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ヘッドホンを付けたカラオケ個室にも火災警報は届くか|消防法施行規則第25条の2が求める聞き取りの基準を解説

ヘッドホンを使う個室カラオケボックスの内観と非常ベル

カラオケボックスやネットカフェの個室は、ヘッドホンで周りの音を遮断できるのが魅力です。
でもその個室の中に、火事が起きたときの警報はちゃんと届くのでしょうか。
実は消防法施行規則には、こうした個室に向けた聞き取りの基準が定められています。
本記事では、対象になる店舗の条件と、音響装置に求められる基準を解説します

うちの店は個室でヘッドホンをつけて音楽を聴いてもらうサービスをやっています。
火事のとき、お客様にちゃんと気づいてもらえるか心配です。

実は消防法施行規則に、そのための基準がちゃんとあります。
役務を提供している間も、個室の中で警報音を確実に聞き取れる措置が求められているんです。

うちの店、令別表のどの区分に当てはまるのか、実はよく分かっていません。

令別表第一(二)項ニなどに当てはまる店舗が対象です。
一緒に条文を確認していきましょう。

この記事の結論
  • カラオケボックスやネットカフェなど令別表第一(二)項ニなどに当てはまる店舗で個室サービスを提供している場合は、ヘッドホンをつけた客にも警報音が確実に届くようにする義務があります
  • 対象になるのは、遊興のためヘッドホン、イヤホンその他これに類する物品を客に利用させる個室があるものです
  • 非常ベルや自動式サイレンは、音響装置から1メートル離れた位置で90デシベル以上の音が基準です
  • 放送設備のスピーカーはL級・M級・S級の区分ごとに音圧の基準が定められています
  • サービスを提供している間も、個室の中で警報音を確実に聞き取れる措置が求められます

ヘッドホンの個室にも警報を届ける仕組みを示した図解

ヘッドホンを付けた客にも火災警報は届くのか

ヘッドホンをつけて個室で音楽を聴く客と鳴り響く非常ベル
カラオケボックスの個室は、扉を閉めて音楽に没頭できることが売りです。
その扉の内側に、火事の知らせは本当に届くのでしょうか。
問(消防法施行規則第25条の2第2項第1号イ) 非常警報設備の基準には、令別表第一(二)項ニ、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物のうち、遊興のためにヘッドホン、イヤホンその他これに類する物品を客に利用させる役務の用に供する個室があるものにあつては、当該役務を提供している間においても、当該個室において警報音を確実に聞き取ることができるように措置されていることと定められていますが、これはどのような基準でしょうか。
答 条文のとおり、ヘッドホンやイヤホンなどで耳をふさいだ状態の客がいる個室でも、警報音が確実に聞こえるようにしておくことを求める基準です。個室の扉を閉めているだけでなく、客自身が音を遮断する物品を使っている場合まで想定している点が特徴です。
この基準は「扉を閉めた個室」だけでなく「耳をふさいだ客」までを想定しています
一般的な非常警報設備の基準は、音量や設置間隔を定めるだけです。
しかしヘッドホンやイヤホンを使うサービスでは、通常の音量だけでは客に届かないおそれがあります。
そこで条文は、こうした個室について役務を提供している間も聞き取れることを、あらためて条件として書き加えています。
次の章では、具体的にどんな店のどんな個室が対象になるのかを確認します。

