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危険物施設の定期点検はなぜ年1回と決まっているのか|消防法第14条の3の2が求める点検記録と保存期間を解説

危険物施設の定期点検を怠ると罰則の対象になることを解説する記事のアイキャッチ画像

給油取扱所や危険物を保管する施設には、消防が来て確認する検査とは別に、施設の管理者自身が行う点検の義務もあります。
この点検は「保安検査」とは異なる制度で、対象になる施設や点検の頻度、記録の残し方までが条文で細かく決められています。
記録を作らなかったり、うそを書いたり、決められた期間より先に捨ててしまったりすると、罰則の対象になります。
この記事では消防法第14条の3の2が求める定期点検の対象と記録の作り方、保存期間の違いを確認します

うちのガソリンスタンドは地下にタンクがあるんですが、消防の検査とは別に自分たちでも点検をしないといけないと聞きました。
本当ですか。

はい、定期点検という別の制度があります。
順番に確認しましょう。

点検した記録を作るだけの話かと思っていたので、そこまで細かく決まっているとは知りませんでした。

いいえ、対象施設・頻度・保存期間まで条文で決まっています
まずは条文から確認しましょう。

この記事の結論
  • 地下タンクを持つ施設や移動タンク貯蔵所などは、消防法第14条の3の2に基づき定期点検が義務づけられています
  • 点検の頻度は原則として1年に1回以上です
  • 点検記録には施設名称・点検方法及び結果・点検年月日・点検者の氏名を記載しなければなりません
  • 記録の保存期間は施設や点検の種類によって3年から最長30年まで大きく異なります
  • 記録を作成せず、虚偽の記録を作成し、または保存しなかった場合は消防法第44条第5号により30万円以下の罰金又は拘留の対象になります

危険物施設の定期点検で対象施設の点検から記録の作成保存までを怠ると罰則の対象になる流れを示した図解

危険物施設の定期点検とは何をする制度なのか

給油取扱所の地下タンク点検口を懐中電灯で確認する様子を示すイメージ
大きな屋外タンク貯蔵所の保安検査とは別に、もっと身近な施設にも点検の義務があります。
この点検が何を指すのか、まず条文の文言を確認します。
消防法第14条の3の2 政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、これらの製造所、貯蔵所又は取扱所について、総務省令で定めるところにより、定期に点検し、その点検記録を作成し、これを保存しなければならない
定期点検は、施設の持ち主や管理者が自分で行う自主点検です
消防機関が来て確認する保安検査や立入検査とは別の制度で、条文上は施設の側に点検の実施と記録の作成・保存が義務づけられています。
対象になるのは政令で定める製造所・貯蔵所・取扱所だけで、危険物を扱う施設ならすべて対象というわけではありません。
点検をしただけでは足りず、点検記録として残すことまでがこの条文の要求です。
では具体的にどの施設が対象になるのか、次に確認します。

点検と一口に言っても、消防が来る検査と自分たちでやる点検の2種類があるということですね。

はい、主体が施設の側にある点が保安検査との違いです。
次は対象になる施設を見ていきましょう。

どの製造所や貯蔵所が点検の対象になるのか

タンクローリーと倉庫と地下タンクを並べて対象施設の種類を示すイメージ
「政令で定める」施設が具体的に何を指すのか、政令の条文を確認します。
地下にタンクがあるかどうかが、判断の大きな分かれ目になります。
危険物の規制に関する政令第8条の5 法第14条の3の2の政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所は、(予防規程を定めなければならない製造所等(移送取扱所を除く。)及び)次に掲げる製造所等のうち、総務省令で定めるもの以外のものとする。一 危険物を取り扱うタンクで地下にあるものを有する製造所 二 地下タンク貯蔵所 三 移動タンク貯蔵所 四 地下タンクを有する給油取扱所 五 地下タンクを有する一般取扱所
対象の中心になるのは、危険物が地下や移動先で目に見えなくなる施設です
地上のタンクと違って地下タンクは漏れやひび割れを外から確認できないため、定期点検で内側から状態を確かめる必要があります。
移動タンク貯蔵所、つまりタンクローリーも対象に含まれている点は見落としやすいところです。
これに加えて、予防規程の作成義務がある施設(移送取扱所を除く)も定期点検の対象になります。
対象施設がわかったところで、次は具体的に何を点検し記録するのかを確認します。

タンクローリーまで対象に入っているとは思いませんでした。

はい、移動タンク貯蔵所も対象施設の一つです。
次は記録に何を書くのかを見てみましょう。

点検記録には何を書き誰が点検するのか

ヘルメット姿の担当者がタンクの脇でクリップボードに点検記録を書く様子を示すイメージ
対象施設が決まったところで、記録に何を書けばよいのかを確認します。
あわせて、誰が点検を行えるのかも見ていきます。
危険物の規制に関する規則第62条の7 法第14条の3の2の規定による点検記録には、次の各号に掲げる事項を記載しなければならない。一 点検をした製造所等の名称 二 点検の方法及び結果 三 点検年月日 四 点検を行つた危険物取扱者若しくは危険物施設保安員又は点検に立会つた危険物取扱者の氏名
記録に書くべき項目は4つだけで、特別な様式は決められていません
施設の名称、点検の方法と結果、点検した年月日、そして担当者の氏名を残せば足ります。
点検そのものは誰でもできるわけではなく、危険物取扱者又は危険物施設保安員が行うことになっています。
危険物取扱者の立会いがあれば、資格を持たない人が実際の点検作業を行うことも認められています。
頻度は原則として1年に1回以上ですが、記録をどれだけ残しておくかは施設によって大きく変わります。

