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新築工事中の商業施設はなぜ統括して守られるのか|可燃物の搬入制限と消防用設備の常時作動を解説

新築工事中の商業施設が統括して防火管理される様子を示すアイキャッチ画像

昭和48年、大阪府高槻市の新築工事中の商業施設で火災が発生し、死者6人・負傷者13人を出す惨事となりました。
消防用設備等はほとんど設置済みだったにもかかわらず、電源の遮断や各階制御弁の閉鎖によってその機能を発揮できない状態に置かれていました。
この教訓を踏まえ、消防庁は新築工事中の防火対象物に統括した防火管理体制を求める通知を発出しました。
工事中だからこそ、バラバラな現場をひとつにまとめる仕組みが欠かせません。

うちも来月から店舗の増築工事が始まるんですが、防火管理まで考えたことなかったです。

死者6人を出した大阪の商業施設火災をきっかけに、消防庁が工事中の防火管理体制を通知にまとめているんですよ。
各業者がバラバラに動くといざというとき機能しません。

工事中はまだ設備が動いてないから、防火対策は後回しでいいのかと思ってました。

いいえ、設置済みの設備を止めたままにしていたことが被害を広げた原因のひとつでした。
工事中でも常時作動させる部分を決めておく必要があります。

この記事の結論
  • 新築工事中の大規模な防火対象物は、各分担工事者ごとに防火責任者を定め、これを統括する責任者を定める
  • 統括責任者のもとで消防法第8条第1項に準じた実効ある消防計画を作成する
  • 装飾物品・商品等の可燃物は工事完了前は原則搬入禁止で、やむを得ない場合は防火管理者と協議する
  • 搬入する部分の消防用設備等は完備させ、常時作動するよう維持管理させる
  • 消防機関は消防法第4条に基づき、工事中でも随時立入調査を行う

新築工事中の防火対象物が統括管理を必要とする流れを示す図解

新築工事中の商業施設はなぜ統括防火管理を求められたのか

足場に覆われた工事中の建物とクリップボードを持つ作業員
昭和48年、大阪府高槻市の新築工事中のショッピングセンターで大規模な火災が発生しました。
この惨事の教訓から、消防庁は新築工事中の防火対象物への統括的な防火管理体制を求める通知を出しました。
新築工事中の防火対象物の防火安全対策について(昭和48年10月17日 消防予第139号消防庁予防課長・消防安第40号安全救急課長) さる9月25日、大阪府高槻市の新築工事中の西武タカツキショッピングセンターにおいて火災が発生し、別紙概要のとおり地下1階地上6階の同防火対象物が長時間燃焼しその大半が焼損し死者6人、負傷者13人を出す惨事となつた。この火災の原因等は現在調査中で詳細は不明であるが、このような惨事が発生した要因は、消防用設備等がほとんど設置済でありながら電源の遮断・各階制御弁の閉鎖等のため当該設備がその機能を発揮する状態におかれていなかつたこと、工事が完了していなかつたにもかかわらず大量の可燃物(商品等)が搬入されていたこと、工事責任者による防火管理が十分徹底していなかつたこと等にあるものと考えられる。
大量の商品と止まったままの設備という、工事現場特有の弱点が被害を広げました。
出火当時、地下1階地上6階の建物は消防用設備等がほとんど設置済みだったにもかかわらず、電源が切られ制御弁も閉じられていたため作動しませんでした。
そのうえ工事が完了していないのに商品等の可燃物が大量に運び込まれ、燃え広がる材料が現場にそろっていました。
発出者は消防庁予防課長と安全救急課長の連名で、宛先は都道府県の消防主管部長です。
半世紀近く前の通知ですが、複数の業者が同時に働く工事現場という状況そのものは今も変わらないため、考え方はそのまま使えます。

