蓄電池設備は非常電源の代表的な選択肢のひとつですが、常用電源が復旧するまでの切替そのものにも細かな耐久試験が課されていることは意外と知られていません。
消防法施行規則は蓄電池設備の構造・性能を消防庁長官が定める告示に委ねており、自動切替装置の耐久性からキュービクル式の内部構造まで独自の基準があります。
この記事では蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)第二・三(九)と第二・六に定められた切替装置の耐久試験と内部の基準を、条文に沿って解説します。
切替装置の耐久試験・内部の防食塗装・変電設備併設時の区画の3つを押さえれば、キュービクル式蓄電池設備の点検ポイントが見えてきます。
うちのキュービクル式蓄電池設備、停電のときにちゃんと切り替わるか気になっています。
そんなところまで基準があるんですか。
はい、自動切替装置には耐久試験が課されていますし、内部の造りにも基準があります。
順番に見ていきましょう。
耐久試験と言われると、かなり厳しいものを想像してしまいます。
条文どおりに教えてください。
はい、告示の条文を一つずつ確認していけば難しくありません。
まずは委任の構造から見ていきます。
- 切替装置の耐久試験と内部構造の基準は消防法施行規則第12条第1項第4号ハの委任を受けた蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)第二にあります。
- 自動切替装置には定格電圧プラスマイナス10パーセントの電圧を加えて動作を確認する試験が課されます。
- 切替作動は100回繰り返し、異常を生じないことが求められます。
- キュービクル内部の蓄電池を収納する部分には耐酸又は耐アルカリ性能を有する塗装が必要です。
- 変電設備を併設する場合は外箱と同一の材料で蓄電池設備部分と区画します。
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目次
蓄電池設備はなぜ切替装置の耐久試験まで告示で定めているのか

この委任のしくみは、切替装置の耐久試験やキュービクル式の内部構造にまで及びます。
この告示(昭和48年消防庁告示第2号)は「第二 構造及び性能」の中で、蓄電池設備そのものの基本性能・蓄電池の種類・充電装置・逆変換装置・キュービクル式の構造まで章立てで細かく定めています。
充電装置の遮断器や絶縁性能、温度上昇値の基準はすでに別の記事で解説していますが、告示にはさらに切替装置の耐久試験という項目が残っています。
これは常用電源が止まったときに確実に非常電源へ切り替わるかどうかを、実際に繰り返し動作させて確かめる規定です。
この記事では、この切替装置の試験と、キュービクル式ならではの内部の基準を順番に見ていきます。
なるほど、告示のほうにさらに細かい試験があるんですね。
そこも教えてください。
はい、まずは自動切替装置がどんな装置を指すのか、条文で確認しましょう。
自動切替装置とはどのような装置を指すのか

告示はこの装置そのものに対して、耐久性を確かめる試験条件を定めています。
条文が指しているのは「常用電源が停電した場合に自動的に蓄電池設備に切り替える装置」で、直交変換装置の有無を問わず、蓄電池設備であれば必ず組み込まれる装置です。
試験はこの装置の両端に定格電圧プラスマイナス10パーセントという幅のある電圧を加えて行うため、電源電圧が多少ぶれても正しく動くことまで確かめる設計になっています。
つまり単に切り替わるかどうかだけでなく、電圧が変動した状態でも機能するかを試験の入口から組み込んでいるわけです。
次はこの装置がどのように繰り返し試験されるのかを見ていきます。
電圧を変えてまで試験するんですね。
結構シビアだなと感じました。
はい、だからこそ次に説明する回数の試験が重要になります。
切替作動100回の試験はどのように行われるのか

蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)第二・三(九)が定める4つのポイントを、箇条書きで確認します。
- 試験の対象は自動的に蓄電池設備に切り替える装置そのものです。
- 装置の両端に定格電圧プラスマイナス10パーセントの電圧を加えます。
- 切替作動を100回繰り返して行います。
- その間、切替機能に異常を生じないことが求められます。
対象は蓄電池設備であれば必ず備える自動切替装置で、直交変換装置の有無にかかわらず同じ試験を受けます。
100回という反復回数は、一度や二度の動作確認では見つからない摩耗や接点の劣化を洗い出すための基準と考えられます。
点検報告等で切替試験の実施記録を確認する際は、この100回・プラスマイナス10パーセントという条件が守られているかが着眼点になります。
次は、キュービクル式ならではの内部の基準に目を移します。
100回も繰り返すんですね。
点検記録を見るときの参考になります。
はい、次はキュービクル内部の基準を見ていきましょう。
キュービクル内部の蓄電池収納部分になぜ防食塗装が必要なのか

なかでも見落としやすいのが、蓄電池を収納する部分の塗装です。
鉛蓄電池やアルカリ蓄電池のように液面確認構造を持つタイプは、酸霧やアルカリ霧が内部の金属部分を腐食させるおそれがあるため、収納部分の内部に耐酸又は耐アルカリ性能を有する塗装を施すことが求められます。
ただし条文には例外があり、制御弁式又はシール形の蓄電池は密閉構造で霧が発生しないため、この塗装を施さなくてもよいとされています。
現場で見落としやすいのはこの例外の適用範囲で、同じキュービクル内に複数種類の蓄電池が収納されている場合は種類ごとに要否を確認する必要があります。
塗装の有無だけを見て一律に判断すると、必要な塗装を見落とすか、不要な工事を求めてしまうかのどちらかにつながります。
うちは鉛蓄電池なんですが、塗装があるかどうかまでは見ていませんでした。
次の点検で確認してみます。
はい、蓄電池の種類と塗装の有無をセットで確認してください。
変電設備を併設する蓄電池設備は何を確認すればよいのか

この場合は内部の区画についても告示が基準を定めています。
変電設備を同じ外箱に収める場合、蓄電池設備に係る部分と変電設備に係る部分は外箱と同一の材料で区画しなければならず、素材の異なる簡易な仕切り板などでは基準を満たしません。
さらに区画を貫通して配線する部分は、金属管又は金属製可とう電線管を容易に接続できる構造にしておく必要があります。
点検では、まず外箱内に変電設備が併設されているかどうかを確認し、併設されていれば区画の材料と電線貫通部の構造の2点を重点的に見ることになります。
これで切替装置の耐久試験からキュービクル内部の基準まで、蓄電池設備の基準が定める仕組みをひととおり確認できました。
変電設備と一緒になっているケースは見落としがちですね。
今度の点検で確認します。
はい、区画の材料と電線の貫通部を忘れずに見てください。
よくある質問
まとめ
切替装置の耐久試験とキュービクル内部の基準、それぞれの確認ポイントがよく分かりました!
キュービクル式蓄電池設備の点検や更新でお困りの際はご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条第1項第4号ハ
- 蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)第二 三(九) 六(三)(六)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





