避難器具は、階段が使えなくなったときに下の階や地上へおりるための最後の手段です。
共同住宅では、バルコニーがあるから設けなくてよいという話をよく聞きます。
昭和48年、消防庁はバルコニーが通じているかどうかを手がかりにして、省略できる場合とできない場合を分けました。
そこから読み取れるのは別の避難経路まで実際にたどり着けるかどうかで見るという考え方です。
うちのマンションはベランダが各戸つながっています。
避難はしごが見当たらないのですが、それで問題ないのでしょうか。
仕切りを破って隣のバルコニーを通り、別の避難経路へ行ける場合は2方向避難と考えてよいと回答されています。
まずご自分の建物でバルコニーがどこまで通じているかを見てください。
隣との間にあるのは薄い板です。
あれを壊してよいものなのか、いつも迷います。
その仕切りが容易に破壊できるものであることが前提とされています。
昭和48年10月23日に同じ日付で示された5つの照会を、順に見ていきます。
- バルコニーの各住戸間の仕切りが容易に破壊できるものであることが前提とされました
- そのうえで他の避難経路に到達できる場合は2方向避難できると考えてよいとされています
- 昭和36年8月1日付け自消乙予発第118号の令第32条特例基準に該当する場合は避難器具を設けないことができるとされました
- バルコニーが通じていない場合は避難器具の設置は緩和できないとされています
- 開口部は避難上支障がなければ同一垂直線上に設置してもやむをえないとされました
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目次
共同住宅のバルコニーを通れば2方向避難になるか

共同住宅のバルコニーについて、2方向避難と考えてよいかが問われました。
共同住宅のバルコニーは、隣の住戸との間が薄い板で仕切られているのが普通です。
設問はその仕切りを石綿スレート板とした場合の照会で、回答はまず仕切りが容易に破壊できるものであることを条件に置きました。
そのうえで、バルコニー等(防火区画された他の住戸を含む。)を通じて他の避難経路に到達できる場合はお見込みのとおりとされています。
ご自分の建物では、バルコニーの端がどこにつながっているかを一度歩いて確かめてください。
つまり、板を破った先に階段があるかどうかを見ればよいのですね。
端まで歩いてみます。
そのとおりです。
通り抜けの妨げになる物が仕切りの前に置かれていないかも、あわせて見てください。
バルコニーが通じていない共同住宅でも避難器具は省略できるか

階段室型でバルコニーが通じていない場合の設置義務が問われました。
なお、令第25条第1項第2号または第5号の規定により避難器具の設置を要する防火対象物において、規則第26条第4項第1号ヘまたは第2号ロの規定で「バルコニー等が避難上有効に設けられており…」とは、当該バルコニー等(防火区画された他の住戸を含む。)を経由して他の階段その他有効に避難できる設備器具が設置されている場所に到達し得るものをいい、設問のようにバルコニーが通じていない場合は避難器具の設置は緩和できない。
1つは令第32条特例基準で、昭和36年8月1日付け自消乙予発第118号に規定するものに該当すれば避難器具を設けないことができるとされました。
もう1つは規則第26条第4項の規定で、こちらには「バルコニー等が避難上有効に設けられており…」という条件が付いています。
この避難上有効とは、バルコニー等を経由して他の階段その他有効に避難できる設備器具が設置されている場所へ到達し得るものをいうと示されました。
つまり設問のようにバルコニーが通じていない場合、こちらの緩和は使えないことになります。
特例基準に当てはまれば要らない。
でも通じていなければ緩和できない。
どちらの話なのか混ざりそうです。
そこが分かれ目です。
設けなくてよいという話と緩和の話は別々に見ます。
特例基準の共同住宅は3階以上でも避難器具が不要か

3階以上の階で階段が1か所しかない場合の扱いが問われました。
設問の前提は、3階以上の階で階段が1か所のみの階について、収容人員が10人以上であれば避難器具の設置が義務づけられるという点にあります。
これに対して令第32条特例基準に該当する共同住宅の部分は、その階の収容人員が10人以上であっても設置は不要と解してよいかが問われました。
回答はお見込みのとおりの一言です。
ご自分の建物が特例基準に該当しているかどうかは、竣工時の書類か所轄消防署で確かめてください。
人数だけで決まるのかと思っていました。
特例基準に当たるかどうかが先なのですね。
はい。
まずは特例基準に該当する共同住宅かどうかを確かめるのが早道です。
避難器具の開口部は上下に重なってもよいか

規則に適合しない場合の設置方法が問われました。
設問と回答からは、規則第27条第1号が前段で開口部の位置を定め、ただし書で例外を置いていることが読み取れます。
既存の建物では窓の位置を動かせず、この前段に適合しないことがあります。
このとき2以上の階で同時に避難する場合に相互に避難上支障がなければ、ただし書を適用して同一垂直線上の開口部に設置してもやむをえないとされました。
上下に重なる配置しか取れない建物では、この回答が拠りどころになります。
うちも窓の位置が上下でそろっています。
これは駄目な例だと思い込んでいました。
避難上支障がないと認められる場合の扱いが示されています。
判断は所轄消防署になりますので、図面を持って相談してください。
セットバックした建物では避難器具をどこに設けるか

斜線制限でセットバックした場合の設置方法が問われました。
建築基準法令の斜線制限によって上の階ほど後ろへ下がった建物では、各段に平らな屋上が生まれます。
設問は6階建の建築物で、2階以上各階とも設置義務があり、器具を設けられる場所がセットバックしている側だけという場合の照会です。
回答は、そのセットバック部分の屋上を利用して次々に避難器具が使用できるように設置するよう指導されたいというものでした。
同じ形の建物をお持ちなら、各段の屋上に降りたあと次の器具まで行けるかを上から順にたどって確かめてください。
段になっている建物は途中で行き止まりになりそうで不安です。
どこまで降りられればよいのでしょうか。
次々に使用できるように設置するとされています。
段ごとに次の器具があるかを、上から順にたどって確かめてください。
よくある質問
まとめ
バルコニーがあるから要らない、では済まないと分かりました。
うちの建物は端まで通じているか見てみます。
ぜひそうしてください。
避難器具は別の避難経路まで実際にたどり着けるかどうかで見ます。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- バルコニーを通して設けた場合は2方向避難できると考えてよいか(昭和48年10月23日 消防予第140号・消防安第42号 予防課長・安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
- 特例基準が適用される共同住宅でバルコニーが通じていない場合の避難器具設置の要否(昭和48年10月23日 消防予第140号・消防安第42号)
- 特例基準に該当する共同住宅の3階以上の階では避難器具の設置は不要か(昭和48年10月23日 消防予第140号・消防安第42号)
- 避難器具と設置可能開口部との関係について(昭和48年10月23日 消防予第140号・消防安第42号)
- セットバックして建てられている建築物における避難器具の設置方法は(昭和48年10月23日 消防予第140号・消防安第42号)
- 消防法の一部改正に伴う共同住宅の取扱いについて(昭和36年8月1日 自消乙予発第118号 消防庁予防課長通達)
- 消防法施行令第25条・第32条/消防法施行規則第26条・第27条
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は各通知が発出された当時のもので、通知番号や機関の名称等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





