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危険物取扱者免状はなぜ交付を拒否されることがあるのか|第13条の2第4項が定める交付拒否事由を解説

危険物取扱者免状は誰でも交付されるわけではないことを解説する記事のアイキャッチ画像、県庁の窓口で作業着姿の担当者が申請書類を差し出している写真

危険物取扱者試験に合格すれば、免状はいつでも受け取れると考えている方が少なくありません。
ところが消防法は、試験に合格した人であっても免状の交付を拒否できる場面を用意しています。
拒否は自動的に起こるものではなく、都道府県知事の判断に委ねられていますが、対象になる事由は条文にはっきり定められています。
この記事では、消防法第13条の2第4項が定める交付拒否の事由と、第5項の返納命令・第6項の通知の仕組みを、実際の条文にもとづいて解説します。

従業員が危険物取扱者試験に合格したんですが、免状はすぐにもらえるものですよね。

基本的にはそうですが、交付を拒否される場合もあります。

合格したのに、もらえないことがあるんですか。

はい、過去の経歴によっては起こり得ます。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 都道府県知事は、2つの事由に該当する者には危険物取扱者免状の交付を行わないことができます(消防法第13条の2第4項)
  • 1つ目は、免状の返納を命じられてから1年を経過しない者です(同項第一号)
  • 2つ目は、消防法令違反で罰金以上の刑に処せられてから2年を経過しない者です(同項第二号)
  • 交付拒否は「今ある免状を取り上げる」返納命令とは別の制度で、新規の交付そのものを止める仕組みです(消防法第13条の2第5項)
  • 他の都道府県で交付を受けた者が違反をしたときは、交付元の都道府県知事へ通知する義務もあります(消防法第13条の2第6項)

返納命令から1年未満 罰金以上の刑から2年未満という交付拒否の2つの事由と 他都道府県への通知を示した図解

危険物取扱者免状はなぜ交付を拒否されることがあるのか

県庁の窓口で申請書類を差し出す作業着姿の人物と対応する職員のイラスト
試験に合格した人がそのまま免状を受け取れるのは、あくまで原則の話です。
消防法は、この原則に例外を設けています。
都道府県知事は、左の各号の一に該当する者に対しては、危険物取扱者免状の交付を行わないことができる。(略)(消防法第13条の2第4項)
免状を交付するかどうかは、都道府県知事の判断に委ねられています。
条文の言葉が「行わないことができる」となっている点に注意が必要です。
これは「該当すれば必ず拒否される」という義務規定ではなく、知事が交付しないという選択を取れるという規定です。
とはいえ、対象になる事由そのものは条文で明確に2つに絞られています。
次の項で、その中身を具体的に見ていきます。

拒否するかどうかは知事が決めるんですね。

はい、そのぶん対象になる事由は条文で決まっています。

免状の交付を拒否できるのはどんな場合か

返納された免状カードと時計 判決文書と時計を並べた2つの事由のイラスト
交付拒否の対象になるのは、どちらも「過去に問題があった人」です。
条文は、その期間まで具体的に区切っています。
一 次項の規定により危険物取扱者免状の返納を命ぜられ、その日から起算して一年を経過しない者
二 この法律又はこの法律に基く命令の規定に違反して罰金以上の刑に処せられた者で、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しないもの(消防法第13条の2第4項第一号・第二号)
対象になる事由は、この2つに限られます。
第一号は、免状の返納を命じられた日から数えて1年を経過しない者です。
第二号は、消防法令違反で罰金以上の刑に処せられ、その執行を終えた日または執行を受けなくなった日から数えて2年を経過しない者です。
どちらも一定期間を過ぎればこの事由に当たらなくなるので、永久に免状を取得できなくなる制度ではありません。
起算日をどこに置くかで期間の数え方が変わるため、該当しそうな場合はまず起算日を正確に確認することが出発点になります。

期間が過ぎれば、また申請できるということですか。

条文上はそうなりますが、起算日の確認は慎重に行ってください。

交付拒否と返納命令はどう違うのか

既存の免状カードが取り上げられる場面と 新規申請の書類がバリケードで止められる場面を対比したイラスト
条文には「返納」という言葉も出てきますが、交付拒否とは向きが逆の制度です。
この違いを整理しておくと、条文の位置づけが分かりやすくなります。
危険物取扱者がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反しているときは、危険物取扱者免状を交付した都道府県知事は、当該危険物取扱者免状の返納を命ずることができる。(消防法第13条の2第5項)
返納命令は、すでに持っている免状を取り上げる制度です。
これに対して第4項の交付拒否は、これから交付を受けるときの入り口を止める制度です。
第4項第一号が「返納命令から1年」を交付拒否の事由にしているとおり、返納命令は交付拒否の引き金にもなり得ます。
つまり違反を重ねると、まず持っている免状を返納させられ、その後の新規申請でも一定期間は交付を受けにくくなるという二段構えです。
自分がどちらの局面に立っているのか(今ある免状の話か、これからの申請の話か)を区別して条文を読むことが重要です。

