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不活性ガス消火設備等の安全装置はなぜ弁の種類で基準が変わるのか|容器と配管で異なる仕組みも解説

安全装置はなぜ弁の種類で基準が変わるのかを表すアイキャッチ画像

不活性ガス消火設備やハロゲン化物消火設備、粉末消火設備の貯蔵容器や配管には、圧力が上がりすぎたときに作動する安全装置が取り付けられています。
安全装置は容器弁や破壊板と同じ告示で基準が定められていますが、実は設置場所や弁の種類によって基準の中身が細かく分かれています。
消防庁の告示は、貯蔵容器等に設ける安全装置と配管に設ける安全装置を別々に規定し、それぞれ異なる考え方で基準を組み立てています。
今回は安全装置がなぜ弁の種類で基準が変わるのか、容器と配管それぞれの仕組みから解説します。

安全装置ってどれも同じ仕組みだと思っていました。

いえ、設置場所や弁の種類で基準が変わるんですよ。

貯蔵容器と配管でも違うんですか。

はい、まず条文の構造から見ていきましょう。

この記事の結論
  • 安全装置は貯蔵容器等に設けるものと配管に設けるものの2種類に分かれています
  • 容器の作り方(継目なし容器か溶接容器か)によって選べる方式が変わります
  • 配管の安全装置は蒸気用以外の安全弁と封板式のいずれかで、最高使用圧力を基準に作動圧力が決まります
  • 貯蔵容器の安全装置は配管とは異なり容器の耐圧試験圧力を基準に上限と下限が決まります
  • 安全装置の表示は蒸気用以外の安全弁で8項目、封板式等で4項目と方式によって異なります

不活性ガス消火設備等の安全装置基準を示す図解。委任構造・容器の基準・配管の基準・表示事項の4ステップ

不活性ガス消火設備等の安全装置はなぜ複数の条文にまたがっているのか

開いた法令集の資料と3本の貯蔵容器が並ぶイメージ
不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備はいずれも高圧のガスや消火剤を容器や配管に閉じ込めています。
圧力が上がりすぎたときに備える安全装置は、消防法施行規則の複数の条文からこの告示にまとめて基準が委任されています。
貯蔵容器には、消防庁長官が定める基準に適合する安全装置(容器弁に設けられたものを含む。第十三号ニ、第二十条第四項第四号イ及び第六号の二並びに第二十一条第四項第三号ハ及び第五号の二において同じ。)を設けること。(消防法施行規則第十九条第五項第六号の二)
安全装置の基準は、消防法施行規則の複数の条文からこの告示第四にまとめて委任されています。
不活性ガス消火設備の貯蔵容器(施行規則第十九条第五項第六号の二)だけでなく、起動用ガス容器(同項第十三号ニ)、貯蔵容器と選択弁等の間の配管(同項第十二号)にもそれぞれ安全装置を設けることが定められています。
ハロゲン化物消火設備(第二十条)や粉末消火設備(第二十一条)にも同様の規定があり、3つの消火設備に共通する仕組みです。
安全装置がどの条文から委任されているかを知っておくと、点検記録に出てくる根拠条文を読み違えにくくなります。

安全装置ってひとつの条文で決まっているわけじゃないんですね。

はい、貯蔵容器や配管など設ける場所ごとに条文が分かれています。
次はその設置場所の違いを見てみましょう。

安全装置の方式は容器の作り方でどう変わるのか

赤いハンドルの安全弁が付いた貯蔵容器と配管に取り付けられた安全弁のイメージ
貯蔵容器等に設ける安全装置は、継目なし容器か溶接容器かによって選べる方式の範囲が変わります。
方式には蒸気用以外の安全弁・封板式・溶栓式・封板溶栓式があり、容器の作り方が選択肢を左右します。
イ 継目なし容器等に設ける安全装置は、容器弁に設けられ、かつ、不活性ガス消火設備の高圧式貯蔵容器及び起動用ガス容器、HFC―二三を放射するハロゲン化物消火設備の貯蔵容器等並びに粉末消火設備の加圧用ガス容器(加圧用ガスに二酸化炭素を用いるものに限る。)に設けるものにあつては封板式のもの、その他のものに設けるものにあつては封板式のもの、溶栓式のもの又は封板溶栓式のものであること。ロ 溶接容器等に設ける安全装置は、蒸気用以外の安全弁、封板式のもの、溶栓式のもの(貯蔵タンクを除く。)又は封板溶栓式のものであること。(不活性ガス消火設備等の容器弁、安全装置及び破壊板の基準 第四、一、(二)、イ・ロ)
継目なし容器等の安全装置は容器弁に組み込まれる方式に限られ、溶接容器等はそれよりも広い選択肢から選べます。
継目なし容器等では、高圧式貯蔵容器や起動用ガス容器など対象によって封板式だけに絞られる場合があります。
一方、溶接容器等では蒸気用以外の安全弁・封板式・溶栓式・封板溶栓式の4方式(貯蔵タンクは溶栓式を除く)から選べます。
封板式や溶栓式は一度作動すると交換が必要ですが、蒸気用以外の安全弁だけは繰り返し使える構造になっています。

