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移動式泡消火設備はどこで使えないのか|低発泡限定の薬剤とホースの基準を解説

移動式泡消火設備には使えない場所があることを示すアイキャッチ画像

泡消火設備には、固定の配管とヘッドで放射する方式のほかに、人がホースを持って操作する移動式の方式もあります。
ですが移動式はどこにでも設置できる方式ではなく、条文が使える場所を細かく区切っていることは意外と知られていません。
薬剤の種類やホースの基準まで決められているのに、駐車場の壁の赤い箱を見ただけでは気づきにくいものです。
移動式泡消火設備がどこで使えて、どこで使えないのかを、条文の要点から確かめます。

駐車場の壁に赤い箱があって、ホースが入っているのを見たことがあります。

移動式の泡消火設備には、設置場所と薬剤について細かい決まりがあります。
順番に確認していきましょう。

固定式のヘッドとどう違うのか気になります。

人がホースを持って操作する点が固定式との大きな違いです。
だからこそ使える場所が限られています。

この記事の結論
  • 移動式泡消火設備は、著しく煙が充満するおそれのある場所と道路の部分では使うことができません。
  • 移動式で使ってよい泡消火薬剤は低発泡のものに限られます。
  • 移動式のホースにも消防庁長官が定める基準への適合が必要です。
  • 格納箱には「移動式泡消火設備」の表示と赤色の灯火を設けることが決められています。
  • 屋上部分の道路は、地上の道路と違って移動式の設置が認められる例外です。

移動式泡消火設備は使える場所と薬剤が決まっていることを示す図解

煙が充満するおそれのある場所ではなぜ移動式が使えないのか

煙の充満する室内で固定式のヘッドは許可され移動式のホースは禁止されるイメージ図
移動式泡消火設備は、人がホースを持って現場まで運び、狙った場所に泡を放射する方式です。
ところが煙が充満するおそれのある場所では、この移動式そのものが使えません。
消防法施行規則第18条第4項第1号 火災のとき著しく煙が充満するおそれのある場所に設けるものは、固定式のものとすること
煙が充満するおそれのある場所では、泡消火設備は固定式でなければなりません。
理由までは条文に書かれていませんが、人が現場までホースを運んで操作する移動式では、煙で視界や呼吸が奪われた状況にたどり着けないおそれがあるためと考えられます。
著しく煙が充満するおそれのある場所には、駐車場や指定可燃物を扱う倉庫のように、火災時に煙がこもりやすい区画が想定されます。
自分の建物のどの部分が固定式限定になっているかは、設置時の設計図書で確認できます。

駐車場は煙がこもりやすいので不安です。

煙が充満する場所では移動式は使えません。
設計図書で固定式になっているか確認しましょう。

道路の部分に設ける泡消火設備はなぜ移動式で足りないのか

地上の道路には固定式のヘッドが必要で屋上のヘリポート部分だけ移動式が認められるイメージ図
道路の用に供される部分も、泡消火設備は原則として固定式に限られます。
ただし条文には、ある部分だけ例外が定められています。
消防法施行規則第18条第4項第1号の2 道路の用に供される部分には、固定式の泡消火設備を設けること。ただし、屋上部分に設けられるものにあつては、この限りでない。
道路の部分は、屋上に設ける場合を除いて固定式に限られます。
地上の駐車場や車路のように人や車の出入りが多い場所では、火災時に落ち着いて移動式のホースを操作する余裕が無いことが想定されます。
一方で屋上部分に設ける道路はこの号の対象から外れるため、移動式でも設置できます。
自分の建物の道路部分がどちらの扱いになっているかは、設置届出の書類で確認できます。

屋上の駐車場だけ扱いが違うんですね。

地上の道路と屋上とで扱いが分かれます
設置場所がどちらかを図面で確かめましょう。

移動式に使ってよい泡消火薬剤はどれか

コンパクトな低発泡の泡だけが移動式に許可され膨張した高発泡の泡は禁止されるイメージ図
泡消火薬剤には、泡の膨らみ方によって低発泡と高発泡の区別があります。
移動式で使ってよい薬剤は、このうち片方だけに限られています。
消防法施行規則第18条第4項第3号 移動式の泡消火設備に用いる泡消火薬剤は、低発泡のものに限ること
移動式で使える泡消火薬剤は、低発泡のものだけです。
低発泡は膨脹比二十以下の泡で、フォームヘッドなど固定式の設備でもよく使われている種別です。
高発泡(膨脹比八十以上千未満)は部屋を泡で満たす全域放出方式などで使う種別で、移動式のホースで扱う薬剤には含まれません。
薬剤を補充するときは、容器のラベルで低発泡用かどうかを確認する習慣が要ります。