防音の個室って、それだけでもう安全対策が必要になるということですか。

はい。
耳をふさぐ物品を使わせる個室があるかどうかがポイントです。

どんな店のどんな個室が対象になるのか

雑居ビルに入る個室型店舗の入口と看板
ここまでの基準が、実際にどんな店に及ぶのかを見ていきましょう。
マイクで歌うだけの店とは、少し条件が違います。
問(消防法施行令別表第一(二)項ニ、消防法施行規則第5条第2項第1号) 令別表第一(二)項ニはカラオケボックスその他遊興のための設備又は物品を個室(これに類する施設を含む。)において客に利用させる役務を提供する業務を営む店舗で総務省令で定めるものと定めており、規則第5条第2項第1号は個室(これに類する施設を含む。)において、インターネットを利用させ、又は漫画を閲覧させる役務を提供する業務を営む店舗を加えていますが、対象はこの2つだけでしょうか。
答 いいえ。これらの用途を含む複合用途防火対象物(令別表第一(十六)項イ)、地下街(同表(十六の二)項)、地下道に面した部分(同表(十六の三)項)も、非常警報設備の基準では同じ対象に含まれます。
対象はマイクとスピーカーで歌う店だけではありません
カラオケボックスに加えて、ネットカフェや漫画喫茶のように個室でヘッドホンを使わせるサービス全般が視野に入ります。
雑居ビルの一室として営業している場合は、複合用途防火対象物という区分で対象に含まれることもあります。
地下街やアーケードに面した地階の店舗も、同じ考え方で対象になり得ます。
自分の店がどの区分に当たるかは、業態だけでなく建物全体の構成もあわせて確認する必要があります。

うちは雑居ビルの3階に入っているんですが、それでも対象になりますか。

複合用途防火対象物に当たれば対象です。
建物全体でどんな用途が入っているかも確認しましょう。

音響装置には何デシベル以上が求められるのか

壁の非常ベルとデシベルを示す音量計
対象になる場合、実際にどのくらいの音量が必要なのでしょうか。
条文は具体的な数値で基準を定めています。
問(消防法施行規則第25条の2第2項第1号イ、第3号イ) 非常ベル又は自動式サイレンの音圧は取り付けられた音響装置の中心から1メートル離れた位置で90デシベル以上、放送設備のスピーカーはL級92デシベル以上、M級87デシベル以上92デシベル未満、S級84デシベル以上87デシベル未満と定められていますが、この数値は個室の場合も同じでしょうか。
答 条文はこれらの数値を非常警報設備そのものの基準として定めており、個室の有無で数値そのものが変わるわけではありません。個室がある場合は、この音圧を満たした音がヘッドホン等をつけた客にも確実に聞こえるように措置することが追加で求められます。
音圧そのものの基準は、個室があってもなくても同じです
非常ベルや自動式サイレンは90デシベル以上、放送設備のスピーカーは種類ごとに84デシベルから92デシベル以上という数値が決まっています。
個室サービスの店舗では、この音がヘッドホンやイヤホンを通しても客に届くかどうかが、あらためて問われます。
点検のときに音圧計で数値を測るだけでなく、実際にヘッドホンをつけた状態で聞こえるかを確認しておくと安心です。
次の章では、この考え方がヘッドホン個室以外にも及ぶのかを見ていきます。

数字の基準を満たしていれば、それだけで安心していいんですね。

音圧の基準は最低限のラインです。
ヘッドホンをつけた状態でも聞こえるかは、別に確認しておく必要があります。

ヘッドホン個室以外にも同じ基準が及ぶのか

ダンスホールとヘッドホン個室を並べた比較
個室でヘッドホンを使う店だけが特別なわけではありません。
音が聞こえにくい場所全般に、共通する考え方があります。
問(消防法施行規則第25条の2第2項第1号イ) 条文には非常ベル又は自動式サイレンの音響装置を、ダンスホール、カラオケボックスその他これらに類するもので、室内又は室外の音響が聞き取りにくい場所に設ける場合にあつては、当該場所において他の警報音又は騒音と明らかに区別して聞き取ることができるように措置されていることともあります。これはヘッドホン個室の基準とは別物でしょうか。
答 はい、別の基準です。こちらは音楽や騒音で聞き取りにくい場所全般を対象に、他の音と明らかに区別して聞き取れることを求めています。ヘッドホン等を使う個室の基準は、このうえでさらに個室・役務提供中という条件を加えたものです。
ヘッドホン個室の基準は、音が聞こえにくい場所全般の基準に上乗せされたものです
ダンスホールやカラオケボックスのように音響が聞き取りにくい場所では、まず他の音と区別して聞き取れることが求められます。
そのうえで、客がヘッドホンやイヤホンを使う個室があれば、役務を提供している間も聞き取れることまで求められます。
つまり基準は一段階ではなく、店の音響環境に応じて重なっていく構造になっています。
次の章では、これらを立入検査でどう確認すればよいのかを見ていきます。