容器の作り方まで、方式の選び方に関わってくるんですね。

はい、繰り返し使えるかどうかも方式で変わります。
次は配管側の安全装置を見てみましょう。

配管の安全装置はどんな基準で作動するのか

圧力計が付いた貯蔵容器と着氷した配管が並ぶイメージ
貯蔵容器等の安全装置とは別に、配管にも独立した安全装置を設けることが定められています。
配管の安全装置は蒸気用以外の安全弁か封板式のいずれかで、作動する圧力の範囲が最高使用圧力を基準に決まります。
二 配管の安全装置 配管の安全装置は、第三、一及び三(略)の規定の例によるほか、次に適合するものでなければならない。(一)蒸気用以外の安全弁又は封板式のものであること。(三)作動圧力範囲 ロ 蒸気用以外の安全弁にあつては、それぞれ次の作動圧力範囲で作動するものであること。(イ)作動の上限圧力は、最高使用圧力の一・五倍(二酸化炭素を放射する不活性ガス消火設備のうち低圧式のものを用いるものにあつては、三・七五メガパスカル)以下(ロ)吹出圧力は、最高使用圧力の一・一倍(略、二・三メガパスカル)以上(ハ)吹止り圧力は、最高使用圧力の〇・八八倍(略、一・九メガパスカル)以上(不活性ガス消火設備等の容器弁、安全装置及び破壊板の基準 第四、二、(一)・(三)、ロ)
配管の蒸気用以外の安全弁は、最高使用圧力を基準にした倍率で上限・吹出・吹止りの3つの圧力が決まります。
上限は最高使用圧力の1.5倍以下、吹出は1.1倍以上、吹止りは0.88倍以上という倍率が使われています。
封板式を選んだ場合も最高使用圧力の1.1倍以上1.5倍以下で作動するというほぼ同じ倍率の考え方が使われており、この数値は配管に設ける破壊板の基準とも共通しています。
配管は貯蔵容器から選択弁等までの区間を指すため、この基準は貯蔵容器そのものの安全装置とは別に確認する必要があります。

配管にも専用の安全装置があるとは思いませんでした。

はい、貯蔵容器と配管は別々の基準で守られています。
次は貯蔵容器側の安全装置の考え方を見てみましょう。

貯蔵容器の安全装置はなぜ配管と基準の考え方が違うのか

貯蔵容器と配管それぞれに安全装置と圧力計が取り付けられているイメージ
配管の安全装置が最高使用圧力を基準にするのに対し、貯蔵容器等に設ける安全装置は容器の耐圧試験圧力を基準にします。
さらに消火剤の種類や容器の種類ごとに、上限と下限の圧力が個別の表で細かく区分されています。
(二) (一)に掲げる以外の容器等に設ける安全装置は、第三、一から三まで及び四(貯蔵タンクに設けるものを除く。)の規定の例によるほか、次のイからハまでに適合するものでなければならない。(略)ハ 作動圧力範囲又は作動温度範囲は、次に定めるところによること。(イ)封板式のものにあつては、次の表の上欄に掲げる当該安全装置を設ける容器等の種別に応じ、同表下欄に掲げる作動圧力範囲で作動するものであること。(不活性ガス消火設備等の容器弁、安全装置及び破壊板の基準 第四、一、(二)、ハ、(イ))
貯蔵容器の安全装置は、容器等の耐圧試験圧力を基準にした割合で上限と下限が決まります。
不活性ガス消火設備用(二酸化炭素)は耐圧試験圧力そのものを上限、その0.7倍を下限にするなど、消火剤の種類ごとに掛ける割合が変わります。
これは配管の安全装置が最高使用圧力を基準にするのとは基準点そのものが違うため、同じ「作動圧力範囲」という言葉でも計算のもとになる数値を取り違えると数値がずれてしまいます。
点検記録に上限・下限の圧力が出てきたら、その数値が容器の耐圧試験圧力を基準にしたものか、配管の最高使用圧力を基準にしたものかを先に確認することが欠かせません。

