建物の駐車場に泡消火設備を設けるよう言われて図面を広げている方は多いはずです。
ところが最近の駐車場では泡消火設備そのものではなく特定駐車場用泡消火設備という名前の設備が入っていることがあります。
これは消防法施行令第29条の4が用意した仕組みで、通常用いられる消防用設備等に代えて置くことが認められたものです。
置き換えられるかどうかは駐車場の広さと床面から天井までの高さで決まります。
うちの建物の駐車場に泡消火設備が要ると言われました。
設計から特定駐車場用泡消火設備という別の名前が出てきて戸惑っています。
泡消火設備の代わりに置ける設備として省令で決められたものです。
まずは駐車場の床面積と天井までの高さを測ってください。
広さと高さで決まるのですか。
停められる台数は関係ないのでしょうか。
昇降機で車を上げ下げする造りなら収容台数で決まります。
平らな床に停める駐車場は階ごとの床面積で見ます。
- 特定駐車場用泡消火設備は令第13条と令第15条で設けなければならない泡消火設備に代えて用いることができる設備です
- 特定駐車場とは駐車の用に供される部分のうち階ごとの床面積か収容台数の基準を満たすものを指します
- どちらの入口から入っても床面から天井までの高さが10メートル以下であることが条件です
- 代えられる相手は泡消火設備だけで粉末消火設備や不活性ガス消火設備を選んでいる駐車場には使えません
- 型式は平面式が5つと機械式が1つの合わせて6つあります
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目次
特定駐車場用泡消火設備とはどういう設備なのか

まずは根拠になる省令の定義と、なにに代えて置ける設備なのかを見ます。
特定駐車場用泡消火設備 特定駐車場における火災の発生を感知し、自動的に泡水溶液(泡消火薬剤と水との混合液をいう。以下同じ。)を圧力により放射して当該火災の拡大を初期に抑制するための設備をいう。
同省令第3条
特定駐車場において、令第十三条及び第十五条の規定により設置し、及び維持しなければならない泡消火設備に代えて用いることができる必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等は、特定駐車場用泡消火設備とする。
出発点は令第29条の4第1項で、通常用いられる消防用設備等に代えて、防火安全性能が同等以上と認められる設備を用いてよいと定めています。
その受け皿として作られたのが平成26年総務省令第23号で、駐車場についてはこの特定駐車場用泡消火設備が指定されました。
省令の定義は、火災の発生を自動で感知し、泡水溶液を圧力で放射して火災の拡大を初期に抑えるところまでを求めています。
図面や点検票に泡消火設備とだけ書かれていても、実際に入っているのがこちらということは珍しくないので、設備の名前は正確に読んでおいてください。
泡消火設備と名前が似ていて紛らわしいです。
中身も同じものなのでしょうか。
泡を出す点は同じですが、基準を定めている条文が別に置かれています。
点検票に書かれた設備の名前をそのまま確かめてください。
どの駐車場が特定駐車場に当たるのか

省令は入口を2つ用意していて、平らな床に停めるものと機械で上げ下げするもので条件が違います。
特定駐車場 令別表第一に掲げる防火対象物の駐車の用に供される部分で、次に掲げるものをいう。
イ 当該部分の存する階(屋上部分を含み、駐車するすべての車両が同時に屋外に出ることができる構造の階を除く。)における当該部分の床面積が、地階又は二階以上の階にあっては二百平方メートル以上、一階にあっては五百平方メートル以上、屋上部分にあっては三百平方メートル以上のもののうち、床面から天井までの高さが十メートル以下の部分
ロ 昇降機等の機械装置により車両を駐車させる構造のもので、車両の収容台数が十以上のもののうち、床面から天井までの高さが十メートル以下のもの
令第13条の表を読むと、駐車の用に供される部分で泡消火設備等が必要になるのは、地階と2階以上の階が200平方メートル以上、1階が500平方メートル以上、屋上部分が300平方メートル以上、機械式は収容台数が10以上のものと定められています。
省令の特定駐車場はこの範囲をそのまま受け取ったうえで、床面から天井までの高さが10メートル以下という条件をひとつ足しています。
つまり泡消火設備が必要な駐車場のうち、天井がそれほど高くないものだけが置き換えの対象になるという構造です。
まず平面図で階と床面積を確かめ、次に断面図で床面から天井までの高さを確かめる順番で見てください。
うちは地階が240平方メートルほどあります。
これなら入口の条件は満たしていそうですね。
床面積のほうは満たしていますね。
あとは断面図で天井までの高さを確かめれば判断がつきます。
6つの型式はどこが違うのか