普通に音楽をかけているだけの店でも、聞き取りにくい場所の基準はかかるということですね。

そのとおりです。
個室かどうかにかかわらず、音の大きい場所には共通の基準があります。

立入検査で何を確認すればよいのか

点検員がヘッドホンを装着した状態で警報の聞こえ方を確認する様子
最後に、立入検査や日常の点検で確認しておきたいポイントをまとめます。
条文の基準を、実際の確認作業に落とし込みましょう。
問(消防法施行規則第25条の2第3項) 条文には非常警報設備は、前二項に定めるもののほか、消防庁長官が定める基準に適合するものでなければならないともありますが、店舗側は具体的にどう確認すればよいでしょうか。
答 まずは自店の個室サービスがヘッドホン等を客に利用させるものに当たるかを確認し、当たる場合は個室の中で実際に警報音が聞こえるかを点検時に確かめることが基本です。細かな基準への適合は、消防設備士や所轄消防署に相談して確認します。
まず確認すべきは、自店がこの基準の対象に当たるかどうかです
ヘッドホンやイヤホンを客に利用させる個室があるかどうかを、あらためて洗い出しましょう。
対象に当たる場合は、点検のときに個室の中で実際に警報音が聞こえるかを確認しておくと安心です。
数値の基準を満たしているかどうかは、消防設備士による点検で確認できます。
判断に迷う点があれば、早めに所轄消防署や㈱防災屋にご相談ください。

今度の点検のとき、ヘッドホンをつけたまま聞こえるか確認してみます。

それがいちばん確実な方法です。
気になる点があれば、いつでもご相談ください。

よくある質問

Q歌うだけの普通のカラオケボックスもこの基準の対象になりますか?
Aいいえ。対象になるのは、ヘッドホンやイヤホンなど耳をふさぐ物品を客に利用させる個室がある店舗です。マイクとスピーカーで歌う通常のカラオケボックスは、この個室要件には当てはまりません。
Qネットカフェの個室ブースも対象になりますか?
A個室でインターネットを利用させ、または漫画を閲覧させる役務を提供する店舗は消防法施行規則第5条第2項第1号で対象に含まれます。あわせてヘッドホン等を使わせる個室があれば、聞き取りの基準もかかります。
Q音圧の数値を満たしていれば、それだけで基準を満たしたことになりますか?
Aいいえ。音圧の数値は最低限の基準です。ヘッドホン等を使う個室では、役務を提供している間も実際に聞こえるかどうかまで確認することが求められます。
Q対象かどうか自分で判断できないときはどうすればよいですか?
A業態や建物の用途区分によって判断が分かれることがあります。迷ったときは所轄消防署や消防設備士に確認するのが確実です。

まとめ

カラオケボックスやネットカフェなど、遊興のためヘッドホン等を客に利用させる個室がある店舗には、非常警報設備の聞き取りに関する基準があります
対象は令別表第一(二)項ニ・(十六)項イ・(十六の二)項・(十六の三)項に掲げる防火対象物のうち、該当する個室があるものです
非常ベル・自動式サイレンは音響装置から1メートル離れた位置で90デシベル以上の音圧が基準です
放送設備のスピーカーはL級・M級・S級の区分ごとに音圧の基準が定められています
サービスを提供している間も、個室の中で警報音を確実に聞き取れる措置が必要です
ダンスホールなど音が聞こえにくい場所全般にも、他の音と区別して聞き取れる基準があります
該当するかどうか迷ったら、所轄消防署や㈱防災屋に確認しましょう

ヘッドホンの個室でも警報がちゃんと届く理由が分かりました
今度の点検で確認してみます。

音を遮断する個室ならではの注意点でしたね。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法施行令別表第一
  • 消防法施行規則第5条第2項第1号
  • 消防法施行規則第25条の2第2項第1号、第3号、第3項

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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