BLOG

派遣スタッフに防火防災業務は任せられるか|労働者派遣法が示す指示命令の所在を解説

派遣スタッフに防火防災業務を任せられるのかを解説する記事のアイキャッチ画像

人手が足りない現場ほど、警備会社や人材派遣会社のスタッフに頼る場面が増えています。
では、防火管理者が担うべき業務の一部を、派遣スタッフにそのまま任せてしまってよいのでしょうか。
実は労働者派遣法が施行された昭和61年、消防庁がこの疑問に対する考え方を通知で示しています。
本記事では、その通知をもとに派遣スタッフに任せてよい範囲と防火管理者に残る責任を整理します。

最近、警備の派遣スタッフに巡回や設備の確認をお願いすることが増えてきました。

派遣スタッフに防火・防災業務を任せること自体は、法律で禁止されていません。

任せられる範囲と、こちらに残る責任の違いが気になります。

そこは昭和61年の消防庁通知がはっきり線引きしていますよ。

この記事の結論
  • 防火管理業務・危険物取扱いの立会い・自衛消防組織の業務は、労働者派遣で行うこと自体は禁止されていません。
  • 対象になるのは消防法第8条第1項の防火管理業務、同法第13条第3項の危険物取扱いの立会い、同法第14条の4の自衛消防組織の業務です。
  • ただし防火管理者等は、業務にあたる派遣スタッフに必要な指示を行わなければなりません
  • 労働者派遣は指揮命令が発注者側に残る仕組みで、業務委託(請負)とは指示の向きが逆になります。
  • 契約が派遣か請負かを確認し、業務の範囲を契約書に明記しておくことが実務の出発点です。

派遣スタッフに防火防災業務を任せるときの労働者派遣でも実施可能・契約で業務範囲を明確化・防火管理者が指示・消防計画に反映の4つの注意点を示した図解

派遣スタッフに防火防災業務を任せてよいと考えられたのはなぜか

法令の書見台と事務所のような建物が並んだイラスト
昭和60年、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律が施行されました。
このとき、防火・防災業務を派遣で行わせてよいのかが正面から検討されています。
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律における防火・防災業務の取扱いについて(通知)(昭和61年 消防予第105号・消防危第81号・消防地第181号) (略)この防火・防災業務に関しては、適用除外業務とされている警備業法第2条第1項各号に掲げる業務と密接に関連して業務処理が行われている場合があるという現状にあることにかんがみ、当面、法の適用対象業務としての指定は行わないこととした。しかしながら、防火・防災業務の適正な実施を図る観点からは、派遣就業その他請負事業以外の労働力の供給形態を認めていく必要性が認められるところであり、当該業務の処理の実情を勘案しつつ、引き続き必要な措置を講じていくこととしているものであること。
防火・防災業務は、労働者派遣が使えない「適用除外業務」には指定されませんでした。
労働者派遣法の制定時、警備業務のように派遣になじまない業務は適用除外業務として指定されましたが、防火・防災業務は警備業務と密接に関連する場面があるとしつつも、除外はされませんでした。
背景には、近年防火・防災業務の一部を第三者に委託するケースが増えていた事情があります。
つまり国は、防火・防災業務を派遣という形で担わせること自体は、否定しなかったということです。
次の章では、実際にどの業務までが労働者派遣で行える範囲なのかを確認します。

禁止されるかと思っていました。
意外と早い時期から認められていたんですね。

ただし、対象になる業務の範囲は決まっています。

労働者派遣で行ってよい防火防災業務はどこまでか

消火器ボックスとドラム缶を確認するスタッフとホース格納箱のイラスト
通知が対象にしている防火・防災業務には、いくつかの種類があります。
まず、法律上どの業務が含まれているのかを確認します。
消防法第8条第1項 (略)消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない
対象は防火管理業務・危険物取扱いの立会い・自衛消防組織の業務の3本柱です。
まず消防法第8条第1項の防火管理上必要な業務、つまり消防計画に基づく訓練の実施や設備の点検整備、火気の監督などが含まれます。
次に、同法第13条第3項が定める、危険物取扱者以外の者が危険物を取り扱う際に必要な危険物取扱者の立会い業務も対象です。
さらに、同法第14条の4に基づいて事業所に置かれる自衛消防組織の業務も含まれます。
自分の施設で派遣スタッフに任せている業務が、このいずれかにあたるかをまず確認してください。

うちで派遣スタッフに頼んでいるのは、まさに消防計画に基づく点検作業です。

それなら対象です。
次は、こちらに残る責任を見ていきましょう。

指示を出す責任はどこに残るのか

スタッフが指をさし別のスタッフが制御盤を操作しているイラスト
派遣で行わせてよいとしても、それで終わりではありません。
通知は、防火管理者側に残る役割もあわせて示しています。
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律における防火・防災業務の取扱いについて(通知)(昭和61年 消防予第105号・消防危第81号・消防地第181号) (略)防火・防災業務については、その一部が労働者派遣的形態で行われる場合においても、防火管理者等が防火・防災業務に携わる者に対して必要に応じ、指示等を行うことが不可欠であり、このことは、同法が施行された後においても全く同様である。
消防法施行令第3条の2第4項 防火管理者は、消防の用に供する設備、消防用水若しくは消火活動上必要な施設の点検及び整備又は火気の使用若しくは取扱いに関する監督を行うときは、火元責任者その他の防火管理の業務に従事する者に対し、必要な指示を与えなければならない
指示を出す責任は、派遣後も防火管理者に残ります。
通知が引用していた当時の条文番号は現在の号とは異なりますが、内容そのものは現行の消防法施行令第3条の2第4項に引き継がれています。
労働者派遣は、派遣元に雇われた労働者が派遣先の指揮命令を受けて働く仕組みです。
つまり派遣スタッフに業務を任せた時点で、日々の指示を出す役割は自動的にこちらへ移ってくることになります。
派遣を使ったからといって、防火管理者としての責任そのものが軽くなるわけではない点に注意してください。

