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リチウムイオン蓄電池の荷さばき作業はなぜ一般取扱所として扱われるのか|耐火性収納箱の仮置き基準を解説

リチウムイオン蓄電池の荷さばきと耐火性収納箱の一般取扱所

物流拠点や倉庫でリチウムイオン蓄電池を大量に扱う場面が増え、耐火性収納箱に蓄電池を出し入れする「荷さばき作業」も日常的になってきました。
これまでの通知は蓄電池を継続的に貯蔵する場合を主に想定しており、一時的な仮置きや仕分けをどう扱うかがはっきりしていませんでした。
令和6年12月、消防庁は耐火性収納箱を使った荷さばき作業について新しい運用を通知で示しました。
一般取扱所としてどんな基準を満たせば、通常より緩やかな基準で荷さばき作業ができるのかを解説します。

うちの倉庫でもリチウムイオン蓄電池の入出庫が増えてきて、置き場所に困っています。

耐火性収納箱を使った一時的な荷さばきなら、令和6年12月に消防庁が新しい運用を示しています。
まずはその内容を一緒に確認しましょう。

収納したり取り出したりするだけでも、消防法上の手続きが必要になるんですか。

作業の中身と数量次第で、一般取扱所としての許可が必要になる場合があります。
今回の通知で緩和される条件も含めて見ていきましょう。

この記事の結論
  • 耐火性収納箱を使ったリチウムイオン蓄電池の荷さばき作業について、令和6年12月に消防危第352号で新しい運用が示された
  • 荷さばき作業とは、耐火性収納箱への収納・取出しと、それに伴う一時的な仮置き・仕分けを指す。
  • 取り扱う危険物の数量は、保管総量ではなく瞬間最大停滞量で算定する。
  • 建築物の一部に設ける場合と独立した建築物に設ける場合とで、満たすべき基準が異なる。
  • 条件を満たせば政令第23条の特例が適用され、通常の一般取扱所の基準の一部は適用されない

耐火性収納箱の荷さばきは一時作業として扱われることを示す図解

リチウムイオン蓄電池の荷さばき作業はなぜ新しい運用が必要になったのか

耐火性収納箱を使った荷さばき作業のイメージ
物流の現場でリチウムイオン蓄電池を耐火性収納箱に出し入れする作業が広がる一方で、既存の通知はこの作業をどう位置づけるか明確ではありませんでした。
消防庁は令和6年12月11日、消防危第352号でこの点を整理しました。
消防危第352号 「耐火性収納箱を用いたリチウムイオン蓄電池の荷さばき作業に係る運用について」(令和6年12月11日) 「リチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取扱いに係る運用について」(平成23年12月27日付け消防危第303号)第1中2⑶の耐火性収納箱を用いたリチウムイオン蓄電池の荷さばき作業に係る運用について、下記のとおり取りまとめましたので、通知します
荷さばき作業を新たに区分し直した通知です
平成23年の303号通知は蓄電池を継続的に貯蔵・充放電する場合を主に想定しており、収納箱への出し入れや一時的な仮置きのような短時間の作業をどう扱うかは読み取りにくいものでした。
物流拠点でのリチウムイオン蓄電池の取扱量が増えるにつれて、この空白を放置できなくなったことが今回の通知の背景にあります。
本通知は消防組織法第37条に基づく助言として発出されたもので、義務ではなく運用の目安を示すものです。
自社の作業が荷さばき作業に当たるかどうかは、まずこの区分から確認します。

