建物の防犯のために、裏口や非常口に南京錠やチェーンをかけていませんか。
その扉、実は消防法令違反になっている可能性があります。
避難口の戸は、火災のときに中にいる人が誰でも鍵を使わずに開けられる状態を保つことが、建物の管理者に課された義務です。
この記事では、避難口の施錠が禁止される根拠条文と、防犯と両立できる例外の条件を解説します。
うちのテナントは夜間だけ裏口に南京錠をかけています。
防犯上仕方ないと思っていました。
その運用は、避難のときに扉が開かず火災予防条例違反になる可能性があります。
まず根拠になる条文を確認しましょう。
立入検査で指摘されるまで、施錠がだめだとは知りませんでした。
実は消防法にも、避難施設の管理を義務づける条文があります。
まずそこから見ていきましょう。
- 避難口の扉は、消防法第8条の2の4により避難の支障になる物件の放置・みだりな施錠を禁止する管理義務の対象です
- 対象になる防火対象物は令別表第一のほとんどの用途で、アーケード等の(18)項から(20)項だけが除かれます
- 火災予防条例(例)第39条は、避難口の戸に施錠装置を設けてはならないと定めています
- 例外は非常時に自動的に解錠できる機能か、屋内から鍵等を使わず容易に解錠できる構造の場合だけです
- 防犯目的の後付け錠・南京錠・チェーンは、この例外に当たらないため取り外しが必要です
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目次
避難口の扉に鍵をかけると消防法令違反になるのか

ここに鍵をかけて開けられない状態にすると、避難そのものができなくなります。
条文が挙げているのは学校・病院・工場・旅館・飲食店・地下街など幅広い用途で、管理について権原を有する者、つまり所有者や運営者自身に義務があります。
条文の言葉づかいは「物件が放置され、又はみだりに存置されない」という避難の支障の防止ですが、施錠して扉自体を開かなくする行為も、避難の支障そのものを生む点で同じ管理義務の対象になります。
「防犯だから」という理由は、この管理義務を免除する条文にはなっていません。
でも防犯のために鍵をかけないと、誰でも入れてしまいます。
その心配はわかります。
ただ、まず対象になる建物の範囲を確認しましょう。
どの建物のどの扉が対象になるのか

実務ではほとんどの建物が対象になります。
除かれるのはアーケードなど(18)項から(20)項に掲げるものだけで、事務所・店舗・飲食店・ホテル・工場・共同住宅など実際に建物として使われているものはほぼすべて対象に含まれます。
「小さいテナントだから関係ない」「事務所だから対象外」といった思い込みは当たりません。
自分の建物の用途が(18)項から(20)項の除外用途に当たらない限り、避難口の管理義務は必ずかかっていると考えてください。
うちは小さな飲食店ですが、それでも対象になるんですね。
はい、対象です。
次は、施錠してよい条件を具体的に見ていきましょう。
施錠してよい場合の条件とは何か

条件を満たす仕組みだけが、例外として認められています。
一つは火災を感知して自動的に解錠する機能を持つもの、もう一つは屋内側から鍵やカード、暗証番号を使わずに開けられる構造のものです。
逆に言えば、屋内側であっても鍵・IDカード・暗証番号のいずれかが必要な錠は、この例外に当たりません。
つまみを回すだけで開くサムターンや、押すだけで開くレバーハンドルのような構造であれば、外側からの防犯性を保ったまま屋内からは自由に開けられます。
屋内側にレバーハンドルがあれば、外側は鍵で施錠していても大丈夫なんですね。
そのとおりです。
次は、現場でよくある間違いを見てみましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

よくある間違いを先に知っておくと、確認が早くなります。
- 防犯のために後付けした南京錠やチェーンを、そのまま付けたままにしている
- シャッターを避難口として使っているのに、くぐり戸が付いていない、またはくぐり戸自体に施錠している
- 屋内側にカード認証や暗証番号式の電子錠を付け、鍵等を使わない構造だと思い込んでいる
- 営業時間外だけ施錠するつもりが、開店後もロックしたままにしている
特にシャッターを避難口代わりに使っている店舗では、くぐり戸そのものが無い、あるいはくぐり戸にまで南京錠をかけているケースがあります。
カード認証・暗証番号式の電子錠は便利な設備ですが、鍵等を用いることなくの条件には当たらないため、屋内側にも認証を求める設定のままでは施錠禁止の対象になります。
防犯機器を導入するときは、屋内側の解錠方法まで含めて確認する必要があります。
うちの電子錠、屋内側も暗証番号が必要な設定でした。
それは条例の例外に当たらない可能性があります。
最後に、確認の手順を整理しましょう。
明日から何を確認すればよいのか

次の手順で、定期的に見直すことをおすすめします。
- 建物の避難口・非常口をすべて回り、施錠装置が付いていないか確認する
- 施錠装置がある場合は、屋内側から鍵等を使わずに開けられる構造か、火災時に自動解錠する機能があるかを確認する
- 防犯目的の南京錠・チェーン・後付け電子錠は、条件を満たさない限り外す
- 判断に迷う場合は、改修や設定変更の前に所轄消防署に相談する
まずは建物を一周して目で確認するだけで、多くの問題は見つかります。
電子錠や自動ドアを導入している場合は、停電時にも解錠できるかまで確認しておくと安心です。
迷ったときは所轄消防署に確認すれば、防犯性を保ったまま適法な施錠方法を教えてもらえます。
今日、施錠している扉がないか一通り確認してみます。
それが一番早い確認方法です。
次の立入検査までに直しておきましょう。
よくある質問
まとめ
うちの避難口も、今日中にひとつずつ見て回ります。
施錠装置の有無の確認、例外条件に当たるかの確認、そして迷ったときの消防署への相談。
この3つを押さえておけば、防犯と避難の両立に慌てずに済みます。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第8条の2の4
- 消防法施行令第4条の2の3
- 火災予防条例(例)第39条(避難施設の管理)
- 奈良県広域消防組合「火災予防条例における解釈及び運用」
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