省令は駐車場の造りとヘッドの組み合わせで名前を分けて定義しています。
単純型平面式泡消火設備 第一号イに規定する特定駐車場(昇降機等の機械装置により車両を駐車させる構造の部分を除く。以下「平面式特定駐車場」という。)において閉鎖型泡水溶液ヘッド(特定駐車場に用いるスプリンクラーヘッドであって、火災の熱により作動し、圧力により泡水溶液を放射するものをいう。以下同じ。)を用いる特定駐車場用泡消火設備(次号から第七号までに掲げるものを除く。)をいう。
平らな床に停める平面式特定駐車場に置くものが5つあり、単純型平面式・感知継手開放ヘッド併用型平面式・感知継手泡ヘッド併用型平面式・一斉開放弁開放ヘッド併用型平面式・一斉開放弁泡ヘッド併用型平面式という名前が付いています。
昇降機等の機械装置で車両を駐車させる部分に置くものが機械式泡消火設備で、これが6つ目にあたります。
違いは火災をどう感知して泡水溶液をどう出すかにあり、大きくは感知継手で開くものと一斉開放弁で開くものに分かれます。
どの型式を選ぶかは設計者の仕事ですが、点検票に書かれた型式の名前は防火管理者も読めるようにしておいてください。
つまり名前の長さは造りと部品の組み合わせを表しているのですね。
点検票の型式名を読む意味がわかりました。
そのとおりです。
型式が変われば点検で見るところも変わるので、維持台帳に控えておくと引き継ぎが楽になります。
実務で見落としやすいのはどこか

省令が定義している範囲の言葉を読むと、つまずきどころがはっきりします。
十 有効感知範囲 消防庁長官が定める試験方法において閉鎖型泡水溶液ヘッド、感知継手、火災感知用ヘッド及び閉鎖型スプリンクラーヘッドが火災の発生を有効に感知することができる範囲として確認された範囲をいう。
十一 有効放射範囲 消防庁長官が定める試験方法において閉鎖型泡水溶液ヘッド、開放型泡水溶液ヘッド及び泡ヘッドから放射する泡水溶液によって有効に消火することができる範囲として確認された範囲をいう。
十二 有効警戒範囲 前二号に規定する設備の有効感知範囲及び有効放射範囲が重複する範囲をいう。
1つ目は高さ10メートルで、これを超える機械式のタワーパーキングは特定駐車場に当たらないので、令第13条の表に従った消火設備をそのまま設けることになります。
2つ目は有効警戒範囲で、火災を感知できる範囲と泡水溶液が届く範囲が重なった部分しか数えられません。
3つ目は代えられる相手が泡消火設備だけという点で、粉末消火設備や不活性ガス消火設備を選んでいる駐車場ではこの省令の出番がありません。
どれも平面図と断面図と点検票を突き合わせないと気づけないところなので、設計の打ち合わせの段階で聞いておいてください。
感知できる範囲だけを見ていました。
泡が届く範囲と重なったところだけとは気づきませんでした。
そこを取り違えると台数が足りなくなります。
試験で確認された範囲の値を設計者に出してもらってください。
明日からなにを確認すればよいのか

この設備は特別扱いではなく、普通の消防用設備等と同じ手続きに乗ります。
法第十七条の三の二の規定による検査を受けようとする防火対象物の関係者は、当該防火対象物における消防用設備等又は特殊消防用設備等の設置に係る工事が完了した場合において、その旨を工事が完了した日から四日以内に消防長又は消防署長に別記様式第一号の二の三の届出書に、次の各号に掲げる区分に応じて、当該各号に定める書類を添えて届け出なければならない。
特定駐車場用泡消火設備は令第7条第7項で法第17条第1項の消防用設備等に位置づけられているので、届出も検査も点検の報告も普通の消防用設備等と同じ扱いになります。
設置の工事が終わったら4日以内に消防長又は消防署長へ届け出て検査を受け、交付された検査済証を維持台帳に綴じておきます。
点検の結果の報告は規則第31条の6第3項により建物の用途で期間が決まるので、駐車場の部分だけを見て判断しないでください。
省令第10条は残りの技術上の基準を消防庁長官が定めるものに委ねているので、細かい仕様は所轄の消防署に確かめるのが確実です。
維持台帳を開いて検査済証があるか見てみます。
点検の報告の期間も建物の用途で確かめます。
その2つがそろえば引き継ぎでも困りません。
見当たらないときは所轄の消防署に控えが残っているか聞いてみてください。
よくある質問
まとめ
まずは点検票で設備の名前と天井までの高さを確かめます。
断面図も一緒に出しておきます。
その2つがそろえば置き換えられるかどうかの見当がつきます。
駐車場の消火設備でお困りのことがあれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第17条・第17条の3の2・第17条の3の3
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第7条第7項・第13条・第15条・第29条の4・第36条・別表第一
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第31条の3・第31条の6
- 特定駐車場における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成26年総務省令第23号)
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





