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雑居ビルの一斉立入検査でなにが分かったのか|歌舞伎町ビル火災後に9割超が違反だった実態を解説

雑居ビルの一斉立入検査で何が問われたのか

小規模雑居ビルの一斉立入検査結果を踏まえた当面の対応等について(平成13年11月30日 消防予第437号)は、歌舞伎町の雑居ビル火災を受けて実施された一斉立入検査の結果をまとめた通知です。
死者を出したこの火災のあと、消防庁は全国の小規模雑居ビルを対象に緊急点検を行い、調査対象の9割を超える建物で何らかの違反が見つかりました。
通知が示したのは避難経路・防火管理・防炎物品・点検報告という4つの重点項目と、是正が遅れた場合の措置命令までの流れです。
この記事では通知の中身と、現在の法律にどうつながっているかを確認します

うちのビルも複数のテナントが入っていて、管理は各店バラバラです。

実はそれ、統括して防火管理をする仕組みが必要になります。

歌舞伎町の火災がきっかけであんな厳しい点検があったんですね。

はい、その結果と現在の制度のつながりを見ていきましょう。

この記事の結論
  • 小規模雑居ビルの一斉立入検査結果を踏まえた当面の対応等については歌舞伎町の雑居ビル火災を受けた一斉立入検査の結果をまとめた通知です
  • 立入検査では調査対象の9割を超える防火対象物で何らかの違反が指摘されました
  • 特に自衛消防訓練の未実施は8割を超え、防火戸の管理にも違反が見られました
  • 是正の履行期限は工事を伴わなければ1週間程度が目安とされました
  • 当時の共同防火管理協議は今の統括防火管理者制度に引き継がれています

歌舞伎町ビル火災から一斉立入検査を経て自主点検の徹底に至る流れ

歌舞伎町の雑居ビル火災はなぜ一斉立入検査を招いたのか

複数のテナントが入る雑居ビルと駆けつけた消防車
事故からわずか2日で緊急点検が動き出しました。
まずはそのきっかけになった火災と通知の関係を確認します。
小規模雑居ビルの一斉立入検査結果を踏まえた当面の対応等について(平成13年11月30日 消防予第437号 消防庁予防課長) 去る9月1日に東京都新宿区歌舞伎町の雑居ビルにおいて発生した火災により多数の死者が発生したことに鑑み、消防庁においては、「小規模雑居ビル火災の再発防止について」(平成13年9月3日付け消防予第308号消防庁長官通知)により、小規模雑居ビルの一斉立入検査の実施をお願いしたところですが、その結果を別添1のとおり取りまとめましたので、お知らせします。
歌舞伎町の火災はわずか2日で全国点検を動かすほどの大惨事でした。
消防庁は原因の究明を待たず、308号通知でまず全国の小規模雑居ビルの一斉立入検査を依頼しています。
この記事で扱う437号通知は、その立入検査の結果報告と是正指導をまとめたものです。
ひとつの建物の火災が、全国の雑居ビルの点検につながった経緯がここにあります。

それだけ被害が大きかったということなんですね。

はい、それだけ緊急性が高いと消防庁が判断したということです。

一斉立入検査はどんな建物を対象にしたのか

雑居ビルの廊下で防火戸を確認する立入検査の様子
対象になったのは特別な建物ではありません。
どこにでもある雑居ビルの構造そのものが対象でした。
小規模雑居ビルの一斉立入検査結果を踏まえた当面の対応等について(前掲) 今回実施した立入検査(以下「立入検査」という。)においては、調査対象の9割を超える防火対象物で何らかの違反が指摘されている
対象は飲食店や風俗営業等が同居する小規模な雑居ビルでした。
通知はあわせて共同防火管理協議事項届にも触れており、管理権原が複数に分かれるビルを主な対象にしていたことが読み取れます。
そうしたビルの9割超で何らかの違反が見つかったという数字は、当時の雑居ビルの多くが同じ弱点を抱えていたことを示しています。
特別な用途のビルだけの話ではなく、複数テナントが入る建物なら他人事ではありません。

うちも1階が飲食店、2階から上が事務所です。

それはまさにこの通知が想定した建物のかたちです。

立入検査ではどんな違反が重点的に指導されたのか

物品でふさがれた防火戸と消火設備の点検表
指摘は特別な設備の欠陥ではありませんでした。
日常の基本動作がそのまま数字に表れています。
小規模雑居ビルの一斉立入検査結果を踏まえた当面の対応等について(前掲) 立入検査において、避難器具について5割程度、避難施設の管理について3割程度、防火戸の管理について2割程度違反が見られた
指摘の中心は避難経路と防火管理の基本動作でした。
避難器具は5割程度、避難施設の管理は3割程度、防火戸の管理は2割程度に違反が見られています。
防火管理関係はさらに深刻で、自衛消防訓練の未実施が8割を超え、防火管理者選任届・消防計画の作成・共同防火管理協議事項届も6割程度が違反でした。
防炎物品の使用違反は4割程度、消防用設備等の点検・報告の違反も6割程度にのぼり、日常の運用が抜け落ちていた実態が浮かびます。

