古い建物の厨房を改装して火力を上げたり、調理スペースを広げたりすることは珍しくありません。
その結果、消防法施行令第十三条が定める床面積や消費熱量の基準に、あとから該当することもあります。
このとき、現行の不活性ガス消火設備などの設置義務が遡って生じるのか、判断に迷う場面は少なくありません。
この記事では、既存の建物に基準が遡って及ばない原則と、逆に及んでしまう例外の境目をわかりやすく解説します。
厨房のコンロを大きいものに替えただけなんですが、消防設備を増やせと言われるんでしょうか。
結果的に施行令第十三条の基準に達したかどうかがポイントです。
まずは基準の中身を確認しましょう。
基準に達したら、もうあきらめるしかないですよね。
いいえ、そうとは限りません。
順番に確認していきましょう。
- 既存の建物で厨房設備等をあとから強化し、施行令第十三条の基準(床面積二百平方メートル以上等)に新たに該当することになっても、原則として現行の特殊消火設備の設置義務は遡って生じません。
- 根拠は消防法第十七条の二の五第一項が定める、いわゆる「既存不適格」の遡及適用除外です。
- ただし、工事の着手が施行後の増築・改築や、大規模の修繕・模様替えにあたる場合は、この除外が外れて現行基準が適用されます。
- 増築・改築の範囲は消防法施行令第三十四条の二が定める、床面積の合計が千平方メートル以上または基準時の延べ面積の二分の一以上となるものです。
- 大規模の修繕・模様替えの範囲は消防法施行令第三十四条の三が定める、主要構造部である壁について行う過半の修繕又は模様替えに限られます。
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目次
厨房設備をあとから強化したら消火設備の基準は変わるのか

まずは、その場合に適用される規定の原則を確認しましょう。
これは既存不適格と呼ばれる考え方で、消防法第十七条の二の五第一項が定めています。
建物が建てられた当時や増築工事の当時の基準に適合していれば、その後に基準が変わっても、いきなり現行基準への対応を迫られることはありません。
厨房設備を強化して施行令第十三条の基準に新しく該当した場合も、この原則がまず働きます。
次は、具体的にどんな強化が基準に該当するのかを確認しましょう。
基準が変わるたびに全部の建物が対象になったら、大変なことになりますよね。
そのための既存不適格という考え方です。
次は具体的な基準の中身を見てみましょう。
どんな場合に施行令第十三条の基準に新しく該当することになるのか

まずは条文が示す基準を確認しましょう。
厨房を隣の部屋まで広げたり、ボイラーや乾燥設備をまとめて増設したりすると、床面積の合計が二百平方メートルに届くことがあります。
なお、床面積の基準を満たしても、対象設備の最大消費熱量の合計が三百五十キロワット未満であれば、施行令第三十二条の特例で大型消火器に代えられる場合もあります。
熱源が複数の場所に分かれていると見落としやすいので、まとめて数える視点が欠かせません。
次は、床面積の基準に届いた建物に、現行基準がどこまで及ぶのかを見ていきましょう。
うちは何年か前にコンロを増やしたので、床面積が基準に近いかもしれません。
まずは基準に届いたかどうかを確認しましょう。
次は、届いても即座に義務が生じない理由を説明します。
なぜ強化しても原則は従前の基準のままなのか

その理由を条文で確認しましょう。
床面積の基準に届いた時点でも、その建物にはそれまでの従前の規定が適用され続けるというのが、この条文の考え方です。
既存の建物すべてに現行基準への対応を義務づけると、改修のたびに大きな費用負担が生じてしまうため、既存不適格という形で一定の配慮がされています。
厨房の火力を上げただけ、あるいは床面積が少し広がっただけといった変更は、この従前どおりの扱いに収まることがほとんどです。
ただし、この原則には例外もあります。次は、その例外の境目を確認しましょう。
じゃあ、うちはもう何もしなくていいということですか。
そうとは限りません。
例外に当たると話が変わります。
遡って現行基準がかかってしまうのはどんなときか

どこまでの工事が例外にあたるのかを確認しましょう。
増築・改築であれば、工事にかかる部分の床面積の合計が千平方メートル以上になるか、基準時の延べ面積の二分の一以上になる場合が対象です。
大規模の修繕・模様替えであれば、主要構造部である壁について行う工事が過半に達する場合に限られます。
厨房のコンロを入れ替えただけ、設備だけを増設しただけでは、これらの基準に届かないことがほとんどです。
一方で、厨房を含む階全体を大きく改修するような工事は、この例外に該当する可能性があります。
壁を作り替えるかどうかが、そんなに大きな境目になるんですね。
はい、そこがこの記事でいちばん見落としやすい点です。
最後に確認の手順を整理しましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

順番に見ていきましょう。
工事が増築・改築や壁の大規模な修繕・模様替えにあたらないか、床面積や工事範囲を図面と照らし合わせます。
該当しなければ従前の基準のままで問題ありませんが、判断に迷うときは自己判断で終わらせないことが大切です。
最終的な適否は所轄消防署の確認によって決まるため、増改築や修繕の計画段階で相談しておくと安心です。
定期点検の記録も、あとから経緯を説明する際の重要な資料になります。
工事の内容を記録しておくことが、あとで役立つんですね。
はい。
次はよくある質問を確認しましょう。
よくある質問
まとめ
厨房を強化しただけで、すぐに消防設備の追加が必要になるわけじゃないと分かって安心しました。
はい。
既存不適格の判断でお困りのことがあれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第十七条の二の五
- 消防法施行令第十三条第一項
- 消防法施行令第三十四条の二・第三十四条の三
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





