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非危険物とされた化学物質はなぜ性状確認が必要になるのか|漂白剤の火災事例とSDSの落とし穴を解説

非危険物でも油断できない性状確認を表すアイキャッチ画像

倉庫に置いてある漂白剤や洗浄剤を、消防法の危険物ではないと思い込んでいませんか。
実際に「非危険物」として扱われていた物品が、火災調査の確認試験で危険物と判定された事例があります。
消防庁はこの事案を受け、化学物質等を扱う事業者に性状確認の徹底を求める通知を出しました。
今回は、SDSの確認だけでは足りない落とし穴を解説します

うちの倉庫にも漂白剤や洗浄剤の在庫があるんですが、危険物じゃないから普通に置いてます。

実はその判断、SDSの表示だけで決めていませんか?
それだと見落とすことがあります。

SDSに危険物と書いてなければ大丈夫じゃないんですか?

消防庁が注意喚起を出したくらい、そこに落とし穴があるんです。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 非危険物として扱われていた漂白剤等が、火災調査の確認試験で危険物(第一類酸化性固体)と判定された事案を受け、消防庁が性状確認の徹底を通知しました
  • 根拠は令和3年3月19日付け消防危第33号(消防庁危険物保安室長)です。
  • 供給元が同じ・型番が似ているという理由だけでSDSの情報から安易に性状を類推することは適当でないとされています
  • SDS等の情報が入手できない場合は、自ら試験を実施して性状を確認する必要があります。
  • 加工後の性状変化・製品ロットのばらつき・微量成分による変化という3つの落とし穴に注意が必要です。

性状確認はSDSの確認・類推禁止・試験の実施・情報の伝達で判断する流れを示した図解

非危険物とされた漂白剤はなぜ火災調査で危険物と判定されたのか

非危険物として提出された容器を試験室で確認する場面のイラスト
非危険物として扱われてきた身近な製品が、実は危険物に該当していた——そんな事案がきっかけでした。
消防庁が示した通知の背景を確認します。
化学物質等に関する性状確認等の徹底について(令和3年3月19日付け消防危第33号 消防庁危険物保安室長) この度、火災原因調査を行う過程において、非危険物として扱われていた物品(漂白剤等)を火元建物の関係者が消防機関に任意で提出し、消防法令に基づく危険物の確認試験を行ったところ、一部の当該試料が危険物(第一類酸化性固体)に該当する性状を示した事案が発生しました
きっかけは、ある建物の火災原因調査でした
非危険物として扱われていたはずの漂白剤等を、火元建物の関係者が消防機関に自主的に提出したところ、消防法令に基づく確認試験で危険物(第一類酸化性固体)に該当する性状を示したのです。
第一類酸化性固体は、他の可燃物と混ざると火災の危険性を高める性質を持つ区分です。
「非危険物」という思い込みのまま保管・取扱いを続けていたら、火災の拡大につながっていた可能性があります。
この事案を受け、消防庁は一般社団法人日本化学工業協会に対して注意喚起を行いました。

非危険物だと思っていたものが、実は危険物だったってことですか。

はい、性状確認のやり方に見落としがあったケースです。
詳しく見ていきましょう。

どんな事業者のどんな化学物質が対象になるのか

化学物質の原料調達から製造流通までを示す倉庫のイラスト
対象になるのは、化学物質等を製造・流通させるすべての事業者です。
条文というより実務上の留意事項なので、範囲を確認しておきます。
化学物質等に関する性状確認等の徹底について 原料調達から製品の製造、流通に至るまで、化学物質等を扱う際には、危険物保安の観点から適切に性状確認を実施すること
対象は原料調達から製造、流通に至るまでの化学物質等を扱う全事業者です。
通知そのものは一般社団法人日本化学工業協会宛てに発出されていますが、消防機関にも化学物質等を取り扱う施設への立入検査等の機会にこの内容を活用するよう求めています。
つまり製造業者だけでなく、化学物質等を保管・取扱いする倉庫や工場の防火管理者も無関係ではありません
自社が「非危険物」として扱っている物品が、原料や製造工程のどの段階のものかを確認しておく必要があります。

うちは製造業じゃなくて、化学物質を保管してるだけの倉庫なんですが関係ありますか。

はい、立入検査の際にはこの内容が確認の目安になります。
保管している事業者も対象と考えてください。

通知はSDSの確認にどこまでを求めているのか

SDSの書類と試験器具を照らし合わせる技術者のイラスト
通知が求めているのは、SDSを見るだけで終わらせないことです。
どこまでの確認が必要か、内容を見ていきます。
化学物質等に関する性状確認等の徹底について 当該化学物質等の安全データシート(SDS)や危険物データベース登録確認書等により、供給者から確実に情報伝達を受けることが適当であること。なお、供給元が同じであることや、類似の型番であること等で、製品のSDS等の情報を基に、安易に性状を類推することは適当でないこと
化学物質等に関する性状確認等の徹底について 化学物質等の供給元からSDS等が提供されず、危険物保安上必要な情報が入手できない場合には、試験を実施して性状を確認するとともに、当該情報を関係者に伝達すること
求められているのはSDSによる確認類推の禁止の2段構えです。
まずSDSや危険物データベース登録確認書などで、供給者から確実に性状の情報を受け取ることが基本になります。
ここで注意したいのが、「供給元が同じ」「型番が似ている」という理由だけで、別の製品のSDSから性状を類推してはいけないという点です
SDS等が入手できない場合は、必要な施設・人材を持つ事業所や試験機関で試験を実施し、性状を確認したうえで関係者に伝達する必要があります。
「表示が無いから安全」ではなく、「確かめるまで判断を保留する」姿勢が求められています。

