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係留した船はなぜ消防法上の建物になるのか|浮体構造物に4つの法律が重なる仕組みを解説

係留した船はなぜ建物として扱われるのか

退役した船を桟橋に係留し、博物館や交流施設として使う例が各地にあります。
桟橋や鎖で水面に定常的に固定されると、法律上の扱いが大きく変わります。
けれども船としての性質も残るため、消防法・建築基準法・船舶安全法・港湾法という4つの法律が同時にかかってきます。
どの基準を優先し、どう整合させるのかを消防庁の通知から確認します。

船をそのまま係留して資料館にしている建物を見かけるんですが。
消防法の検査って受けているんですかね。

あれは船でもあり建物でもあるので、消防法・建築基準法・船舶安全法・港湾法が同時にかかってくるんです。
平成10年の通知で基準の整合が図られました。

4つも法律がかかると、どの基準を優先すればいいのか分からなくなりそうです。
事業者の負担も大きそうですね。

そこは関係省庁が同じ日付で通知を出して、重複する基準を整合させる仕組みを作っています。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 浮体構造物(係留船を桟橋や鎖で固定し建物として使うもの)には、消防法・建築基準法・船舶安全法・港湾法の4つの法律が同時にかかる
  • 平成10年3月31日付の消防予第47号など、関係機関が同日付で通知を出して基準の整合を図った
  • 船舶安全法の検査に合格していても、消防法上の検査・点検は別途必要になる
  • 対象になるのは、桟橋や鎖等で定常的に固定され建築物として使われるもの
  • 既存の退役船舶を転用した博物館等の実例も対象になり得る

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浮体構造物に消防法・船舶安全法・港湾法・建築基準法が重なる図解

船を建物として使うとなぜ4つの法律が重なるのか

桟橋に鎖で固定された退役船の浮体構造物
退役した船を桟橋に係留し、博物館や交流施設として使う例が各地にあります。
桟橋や鎖で水面に定常的に固定されると、法律上の扱いが大きく変わります。
消防予第47号(平成10年3月31日・消防庁予防課長) 浮体構造物(係留船であって水面、海底等に定常的に桟橋や鎖等で定着された海洋建築物であるものをいう。)であって、消防法のほか、建築基準法、船舶安全法又は港湾法の適用を受けるものに関して、事業者に対して過重な負担を課すことがないよう、統一的な取扱いを定めることとした。
船を建物として使い続けると、4つの法律が同時にかかってくるのが理由です。
退役した船は、桟橋や鎖で水面・海底等に定常的に固定され、人が利用する建物として使われるようになると「海洋建築物」と呼ばれます。
このとき、船としての性質(船舶安全法)、港の施設としての性質(港湾法)、建物としての性質(建築基準法)、防火対象物としての性質(消防法)の4つが重なります。
各法令がそれぞれ別の基準を独自に求めると、事業者には過重な負担になります。
そこで平成10年3月31日、消防庁・運輸省・建設省の関係部局が同じ日付で通知を出し、基準の整合を図りました。

退役した船を建物として使うという話、聞いたことはありますが。
そんなに法律が重なるとは思いませんでした。

船の姿のまま使い続けるからこそ、船と建物の両方の規制がかかるんです。
次は対象になる範囲を見てみましょう。

どんな係留船が海洋建築物になるのか

渡橋で陸とつながる浮体構造物
すべての係留船が対象になるわけではありません。
通知は「浮体構造物」の範囲をはっきり定義しています。
消防予第47号 浮体構造物(係留船であって水面、海底等に定常的に桟橋や鎖等で定着された海洋建築物であるものをいう。以下同じ。)
一時的に泊めただけの船は対象になりません。
桟橋や鎖等で定常的に固定され、人が利用する建築物としての用に供されているかどうかが分かれ目です。
別添の「海洋建築物安全性評価指針」のまえがきでは、退役した南極観測船「ふじ」を名古屋港で博物館として使用した例が挙げられています。
このように既存の船舶を転用する例も、固定の仕方と使い方次第で対象になります。
逆に、修理や荷卸しのために一時的に係留しているだけの船は、この通知が想定する浮体構造物にはあたりません。

じゃあ、たまに港に係留してるだけの船は関係ないんですね。
ずっと置きっぱなしにして使うから対象になると。

そのとおりです。
固定の仕方と使い方の両方で判断されます。

4つの法律はどのように整合されるのか

建物ブロックと船ブロックが重なる浮体構造物
基準が重なる部分を、関係機関がどう整合させるのか。
通知の中身を見ていきます。
消防予第47号 1 浮体構造物については、管海官庁、港湾担当部局及び特定行政庁と連携を図りつつ、個別の浮体構造物の構造、設備、使用形態等を配慮して、関係法令の間で統一的な運用を図り、重複する基準について整合的な要件を設定するものとする。
建設省住指発第168号 建設省においては、建築基準法第38条の規定に基づく認定に当たり、関係法令に基づく技術基準との整合を図るため関係機関と調整することとしている。
窓口は1つではなく、関係機関どうしが調整する仕組みです。
消防法では、所轄の消防機関の意見を聴いた上で手続きを進めます。
建築基準法では、建築基準法第38条の認定(当時の建設大臣、現在は国土交通大臣が所管)にあたって技術基準の整合を図ります。
船舶安全法の技術基準で設置・維持されている設備については、その検査結果を活用して、提出書類や現場での確認を簡素化します。
港湾法の届出等の審査でも、同じように関係機関と調整することが求められています。

