建物の非常口の扉は、外側に向かって開くものだと思っていませんか。
逃げる人に押されて開くほうが安全だという説明は、たしかに理にかなっています。
ただし法令が内開きを禁じているのは、実はごく限られた出口だけです。
この記事では扉の開く向きを定めた条文と向きの定めがない扉の扱いを整理します。
うちの建物の裏口の扉が内側に開くのですが、これは違反でしょうか。
内開きを禁じている条文は建築基準法施行令にあります。
ただし対象になる出口は限られています。
どの扉が対象になるのかを見分ける方法があるのですね。
建物の用途と扉のある場所で決まります。
順に条文をたどっていきましょう。
- 扉の開く向きを定めているのは消防法ではなく建築基準法です。(建築基準法第35条)
- 劇場や映画館や公会堂や集会場における客席からの出口の戸は内開きにしてはなりません。(建築基準法施行令第118条)
- 同じ用途の建物では客用に供する屋外への出口の戸も内開きにできません。(同令第125条第2項)
- 避難階段の出入口の戸のうち手で開いて自動的に閉まるものは避難の方向に開きます。(同令第123条第1項第6号)
- 向きの定めがない扉でも避難口の前に物を置けば開かなくなります。(消防法第8条の2の4)
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目次
非常口の扉の開く向きはどこで決められているのか

その根拠がどこにあるのかを条文から確かめてみましょう。
消防法にも避難に関する規定は数多くありますが、扉がどちら向きに開くかという構造そのものを定めているのは建築基準法の側です。
第35条が出入口その他の避難施設について政令で定める技術的基準に従うよう求めており、その政令が建築基準法施行令になります。
施行令のなかで戸の開き方に触れているのは第118条と第125条第2項と第123条第1項第6号で、それぞれ対象にしている出口が違います。
まずは自分の建物の扉が、この三つの規定のどれに当たるのかを押さえてください。
消防法ではなく建築基準法の話だったのですね。
扉の構造を決めるのは建築基準法です。
消防法はその扉を使える状態に保つ側を受け持っています。
どの建物のどの戸が内開きにできないのか

どちらも同じ用途の建物を対象にしていますが、扉のある場所が違います。
同令第125条第2項 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場の客用に供する屋外への出口の戸は、内開きとしてはならない。
劇場と映画館と演芸場と観覧場と公会堂と集会場が並んでおり、いずれも多数の人が客として集まる建物です。
第118条が対象にしているのは客席から出るための戸で、ホールの中から廊下やロビーへ出る扉がこれに当たります。
第125条第2項が対象にしているのは客用に供する屋外への出口の戸で、建物から外へ出るための扉です。
逆に言えば、事務所や倉庫の裏口のようにこの六つの用途に当たらない建物の扉について、この二つの条文が内開きを禁じているわけではありません。
ホールの中の扉と外へ出る扉で条文が分かれているのですね。
客席から出る戸と屋外へ出る戸で条番号が違います。
ホールのある建物はどちらも見てください。
避難階段の出入口の戸はどちらに開けばよいのか

こちらは内開きの禁止ではなく、開く方向そのものを指定しています。
屋内に設ける避難階段では、階段に通ずる出入口に防火設備を設けることが求められます。
その防火設備のうち、直接手で開くことができて自動的に閉まる戸またはその部分は、避難の方向に開くことができるものとしなければなりません。
避難の方向とは逃げる人が進む向きなので、廊下から階段室へ入る扉であれば階段室の側へ開くことになります。
屋外に設ける避難階段でも、屋内から階段に通ずる出入口には同じ第1項第6号の防火設備を設けることとされているので、階段が外にあるからといって扉を見なくてよいわけではありません。
つまり廊下から階段室へ入る扉は階段の側へ開くのですね。
逃げる人が進む向きに開くという考え方です。
手で開いて自動的に閉まる戸かどうかを先に確かめてください。
実務で見落としやすいのはどこか

そこで効いてくるのが、開く向きとは別の管理の規定です。
建築基準法が内開きを禁じているのは前に挙げた出口だけなので、多くの建物では扉が内開きであること自体を問われる場面は限られます。
これに対して消防法第8条の2の4は、避難口を含む避難上必要な施設について避難の支障になる物件を放置しないよう求めており、こちらは扉の向きを問いません。
外開きの扉であっても扉の外側に物を積めば開かなくなりますし、内開きの扉なら扉の内側に置いた物が同じ結果をもたらします。
扉を後から取り替えたり増設したりしたときは、開く向きが変わっていないかと開ききる先に物が無いかを、二つ合わせて見てください。
外開きでも物を置いてしまえば同じことになるのですね。
向きと前後の空きはひと組で見るものです。
扉が開ききる先まで確かめてください。
明日からなにを確認すればよいのか

用途が分かれば、先に見るべき扉が絞られます。
自分の建物が劇場や映画館や演芸場や観覧場や公会堂や集会場に当たるなら、客席からの出口と客用の屋外への出口の戸を一枚ずつ見てください。
当たらない建物でも、屋内や屋外に避難階段があるなら、階段に通ずる出入口の戸が避難の方向に開くかどうかを確かめます。
そのうえで消防法の側の管理は、(18)項から(20)項までを除く別表第一の防火対象物に広く及ぶので、扉が開ききる先に物が無いかを避難口ごとに見ていきます。
確認した結果を図面に書き込んで残しておくと、扉を取り替えたときに向きが変わったことに気づけます。
用途を調べてから扉を見る順番なのですね。
用途が決まれば見る扉も決まります。
図面に開く向きを書き込んでおくと引き継げます。
よくある質問
まとめ
明日さっそく避難口の扉を一枚ずつ見てみます。
用途の判定から順にたどってください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第35条
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第19項・第118条・第123条・第125条
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条の2の4
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第4条の2の3
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





