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ハロゲン化物消火設備はなぜ温度低下対策が要るのか|設置できる部屋の条件と緩和される場所を解説

機械室でガスボンベ設備の圧力計を点検する技術者の写真

地下駐車場や電算室の片隅に、赤いガスボンベが並んでいるのを見たことはありませんか。
あれはハロゲン化物消火設備といって、水や泡を使わずに気体の薬剤で火を消す設備です。
薬剤の中には沸点が高く気化しにくいものがあり、設置場所の温度管理が条文で求められています。
今回はこの温度低下対策と、対策なしで済む部屋の条件を解説します。

うちの機械室にもガスボンベの消火設備があるんですが、最近点検業者に「温度に気を付けて」と言われました。
本当ですか。

本当です。
おそらくFK―五―一―一二という薬剤を使うタイプで、沸点が高く低温では気化しにくいんです。

対策が要る部屋と要らない部屋があるとも聞きました。

はい、その通りです。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • FK―五―一―一二を放射するハロゲン化物消火設備は、防護区画に過度の温度低下を防止する措置を講じることが条文で義務づけられている
  • FK―五―一―一二の沸点が約49度と高く、低温では十分に気化しないおそれがあることが理由
  • 設置できる部屋は駐車場・発電機や変圧器の電気設備・通信機器室などのうち常時人のいない部分に限られる
  • 防護区画の面積が1,000平方メートル未満かつ体積が3,000立方メートル未満であることも条件
  • 発電機室・変圧器室・通信機器室・地階の機械式駐車場は通知が示す条件に類似すれば対策済み扱いにできる

ハロゲン化物消火設備の温度低下対策と緩和される部屋をまとめた図解

FK―五―一―一二のハロゲン化物消火設備はなぜ温度低下対策が要るのか

ハロゲン化物消火設備のガスボンベから霧状の消火剤が放射される様子と低い温度を示す温度計
薬剤ごとに沸点が違うことは、あまり知られていません。
まずは条文が何を求めているかを確認しましょう。
全域放出方式のハロゲン化物消火設備(ドデカフルオロ―二―メチルペンタン―三―オン(以下「FK―五―一―一二」という。)を放射するものに限る。)を設置した防護区画には、放射された消火剤が有効に拡散することができるように、過度の温度低下を防止するための措置を講じること。(消防法施行規則第20条第4項第16号の3)
低温だと薬剤が気化しきらないおそれがあるからです。
消防庁の通知は、FK―五―一―一二の沸点が約49度と、従来のハロン一三〇一などより高いことを理由に挙げています。
防護区画が著しい低温状態になると、放射した消火剤が霧のまま拡散しきらず、消火に必要な濃度に届かないおそれがあるということです。
そのため条文は、断熱や空調による温度管理を、設備の設計段階から組み込むよう求めています。
まずは自分の建物のどの部屋がこの薬剤を使っているかを知ることが、対策の出発点になります。

FK―五―一―一二って初めて聞きました。
うちのは何を使っているんでしょう。

点検報告書や消防計画に薬剤の種類が書いてあるはずです。
まずはそこを確認してみましょう。

FK―五―一―一二の消火設備はどんな部屋に置けるのか

駐車場と発電機や変圧器の電気設備と通信機器室の3つの部屋
薬剤はどの部屋にも自由に選べるわけではありません。
条文が定める部屋の条件を見てみましょう。
全域放出方式のハロゲン化物消火設備に使用する消火剤は、(略)自動車の修理の用に供される部分、駐車の用に供される部分、発電機(ガスタービンを原動力とするものを除く。)、変圧器その他これらに類する電気設備が設置されている部分又は通信機器室のうち、常時人のいない部分であって、防護区画の面積が1,000平方メートル未満かつ体積が3,000立方メートル未満のものにはハロン一三〇一、HFC―二三、HFC―二二七ea又はFK―五―一―一二を用いることができる(消防法施行規則第20条第4項第2号の2)
常時無人で、かつ面積と体積の両方が基準未満という条件です。
対象になるのは駐車場・発電機や変圧器の電気設備・通信機器室など、水や泡を使いにくい部屋です。
このうち人が常時いる部屋や、面積1,000平方メートル以上・体積3,000立方メートル以上の大きな区画は、条件から外れハロン一三〇一しか使えません。
つまりFK―五―一―一二などの新しい薬剤を選べるのは、比較的小規模で無人の区画に限られるということです。
自分の設備がこの条件に当てはまるかは、防護区画の図面と面積・体積の記載で確認できます。

うちは通信機器室ですが、面積の基準は超えていないと思います。

図面に記載の面積と体積を、一度点検業者と確認しておくと安心です。

温度低下対策として何を用意すればよいのか

断熱材と空調ダクトのある部屋にガスボンベ設備を設置した様子
条文は「措置を講じること」としか書いていません。
消防庁の通知が示す具体例を見てみましょう。
FK―五―一―一二の沸点は約49度であり、ハロン一三〇一等と比べると高く、防護区画内が著しい低温状態となる場合には、十分に気化しないおそれがあることから、FK―五―一―一二を放射するものにあっては、放射された消火剤が有効に拡散することができるよう、設置場所の気象条件、防護区画の構造(壁の材質や開口部の数等)等の状況に応じて、断熱材の設置や空調装置による温度管理等の措置を求めたものである。(消防法施行規則の一部を改正する省令等の公布等について 平成22年8月26日 消防予第367号)
断熱材か空調か、どちらか一方ではなく状況に応じた組み合わせです。
通知が挙げているのは断熱材の設置空調装置による温度管理の2つです。
どちらを選ぶかは、設置場所の気象条件や、壁の材質・開口部の数といった防護区画の構造によって変わります。
つまり全国一律の仕様書があるわけではなく、寒冷地の屋外に近い区画ほど対策が重くなるということです。
新設や更新の設計段階で、施工業者にこの措置の有無を確認しておきましょう。

