タンクローリーは移動タンク貯蔵所として消防法で細かく規制されていますが、ドラム缶や一斗缶に入れた危険物をトラックの荷台に積んで運ぶだけの場合はどうなるのでしょうか。
運搬と呼ばれるこの行為にも、消防法は別の条文で技術上の基準を定めています。
免許を持つ乗務員の同乗を求める移送の規制とは仕組みが違うため、荷主や運送会社の担当者が知らないまま出荷してしまう例が見られます。
指定数量以上を車両で運ぶときは容器・標識・一時停止の場所まで基準が及びます。
取引先への配送で、灯油の一斗缶を数本トラックに積んで運ぶことになりました。
タンクローリーではないので特に規制は無いと思っていたのですが。
それは消防法でいう運搬に当たります。
タンクローリーによる移送とは別の条文が基準を定めています。
普通のトラックでも何か掲げたり届け出たりする必要があるのですか。
指定数量以上を積むかどうかで変わります。
条文を順番に見ていきましょう。
- 消防法第16条により危険物の運搬(タンクローリーによる移送とは別の行為)は容器・積載方法・運搬方法について政令の技術上の基準に従わなければなりません
- 指定数量以上を車両で運ぶときは0.3メートル四方の「危」の標識を車両の前後に掲げる義務があります
- 品名の異なる危険物を同じ車両に積むときは、それぞれの数量を指定数量で割った商の和で指定数量以上かどうかを判定します
- 一時停止するときは安全な場所を選び著しい摩擦や動揺を起こさない積み方も基準に含まれます
- 運搬中に危険物が著しく漏れるなどの事故が起きたときは応急の措置を講じ最寄りの消防機関に通報する義務があります
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目次
「運ぶ」と「移送する」は消防法上どう違うのか

移動タンク貯蔵所による移送とは条文の場所も規制の中身も違います。
一方、移動タンク貯蔵所(タンクローリー)による危険物の移送は第16条の2が別に定めており、乗車する危険物取扱者を必須とする条文です。
ドラム缶や一斗缶をトラックの荷台に積んで運ぶだけであれば、運搬側の第16条とその委任を受けた政令が基準になります。
運搬には移送のような乗務員の資格要件は無く、代わりに容器・標識・停止場所についての基準が置かれています。
条文の主語も「危険物の運搬は」となっており、行為そのものを名宛人にしているのが特徴です。
資格を持った運転手を乗せなくても運搬はできるのですか。
第16条に乗務員の資格要件はありません。
代わりに容器や標識など別の基準が置かれています。
どんな量を運ぶと運搬の基準がかかるのか

量の数え方には注意が必要です。
一 危険物又は危険物を収納した運搬容器が著しく摩擦又は動揺を起さないように運搬すること。
二 指定数量以上の危険物を車両で運搬する場合には、総務省令で定めるところにより、当該車両に標識を掲げること。
2 品名又は指定数量を異にする二以上の危険物を運搬する場合において、当該運搬に係るそれぞれの危険物の数量を当該危険物の指定数量で除し、その商の和が一以上となるときは、指定数量以上の危険物を運搬しているものとみなす。
まず1号の摩擦・動揺の防止はすべての運搬に共通する基準で、量にかかわらず適用されます。
これに対し2号の標識掲示は指定数量以上を車両で運ぶ場合に限って義務化されます。
灯油と軽油のように品名の異なる危険物を同じ車両に積むときは、それぞれの数量を指定数量で割った商の和が1以上になれば指定数量以上とみなされます。
一斗缶数本程度でも品名が複数にまたがると合算で基準を超えることがあるので、出荷のたびに計算しておく必要があります。
灯油だけなら量が少なくても計算しないといけないのですか。
品名が1つだけなら単純に指定数量と比べるだけで済みます。
複数の品名を混ぜて積むときに合算の計算が必要になります。
車両に掲げる標識はどんな基準で決まるのか

寸法と色まで具体的に決まっています。
色の指定は黒地に黄色と決まっており、他の配色に置き換えることは基準に沿いません。
文字も「危険」ではなく「危」の一文字と定められています。
掲げる位置は車両の前後の見やすい箇所とされ、片側だけの掲示や荷台内部への設置は基準を満たしません。
指定可燃物(大量の紙くずや木くず等)を運ぶ移動タンクの標識は別の基準(0.3メートル四方の黒地に黄色文字)に基づくもので、根拠条文も対象物も今回の危険物の標識とは別物です。
市販の「危」マグネットシートを貼るだけで足りますか。
寸法と色と文字の基準さえ満たせば市販品でも構いません。
前後どちらにも掲げているかを出発前に確認してください。
一時停止や運搬中の事故で見落としやすいのはどこか

条文は一時停止の場所と事故発生時の対応まで踏み込んでいます。
五 危険物の運搬中危険物が著しくもれる等災害が発生するおそれのある場合は、災害を防止するため応急の措置を講ずるとともに、もよりの消防機関その他の関係機関に通報すること。
コンビニの駐車場か路肩かといった場所の種類までは条文に書かれておらず、周囲への引火や第三者との接触のおそれを踏まえて個別に判断することになります。
運搬中に危険物が著しく漏れるなどのおそれがある場合は、応急の措置と最寄りの消防機関への通報の両方が義務です。
これは施設内での漏えいに対する第16条の3の応急措置義務とは別の条文で、走行中という場面に限って置かれた基準です。
量が少ないから通報しなくてよいとは書かれておらず、災害発生のおそれがあるかどうかで判断します。
少量が滲んだ程度でも消防に連絡しないといけないのですか。
条文の基準は量ではなく災害発生のおそれの有無です。
迷う量であれば通報しておくほうが基準に沿います。
明日からなにを確認すればよいのか

出荷前のチェックに落とし込めば運用できます。
まず出荷する品名と数量を指定数量で割り、複数品名であれば商の和で指定数量以上になっていないかを配車のたびに計算します。
指定数量以上であれば規則第47条の標識を車両の前後に掲げ、上記の第四号が求める消火設備(該当する危険物に適応する第5種消火設備)を積み込みます。
運転手には安全な一時停止場所の選び方と、漏えい時にまず応急の措置を取ってから最寄りの消防機関へ通報する順番を出発前に伝えておきます。
標識・消火設備・通報先の3点を配車表と一緒に確認できる様式にしておくと、毎回の出荷で抜けを防げます。
標識と消火設備と通報先を配車表に並べておけばよいのですね。
その3点を出荷のたびに確認する様式にしておけば十分です。
数量の合算だけは品名が変わるたびに計算し直してください。
よくある質問
まとめ
タンクローリーだけの話ではなかったのですね。
配車表の様式に標識と消火設備の確認を足しておきます。
数量の合算だけは出荷のたびに計算し直してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第16条・第16条の2・第16条の3
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第30条
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第47条
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





