BLOG

物品販売業を営む店舗の避難階段はどれだけ幅がいるのか|建築基準法施行令第124条が定める床面積あたりの計算基準を解説

物品販売業を営む店舗の避難階段はどれだけ幅がいるのかを建築基準法施行令第124条から解説する記事のアイキャッチ画像

デパートやスーパーマーケットなど物品販売業を営む店舗には、避難階段の幅そのものを計算で決める専用の規定があります。
建築基準法施行令第124条は、床面積に応じて階段と出口の幅を求める式を定めています。
屋上広場を階とみなす規定や1.5倍の緩和など、見落としやすい条文も一緒に置かれています。
この記事では第124条の計算のしかたと見落としやすい点を、条文にそって解説します。

うちは3階に売場があるビルです。
避難階段の幅がいまのままで足りているのか心配になってきました。

物品販売業を営む店舗には、避難階段の幅そのものを床面積から計算する規定が別にあります。

普通の避難階段の基準とは別に、幅まで決まっているんですね。

はい、建築基準法施行令第124条が計算の仕方を定めています。
まずは自分の建物の売場面積を確認してみましょう。

この記事の結論
  • 物品販売業を営む店舗の避難階段等の幅は床面積から計算した数値以上にしなければなりません。
  • 避難階段・特別避難階段の幅の合計は、直上階以上のうち床面積が最大の階の床面積100平方メートルにつき60センチメートルが基準です。
  • 出口の幅の合計は各階の床面積100平方メートルにつき、地上階は27センチメートル、地階は36センチメートルです。
  • 1若しくは2の地上階だけを結ぶ階段や出口は幅を1.5倍とみなして計算できます
  • 屋上広場は幅の計算上階とみなされます

物品販売業を営む店舗の避難階段の幅を対象となる建築物・階段の幅・出口の幅・緩和と屋上広場の四つの枠で並べた図解

なぜ物品販売店舗だけ階段の幅を計算して決めるのか

物品販売店舗の売場から二つの階段へ向かう買い物客の流れを示す図
デパートやスーパーの売場は来客が集中しやすい場所です。
建築基準法施行令は物品販売店舗の避難階段に専用の幅の基準を置いています。
建築基準法施行令第124条第1項(柱書) 物品販売業を営む店舗の用途に供する建築物における避難階段、特別避難階段及びこれらに通ずる出入口の幅は、次の各号に定めるところによらなければならない
幅は床面積から計算して決める仕組みです。
避難階段そのものの構造は第122条・第123条が定めますが、物品販売業を営む店舗ではそれとは別に幅の数値を求める規定が第124条に置かれています。
売場は棚の間を回遊する買い物客が多く、火災時に階段へ向かう避難者の人数も一般の事務所より読みにくいためです。
この規定は普通の避難階段の要件に上乗せされるものであって、置き換えるものではありません。
まずは自分の建物が物品販売業を営む店舗の用途に当たるかどうかを確認するところから始めます。

うちは1階が売場で2階は事務所なんですが、この基準は関係ありますか。

売場部分が物品販売業を営む店舗の用途に供されていれば対象です。
まずは避難階段の位置を図面で確認しましょう。

どの階段にこの計算が適用されるのか

3階建て以上の物品販売店舗を貫く避難階段を示す図
第124条の幅の基準は、すべての階段に及ぶわけではありません。
まず自分の建物のどの階段が対象になるのかを条文から見ておきます。
建築基準法施行令第122条第2項 3階以上の階を物品販売業を営む店舗の用途に供する建築物にあつては、各階の売場及び屋上広場に通ずる二以上の直通階段を設け、これを次条の規定による避難階段又は特別避難階段としなければならない。
対象は避難階段・特別避難階段そのものです。
3階以上の階を物品販売業を営む店舗の用途に供する建築物では、各階の売場と屋上広場に通じる二以上の直通階段を避難階段か特別避難階段にしなければなりません(第122条第2項)。
これに加えて5階以上の階や地下2階以下の階に通じる直通階段も、一般の建築物と同じく第122条第1項の対象になります。
第124条はこの二とおりのどちらで避難階段になった場合でも、幅の計算に共通して適用されます。
自分の建物が何階建てで売場が何階まであるかを、まず図面で確かめてください。

うちは3階までが売場で4階は倉庫です。
この場合は対象になりますか。

はい、3階以上を売場に使っていれば対象です。
次は幅の計算式を見ていきましょう。

幅と出口の合計はどう計算するのか

床面積から避難階段の幅を巻尺で測る図
対象になったら、次は具体的な数値の出し方です。
条文は階段の幅と出口の幅を別々の式で計算するよう求めています。
建築基準法施行令第124条第1項 一 各階における避難階段及び特別避難階段の幅の合計は、その直上階以上の階(地階にあつては、当該階以下の階)のうち床面積が最大の階における床面積100平方メートルにつき60センチメートルの割合で計算した数値以上とすること。 二 各階における避難階段及び特別避難階段に通ずる出入口の幅の合計は、各階ごとにその階の床面積100平方メートルにつき、地上階にあつては27センチメートル、地階にあつては36センチメートルの割合で計算した数値以上とすること
階段の幅は自分の階ではなく上の階の床面積で決まります。
第一号は、各階の避難階段・特別避難階段の幅の合計を、直上階以上のうち床面積が最大の階の床面積100平方メートルにつき60センチメートルの割合で計算した数値以上とするよう求めています。
地階の場合は逆に、当該階以下でいちばん床面積が大きい階を基準にします。
第二号は出入口の幅の合計についての規定で、各階の床面積100平方メートルにつき地上階は27センチメートル、地階は36センチメートルの割合で計算した数値以上とすることを求めています。
たとえば直上階以上で最大の売場が300平方メートルなら、階段幅の合計は180センチメートル以上が目安になります。