うちは在庫として長く置くわけじゃなくて、出し入れと仕分けがほとんどなんです。

それはまさに今回の荷さばき作業に当たります。
貯蔵と違う基準で見ていきますね。

どんな一般取扱所のどんな作業が対象になるのか

建築物の一部と独立した建築物の一般取扱所の違い
対象になる作業は4つに整理されています。
まずは建物のタイプと作業の範囲を確認します。
消防危第352号 第1 運用の適用に関する事項 2 本通知による危険物の取扱いは、専ら荷さばきのために行う次に掲げる作業(以下「荷さばき作業」という。)によるものであること。⑴耐火性収納箱にリチウムイオン蓄電池を収納する作業 ⑵耐火性収納箱から蓄電池を取り出す作業 ⑶⑴又は⑵の作業に伴い、蓄電池(耐火性収納箱に完全に収納されたものを除く。)を荷さばき作業のために一時的に存置(仮置き)し、又は仕分ける作業 ⑷その他⑴から⑶までに類する作業 3 本通知の荷さばき作業により取り扱う危険物の数量は、仮置きする蓄電池の瞬間最大停滞量をもって算定すること。
収納・取出し・仮置き・仕分けの4つが荷さばき作業です
数量は在庫の合計ではなく、仮置きしている蓄電池の瞬間最大停滞量で数える点が実務上のポイントです。
対象になる一般取扱所は2パターンあり、オフィスビルなどの建築物の一部に設ける場合と、平屋建ての独立した建築物に設ける場合とで要件が分かれます
自社の拠点がどちらの形に近いかによって、次に確認すべき基準が変わります。

仮置きって、保管とは扱いが違うんですね。

はい、瞬間最大停滞量という考え方で数えます。
建物のタイプによっても基準が変わりますよ。

仮置き場所はどんな基準を満たす必要があるのか

仮置き場所の空地と積み上げ高さの基準
仮置き場所には、空地の幅や積み上げる高さについて細かい基準があります。
建築物の一部に設ける場合を例に見ていきます。
消防危第352号 第2 建築物の一部において専ら危険物を用いたリチウムイオン蓄電池の荷さばき作業を行う一般取扱所に関する事項 2⑷ア 303号通知第1中1⑴から⑶までのいずれかに該当するものであり、かつ、その充電率が60パーセント以下である蓄電池を仮置きする場合は、次によること。一の仮置き場所の蓄電池に用いられる危険物の数量の総和は、指定数量未満とすること。仮置き場所を明確に示すこと。周囲に3メートル以上の幅の空地を保有すること。床面から蓄電池の上端までの高さは、1.8メートル(充電率30パーセント以下のもののみを取り扱う場合は6メートル)以下とすること。蓄電池の上端から建築物の天井までの高さは、2メートル以上とすること
危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号) 第23条 この章の規定は、製造所等について、市町村長等が、危険物の品名及び最大数量、指定数量の倍数、危険物の貯蔵又は取扱いの方法並びに製造所等の周囲の地形その他の状況等から判断して、この章の規定による製造所等の位置、構造及び設備の基準によらなくとも、火災の発生及び延焼のおそれが著しく少なく、かつ、火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるとき、又は予想しない特殊の構造若しくは設備を用いることにより、この章の規定による製造所等の位置、構造及び設備の基準による場合と同等以上の効力があると認めるときにおいては、適用しない。
空地の幅と積み上げ高さが仮置き場所の基準の中心です
周囲に3メートル以上の空地を確保し、蓄電池の上端は床面から1.8メートル以下、天井までは2メートル以上を空けるのが基本形です。
これらの基準を満たすことで、政令第23条の特例が適用され、一般取扱所として通常求められる基準の一部が適用されなくなります。
空地や高さの実測は仮置き場所を設計する段階で先に押さえておくと、あとから収納箱の配置をやり直さずに済みます。