派遣会社にお願いすれば、指示も向こうがやってくれると思っていました。

そこを取り違えると、別の落とし穴にはまりやすいんです。

派遣に任せると防火管理者の責任も消えると誤解していないか

書類を渡す禁止マークの場面と制御盤を確認する許可マークの場面を並べたイラスト
ここでよく混同されるのが、労働者派遣と業務委託(請負)の違いです。
両者は指示の向きが正反対になります。
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律第2条第1号 労働者派遣 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。
丸ごと任せて指示も出さない、という運用は誤解です。
労働者派遣は、派遣先であるこちらが指揮命令を行うことが前提の仕組みです。
反対に業務委託(請負)では、指揮命令の権限は受託者側に残り、発注者が受託者の従業員に直接指示を出すことは想定されていません。
請負契約のスタッフに直接指示を出してしまうと、実態が労働者派遣とみなされる「偽装請負」に当たるおそれがあるとされています。
まずは自社が結んでいる契約が派遣なのか請負なのかを、契約書の文言で確かめることが最初の一歩です。

うちの契約が派遣なのか請負なのか、正直あいまいなままでした。

最後に、配置前の確認事項を整理しましょう。

派遣スタッフを配置する前に確認しておくことはなにか

契約書とチェックリストが置かれた机と消火器の点検スタンドのイラスト
考え方が整理できたら、あとは実務に落とし込むだけです。
配置前に確認しておきたい項目を挙げます。
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律第26条第1号 労働者派遣契約の当事者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者派遣契約の締結に際し、次に掲げる事項を定めるとともに、その内容の差異に応じて派遣労働者の人数を定めなければならない。 一 派遣労働者が従事する業務の内容
出発点は、契約書に業務内容を明記してもらうことです。
労働者派遣契約では、派遣労働者が従事する業務の内容を定めることが法律上求められています。
そのうえで、防火管理者から日々の指示を出せる連絡体制を整え、誰が指揮命令を行うのかをはっきりさせておきます。
消防計画には、その業務を実際に担う人と、指示を行う担当者をあわせて記載しておくと実務上の混乱を防げます。
日常の点検だけでなく、避難訓練など定期的な機会にも派遣スタッフを参加させ、一時的な要員任せにしないことも大切です。

契約書と消防計画、両方を見直してみます。
指示を出す担当者もはっきりさせます。

それだけで、現場の混乱はかなり防げますよ。

よくある質問

Q派遣スタッフに自衛消防組織の隊員を任せてもよいのか?
A労働者派遣自体は禁止されていません。ただし防火管理者等が必要な指示を行う体制を維持しておく必要があります。
Q警備業務として契約していれば防火防災業務も任せられるのか?
A警備業務と防火・防災業務は別の枠組みで扱われます。契約書の業務範囲を確認し、防火・防災業務を明記しておくことが必要です。
Q業務委託(請負)契約のスタッフに直接指示を出してもよいのか?
A請負契約の場合、発注者が受託者の従業員に直接指示を出すと偽装請負と判断されるおそれがあります。労働者派遣契約に切り替えるか、受託者側の責任者を通す必要があります。
Q消防計画には派遣スタッフのことをどう書けばよいのか?
A防火管理業務の一部を派遣スタッフが行う場合は、その業務の範囲と指示を行う担当者を消防計画に記載しておくと実務上の混乱を防げます。

まとめ

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の施行時、防火・防災業務は適用除外業務に指定されませんでした
対象になるのは防火管理業務・危険物取扱いの立会い・自衛消防組織の業務です。
ただし防火管理者等は、業務にあたる派遣スタッフに必要な指示を行わなければなりません
労働者派遣は指揮命令が発注者側に残り、業務委託(請負)とは逆になる点に注意が必要です。
請負契約のスタッフに直接指示を出すと偽装請負と判断されるおそれがあります
契約が派遣か請負かを確認し、業務範囲を契約書に明記しておくことが実務の出発点です。
消防計画には業務の実施者と指示を行う担当者を明記しておくと安心です

派遣スタッフとの役割分担がすっきりしました!

消防計画の見直しまで、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律における防火・防災業務の取扱いについて(通知)(昭和61年 消防予第105号・消防危第81号・消防地第181号)
  • 消防法第8条第1項・第13条第3項・第14条の4
  • 消防法施行令第3条の2第4項
  • 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年法律第88号)第2条第1号・第26条第1号
  • 石油コンビナート等災害防止法(昭和50年法律第84号)第16条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
派遣スタッフに防火防災業務を任せられるのかを解説する記事のアイキャッチ画像
人手が足りない現場ほど、警備会社や人材派遣会社のスタッフに頼る場面が増えています。 では、防火管理者が担うべき業務の一部を、派遣スタッフにそのまま任せてしまってよいのでしょうか。 実は労働者派遣法が施行された昭和61年、...