似たような型番の製品なら、前に確認したSDSを使い回してもいいと思ってました。

それが今回、適当でないと名指しされた点です。
製品ごとに確認し直してください。

非危険物の判定はどこで覆ることがあるのか

破砕して粉状になった製品とロット違いの製品を並べたイラスト
一度「非危険物」と判定されても、それで終わりではありません。
通知が挙げる注意点を確認します。
化学物質等に関する性状確認等の徹底について 危険物でないとされた物品であっても、破砕等の加工を行った場合、危険物としての性状を示すことがあることに留意し、製品加工を行う者は、適切な段階で試験を実施すること
落とし穴は大きく3つあります。
1つ目は、非危険物と判定された物品でも破砕等の加工を行うと性状が変わることがある点です。
2つ目は、組成や粒度、形状などにばらつきが大きい製品では、製品ロットの違いによって判定結果が変わることがある点です。
3つ目は、危険物に該当する成分がわずかに含まれる物品は、非危険物と判定された後でも温度・湿度・衝撃・火災の発生などの条件次第で危険物に準ずる性状を示すことがある点です。
1回の試験結果を「未来永劫の安全証明」として扱わないことが重要です。

一度「非危険物」って判定されたら、そのままでいいと思ってました。

加工やロットが変われば話は別です。
変化があるたびに確認し直しましょう。

明日から何を確認すればよいのか

チェックリストを手に保管棚を確認する作業着姿の人物のイラスト
最後に、現場でできる確認の手順を整理します。
むずかしい判断はここまでの内容で足ります。
化学物質等に関する性状確認等の徹底について 化学物質等を取り扱う施設への立入検査等の機会に、別添の通知を活用し、当該物質の危険物としての性状確認の必要性等について周知していただきますようお願いいたします
確認はSDSの有無を洗い出すところから始めます。
在庫している化学物質等について、供給者からSDSや危険物データベース登録確認書を受け取れているかを一覧にしてください。
入手できていない、あるいは類似品からの類推で済ませている物品があれば、試験機関や信頼できる事業所での確認試験を検討します。
加工を行う製品やロットのばらつきが大きい製品は、段階ごと・ロットごとの再確認が必要かどうかも点検してください。
判断に迷う場合は自己判断で終わらせず、所轄の消防署へ相談することをおすすめします

まずは在庫のSDSがそろっているか、確認してみます。

それが一番の近道です。
足りないものから試験の相談を進めましょう。

よくある質問

QSDSに危険物と記載されていなければ、性状確認をしなくてもよいですか?
Aいいえ、SDSの情報だけで安心せず、供給元が同じ・型番が似ているという理由での安易な類推は適当でないとされています。個別に確認することが必要です。
QSDSが入手できない場合はどうすればよいですか?
A試験を実施して性状を確認し、その情報を関係者に伝達する必要があります。必要な施設・人材を持つ事業所や試験機関で行うことが信頼性の確保に不可欠とされています。
Q一度「危険物ではない」と判定された製品は、その後も確認しなくてよいですか?
Aいいえ、破砕等の加工や製品ロットの違い、温度・湿度・衝撃などの条件によって性状が変わることがあるため、変化があるたびに確認が必要です。
Qこの通知は消防機関にどう使われますか?
A化学物質等を取り扱う施設への立入検査等の機会に活用し、事業者への周知に役立てるとされています。

まとめ

非危険物として扱われていた漂白剤等が、火災調査の確認試験で危険物(第一類酸化性固体)と判定された事案を受けて出された通知です
根拠は令和3年3月19日付け消防危第33号(消防庁危険物保安室長)です。
原料調達から製造・流通までの全事業者が対象です。
SDS等による確認が基本ですが、供給元や型番が同じという理由での安易な類推は適当でないとされています
SDS等が入手できない場合は自ら試験を実施し、情報を関係者に伝達する必要があります。
加工・ロットのばらつき・微量成分という3つの落とし穴に注意が必要です。
化学物質等を取り扱う施設への立入検査等でもこの内容が活用されます

在庫のSDSを見直して、足りないものから確認してみます!
安易な類推、気をつけます。

ご不明な点があれば、いつでもお尋ねください。
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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 化学物質等に関する性状確認等の徹底について(令和3年3月19日付け消防危第33号 消防庁危険物保安室長)
  • 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第2条第7項・別表第一
  • 危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)第1条の3
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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