泡消火設備の点検で「発泡倍率は基準を満たしていました」と報告書に書いてあっても、どうやって倍率を測ったのかまで説明できる防火管理者は多くありません。
たん白泡の消火薬剤を使う設備と水成膜泡の消火薬剤を使う設備では、同じ発泡倍率を測るのに使う道具がまったく違います。
片方はコンテナと秤で重さを量り、もう片方は目盛付きシリンダで体積を直接読みます。
この記事では発泡倍率と25%還元時間という2つの数字を、消防庁の試験基準に沿ってどう測るのかを整理します。
点検報告書に発泡倍率は合格と書いてあるんですが、正直どうやって測っているのか想像がつきません。
専用のコンテナやシリンダで泡の重さと体積を量って計算します。
使う道具は泡消火薬剤の種類で変わります。
薬剤の種類で道具まで変わるんですか。
てっきりどれも同じ器具だと思っていました。
泡の性質が違うので、量り方も分けられています。
順番に見ていきましょう。
- 発泡倍率は泡水溶液の量に対して泡がどれだけ体積を増やしたかを表す比率で、設置後試験の合否判定基準は5倍以上です
- たん白泡消火薬剤・合成界面活性剤泡消火薬剤は1,400mLコンテナと秤を使い、重さから発泡倍率を計算します
- 水成膜泡消火薬剤だけは1,000mL目盛付シリンダを使い、泡の体積を直接読み取ります
- 25%還元時間の合否判定基準はたん白泡・水成膜泡が60秒以上、界面活性剤泡が30秒以上です
- これらは設置工事完了後の泡放射試験で、放射圧力や希釈容量濃度とあわせて確認されます
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目次
発泡倍率とはそもそも何を確かめる数字なのか

まず薬剤そのものの規格を定めた省令から、この数字の出どころを確認します。
薬剤メーカーが薬剤そのものを世に出すときの規格では六倍以上(水成膜泡は五倍以上)が求められていますが、これは標準発泡ノズルという決まった条件での話です。
一方、設備を設置したあとの現場で行う試験では、条件が少し緩んで5倍以上であれば合格になります。
薬剤としての基準と、設備としての設置後試験の基準は、似ていますが別の数字だと覚えておくと混乱しません。
次の項目からは、この5倍という数字を現場でどうやって実際に測るのかを見ていきます。
薬剤の基準と設置後試験の基準で数字が違うというのは意外でした。
測る場面が違うので条件も変わるんです。
現場の試験では5倍以上と覚えておけば十分です。
たん白泡と界面活性剤泡はなぜコンテナと秤で量るのか

実際にどんな道具をそろえるのか、消防庁の通知が示す測定方法を確認します。
泡試料コレクタという道具で泡を1,400mLのコンテナいっぱいに採取し、コンテナごと秤に乗せて重さを量ります。
コンテナ自体の重さを差し引いた「泡だけの重さ」が軽ければ軽いほど、同じ1,400mLの中に空気をたくさん含んでいる、つまり発泡倍率が高いということになります。
式で表すと1,400mL÷(全重量-コンテナ重量)=発泡倍率という、体積を重さで割るだけのシンプルな計算です。
現場でこの試験を行うときは、秤の目盛りをグラム単位まで正確に読む作業が欠かせません。
泡の量を測るのに秤を使うというのは、ちょっと意外な組み合わせですね。
体積は同じ1,400mLに固定しているので、重さだけで倍率が分かる仕組みです。
次は違う薬剤の測り方を見てみましょう。
水成膜泡はなぜ重さでなくシリンダの目盛りで読み取るのか

コンテナと秤の組み合わせから、何が変わるのかを見比べてみましょう。
コレクタで泡を採取するところまではたん白泡と同じですが、受け皿が1,000mL目盛付きシリンダに変わり、そこに満たした泡試料の重さを量ります。
式そのものは「体積÷(全重量-容器重量)」という同じ考え方で、1,000mLをシリンダ重量を除いた全重量で割って発泡倍率を求めます。
なぜ薬剤の種類によって容器の形が違うのかまでは通知に書かれていませんが、薬剤ごとに専用の測定方法が分けて定められていること自体は確かな事実です。
現場で試験に立ち会うときは、使っている薬剤の種類に合った器具が用意されているかをまず確認しましょう。
うちの設備がどっちの薬剤を使っているか、今度点検業者に確認してみます。
薬剤の銘柄表示を見れば種類が分かります。
次はもう一つの数字、還元時間の測り方です。
25%還元時間はどうやって計測するのか

名前だけでは分かりにくいので、実際の測り方から中身を確認します。
発泡倍率を測ったときの泡試料をそのまま使い、正味重量を4等分した量が容器の底にたまるまでの時間をストップウォッチで計ります。
たとえば正味重量が180gなら、その4分の1にあたる45mLの液がたまる時間を測るという具合です。
合否判定基準はたん白泡・水成膜泡が60秒以上、合成界面活性剤泡が30秒以上で、時間が長いほど泡が長持ちする薬剤ということになります。
発泡倍率が高くても還元時間が短ければ、泡がすぐに崩れて燃焼面を覆い続けられないため、2つの数字は必ずセットで確認します。
発泡倍率だけでなく、長持ちするかどうかも別に確認しているんですね。
そのとおりで、泡立ちの良さと泡の持続力は別の性質です。
最後にこれらがどの試験で確認されるかをまとめます。
発泡倍率と25%還元時間はどんな場面で確認されるのか

最後に、これらがどの試験の中で・何とあわせて確認されるのかを整理します。
同じ試験では、放射した水量と泡消火薬剤量から求める希釈容量濃度(3〜4%または6〜8%)もあわせて測定されます。
消防設備士等はこれら3つの数値をすべて試験結果報告書に記入し、放射圧力や放射状況の目視確認と合わせて消防検査に臨みます。
つまり点検票の「発泡倍率 合格」という一行の裏には、コンテナやシリンダを使った実測と、複数の基準を突き合わせる作業が隠れているということです。
数字の意味が分かれば、次に点検報告書を受け取ったときの見え方が変わるはずです。
希釈容量濃度まで含めて3つの数字がそろって初めて合格なんですね。
はい、どれか一つでも欠けると再試験になります。
次に報告書を見るときはぜひ思い出してください。
よくある質問
まとめ
発泡倍率も還元時間も、ちゃんと道具と数字の根拠があるんですね!
はい、道具の違いまで知っておくと点検の見方が変わります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令第十二条(発泡性能)
- 消防法施行規則第十九条(泡消火設備に関する基準)
- 消防庁「消防用設備等の試験基準」第5 泡消火設備 泡放射試験(固定式、低発泡によるもの)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





