「うちのクリーニング工場、実は建築基準法違反かもしれません」——そう気づかされた事業者が全国にいました。
平成21年の報道をきっかけに国が実態調査を行ったところ、引火性溶剤を使うドライクリーニング工場の多くが、住宅街の用途地域で建築基準法第48条の規制に違反していることが分かったのです。
国土交通省と消防庁は連名でこの問題への対応を通知しました。
この記事では、その通知が示す安全対策と火災予防条例の基準の特例を㈱防災屋がわかりやすく解説します。
クリーニング店を営んでいますが、先日消防署から「建物の用途は大丈夫ですか」と聞かれました。
何のことか分からず困っています。
引火性溶剤を使うドライクリーニング工場は、住宅街に建っていると建築基準法の用途規制に違反していることがあるんです。
うちの工場も住宅が近いです。
今すぐ営業をやめないといけないのでしょうか。
いいえ、安全対策をとれば許可を受けて続けられる仕組みがあります。
国交省と消防庁が示した基準を一緒に見ていきましょう。
- 平成21年の報道を機にした全国実態調査で、住宅街に立地する多くのドライクリーニング工場が建築基準法第48条の用途規制違反と判明しました
- 対象は引火性溶剤を扱う少量危険物施設のドライクリーニング工場です
- 国土交通省は安全対策の技術的基準を示し、これを満たせば特定行政庁が第48条ただし書許可を行えるとしました
- 消防庁も、この技術的基準を満たせば火災予防条例(例)第34条の3の基準の特例を適用できるとしています
- 建築の許可と消防への同意・届出は別の手続きで、両方が必要です
▼

目次
ドライクリーニング工場はなぜ建築基準法違反に問われやすいのか

きっかけは平成21年の報道でした。
国が全国のドライクリーニング工場を調べたところ、思いがけない実態が見えてきました。
報道が全国調査のきっかけになりました。
調べてみると、第一種低層住居専用地域など住宅街の用途地域に立地しながら、建築基準法第48条の用途規制に違反しているドライクリーニング工場が各地で見つかったのです。
第48条は、住居専用地域には工場を建ててはならないという原則を定めています。
ただし、特定行政庁が許可した場合は例外が認められます。
違反が判明した工場のすべてを取り壊すのではなく、このただし書許可を活用する方向で、国土交通省と消防庁は対応を検討したのです。
住宅街にあるクリーニング屋さんなんて、どこにでもありそうです。
だからこそ全国的な問題になったんです。
次はどんな工場が対象になるのかを見ていきましょう。
どんな工場が特例の対象になるのか

対象になるのは、どんなドライクリーニング工場なのか。
条件は工場の立地と、扱う溶剤の量の両方にあります。
対象は溶剤の量が少ない工場に限られます。
まず溶剤の量です。指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物を貯蔵・取扱う、いわゆる少量危険物施設が対象です。
これより多い量を扱う工場は、そもそも別の許可制度の話になります。
次に立地です。第一種・第二種低層住居専用地域や第一種・第二種中高層住居専用地域では、工場そのものの立地が認められていません。
第一種・第二種住居地域や準住居地域では立地は可能でも、作業場の面積に制限がかかります。
自分の工場がどの用途地域にあり、作業場が何平方メートルなのかを確認することが、最初の一歩になります。
用途地域は役所に行けば分かるものなんでしょうか。
はい、都市計画課の窓口や自治体のホームページで確認できます。
まずは自分の建物の用途地域を調べてみてください。
通知は何を認めたのか

用途規制に違反していても、それだけで終わりではありません。
安全対策をとれば、消防側の基準にも特例が用意されています。
安全対策の中身が、免除の条件そのものです。
国土交通省が示した技術的基準には、洗濯機に不活性ガスを充填する、または洗濯槽内を減圧して酸素濃度を爆発下限界以下に抑える機能などが並びます。
これらの安全対策が講じられていれば、火災予防条例(例)第31条の3の2が定める壁・戸・床の基準によらなくても、同じかそれ以上の安全性があると認められるのです。
具体的な数値も示されました。洗濯機に補充する溶剤の量が1日当たり平均10リットル程度(最大15リットル程度)であれば、床を溶剤が浸透しない構造にする基準まではいらないとされています。
つまり「安全対策を怠らなければ、旧来の建物のままでも認められる道がある」ということです。
建て替えなくても、設備を変えれば続けられるんですね。
そのとおりです。
洗濯機の機能一覧をメーカーに確認してみてください。
許可を受ければそれで終わりではないのはなぜか

建築基準法の許可を受ければ、それだけで安心してよいのか。
実はもう一つ、忘れてはいけない手続きがあります。
建築の許可と消防の手続きは別物です。
第48条ただし書許可はあくまで特定行政庁が出すもので、建築物の用途を適法にする手続きです。
一方で、指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物を扱う場所には、消防同意と火災予防条例に基づく届出が別に必要になります。
建築の許可申請だけを済ませて安心し、消防への届出を忘れてしまう事業者が出やすいところです。
どちらか一方では手続きが完結しないことを、最初に押さえておいてください。
役所の許可だけ取れば十分だと思っていました。
そこが見落とされやすい点です。
建築と消防、両方の窓口に確認してください。
明日から何を確認すればよいのか

ここまでの内容を、実際の行動に落とし込みます。
最初にやるべきことは、届出ではなく相談です。
先に相談すれば手続きは早くなります。
まず、自分の工場の用途地域と作業場の面積を確認します。
次に、洗濯機に不活性ガス充填や自動停止機能などの安全対策が備わっているかをメーカーや業者に確認します。
そのうえで、特定行政庁の建築担当窓口と、管轄の消防機関の両方に事前相談することが近道です。
特定行政庁と消防機関があらかじめ情報交換をしておく仕組みになっているため、片方に相談したことがもう片方にも伝わりやすくなっています。
自己判断で放置せず、早めに動くことが結果的に一番の近道です。
どちらの窓口から先に行けばいいんでしょうか。
どちらからでも構いません。
管轄の消防署にまず連絡してみるのが分かりやすいと思います。
よくある質問
まとめ
まずは自分の工場の用途地域を調べるところから始めます。
安心しました。
用途地域、洗濯機の安全機能、そして消防への届出。
この3つを窓口で確かめれば大きく外しません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 引火性溶剤を用いるドライクリーニングを営む工場に係る建築基準法用途規制違反への対応及び同法第48条の規定に基づく許可の運用について(技術的助言)(平成22年9月10日 国住指第2263号 国住街第78号 国土交通省住宅局建築指導課長・市街地建築課長)
- 引火性溶剤を用いるドライクリーニング工場に係る建築基準法の取扱いを踏まえた火災予防条例(例)の取扱いについて(平成22年9月10日 消防予第408号 消防危第196号 消防庁予防課長・消防庁危険物保安室長)
- 建築基準法第48条(用途地域等)
- 火災予防条例(例)第31条の3の2(指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物を屋内において貯蔵し、又は取り扱う場所の基準)
- 火災予防条例(例)第34条の3(基準の特例)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





