古い民家や空き家を宿泊施設や飲食店に活用する動きが各地で広がっています。
ところが住まいだった建物に基準どおり消防用設備等を付けようとすると誘導灯で行き詰まることがあります。
消防庁は平成29年に通知を出して、一般住宅を転用する場合に消防法施行令第32条を適用する考え方を整理しました。
要件を満たす部分については誘導灯と誘導標識の設置を要しないものとされています。
実家だった古い家を改装して小さな宿にしようと考えています。
客室のひとつひとつに誘導灯を付けろと言われそうで不安です。
もともと一般住宅だった戸建てなら特例基準が用意されています。
誘導灯と誘導標識だけは省ける道があります。
省けるかどうかは誰がどうやって決めるのでしょうか。
要件に当てはまれば自動で免除されるわけではないのですね。
判断するのは消防長又は消防署長なので事前の相談が要ります。
通知が示した要件を順に見ていきましょう。
- もともと一般住宅だった戸建ての家屋を宿泊施設や飲食店に活用する場合が対象です
- 特例の対象になる設備は誘導灯と誘導標識の2つだけです
- 避難階は3つの要件を、避難階以外の2階以上の階も3つの要件をすべて満たす必要があります
- 一般住宅のまま残す部分も対象になりますが避難経路になる部分は除かれます
- 適用を判断するのは消防長又は消防署長なので事前相談が欠かせません
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目次
民宿の特例基準がなぜ作り直されたのか

古民家を宿泊施設やレストランに活用したいという相談が、各地から寄せられていました。
この通知によって、民宿等について定めていた平成19年1月19日付け消防予第17号は効力を失っています。
背景にあるのは平成28年12月に開かれた歴史的資源を活用した観光まちづくりタスクフォースで、古民家の活用が進むよう特例の考え方を整理して公表することが求められました。
通知の末尾には消防組織法第37条の規定に基づく技術的助言であると明記されています。
各消防本部を縛る命令ではなく、判断のよりどころとして示された考え方だという位置づけです。
古い通知が廃止されたなら、今はこちらだけを見ればよいのですね。
手元の古い資料を持って相談に行くところでした。
そのとおりです。
民宿等という限定も外れて、一般住宅を活用する場合として広く読めるようになりました。
どの建物のどの設備が特例の対象になるのか

どちらか一方でも外れると、この特例基準は使えません。
建物全体が住まいとして使われていた戸建ての家屋であることが前提なので、はじめから店舗や事務所だった建物は入口で外れます。
その家屋が用途の変更によって令別表対象物または複合用途防火対象物になったときに、はじめてこの特例基準の土俵に乗ります。
設備のほうは誘導灯と誘導標識に限られていて、自動火災報知設備や消火器はこの通知では扱われていません。
ほかの設備を緩めたいのであれば、この通知ではなく個別に令第32条の相談をすることになります。
はじめから飲食店だった建物を居抜きで使う場合は当てはまらないのですね。
もとが住まいだったかどうかが分かれ目になるわけですか。
はい、そこが第1の書きぶりです。
登記や過去の図面など、住宅として使われていた経緯を示せるものをそろえておいてください。
避難階と2階以上の階ではなにを求められるのか

避難階と、それ以外の2階以上の階では求められることが違います。
避難階は(1)から(3)までのすべてに該当することが条件で、どれかひとつでも欠ければ適用されません。
(2)は外へ出たあとの話で、開口部から3m以内の部分を通らずに安全な場所へ離れられることを求めています。
避難階以外の階では、これに加えて非常用の照明装置または携帯用照明器具によって、夜間の停電時にも経路が見えることが要件に加わります。
3は住まいのまま残す部分の扱いで、そこが令別表対象物の部分からの避難経路になっていないことが条件です。
2階の客室には携帯用の照明を置いておけばよいということですね。
非常用の照明装置を後から入れるのは大がかりなので助かります。
利用者が常時容易に使用できるように居室内へ置くことが条件です。
引き出しの奥にしまい込むと要件を満たさないので、置き場所まで決めておいてください。
実務で見落としやすいのはどこか

ここを外すと、要件を満たしたつもりでも適用されません。
縁側のガラス戸の下に腰壁があると、他の室を経由せずに容易に外へ出られるとは言えなくなります。
雨戸を閉めていて外かどうか判断できない状態も、不案内な利用者にとっては避難に支障がある場合として挙げられています。
もうひとつの落とし穴は「迷うことなく」の読み方で、居室から避難口に通じる廊下に曲り角等があるとこの要件は満たせません。
なお同じ第4には、消防機関へ通報する火災報知設備の特例は平成8年2月16日付け消防予第22号によられたいという案内も置かれています。
縁側のガラス戸は開くのに、腰壁があるだけで駄目になるのですか。
見た目には外へ出られそうなので厳しく感じます。
不案内な利用者が迷わず外へ出られるかで見るためです。
アの要件が使えなくても、イの簡明な経路のほうで満たせないか検討してみてください。
明日からなにを確認すればよいのか

特例基準にたどり着く前に、確かめておくことがあります。
このただし書を受けた消防法施行規則第28条の2には、歩行距離や見とおしによって誘導灯を要しないとされる部分が定められています。
そこで外れる部分であれば令第32条の話にはならず、特例基準を持ち出す必要もありません。
それでも残る部分について、この通知の要件に当てはまるかを図面と現地で照らし合わせます。
そのうえで所轄消防へ相談し、避難経路図の掲示や従業者による案内といった措置を工事の前に決めておいてください。
規則の免除を先に見て、それから通知の要件という順番ですね。
避難経路図は工事が終わってから用意すればよいと思っていました。
掲示や案内は要件そのものなので、あとから足すものではありません。
どこに何を掲げるかまで示せると、相談の場で話が早く進みます。
よくある質問
まとめ
まず規則の免除を見て、それから通知の要件という筋道がつかめました。
図面を持って相談に行ってきます。
建物の来歴と間取りをそろえた側から話が進みます。
転用にあたって迷うところがあれば㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 一般住宅を宿泊施設や飲食店等に活用する場合における消防用設備等に係る消防法令の技術上の基準の特例の適用について(通知) 平成29年3月23日 消防予第71号
- 住宅宿泊事業法に基づく届出住宅等に係る消防法令上の取扱いについて(通知) 平成29年10月27日 消防予第330号
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第26条 誘導灯及び誘導標識に関する基準
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第32条 基準の特例
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)別表第一
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第28条の2 誘導灯及び誘導標識を設置することを要しない防火対象物又はその部分
- 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条 消防庁長官の助言、勧告及び指導
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