4つの役所がそれぞれ別々に検査に来るわけじゃないんですね。
ちょっと安心しました。

日程や方法をあらかじめ調整して、重複をなくす仕組みになっています。
ただし消防法の検査がなくなるわけではありません。

消防法の検査で見落としやすいのはどこか

消火器と確認マーク、浮き輪のある浮体構造物
船舶検査に合格していれば安心、と思われがちな点に注意が必要です。
通知は消防法側の手続きを別に定めています。
消防予第47号 特に、船舶安全法が適用される浮体構造物の消防用設備等については、消防法と船舶安全法で異なる要件を設定することがないように留意しつつ、管海官庁と十分調整を図ることとする。
船舶検査の合格は、消防法の検査を免除する意味ではありません。
消防法が適用される係留船の消防用設備については、その設計及び適用基準について、当該係留船を所轄する消防機関の意見を聴取した上で手続きを進めることになっています。
船舶安全法の技術基準により設置・維持されている設備は、その検査結果を活用して現状確認にとどめ、効力試験等を省略できる場合がありますが、これは「簡素化」であって「免除」ではありません。
「船だから船舶安全法だけで足りる」と思い込むと、消防法上必要な検査・点検を見落とすおそれがあります。
消防用設備が付いている以上、消防法の手続きは別に必要だという前提で確認することが欠かせません。

てっきり、船の検査に通っていれば消防法の方も大丈夫だと思っていました。
そこが落とし穴なんですね。

簡素化はされますが、免除ではありません。
所轄の消防機関に確認するのが確実です。

明日からなにを確認すればよいのか

点検クリップボードと浮体構造物
既存の係留船や浮体構造物を所有・管理している場合、確認したい点があります。
順番に見ていきます。
  • 固定の状態:桟橋や鎖等で定常的に固定されているか
  • 消防用設備:消防法の基準に従って設置・点検されているか、所轄消防機関への確認が済んでいるか
  • 避難施設・防火区画:建築基準法の規定、またはこれと同等以上の安全性を確保する対策が取られているか
  • 維持管理計画書:安全な状態を保つための計画書を作成し、それに基づいて維持管理しているか
どれも「船だから」で済ませず、建物としての基準も合わせて確認します。
特に消防用設備については、船舶検査の結果だけで判断せず、所轄消防機関に消防法上の手続きが済んでいるかを確認することが欠かせません。
避難路や防火区画は、建築基準法の規定に従うのが原則ですが、船舶特有の構造でそのまま適用しづらい場合は、同等以上の安全性を確保する対策で代える仕組みがあります。
維持管理計画書を作り、定期的な点検につなげることが、浮体構造物を長く安全に使い続けるための土台になります。

船だからで済ませず、建物としての基準も合わせて確認するということですね。
やることが整理できました。

そのとおりです。
次にご案内するよくある質問も参考にしてください。

よくある質問

Q係留された船はすべて消防法上の防火対象物になりますか?
A桟橋や鎖等で定常的に固定され、建築物としての用に供されるものが対象です。一時的な係留のみでは、この通知が想定する浮体構造物にはあたりません。
Q船舶安全法の検査に合格していれば、消防法の検査は不要になりますか?
A不要にはなりません。消防用設備については消防法と船舶安全法で異なる要件とならないよう別途消防機関の意見を聴く手続きが必要です。検査結果の活用による簡素化はありますが、免除ではありません。
Q建物としての安全性はどのように確保されますか?
A原則は建築基準法の規定に従い、規定によりがたい場合は同等以上の安全性を確保する対策を講じる仕組み(建築基準法第38条の認定等)が用いられます。
Qこのような海洋建築物の実例はありますか?
A退役した南極観測船を名古屋港で博物館として使用した例など、既存の船舶を転用した実例が通知の背景として挙げられています。

まとめ

✔浮体構造物(係留船を桟橋や鎖で固定して建物として使うもの)には消防法・建築基準法・船舶安全法・港湾法の4つの法律が同時にかかる
✔対象になるのは桟橋や鎖等で定常的に固定され、建築物として使われているもの
✔平成10年3月31日付の消防予第47号等、関係機関が同日付で通知を出し整合を図った
✔消防法では所轄消防機関の意見を聴いた上で手続きが進む
✔船舶安全法の検査結果は活用できるが、消防法上の検査・点検は別途必要
✔建築基準法の規定によりがたい場合は同等以上の安全性を確保する対策で代えられる
✔維持管理計画書を作り、定期点検につなげることが安全に使い続ける土台になる

船だから船舶の検査だけで足りると思い込んでいたので、確認するところがはっきりしました!

消防用設備の検査・点検は所轄消防機関への確認が欠かせません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防予第47号「浮体構造物の取扱いについて」(消防庁予防課長、平成10年3月31日)
  • 海安第38号・海査第170の2号「係留船に係る取扱いについて」(運輸省海上技術安全局、平成10年3月31日)
  • 港技第34号「浮体構造物の取扱いについて」(運輸省港湾局技術課長、平成10年3月31日)
  • 建設省住指発第168号「海洋建築物の取扱いについて」(建設省住宅局建築指導課長、平成10年3月31日)、別添「海洋建築物安全性評価指針」(財団法人日本建築センター)
  • 建築基準法第7条・第12条・第38条(e-Gov法令検索で現行条文を確認)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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