平成13年9月1日、東京都新宿区歌舞伎町の雑居ビル火災をきっかけに、消防庁は平成15年6月24日、消防予第170号で建物の区分に上乗せの基準を課す運用を示しました。
対象になるのは「特定一階段等防火対象物」と呼ばれる、階段が実質1つしかないビルです。
上乗せの中身は感知器や受信機だけではなく、ダンスホールやカラオケボックスの警報音、そして避難はしごの降下口にも及んでいます。
音とはしご、この2つの基準がどう変わったのかを確かめます。
うちのビル、カラオケボックスが入っていて階段も1つです。
警報音の基準まで変わるんでしょうか。
はい、警報音にも上乗せの基準がかかります。
順番に確認しましょう。
避難はしごの基準まで動いていたとは知りませんでした。
はい、降下口の大きさも統一されたんです。
まずはこの基準が生まれた経緯から見ていきます。
- 平成15年6月24日、消防予第170号は「特定一階段等防火対象物」の警報音と避難はしごについて運用上の留意事項を示しました。
- ダンスホールやカラオケボックスのような聞き取りにくい場所では、警報音を65デシベル以上、暗騒音より6デシベル以上強くする等の対策が必要です。
- 暗騒音対策は自動化だけでなく、常時人がいる場所での手動停止でも消防法施行令第32条の特例が適用できる場合があります。
- 避難はしごの降下口は固定式・つり下げ式とも直径50センチメートル以上に統一されています。
- 統一の経緯は、告示改正でつり下げはしご用ハッチが先に50センチメートルになり、固定はしごがあとから合わせたという順番です。
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目次
特定一階段等防火対象物の基準はなぜ生まれたのか

どんな経緯で上乗せの基準が生まれたのかを確認します。
消防審議会の答申を受け、消防庁は平成15年総務省令第90号で消防法施行規則を改正し、その運用の細部を消防予第170号で示しました。
改正は感知器・受信機・音響装置・避難器具の4つにわたっています。
このうち感知器や受信機、避難器具そのものの基準は既存記事で扱っているので、本記事では警報音と避難はしごの基準にしぼって見ていきます。
古い通知ですが、対象区分も基準の数値も現行の消防法施行規則にそのまま残っています。
感知器や避難器具の基準が変わったことは聞いたことがありました。
警報音まで変わっていたとは知りませんでした。
はい、音にも上乗せの基準があるんです。
次はどんな場所の警報音が対象になるのかを見ていきます。
ダンスホールやカラオケボックスの警報音はどう確保するのか

どんな基準でこれを防ぐのかを確認します。
基本の目安は、どの場所でも音圧65デシベル以上です。
ダンスホールのように周りの音(暗騒音)がもともと65デシベル以上ある場所では、警報音をさらに暗騒音より6デシベル以上強くするか、火災信号と連動して音楽や放送を自動で止める措置のどちらかが必要です。
個室やホールの防音性能によって必要な対策が変わるため、設計段階で音響測定をしておくと安心です。
次は、この2つの対応以外にも方法があるという見落としやすい点を確認します。
うちのカラオケボックス、個室の防音がかなり効いています。
警報、ちゃんと聞こえるか心配になってきました。
個室ごとに音圧を測ってみるのが確実です。
次は見落としやすいポイントを見ていきます。
警報音の確保で見落としやすいのはどこか

見落としやすいのは、実はこの2つだけではないという点です。
常時人がいる場所に受信機や火災表示盤を置き、火災信号を見てすぐに一般音響を止められる体制であれば、消防法施行令第32条の特例を適用してよいとされています。
ディスクジョッキーが常時いるブースで、火災表示を確認してすぐ音楽を止める運用が具体例として示されています。
ただしこの扱いは「常時人がいる」ことが前提なので、無人運転の時間帯がある店舗ではそのまま使えません。
営業時間の一部でも無人になる店舗は、自動化のほうの対策もあわせて検討しておく必要があります。
うちの店、深夜は店員が1人も常駐しない時間があります。
それなら手動停止の特例は使えません。
次は避難はしごの基準を見ていきます。
避難はしごの降下口はなぜ直径50センチメートルに統一されたのか

どう変わったのかを確認します。
もともと固定はしごの降下口は60センチメートル以上とされていました。
平成14年に告示が改正され、つり下げはしご用の避難器具用ハッチが50センチメートル以上とされたことで、両者の基準にずれが生じました。
このずれを整合させるため、消防予第170号にあわせて固定はしごの基準も50センチメートル以上に改められました。
古いビルほど、改正前の60センチメートル基準のまま設置されている固定はしごが残っている可能性があります。
うちの固定はしご、かなり古いもののようです。
降下口の大きさなんて測ったことがありません。
降下口の直径は一度測ってみると安心です。
最後に今日からの確認手順を整理します。
明日からなにを確認すればよいのか

順番に進めれば迷いません。
まず、ダンスホールやカラオケボックスのような部屋があれば、警報音が暗騒音に負けていないかを点検業者と一緒に音圧測定します。常時人がいるかどうかで、使える対策の選択肢も変わります。
次に、固定はしごがあれば、降下口の直径が50センチメートル以上あるかを実際に現地で測ります。
古い通知でも、数値や対象区分は今の消防法施行規則にそのまま引き継がれています。
音圧測定と降下口の採寸、この2つから始めればいいんですね。
はい、分からなければ所轄消防署や点検業者への相談もお忘れなく。
よくある質問もあわせてご覧ください。
よくある質問
まとめ
警報音とはしごの基準がよく分かりました!
音響設備や避難はしごの点検もまとめてご相談いただけます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「消防法施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う消防用設備等の技術上の基準の細目に係る運用について」(平成15年6月24日 消防予第170号)
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第24条第5号ロ・第27条第1項第4号ニ
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第32条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