工事中の建物は設備が動いてないぶん、火災のリスクは低いのかと思ってました。

実際はその逆で、設備があっても止まっていることが被害を広げた要因でした。
だからこそ工事中の防火管理が重要なんです。

どんな新築工事のどんな建物が対象になるのか

工事中の建物の前に整列する作業員とそれをまとめる責任者
この通知が対象にするのは、規模の大きい新築工事中の防火対象物です。
複数の業者が同時に作業する現場ほど、責任の所在があいまいになりやすいという特徴があります。
新築工事中の防火対象物の防火安全対策について(同通知 記) 1 新築工事中の大規模な防火対象物の防火管理体制を確保するため、工事施工責任者に各分担工事者ごとに防火に関する責任者を定めさせるとともに、これを統括する責任者を定めさせ、火災の発生の防止、火災の発見、消火、通報、避難等に関して消防法(以下「法」という。)第8条第1項の規定に準じて実効ある消防計画を作成するよう指導すること。
対象は「大規模な」新築工事中の防火対象物で、複数の業者が分担して働く現場です。
通知は工事施工責任者に対し、各分担工事者ごとの防火責任者を定めさせるところから始めています。
新築工事中に防火管理者そのものの選任義務がかかるかどうかは建物の規模によって分かれ、その基準は別の通知で扱われています。
この通知が主眼を置くのは「誰が選ばれるか」ではなく、選ばれた後の現場をどう束ねるかという運用面です。
増改築工事の場合は、昭和52年に追加で出された通知もあわせて参考にするよう求められています。

うちの現場も内装業者と設備業者が別々に入ってるんですが、それぞれ別扱いでいいんですか。

いいえ、分担業者ごとに責任者を立てたうえで束ねる統括責任者が必要です。
バラバラのままでは通知の求める体制になりません。

現場では誰が何を統括し消防計画に何を書くのか

複数の作業員を取りまとめる責任者とクリップボードに書かれた消防計画
統括する責任者を定めたら、次はその責任者のもとで消防計画をつくります。
完成後に使う消防計画とは別に、工事中専用の計画として作成することになっています。
(同通知 記1つづき) また、消防計画の作成にあたつては、特に工事中使用する引火性爆発性物品の管理に関する事項、溶接器具、バーナーその他の火気使用設備器具の使用の際の管理に関する事項及び喫煙その他火気の管理に関する事項並びに火災発生時において当該建物内で作業中の者全員に対する連絡避難に関する事項及び消防機関への通報に関する事項について関係者の任務分担を明確にし、その内容を関係者に周知徹底させること。
工事中の防火対象物に関する消防計画について(昭和52年10月24日 消防予第204号消防庁予防救急課長) 工事中の防火対象物に関する消防計画は、平常時の消防計画とは別個に作成させるものであること。
工事中の消防計画には、可燃物・火気・連絡・通報という現場特有の項目が並びます。
盛り込むのは引火性爆発性物品の管理、溶接器具やバーナーなど火気使用設備の管理、そして喫煙の管理です。
さらに火災が起きたとき、建物内で作業している全員への連絡・避難と、消防機関への通報の任務分担まで明確にしておく必要があります。
この工事中の計画は、完成後に使う平常時の消防計画とは別個に作成するものだと昭和52年の通知でも重ねて示されています。
増改築工事の場合は、この通知に加えて図面や避難施設の状況まで盛り込んだ様式を使うことになっています。

工事中の消防計画って、完成後の計画をそのまま流用したらだめなんですか。

平常時の計画とは別個に作成するものと通知に明記されているので使えません。
現場の火気や搬入物の管理に絞った内容にしてください。

可燃物の搬入と消防用設備の管理でなにを見落としやすいのか

搬入を制止される商品の箱と稼働している消火器や屋内消火栓
高槻の火災でとくに問題になったのが、可燃物の搬入と設備の稼働状況でした。
通知はこの2点について、具体的な対応を求めています。
(同通知 記2) 当該防火対象物にかかる工事(消防用設備等の工事を含む。)の完了前においては、装飾物品、商品等の可燃物の搬入を禁止し、やむをえず搬入する場合にあつては、工事施工責任者に当該搬入について責任を有する者と防火管理について協議を行わせ、1に準じた措置を講じさせるとともに、少なくとも当該搬入を行う部分における消防用設備等を完備させ、常時作動するよう維持管理させること。
可燃物は原則搬入禁止、やむを得ないときは設備を完備し常時作動させるのが条件です。
装飾物品や商品等の可燃物は工事完了前は搬入禁止が原則で、これは高槻の火災で大量の商品が燃え広がりを助けた反省を踏まえています。
やむを得ず搬入する場合は、搬入について責任を有する者と防火管理者が協議したうえで、その部分の消防用設備等を完備し常時作動させておかなければなりません。
高槻の火災では設備自体は設置済みだったのに電源が切られ制御弁が閉じられていたため機能しませんでした。
「置いてあるかどうか」ではなく「今すぐ動くかどうか」を工事の節目ごとに確認することが欠かせません。