補充するときの薬剤は何を見ればいいですか。

容器のラベルで低発泡用かどうかを確かめてください。
高発泡用は移動式には使えません。

移動式のホースにも国の基準があることを見落としていないか

壁のホースリールボックスからホースを引き出す作業服の人のイメージ図
移動式泡消火設備の主な部品は、ホースと泡放射用の器具です。
このホースにも、条文で定められた基準があります。
消防法施行規則第18条第4項第3号の2 移動式の泡消火設備の消防用ホースは、消防庁長官の定める基準に適合するものであること
移動式のホースは、消防庁長官が定める基準に適合したものでなければなりません。
基準の中身は告示で定められており、一般の家庭用ホースを流用してよいものではありません。
経年劣化でホースにひび割れや水漏れが起きていないかは、点検のたびに確認すべき点です。
交換するときも、基準に適合した製品であることを確認してから納品を受けます。

普通のホースに交換してしまいそうです。

基準に適合したホースでなければ交換できません。
点検業者に確認してもらうと確実です。

格納箱の表示と赤色の灯火は点検で何を見ればよいのか

クリップボードを持つ人が赤い格納箱と灯火を確認しているイメージ図
移動式泡消火設備の格納箱には、表示に関する決まりもあります。
遠目からでもすぐに分かるようにするための工夫です。
消防法施行規則第18条第4項第4号 移動式の泡消火設備の表示は、次に定めるところによること。イ 泡放射用器具を格納する箱にはその表面に「移動式泡消火設備」と表示すること。ロ 泡放射用器具を格納する箱の上部には赤色の灯火を設けること
格納箱には「移動式泡消火設備」の表示と、箱の上部に赤色の灯火が必要です。
表示と灯火は、火災のときに離れた場所からでも器具の位置をすぐ見つけられるようにするための決まりです。
点検では、表示の文字が読めるかと、灯火が点灯するかの2点を確認します。
表示が薄れていたり灯火が切れていたりすると、いざというとき器具にたどり着くまでの時間が延びてしまいます。

灯火が切れていても気づきにくそうです。

点検のたびに灯火の点灯を確かめてください。
表示の文字が読めるかも一緒に見ましょう。

よくある質問

Q移動式と固定式はどちらを選べばよいですか?
A条文で固定式が義務づけられている著しく煙が充満するおそれのある場所と道路の部分では、選択の余地なく固定式になります。それ以外の部分は設計段階で選べます。
Q移動式に高発泡の薬剤を使うとどうなりますか?
A条文が移動式に認めているのは低発泡のものだけなので、高発泡の薬剤を使う設計は基準に適合しません。
Q屋上のヘリポート部分ならどんな場合でも移動式にできますか?
A号の除外は屋上部分に設ける場合に限られるので、個別の建物でどう判断されるかは所轄消防署に確認してください。
Q格納箱の赤色灯火は常時点灯させておく必要がありますか?
A条文が求めているのは箱の上部に赤色の灯火を設けることで、点灯の方式までは定めていません。点検のときに設備業者へ仕様を確認すると安心です。

まとめ

移動式泡消火設備は、著しく煙が充満するおそれのある場所では使えません。
道路の部分も屋上部分を除いて固定式が原則です。
移動式に使ってよい泡消火薬剤は低発泡に限られます。
ホースにも消防庁長官が定める基準への適合が必要です。
格納箱には「移動式泡消火設備」の表示を付けます。
箱の上部には赤色の灯火を設けます。
点検では表示の文字と灯火の点灯を必ず確認します。

移動式の決まりがよく分かりました!

設置場所や薬剤の適合はまとめて確認することもできます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法施行規則第18条第4項第1号(設置場所の制限)
  • 消防法施行規則第18条第4項第1号の2(道路の用に供される部分)
  • 消防法施行規則第18条第4項第3号・第3号の2(薬剤とホースの基準)
  • 消防法施行規則第18条第4項第4号(表示)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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