ホテルや旅館の玄関に、紺色の地に金や銀の縁取りが入ったプレートが掲げてあるのを見たことはないでしょうか。
あれは消防機関が交付した表示マークで、その建物が防火の基準に適合していることを利用者に知らせるものです。
自分の旅館にも掲げたいけれど、どこから手を付ければよいのか分からないという声をよく聞きます。
この制度は関係者が申請しなければ何も始まらない仕組みになっています。
近所のホテルの入口に金色のプレートが掛かっていました。
うちの旅館でももらえるものなのでしょうか。
条件に当てはまれば申請できます。
消防長または消防署長へ交付申請を出すところから始まります。
金と銀の二種類があるのは何が違うのでしょうか。
続けてきた年数の差です。
銀が3年間続いてはじめて金の対象になります。
- 表示マークは関係者からの申請にもとづいて消防長又は消防署長が交付するものです
- 対象はホテル・旅館等のうち消防法第8条の適用があるもので、かつ地階を除く階数が3以上のものです
- 有効期間は表示マーク(銀)が1年、表示マーク(金)が3年です
- 銀が3年間継続して交付され表示基準にも適合していれば、金へ切り替えることができます
- 防火対象物点検や定期調査報告の義務が無い規模でも、点検資格者や建築士等の調査結果を添えれば申請できます
▼

目次
表示マークの制度はなぜ作り直されたのか

建物の防火の状況を知らないまま泊まる人が多いことが、この制度の出発点になりました。
もとの防火基準適合表示制度は平成14年12月24日付けの通知によって平成15年9月30日に廃止され、その後は自主点検報告表示制度が動いていました。
今回の制度は建築構造等への適合まで見る点が特徴で、消防と建築の両方から建物を確かめます。
受付と審査は平成26年4月1日から始まり、表示マークを実際に掲げてよいのは平成26年8月1日からとされました。
この通知は消防組織法第37条にもとづく助言として出されたもので、表示マークを掲げること自体を義務づけるものではありません。
罰則が無いなら、掲げても掲げなくてもよいということでしょうか。
制度としてはそのとおりです。
ただし利用者に情報提供することが目的なので、選ばれる側としては効いてきます。
どの旅館やホテルが表示マークの対象になるのか

ただし、その用途に当たれば全部が対象になるわけではありません。
消防法第8条の適用があるものとは、(5)項イであれば収容人員が30人以上のものを指します。
これに地階を除く階数が3以上という条件が重なるので、平屋や二階建ての小さな宿は制度の対象から外れます。
ホテルが入った複合用途防火対象物、つまり(16)項イも対象になり、その範囲は原則として建物全体です。
自分の建物が当てはまるかどうかは、収容人員の算定書と階数の分かる図面を並べれば、その場で見当が付きます。
うちは三階建てで収容人員も30人を超えています。
それなら対象になりますね。
その二つが揃えば対象です。
市町村の判断でそれ以外の建物を対象に加えることもできます。
表示マークの交付ではなにが審査されるのか

すでに提出している報告書を突き合わせて、表示基準に適合しているかを判定します。
| 区分 | 点検項目 |
|---|---|
| 防火管理等 | 防火対象物の点検及び報告/防火管理者等の届出/自衛消防組織の届出/防火管理に係る消防計画/統括防火管理者等の届出/防火・避難施設等/防炎対象物品の使用/圧縮アセチレンガス等の貯蔵等の届出/火気使用設備・器具/少量危険物・指定可燃物 |
| 防災管理 | 防災管理対象物の点検及び報告/防災管理者等の届出/防災管理に係る消防計画/統括防災管理者等の届出 |
| 消防用設備等 | 消防用設備等及び特殊消防用設備等の設置及び維持等/消防用設備等の点検報告/危険物施設等 |
| 建築構造等 | 定期調査報告/建築構造等(建築構造・防火区画・階段)/避難施設等 |
表示基準に適合していると認められると、まず表示マーク(銀)が交付されます。
その銀が3年間継続して交付されていて、なお表示基準に適合していると認められる場合に表示マーク(金)へ進みます。
有効期間は交付日から銀が1年、金が3年で、金は交付日から3年が経過する前に更新の申請をすれば継続できます。
つまり毎年の点検報告を欠かさず出しておくことが、そのまま表示マークを維持する近道になります。
点検報告をきちんと出していれば、審査の材料はもう手元にあるということですね。
そのとおりです。
消防本部へ報告済みのものは添付を省略できる扱いになっています。
点検の義務が無い旅館は申請できないのか

表示制度の対象になる建物と、防火対象物点検の義務がある建物は範囲が違います。
防火対象物点検の義務は収容人員が300人以上の場合などに生じるので、収容人員30人台の旅館は義務の対象外です。
それでも表示マークがほしければ、防火対象物点検資格者の点検と建築士等による調査を自分で手配して、その結果を申請書に添えます。
もうひとつ見落としやすいのが返還の場面で、表示基準に適合しないことが明らかになった場合や、火災が起きて調査の結果が不適合だった場合には表示マークを返します。
返還したあとに再び申請して適合が認められても、戻ってくるのは種別に関係なく表示マーク(銀)です。
金まで育てても、一度返すと銀からやり直しになるのですね。
そうなります。
だからこそ日々の維持管理のほうが申請の手続より大事です。
明日からなにを準備すればよいのか

そろえる書類が決まっているので、手元にあるかどうかを先に確かめます。
銀の申請なら、申請日から過去1年以内に実施した防火対象物点検の報告書と消防用設備等点検結果報告書、それに直近の定期調査報告書が要ります。
危険物の施設があるときは製造所等定期点検記録表も加わるので、担当が分かれている場合は先に声をかけておきます。
複合用途のビルなら、統括防火管理者の選任届や建物全体の消防計画といった建物全体に係る書類まで求められます。
二階以下や収容人員30人未満で対象から外れる宿でも、表示基準に適合していることを確かめたうえで表示制度対象外施設である旨の通知を受けられるので、まず所轄の消防署に相談してください。
まず点検の報告書と定期調査報告書がそろっているか、書庫を見てきます。
それが第一歩です。
足りない書類が見つかったら、補正を求められる前に手当てしておくと早く進みます。
よくある質問
まとめ
まずは書類をそろえるところからだと分かりました。
さっそく点検の報告書を確かめます。
そろった書類を持って所轄の消防署へ相談してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 防火対象物に係る表示制度の実施について(通知)(平成25年10月31日 消防予第418号 消防庁次長)
- 防火対象物に係る表示制度の実施細目等について(通知)(平成25年10月31日 消防予第419号 消防庁予防課長)
- 表示マークの掲出及び使用開始日等について(通知)(平成26年2月12日 消防予第39号 消防庁予防課長)
- 表示マークの商標権の設定及び虚偽又は類似の表示マークへの対応について(平成26年5月23日 消防予第226号 消防庁予防課長)
- 消防法第8条第1項
- 消防法第8条の2の2第1項
- 消防法第17条の3の3
- 消防法施行令第1条の2第3項第1号
- 消防法施行令第4条の2の2
- 消防法施行規則第4条の2の4
- 建築基準法第12条第1項
- 消防組織法第37条
- 不正競争防止法第2条第1項第20号
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