断熱材か空調か、どちらか選べばいいわけじゃないんですね。

はい、部屋の条件次第です。
設計士や設備業者と相談して決めます。

発電機室や通信機器室ではなぜ対策なしで扱われることがあるのか

断熱材と空調のある部屋と発電機や変圧器の電気設備の部屋の対比
実はこの対策、免除される部屋があります。
通知が示す例外を確認しましょう。
「発電機、変圧器その他これらに類する電気設備が設置されている部分」、「通信機器室」及び「駐車の用に供する部分(昇降機等の機械装置により車両を駐車させる構造であって、地階に存するものに限る。)」にあっては、寒冷地における温度測定やシミュレーションの結果等により、一般的な設置条件下では著しい低温状態にはならないことが確認されている。このため、これらの場所のうち当該報告書と類似の条件下であるものについては、当該措置が講じられているものとして取り扱って差し支えない。(消防法施行規則の一部を改正する省令等の公布等について 平成22年8月26日 消防予第367号)
すでに実測データがある3つの部屋だけの限定的な扱いです。
根拠は平成22年3月公表の作業部会報告書が行った寒冷地での温度測定やシミュレーションで、これらの部屋は一般的な条件なら著しい低温にならないと確認されたことです。
ただし対象は発電機・変圧器等の電気設備の部屋、通信機器室、地階の機械式駐車場の3種類に限られ、報告書と似た条件であることが前提です。
断熱材も空調もない部屋がすべて免除されるわけではなく、あくまで実測で裏付けられた場所だけの扱いだということです。
自分の部屋がこの3種類のどれかに当たるかどうかを、まず切り分けて考えましょう。

うちは駐車場ですが、機械式ではなく平面式です。
対象になりますか。

平面式は対象外です。
地階の機械式駐車場に限られる点に注意してください。

明日からなにを確認すればよいのか

点検員がガスボンベ設備を確認している様子
最後に、建物側で確認できることを整理します。
難しい手続きではなく、記録の確認が中心です。
  • 点検報告書や消防計画で、自分の設備がFK―五―一―一二を使っているかを確認する
  • 防護区画の面積と体積が基準未満かどうかを図面で確認する
  • 設置場所が発電機室・変圧器室・通信機器室・地階の機械式駐車場のいずれかに当たるか確認する
難しいのは薬剤の見分けより、部屋の条件の当てはめです。
点検業者や設備業者に、断熱材の設置や空調の温度管理が講じられているかを尋ねてみましょう。
免除の3部屋に当たる場合でも、報告書の条件と似ているかどうかは専門家の判断が要ります。
自己判断で「対策不要」と決めつけず、次の点検の機会に確認するのが確実です。
まずは消防計画を見返して、自分の設備がどの薬剤を使っているか確かめてみましょう。

まずは消防計画を見て、薬剤の種類を確認してみます。

それが第一歩です。
わからないことがあれば、点検の機会にあわせて相談してください。

よくある質問

QFK―五―一―一二を使うハロゲン化物消火設備には、必ず断熱材が必要ですか?
A必ずではありません。通知は断熱材の設置か空調装置による温度管理のどちらか、または組み合わせを状況に応じて求めており、一律の仕様はありません。
Q発電機室ならどんな場合でも対策は不要になりますか?
Aいいえ。対象は寒冷地の測定やシミュレーションと類似の条件にある場合に限られ、報告書と条件が異なる発電機室では別途対策が要ることがあります。
Q地上の平面駐車場もこの免除の対象になりますか?
Aなりません。免除の対象は昇降機等の機械装置により車両を駐車させる、地階の駐車場に限られています。
Q自分の設備がFK―五―一―一二かどうかはどこで確認できますか?
A点検報告書や消防計画に消火剤の種類が記載されています。記載が無い場合は点検業者に確認しましょう。

まとめ

FK―五―一―一二を放射するハロゲン化物消火設備には、過度の温度低下を防止する措置が条文で求められる
理由は薬剤の沸点が約49度と高く、低温では十分に気化しないおそれがあるため
設置できるのは駐車場・発電機や変圧器の電気設備・通信機器室などの一部の部屋に限られる
対象となるのは常時無人で面積1,000平方メートル未満かつ体積3,000立方メートル未満の区画
対策の中身は断熱材の設置空調装置による温度管理など状況に応じたもの
発電機室・変圧器室・通信機器室・地階の機械式駐車場は測定やシミュレーションの実績により対策済み扱いにできる
自分の設備の薬剤と部屋の条件は点検報告書と消防計画で確認できる

薬剤の種類と部屋の条件、両方を確かめておきます!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第20条第4項第2号の2・第16号の3
  • 消防法施行規則の一部を改正する省令等の公布等について(平成22年8月26日 消防予第367号)
  • 「新技術を用いた消防用設備等の性能規定化に関する作業部会報告書」(平成22年3月公表・総務省消防庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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