通路を除いた安全な区画から受入定員を決めます。
- 安全を確認できないときは開設しません。
- BCPと消防計画で点検・開設・誘導の担当をそろえます。
▼

目次
一時滞在施設は地震直後すぐ開設してよいのか

施設管理者が周辺と建物の安全を確かめ、受け入れられる場所を決めてから案内します。
まず周辺の火災、建物の傾き、大きなひび、天井材やガラスの落下、出入口の状態を見ます。
次に火災報知設備、消火設備、非常放送、誘導灯などの消防用設備等の状態を確認します。
受入場所までの経路に危険があれば、建物全体が立っていてもその区画は使いません。
点検する人と開設を決める人を分ける場合は、報告先と判断期限をBCPへ書きます。
安全確認の結果は時刻・点検者・使用不可区画とともに残してください。
開設しない判断をしたときも、待機中の人を安全な別施設へ誘導する役割が必要です。
扉を開ける前に、周辺と館内を確認するんですね。
はい。
安全確認後に開設します。
どの施設が誰を受け入れるのか

自社の従業員を事業所内に待機させる対応とは、対象者と受付方法が異なります。
オフィス、商業施設、学校、集会施設などでも、指定や協定の範囲は建物全部とは限りません。
使う階、部屋、入口、トイレ、立入禁止区画を図面で明示します。
受付では、受け入れた人数と要配慮者の有無を個人情報へ配慮した方法で把握します。
従業員の待機区画と外部受入区画を分ける場合は、通路やトイレの動線が交差し過ぎないようにします。
夜間や休日は施設管理者が不在になる可能性があるため、開錠権限と代行者を決めます。
自治体との協定内容に定員や連絡先がある場合は、BCPの最新の連絡票へ反映してください。
従業員の待機場所と同じ扱いではないんですね。
そうです。
外部受入の区画と担当を決めます。
受入場所と定員はどう決めるのか

安全な区画から通路や設備の周囲を除き、実際に使える面積で定員を見積もります。
出入口、階段、廊下、防火戸の作動範囲、消防用設備等の操作場所は塞ぎません。
毛布や水の箱も、普段は邪魔にならなくても人が増えれば避難障害になります。
備蓄品の配布場所、受付、要配慮者の場所、トイレへの動線を先に割り付けます。
余震で使用範囲が変わった場合に備え、定員は固定値だけでなく区画別の人数で管理します。
満員になったときは入口を閉じるだけでなく、自治体や近隣施設と連携して次の案内先を伝えます。
| 確認項目 | 計画へ書く内容 | 受入面積への扱い |
|---|---|---|
| 安全な滞在区画 | 部屋名と使用範囲 | 定員計算へ含める |
| 出入口・廊下・階段 | 幅と誘導方向 | 除く |
| 落下等のおそれがある区画 | 立入禁止範囲 | 除く |
| 受付・配布場所 | 担当と待機列 | 滞在区画と分ける |
通路を残してから人数を決めるんですね。
はい。
避難経路は定員に含めません。
消防用設備等が損壊していたらどう判断するのか

故障した設備、影響する区画、避難への影響を確認し、あらかじめ決めた判断基準へ当てはめます。
平常時に設備ごとの確認方法、故障時の報告先、使用を止める区画を整理します。
代替措置は施設の構造や設備、在館者数で変わるため、独自判断で万能な方法を決めつけません。
消防計画の変更が必要か、どの代替措置が妥当かを所轄消防署へ事前相談します。
自動火災報知設備、非常放送、誘導灯、消火設備などは、故障箇所と影響範囲を設備別に記録します。
建物の安全や避難の確保に疑いが残る場合は、受け入れを始めず他施設へ案内してください。
一度開設した後も、余震や停電が起きたら再点検し、継続か閉鎖かを判断します。
設備ごとに影響する場所を確認するんですね。
そうです。
代替措置は平常時に相談しておきましょう。
明日から開設手順をどう確認するのか

次に地震発生から開設、受付、閉鎖までを時系列で並べ、担当者が実際に歩いて確かめます。
点検表には、周辺火災、建物外周、天井・ガラス、出入口、避難経路、消防用設備等を並べます。
点検結果を誰へ報告し、誰が開設を宣言するかを一枚の役割表にします。
無線や電話が使えない場合の集合場所と伝達方法も決めてください。
受付では定員、要配慮者、備蓄品の残数、トイレの使用状況を定期的に記録します。
夜間と休日の訓練も行い、鍵、照明、担当者の到着時間を実測します。
訓練後は迷った判断と所要時間を記録し、BCP・消防計画・協定連絡票の同じ箇所を更新しましょう。
- 指定・協定の範囲と連絡先を確認する
- 安全点検表と使用不可区画を図面へ重ねる
- 消防用設備等の損壊時の判断を所轄消防署へ相談する
- 定員と受付・備蓄・トイレの配置を決める
- 夜間や通信障害も含めて開設訓練を行う
夜間の鍵と点検時間まで測ってみます。
開設までの実測が改善につながります。
よくある質問
まとめ
安全点検表と区画図をそろえます!
開設訓練から始めましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- e-Gov法令検索 消防法施行規則第3条
- 内閣府 災害発生時における大規模な帰宅困難者等の発生への対策に関するガイドライン 2026年1月
- 内閣府 大規模地震発生直後における施設管理者等による建物の緊急点検に係る指針
- 東京消防庁 消防計画の作成例
- 東京消防庁 帰宅困難者対策を含む消防計画作成例
※本記事は公表されている法令および内閣府・東京消防庁の資料に基づく一般的な解説です。一時滞在施設の指定・協定、受入条件、消防計画の取扱いは自治体や建物ごとに異なります。実際の開設基準は自治体に、消防用設備等の損壊時の措置や消防計画は所轄消防署にご確認ください。