資格を持った人が付き添えば、点検自体は他の人がやってもいいんですね。

はい、危険物取扱者の立会いがあれば可能です。
次は記録の保存期間を確認しましょう。

点検記録の保存期間はなぜ施設ごとに違うのか

高さの異なる書類ファイルの束を並べて保存期間の違いを示すイメージ
対象と記録の中身がわかったところで、次は保存期間を確認します。
ここが定期点検でいちばん誤解が起きやすいところです。
危険物の規制に関する規則第62条の8 前条に規定する点検記録は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める期間これを保存しなければならない。(略)四 移動貯蔵タンクの漏れの点検に係る点検記録 十年間 五 前各号以外の点検記録 三年間
保存期間は、点検の種類によって桁違いに変わります
多くの点検記録は3年間の保存で足りますが、移動貯蔵タンクの漏れ点検は10年間、屋外貯蔵タンクの内部点検にいたっては規則第62条の8第一号により26年間(届出をすれば30年間)という長期保存が求められます。
「点検記録だから3年で捨ててよい」と一律に扱ってしまうと、長期保存が必要な記録まで誤って廃棄してしまう恐れがあります。
自施設の点検がどの区分に当てはまるのか、点検の種類ごとに確認しておく必要があります。
この保存義務を果たさなかった場合にどんな罰則があるのか、最後に確認します。

点検記録は3年で捨てていいものだと、ずっと思い込んでいました。

点検の種類ごとに期間が違うので注意が必要です。
最後に罰則を確認しましょう。

記録を残さなかったらどんな罰則を受けるのか

破れたチェックシートの隣に禁止マークを示すイメージ
ここまでの対象・記録・保存期間をふまえ、最後に罰則を確認します。
根拠になっているのは、消防法の罰則を定めた条文です。
消防法第44条第5号 次のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金又は拘留に処する。第十四条の三の二の規定による点検記録を作成せず、虚偽の点検記録を作成し、又は点検記録を保存しなかつた者
罰則の対象になるのは、点検そのものではなく記録の作成・保存です
消防法第44条第5号は、点検記録を作成しない・虚偽の記録を作る・記録を保存しないの3つを罰則の対象にしています。
点検を実際に行っていなくても、記録が残っていない以上、この規定に触れることになります。
罰則は30万円以下の罰金又は拘留で、屋外タンク貯蔵所の保安検査を拒んだ場合の罰則と同じ水準です。
明日からは、対象施設の点検記録が今どこにあり、いつまで保存すべきかを確認しておきましょう。

点検をさぼったことより、記録を残していないことが問われるんですね。

はい、記録が残っているかどうかがポイントです。
これで確認の流れが一通り整いました。

よくある質問

Q定期点検はどの施設でも1年に1回でよいのですか?
A原則は1年に1回以上ですが、告示で定める構造や設備は告示が定める期間になります。屋外貯蔵タンクの内部点検はさらに長い周期が別途定められています。
Q点検記録の保存期間はどこを見れば分かりますか?
A危険物の規制に関する規則第62条の8に区分ごとの期間が定められています。多くは3年間ですが、点検の種類によって延びます。
Q点検は必ず危険物取扱者本人が行わなければなりませんか?
Aいいえ。危険物取扱者の立会いがあれば、資格を持たない人が点検を行うことも認められています。
Q屋外タンク貯蔵所の保安検査と、この定期点検は同じものですか?
A異なります。保安検査は大規模なタンクを対象に消防機関が行う検査(消防法第14条の3)で、定期点検は施設の管理者自身が行う自主点検(第14条の3の2)です。

まとめ

消防法第14条の3の2は、政令で定める製造所・貯蔵所・取扱所の管理者に定期点検を義務づけています
対象には地下タンクを持つ施設や移動タンク貯蔵所のほか、予防規程作成義務のある施設も含まれます
点検の頻度は原則1年に1回以上です
点検記録には施設名称・点検方法及び結果・点検年月日・点検者氏名を記載する必要があります
点検は危険物取扱者又は危険物施設保安員が行い、立会いがあれば無資格者でも可能です
記録の保存期間は施設や点検の種類によって3年から最長30年まで大きく異なります
記録を作成せず・虚偽記載・不保存の場合は消防法第44条第5号により30万円以下の罰金又は拘留の対象になります

点検記録の保存まで、今日から見直します。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第14条の3の2
  • 消防法第44条第5号
  • 危険物の規制に関する政令第8条の5
  • 危険物の規制に関する規則第62条の4・第62条の6〜第62条の8
  • e-Gov 法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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