床から天井までぎっしり積んでしまうと、この基準に届かなくなりそうですね。

そうです、上端から天井まで2メートルは必ず空けてください。
空地の3メートルも忘れずに測りましょう。

充電率や瞬間最大停滞量の落とし穴はどこにあるのか

充電率によって変わる積み上げ高さの基準
同じ仮置き場所でも、蓄電池の充電率によって基準が変わります。
見落としやすい条件を確認します。
消防危第352号 第2 2⑷イ ア以外の蓄電池を仮置きする場合は、ア(イ)、(ウ)及び(オ)の例によるほか、次によること。一の仮置き場所の蓄電池に用いられる危険物の数量の総和は、指定数量の5分の1未満とすること。床面から蓄電池の上端までの高さは、1.8メートル以下とすること
充電率60パーセントを境に、数量と高さの許容範囲が変わります
充電率が60パーセント以下で303号通知の一定の条件を満たす蓄電池なら、数量は指定数量未満、高さは1.8メートル(充電率30パーセント以下のみなら6メートル)まで積み上げられます。
一方でそれ以外の蓄電池は、数量が指定数量の5分の1未満に下がり、高さも1.8メートル以下に一本化されます。
荷さばきする蓄電池の充電率を把握していないと、どちらの基準で仮置き場所を設計すればよいか判断できません。

充電率までいちいち確認するのは、正直手間に感じます。

でも基準が変わる境目なので、把握は欠かせません。
荷さばき前に充電率を記録する仕組みを作っておきましょう。

明日から荷さばき作業の何を確認すればよいのか

荷さばき作業の確認チェックリスト
最後に、明日から確認しておきたいポイントを整理します。
既に許可を受けている施設への影響もあわせて見ておきます。
消防危第352号 第4 その他の事項 ⑶既に政令第23条の規定を適用されている一般取扱所については、本通知にかかわらず、引き続き政令第23条の規定を適用することとして差し支えないこと
既存施設は今回の通知で不利益を受けません
まずは自社の荷さばき作業がどの区分に当たるか、扱う蓄電池の充電率と数量、仮置き場所の空地と高さの3点を洗い出してください。
その上で、建築物の一部か独立した建築物かを確認し、一般取扱所としての許可や消防用設備等の点検区分(法第10条第4項か第17条か)を所轄消防署に相談するのが確実です。
既に政令第23条の特例を受けている施設は、今回の通知が出たことで基準が変わるわけではありません。

うちはまず、充電率と仮置き量の記録から始めてみます。

それが一番の近道です。
不明な点は所轄消防署に事前相談しておくと安心ですよ。

よくある質問

Q荷さばき作業とはどこまでの行為を指しますか?
A耐火性収納箱への収納・取出しと、それに伴う一時的な仮置き・仕分けが対象です。継続的な貯蔵は対象に含まれません。
Q荷さばき作業で取り扱う危険物の数量はどう計算しますか?
A保管している総量ではなく、仮置きする蓄電池の瞬間最大停滞量で算定します。
Q充電率が高い蓄電池を仮置きするときは何が変わりますか?
A303号通知の条件を満たし充電率60パーセント以下の蓄電池は積み上げ高さ1.8メートル(充電率30パーセント以下のみなら6メートル)まで認められますが、それ以外の蓄電池は数量が指定数量の5分の1未満に下がります。
Q既に政令第23条の特例を受けている一般取扱所はどうなりますか?
A本通知にかかわらず、引き続き従前の特例の適用を受けられます

まとめ

耐火性収納箱を使ったリチウムイオン蓄電池の荷さばき作業には、令和6年12月の消防危第352号で新しい運用が示された
荷さばき作業は収納・取出し・仮置き・仕分けの4つを指す
数量は保管総量ではなく瞬間最大停滞量で算定する
建築物の一部に設ける場合と独立した建築物に設ける場合で、満たすべき基準が異なる
仮置き場所は周囲3メートル以上の空地と積み上げ高さの上限を満たす必要がある
充電率60パーセントを境に、数量と高さの許容範囲が変わる
条件を満たせば政令第23条の特例が適用され、既存施設の扱いも変わらない

うちの荷さばき作業も、これで整理して進められそうです!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 耐火性収納箱を用いたリチウムイオン蓄電池の荷さばき作業に係る運用について(令和6年12月11日 消防危第352号 消防庁危険物保安室長)
  • リチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取扱いに係る運用について(平成23年12月27日 消防危第303号)
  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第19条、第20条、第23条
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第32条の10、第32条の11、第34条第2項第1号
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第10条第4項、第17条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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