建築設備定期検査の給水設備というと、受水槽や高置タンクを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
実は同じ「給水」でも、水道の本管から直接水を届ける方式であれば、検査そのものが対象外になることがあります。
検査の対象になるかどうかは、建物にどんな給水方式が採用されているかによって変わるため、まず自分の建物の方式を把握することが出発点になります。
この記事では、直結給水方式から圧力タンク方式まで6つの給水方式ごとに、なぜ対象・対象外が分かれるのかを整理して解説します。
うちのビルは受水槽ではなく、ポンプで水道の水をそのまま送るタイプなんですが、これも定期検査の対象になるんでしょうか。
設備業者さんからは詳しい説明を受けていません。
それは直結系の給水方式ですね。
受水槽が無いタイプは対象外になることがほとんどです。
そういえば増圧ポンプを付けるときに、小さいタンクも一緒に設置したと聞いた気がします。
それだと話が変わってきますか。
はい、それなら増圧直結給水タンク方式かもしれません。
タンクの有無で扱いが変わりますので、順番に確認していきましょう。
- 給水設備の定期検査の対象・対象外は給水タンクの有無で決まる
- 直結給水方式と増圧直結給水方式は受水槽を経由しないため水道法上の給水装置にとどまり対象外となる
- 増圧直結給水タンク方式は増圧装置を使っても給水タンクを備える時点で検査対象になる
- 高置タンク方式とポンプ直送方式はどちらも受水槽を持つが、水を高所へ揚げてから自然落下させるか、ポンプで直接送るかで分かれる
- 圧力タンク方式は圧力タンク内の圧縮空気の力で送水するため有効な安全装置の設置が義務付けられている
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目次
給水方式によってなぜ定期検査の対象と対象外に分かれるのか

分かれ目になっているのは、水道の水がどこで建物側の設備に切り替わるかという点です。
条文はかっこ書きで、水道法上の給水装置にあたる配管設備をあらかじめ除いています。
給水装置とは、水道事業者が管理する配水管から分岐して設けられた給水管とその先の給水用具のことで、水道法の管轄にとどまるものです。
つまり水道の本管から建物の蛇口まで、受水槽のような自前の設備を介さずに水が届く方式は、建築基準法の配管設備にあたらず検査の対象からも外れます。
逆に受水槽や給水タンクを一つでも経由すれば、その先は建物側の設備として扱われ、検査の対象になり得ます。
水道の管と建物の設備の境目で、法律の扱いが変わるということですね。
今まで意識したことがありませんでした。
はい、受水槽や給水タンクがあるかどうかがまさにその境目です。
方式ごとに順番に見ていきましょう。
直結給水方式と増圧直結給水方式はなぜ対象外なのか

それは、水道の水を一度も自前のタンクに受けていないという点です。
直結給水方式は水道本管の水圧をそのまま利用する方式で、増圧直結給水方式はその引込管に増圧装置を追加して高層階まで届ける方式です。
どちらも装置の有無に違いはあっても、水道事業者の配水管から分岐した給水管がそのまま各所の蛇口へ直結している点は同じです。
建物側で水を受けて溜める設備を持たないため、建築基準法施行令が定める飲料水の配管設備の規定は適用されません。
そのため建築設備定期検査においても、給水設備としての検査対象からは外れることになります。
増圧のためのポンプが付いているから、てっきり検査の対象になると思っていました。
タンクが無ければ関係ないんですね。
そのとおりです、ポンプの有無ではなくタンクの有無で決まります。
次はタンクが加わるケースを見てみましょう。
増圧直結給水タンク方式はなぜ検査の対象になるのか

決め手になっているのは、やはり給水タンクの存在です。
増圧直結給水タンク方式は、水道の引込管に設けた増圧装置で水を送るところまでは増圧直結給水方式と同じです。
違うのは、その先に一度給水タンクで受けてから、自然落下で各所へ配水する点にあります。
水がタンクに入った時点で、その先は水道法の給水装置ではなく建物側の飲料水の配管設備になるため、給水タンクの構造や維持管理に関する規定が適用されます。
結果として、増圧装置を使っていても給水タンクを備える方式は、建築設備定期検査の対象に含まれることになります。
つまり増圧という言葉ではなく、タンクを挟むかどうかで見ればよいんですね。
名前だけで判断すると間違えそうです。
おっしゃるとおりです、名称よりも構造で確認するのが確実です。
設備図面でタンクの有無を確かめてみましょう。
高置タンク方式とポンプ直送方式はどう違うのか

ただし水をどうやって各所へ届けるかという仕組みは異なります。
- 高置タンク方式 受水槽に貯めた水道水を揚水ポンプで屋上等の高置タンクまで汲み上げ、そこから自然落下の水圧で各所に給水する
- ポンプ直送方式 受水槽に貯めた水道水を給水ポンプで直接各所へ加圧して送り、高所にタンクを置かない
高置タンク方式は屋上等に設けたタンクの落差を利用するため、停電時にも一定量の水がタンクに残っていれば給水を続けられるという特徴があります。
一方でポンプ直送方式は高置タンクを持たない分、給水ポンプそのものの性能と稼働状況が給水の安定性を左右します。
検査の観点では、高置タンク方式は受水槽と高置タンクの両方が給水タンクとして確認の対象になります。
どちらの方式か分からないときは、屋上や塔屋にタンクが設置されているかどうかを確認すると見分けやすくなります。
うちのビルは屋上に大きなタンクがあるので、高置タンク方式だと思います。
受水槽も別にあるので、両方点検してもらう必要があるんですね。
そのとおりです、受水槽と高置タンクの両方が対象になります。
屋上のタンクは目視しにくい場所なので特に注意しましょう。
圧力タンク方式はどんな仕組みで各所に給水するのか

水の重さではなく、圧縮した空気の力で押し出す仕組みです。
受水槽に貯めた水道水を給水ポンプで圧力タンクに送り込み、タンク内の空気を圧縮することで生まれる圧力で各所へ押し出します。
高置タンクのように高所に大きなタンクを置く必要が無いため、屋上に十分なスペースが取れない建物でも採用しやすい方式です。
その一方で圧力容器そのものが対象になるため、条文は安全弁や圧力計といった有効な安全装置の設置を求めています。
検査では、受水槽・給水ポンプに加えて、この圧力タンクの安全装置が正常に作動するかどうかも確認の対象になります。
空気の圧力で水を押し出すというのは、少し意外な仕組みですね。
高置タンクが要らない分、屋上がすっきりしそうです。
はい、その代わり圧力容器の安全管理が重要になります。
まずは自分の建物がどの方式か確認してみましょう。
よくある質問
まとめ
タンクがあるかどうかで対象が変わるなんて、初めて知りました!
まずは設備図面でうちの方式を確認してみます!
それが確実な第一歩です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法施行令第129条の2の4
- 水道法第3条
※本記事は建築基準法・同施行令及び水道法の現行規定にもとづき、㈱防災屋が独自に解説を作成したものです。実際の給水方式や検査対象の判断は建物ごとに異なります。個別の建物における定期報告の対象・様式については、所管の特定行政庁又は定期検査報告書の受付事務を担う関係団体に必ずご確認ください。