自衛消防訓練が8割も未実施だったんですか。

はい、設備よりも運用面の不備が目立った結果です。

実務で見落としやすいのはどこか

是正の書類を受け取るビル管理者と期限を示すカレンダー
「猶予があるから大丈夫」という考え方が一番危険です。
履行期限の具体的な目安を確認します。
小規模雑居ビルの一斉立入検査結果を踏まえた当面の対応等について(前掲) 改修計画等の提示がなされない場合又は提示がなされても是正が行われない場合は、警告、措置命令を発するなど必要な措置をとること。この場合、工事を伴わない場合は1週間程度、工事を伴う場合は1ヶ月から3ヶ月程度を目安として履行期限を設定し、是正の徹底を図ること。
履行期限は決して長くないと知っておく必要があります。
目安は工事を伴わなければ1週間程度、工事を伴っても1ヶ月から3ヶ月程度です。
物品の存置で通行が困難な場合など緊急性が高いときは、履行期限を置かず直ちに警告や措置命令の対象になり得ます。
また、通知が扱う「共同防火管理協議事項届」は当時の制度で、現在は消防法第8条の2にもとづく統括防火管理者の選任と協議に置き換わっています。
名称が変わっても、管理権原が分かれるビル全体を誰が取りまとめるかという考え方はいまも同じです。

共同防火管理協議事項届というのは初めて聞きました。

いまの統括防火管理者制度の前身にあたる手続きです。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストを手に廊下を巡視するスタッフ
通知が求めた考え方を、日常の点検に落とし込みます。
特別な設備投資は要りません。
消防法第8条の2 (略)その管理について権原が分かれている防火対象物の管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちからこれらの防火対象物の全体について防火管理上必要な業務を統括する防火管理者(統括防火管理者)を協議して定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物の全体についての消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設の管理その他当該防火対象物の全体についての防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
今日からできるのは点検と選任状況の確認です。
廊下・階段・避難口に物品が放置されていないか、防火戸の閉鎖障害がないかをまず巡視で確認します。
防炎物品への取替えと消防用設備等の点検・報告が期限どおりに行われているかもあわせて見ます。
管理権原が複数に分かれるビルでは、統括防火管理者が選任され全体の消防計画ができているかを確認してください。
気づいた不備は改修計画をすぐにまとめ、履行期限を意識して早期に是正することが二度目の火災を防ぎます。

まずは廊下の物品と統括防火管理者の選任を確認します。

はい、今日の巡視からさっそく始めてみてください。

よくある質問

Qこの通知はいまも効力がありますか?
A通知そのものを廃止する後継の通知は見当たりませんが、通知が求めた考え方の中心は、管理権原が分かれる防火対象物についての統括防火管理者制度(消防法第8条の2)に引き継がれています。実務では現在の条文と運用にもとづいて判断して差し支えありません。
Q一斉立入検査の対象になったのはどんな建物ですか?
A通知が扱ったのは、飲食店や風俗営業等の複数のテナントが入り管理権原が分かれる小規模な雑居ビルです。歌舞伎町の火災と同じような建物構成が主な対象になりました。
Q是正の履行期限はどれくらいですか?
A目安として、工事を伴わない是正は1週間程度、工事を伴う場合は1ヶ月から3ヶ月程度とされています。緊急性が高い場合は履行期限を置かず直ちに措置がとられることもあります。
Q共同防火管理協議事項届はいまも必要ですか?
A「共同防火管理協議事項届」という名称の制度は現在の消防法にはなく、統括防火管理者の選任と全体についての消防計画の作成に置き換わっています。管理権原が分かれるビルはいまもこの手続が必要です。

まとめ

小規模雑居ビルの一斉立入検査結果を踏まえた当面の対応等については平成13年11月30日、消防予第437号として発出されました
きっかけは平成13年9月1日の歌舞伎町ビル火災で、多数の死者を出す大惨事でした
その2日後には消防庁長官通知(308号)で全国に一斉立入検査の実施が依頼されました
立入検査では調査対象の9割超で何らかの違反が指摘されています
自衛消防訓練の未実施は8割を超え、防火管理の基本動作が抜け落ちていました
是正の履行期限は工事を伴わなければ1週間程度が目安とされました
共同防火管理協議は現在の統括防火管理者制度に引き継がれています

日々の巡視を積み重ねるだけで再発防止につながるんですね。

はい、その日々の積み重ねが大切です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 小規模雑居ビルの一斉立入検査結果を踏まえた当面の対応等について(平成13年11月30日 消防予第437号 消防庁予防課長)
  • 小規模雑居ビル火災の再発防止について(平成13年9月3日付け消防予第308号 消防庁長官通知)
  • 消防法第8条の2(統括防火管理者)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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