地震のあと、天井から下がる透明な板にひびが入っていても、通路が通れれば営業を再開してよいのでしょうか。
防煙垂れ壁は普段目立ちませんが、火災時に煙の広がりを抑えて排煙を助ける建築設備です。
結論は、割れた場所へ近づかず、落下範囲を立入制限し、防煙区画と排煙設備を一体で専門確認してから再開範囲を決めることです。
落下危険と煙制御機能の低下を分けて記録し、BCPの業務再開条件へつなげます。
ひびだけなら、下を通らせてもええですか?
まず真下と破片の飛散範囲へ人を入れません。
割れたガラスだけ交換したら終わりですか?
支持金物と排煙区画まで確認しましょう。
- 割れた防煙垂れ壁の真下へ人を入れません。
- コーンやロープで落下範囲を立入制限します。
- 同じ防煙区画の壁と排煙口も確認します。
- 位置、ひび、欠損、支持部、破片を写真と図面で記録します。
- 専門家の確認と復旧記録を営業再開の条件にします。
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目次
防煙垂れ壁が割れていても営業を再開してよいのか

結論からいうと、通路が通れるという理由だけで通常どおり再開しません。
ガラス片の落下だけでなく、火災時に煙を区切る機能が損なわれた可能性があります。
建築基準法第8条は、所有者や管理者などに建築物の敷地、構造、建築設備を常時適法な状態に維持する努力を求めています。
防煙壁は、排煙設備を構成する煙を区画する部位です。
初動は触ることではなく、近づけないことです。
真下と破片が飛ぶ範囲を止め、別の避難経路を確保します。
そのうえで、損傷位置と営業を止める範囲を責任者へ共有します。
再開は建物全体の一括判断ではなく、影響区画ごとに決めます。
通路が使えても安全とは限らんのですね?
落下と煙の2つを確認してください。
どの場所と部材を対象に確認するのか

損傷した一枚だけでなく、同じ天井ラインと防煙区画を図面でたどります。
地震の揺れは支持金物や隣接部へも作用している可能性があります。
- 割れ、欠け、変形がある防煙垂れ壁
- 天井との取付部、吊り金物、枠
- 同じ防煙区画にある固定式・可動式の防煙壁
- 排煙口、自然排煙窓、手動開放装置
- 直下の通路、売場、待機場所、避難経路
国土交通省の保全資料は、防煙壁について劣化、損傷、変形を確認し、可動式なら作動状況も確認する考え方を示しています。
ガラスが残って見えても、固定部が緩んでいれば落下のおそれがあります。
図面の防煙区画と現物の損傷位置を重ねて確認します。
在館者を通さない範囲は、破片の落下範囲と代替避難経路を見て決めます。
割れた一枚だけ撮れば足りますか?
取付部と同じ区画も記録しましょう。
立入制限から復旧まで何を決めるのか

安全な場所から損傷を確認し、触らずに写真を撮ります。
破片を片付ける前に、場所と範囲が分かる全景と近景を残します。
- 在館者を離し、真下と周囲を立入制限する
- 別の避難経路を確保して案内する
- 階、区画、通路名、損傷時刻を記録する
- ひび、欠損、傾き、支持部、落下物を撮影する
- 同じ区画の排煙口と開放装置を確認する
- 建築士や専門業者へ図面と記録を渡す
- 復旧内容と使用再開範囲を責任者が承認する
清掃担当者だけで破片を片付け、何が壊れたか分からなくなる状態を避けます。
記録は修理依頼と再開判断の共通資料にします。
- 発見日時と発見者
- 損傷した階、区画、通路名
- 立入制限を始めた時刻と責任者
- 専門家へ渡した写真と図面
仮囲いを置く場合も、避難口や排煙口の操作を妨げてはいけません。
避難動線と排煙操作を残した配置にします。
先に破片を掃除してもええですか?
安全を確保し、撮影してから専門家へつなぎます。
ガラスを外せば安全と思いやすいのはなぜか

落下しそうなガラスを撤去すれば、頭上の危険は一時的に減ります。
しかし防煙垂れ壁がなくなれば、火災時の煙が隣の区画へ広がりやすくなります。
落下危険がなくなったことと、防煙機能が復旧したことは別です。
片方だけで通常営業へ戻さないようにします。
- ひびが小さいため放置した
- ガラスを外して通路だけ再開した
- 破片を片付け、損傷位置を記録しなかった
- 固定式だけ確認し、可動式防煙壁を見なかった
- 仮囲いで排煙口や避難経路を塞いだ
応急措置は恒久復旧ではありません。
残った機能と失われた機能を整理し、使用制限の期限と解除条件を書面にします。
ガラスを外したら通路は再開できますか?
防煙機能の代替と復旧も必要です。
明日から防煙垂れ壁の損傷対応をどう確認するのか

平常時に、図面、定期報告書、緊急連絡先、立入制限資材を一か所へまとめます。
現場担当者が最初の5分で行うことを短い手順にします。
- 防煙区画図と防煙垂れ壁の位置一覧を用意する
- コーン、ロープ、掲示物の保管場所を決める
- 建築士、専門業者、ビル管理会社の連絡順を決める
- 落下物を発見した人が触らず報告する訓練を行う
- 代替避難経路と排煙口操作への影響を確認する
- 区画ごとの停止、縮小再開、通常再開の条件を決める
- 復旧記録をBCPの見直しへ反映する
訓練では、発見から立入制限、図面照合、専門家への連絡まで実際に動かします。
担当者不在時の代行者と判断権限も確認してください。
復旧後は新しい部材だけでなく、周囲の固定、作動、表示、障害物の有無を確認します。
最後に立入制限を解除した時刻と承認者を残します。
業者の連絡先だけあれば足りますか?
止める範囲と再開条件まで決めましょう。
よくある質問
まとめ
防煙区画図と立入資材を確認します!
止める範囲と再開条件を整えましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- e-Gov法令検索 建築基準法
- e-Gov法令検索 建築基準法施行令
- 国土交通省 建築基準法に基づく定期報告制度について
- 国土交通省 特定建築物定期調査と建築設備等定期検査との重複について
- 国土交通省 建築保全業務共通仕様書
- 国土交通省 熊本地震における防煙垂れ壁の落下に関する説明
- 内閣府 事業継続ガイドライン 令和5年3月
※本記事は公表されている法令および国土交通省、内閣府の資料に基づく一般的な解説です。防煙壁の種類、排煙設備の構成、定期報告の対象、災害後の立入制限と営業再開の判断は、建物の設計、損傷状況、所在地の運用によって異なります。実際の対応は建築士、専門業者、施設管理会社、特定行政庁、所轄消防署へご確認ください。