床面積100平方メートルにつき60センチメートルと言われても、うちの階段で足りているのか分かりません。

延床面積と現在の階段幅を並べて計算すれば数値が出ます。
次は見落としやすい緩和と屋上広場の扱いを確認しましょう。

屋上広場や緩和の仕組みを見落としていないか

屋上広場を階とみなして避難階段の幅を計算する図
計算式だけを見ていると、見落としやすい条文が2つあります。
どちらも幅の数値そのものを動かす規定です。
建築基準法施行令第124条第2項・第3項 2 前項に規定する所要幅の計算に関しては、もつぱら1若しくは2の地上階から避難階若しくは地上に通ずる避難階段及び特別避難階段又はこれらに通ずる出入口については、その幅が1.5倍あるものとみなすことができる。 3 前二項の規定の適用に関しては、屋上広場は、階とみなす
屋上広場は面積計算のうえでは1つの階です。
第3項は屋上広場を階とみなすと定めているため、屋上広場に通じる階段や出口も第124条の幅の計算に含めて数えなければなりません。
屋上を休憩スペースとして扱っていても、条文上は避難階段の計算対象から外れません。
一方で第2項には緩和もあり、1若しくは2の地上階だけを結ぶ避難階段や出口は、幅を1.5倍とみなして計算できます。
どちらの規定も見落とすと数値がずれるので、階段ごとに何階から何階までを結んでいるかを整理してから計算してください。

屋上は物置みたいに使っているので、計算に入れる発想がありませんでした。

第124条第3項が屋上広場を階とみなすと定めています。
屋上に通じる階段も忘れずに含めてください。

明日からなにを確認すればよいのか

設計図面と計算結果を照合して確認する図
幅の数値は建築確認の時点で決まっていますが、確認は防火管理者にもできます。
最後に明日からの手順を整理します。
消防法第八条の二の四 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設について避難の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理し、かつ、防火戸についてその閉鎖の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理しなければならない。
幅の数値そのものは工事のときに決まっています。
防火管理者ができるのは、その数値が意味を持つ状態を保つ確認です。
まず確認済証や設計図書で、自分の建物の避難階段が第124条のどちらの号で計算されているかを控えます。
次に売場のレイアウト変更や増床があったときは床面積が変わっていないかを確認し、変わっていれば建築士や所轄の建築主事に再計算を相談します。
最後に消防法第8条の2の4のとおり、階段と出入口に避難の支障になる物件を置かない状態を消防計画の自主検査に組み込んでください。

レイアウト変更のときも確認が要るんですね。

はい、床面積が変わると幅の計算も変わります。
次に増床する前に一度声をかけてください。

よくある質問

Q床面積が小さい店舗でも第124条は適用されますか?
A第124条は物品販売業を営む店舗の用途に供する建築物のうち、避難階段又は特別避難階段を設けなければならない階段に適用されます。避難階段そのものが不要な小規模な建築物には、この幅の計算は関係しません。
Q屋上を機械室だけに使っていても屋上広場として数えますか?
A建築基準法施行令第124条第3項は屋上広場を階とみなすと定めており、使い方の名目ではなく屋上に人が出入りする広場としての実態で判断されます。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。
Q幅の合計が足りないとどうなりますか?
A建築確認や検査済証の交付が受けられず、既存の建築物であれば既存不適格として増改築の際に是正を求められることがあります。
Q1.5倍の緩和はどんな階段にも使えますか?
A使えません。緩和が対象とするのは、もっぱら1若しくは2の地上階から避難階若しくは地上に通ずる避難階段・特別避難階段又はこれらの出入口に限られます。

まとめ

物品販売業を営む店舗の避難階段等の幅は床面積から計算した数値以上にしなければなりません。
避難階段・特別避難階段の幅の合計は、直上階以上のうち床面積が最大の階の床面積100平方メートルにつき60センチメートルが基準です。
出口の幅の合計は各階の床面積100平方メートルにつき、地上階は27センチメートル、地階は36センチメートルです。
対象になるのは第122条により避難階段・特別避難階段が必要になった階段です。
屋上広場は幅の計算上、階とみなされます
1若しくは2の地上階だけを結ぶ階段や出口は幅を1.5倍とみなして計算できます。
レイアウト変更や増床で床面積が変わったら、幅の再計算が必要です。

床面積が変わったら幅の計算をやり直します!
次に売場を広げるときは先に相談します。

計算のやり直しもまとめてご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第122条第2項・第124条
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第8条の2の4

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
物品販売業を営む店舗の避難階段はどれだけ幅がいるのかを建築基準法施行令第124条から解説する記事のアイキャッチ画像
デパートやスーパーマーケットなど物品販売業を営む店舗には、避難階段の幅そのものを計算で決める専用の規定があります。 建築基準法施行令第124条は、床面積に応じて階段と出口の幅を求める式を定めています。 屋上広場を階とみな...