同じ「作動圧力範囲」でも、基準にする数字が違うんですね。

はい、混同すると数字の意味を取り違えます。
最後に表示事項を見てみましょう。

安全装置にはどんな表示が義務付けられているのか

銘板とチェックリストを確認する虫眼鏡のイメージ
安全装置が基準に適合しているかどうかは、現場に表示された事項からも手がかりが得られます。
表示すべき事項は、蒸気用以外の安全弁と、封板式・溶栓式・封板溶栓式のものとで項目数が異なります。
(一)蒸気用以外の安全弁には、次に掲げる事項をその弁箱の見やすい箇所に容易に消えないように表示するものとする。イ 製造年月 ロ 製造者名又は商標 ハ 型式番号 ニ 充てんガスの種別 ホ 呼び径 ヘ 弁座口径又はのど部径 ト 吹出圧力 チ 吹止り圧力(不活性ガス消火設備等の容器弁、安全装置及び破壊板の基準 第六、二、(一))
蒸気用以外の安全弁には、製造年月から吹止り圧力まで8項目の表示が義務付けられています。
一方、封板式・溶栓式・封板溶栓式のもの(容器弁に設けられたものを除く。)は、製造者名又は商標・型式番号・充てんガスの種別・作動圧力又は作動温度の標準値の4項目で足ります。
繰り返し使える蒸気用以外の安全弁のほうが表示項目が多いのは、弁座口径や吹出・吹止り圧力など個体ごとの性能値まで確認できるようにするためと考えられます。
点検の際は、まず安全装置がどちらの方式かを見分け、それぞれの項目がそろって表示されているかを確認します。

方式によって表示の項目数まで違うんですね。

はい、方式の見分け方を覚えておけば十分です。
最後によくある質問を見てみましょう。

よくある質問

Q安全装置にはどんな設置場所がありますか?
A貯蔵容器等に設けるものと、配管に設けるものの2種類があります。それぞれ基準となる圧力の考え方が異なります。
Q継目なし容器と溶接容器では使える安全装置の方式は同じですか?
Aいいえ。継目なし容器等は対象によって封板式だけに絞られる場合がありますが、溶接容器等では蒸気用以外の安全弁を含む4方式から選べます。
Q配管の安全装置の作動圧力はどうやって決まりますか?
A配管の蒸気用以外の安全弁は最高使用圧力の1.5倍以下を上限に、吹出1.1倍以上・吹止り0.88倍以上で作動します。封板式もほぼ同じ倍率の考え方です。
Q安全装置の表示はどこで確認すればよいですか?
A蒸気用以外の安全弁は弁箱に8項目、封板式等は封板保持金具またはナットに4項目が表示されています。点検資格者が確認する際の手がかりになります。

まとめ

安全装置の基準は消防法施行規則の複数の条文から、この告示第四にまとめて委任されている
不活性ガス・ハロゲン化物・粉末の3つの消火設備に共通する規定である
継目なし容器等の安全装置は容器弁に組み込まれる方式に限られ、対象によっては封板式だけに絞られる
溶接容器等は蒸気用以外の安全弁を含む4つの方式から選べる
配管の蒸気用以外の安全弁は最高使用圧力の1.5倍以下を上限に、吹出1.1倍以上・吹止り0.88倍以上で作動する
貯蔵容器の安全装置は配管と異なり容器の耐圧試験圧力を基準に上限と下限が決まる
表示は蒸気用以外の安全弁で8項目、封板式等で4項目と方式によって異なる

安全装置がここまで細かく分かれているとは驚きました!
今度は表示の項目を確認してみます。

設置場所と方式の見分け方を覚えておけば十分です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第19条第5項、第20条第4項、第21条第4項
  • 不活性ガス消火設備等の容器弁、安全装置及び破壊板の基準(昭和51年8月26日消防庁告示第9号)第一、第四、第六

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。運用は所轄消防署ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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