展示用の商品を先に運び込んでおきたいと業者から言われることがあるんですが、断るべきですか。

原則は搬入禁止です。
どうしても必要なら防火管理者と協議して、その部分の消防用設備を常時動く状態にしてから搬入してください。

工事が決まったら防火管理者はまず何をすればよいのか

チェックリストを持つ担当者と電話で消防機関に確認する様子
最後に、通知は消防機関側の役割にも触れています。
発注者・管理権原者の側でも、この視点を踏まえて準備しておくと現場が回りやすくなります。
新築工事中の防火対象物の防火安全対策について(同通知 記3) その他消防機関は、法第4条の規定に基づき、工事中においても随時当該防火対象物に立入調査し、1及び2に関する指導及びその実施状況の把握その他火災予防上必要な措置を講ずること。
消防機関は工事中でも随時立入調査に来ることを前提に準備しておきます。
根拠は消防法第4条の資料提出命令・報告徴収・立入検査の権限で、工事中だからといって対象外にはなりません。
明日からまず、各分担業者の防火責任者と統括責任者が実際に決まっているかを確認してください。
次に、工事中の消防計画が平常時の計画とは別個に作成され、所轄消防署へ提出されているかを確かめます。
そして可燃物を搬入する予定がある区画は、消防用設備等が常時作動する状態かどうかを工事の節目ごとに点検してください。

立入調査に来られても困らないように、日ごろから準備しておきたいです。

統括責任者・消防計画・設備の稼働確認の3つを揃えておけば、いつ来られても大丈夫です。

よくある質問

Q新築工事中の建物では誰が防火管理の責任者になりますか?
A各分担工事者ごとに防火に関する責任者を定めたうえで、それらを統括する責任者を工事施工責任者が定めます。個々の業者任せにはできません。
Q工事中の消防計画は完成後の計画をそのまま使えますか?
A使えません。平常時の消防計画とは別個に作成するものと通知に明記されており、火気や搬入物の管理に絞った内容にする必要があります。
Q工事中に商品や什器を先に搬入してもよいですか?
A原則できません。やむを得ない場合は防火管理者と協議したうえで、その部分の消防用設備等を完備し常時作動させることが条件です。
Q消防機関は工事が終わるまで現場を確認しに来ませんか?
Aいいえ。消防法第4条に基づき、工事中でも随時立入調査が行われます。指導内容の実施状況まで確認されます。

まとめ

新築工事中の大規模な防火対象物は、各分担工事者ごとに防火責任者を定め、これを統括する責任者を定める
統括責任者のもとで、消防法第8条第1項に準じた実効ある消防計画を作成する。
消防計画には引火性爆発性物品・火気使用設備・喫煙の管理と、連絡避難・消防機関への通報の任務分担を盛り込む。
工事中の消防計画は平常時の消防計画とは別個に作成する。
装飾物品・商品等の可燃物は工事完了前は原則搬入禁止で、やむを得ない場合は防火管理者と協議する。
搬入する部分の消防用設備等は完備させ、常時作動するよう維持管理する。
消防機関は消防法第4条に基づき、工事中でも随時立入調査を行う。

統括責任者と消防計画、それに可燃物の搬入制限、しっかり現場に落とし込みます!

バラバラな現場をひとつにまとめるのが最初の一歩です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 新築工事中の防火対象物の防火安全対策について(昭和48年10月17日 消防予第139号消防庁予防課長・消防安第40号安全救急課長)
  • 工事中の防火対象物に関する消防計画について(昭和52年10月24日 消防予第204号消防庁予防救急課長)
  • 消防法第8条第1項(防火管理者の選任と消防計画の作成義務)・第4条(資料提出命令・報告徴収・立入検査)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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