返納と交付拒否は別の場面の話なんですね。

はい、今ある免状これからの申請かで分けて考えてください。

別の都道府県で申請し直せば免れられるのか

離れた2つの県庁が破線の矢印と書類アイコンで結ばれた通知の仕組みのイラスト
免状は都道府県知事が交付するものなので、県をまたげば事情を知られずに済むと考える方もいます。
しかし条文は、この抜け道をふさぐ仕組みも用意しています。
都道府県知事は、その管轄する区域において、他の都道府県知事から危険物取扱者免状の交付を受けている危険物取扱者がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反していると認めるときは、その旨を当該他の都道府県知事に通知しなければならない。(消防法第13条の2第6項)
違反を見つけた都道府県知事は、免状を交付した都道府県知事へ通知する義務を負います。
たとえばA県で免状の交付を受けた人がB県で消防法令違反をした場合、B県知事はA県知事へ通知しなければなりません。
通知を受けたA県知事は、その情報をもとに返納命令や将来の交付拒否を判断することになります。
条文上、この通知は「しなければならない」という義務規定であり、通知するかどうかに裁量の余地はありません。
違反の情報は都道府県の境界を越えて共有される仕組みになっているので、県を変えれば済むという話ではありません。

県をまたいでも情報は伝わるんですね。

はい、通知は義務なので必ず伝わる仕組みです。

交付拒否に備えて明日からなにを確認すればよいのか

デスクでチェックリストと免状カードを確認する作業着姿の担当者のイラスト
交付拒否の仕組みは、平時のうちに理解しておけば身構える必要はありません。
次の点を押さえておきましょう。 大事なのは、違反を起こさないことがいちばんの備えだという点です。
以下のポイントを、社内で確認しておきましょう。
  • 従業員が過去に免状の返納命令を受けていないか、採用時に確認しているか
  • 消防法令違反で罰金以上の刑に処せられた経歴がある従業員がいないか把握しているか
  • 該当する場合、起算日から何年経過しているかを正確に数えているか
  • 他の都道府県で交付された免状を持つ従業員の情報を人事上で共有できているか
  • そもそも消防法令違反そのものを起こさない体制になっているか

まずは採用時の確認事項に、この点を加えてみます。

それがいいですね。
日頃の遵守が、いちばんの近道です。

よくある質問

Q交付拒否の事由に当てはまると、必ず免状はもらえませんか?
A条文は「交付を行わないことができる」としており、必ず拒否されるとは限りません。最終的な判断は交付先の都道府県知事に委ねられています。
Q丙種など、免状の種類によって交付拒否の扱いは変わりますか?
A第13条の2第4項は危険物取扱者免状全般を対象にしており、甲種・乙種・丙種で条文上の扱いは分かれていません。
Q罰金より軽い過料や反則金の場合も交付拒否の対象になりますか?
A条文が定めるのは罰金以上の刑に処せられた場合です。罰金より軽い行政上の過料などは、この号がそのまま適用される場面ではありません。
Q第6項の通知は、他都道府県での違反にだけ適用されますか?
A条文は「他の都道府県知事から交付を受けている」危険物取扱者を対象にしています。同じ都道府県内で完結する場合は、この通知の規定を使う必要がありません。

まとめ

都道府県知事は、2つの事由に該当する者には免状の交付を行わないことができます(消防法第13条の2第4項)
第一号は返納命令から1年、第二号は罰金以上の刑の執行終了等から2年を経過しない者が対象です(同項第一号・第二号)
条文の「行わないことができる」という言葉のとおり、交付拒否は義務ではなく知事の判断に委ねられています
返納命令(第5項)は今ある免状を取り上げる制度で、交付拒否とは向きが逆です
他都道府県の知事は、違反を認めたときに交付元の知事へ通知しなければなりません(消防法第13条の2第6項)
違反の情報は都道府県の境界を越えて共有されるので、県を変えても抜け道にはなりません
いちばんの備えは、消防法令違反そのものを起こさない日頃の遵守です

交付拒否と返納命令が別の制度だと分かって、頭の中が整理できました

従業員の資格管理について、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第13条の2第4項(危険物取扱者免状の交付拒否事由)
  • 消防法第13条の2第5項(危険物取扱者免状の返納命令)
  • 消防法第13条の2第6項(他の都道府県知事への通知義務)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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