建築設備等検査員は、国土交通大臣から資格者証の交付を受けて初めて検査ができる専門職です。
ところがこの資格は一度取れば安泰というものではなく、検査のやり方や態度によっては取り消されることがあります。
建物の所有者や管理者にとっても、検査に来た人がどんな基準で処分されうるのかを知っておくことは、業者選びの目安になります。
本記事では資格者証が返納される場合と、それより軽い文書注意で済む場合の違いを、国土交通省が定めた処分基準にそって解説します。
先日うちのビルで検査してもらった業者さんに資格者証を見せてくださいとお願いしたら渋られてしまって。
あれって普通のことなんですか。
本来、検査に来た人へ資格者証の提示を求めるのは所有者や管理者の正当な権利です。
提示を拒んだ場合は、むしろ検査員側が処分を受ける対象になり得ます。
処分を受けるということは、資格者証を取り上げられるということですか。
それとも注意で済む場合もあるんですか。
国土交通省の処分基準では、違反の重さに応じて資格者証返納命令と文書注意の二段階に分かれています。
今日はその線引きがどう決まるのかを整理しますね。
- 検査の判定基準に従わず検査をしたり結果を記載しなかったりした場合は処分の対象になり、ランクは4から7に及ぶ
- 名義貸しや秘密漏洩、資格者証の提示拒否などの不誠実行為もランク2から6の処分事由にあたる
- 偽りその他不正の手段で資格者証を得ていた場合は加重も軽減もされず一律にランク7となる
- 重大な悪意や常習性があればランクはさらに3ずつ加重される
- 最終ランクが7以上なら資格者証の返納命令、7未満なら文書注意という二段階で処分が決まる
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目次
検査員はどんな法令違反で処分を受けるのか

国土交通大臣が定めた検査の項目や判定基準そのものを守らなかった場合が対象になります。
建築設備等検査員は、種類ごとに国土交通大臣が定める検査の項目・方法・判定基準にしたがって検査を行う義務があります。
この基準どおりに検査をしなかったり、調査結果表に記載しなかったりすると、処分基準の別表1第1号にあたります。
該当した場合のランクは4から7までの幅があり、違反の重さによって変わります。
検査員が刑罰規定に触れるような重大な行為をした場合も、同じ第1号のもとでランク7として扱われます。
所有者や管理者にとっては、報告書の記載内容が基準どおりかどうかが検査の質を見る手がかりになります。
判定基準を守らないだけでこんなに重い扱いになるんですね。
うちの検査報告書もちゃんと基準どおりか気にしてみます。
報告書の内容は所有者側でも確認できる大事な資料です。
気になる点があれば検査業者に確認してみてください。
検査員の不誠実行為とはどんな行為を指すのか

自分で検査をしていないのに名義だけを貸すような行為が典型例です。
自ら検査をせず名義だけを貸す行為や、検査で知った秘密を漏らしたり自分の利益のために使ったりする行為はランク4にあたります。
建物の所有者や管理者から資格者証の提示を求められて応じなかった場合は、それだけでランク2の処分事由になります。
これら以外にも「不誠実な行為」と認められる行為は幅広くランク2から6で扱われます。
つまり所有者側には、検査に来た人へ資格者証の提示を求める権利があるということです。
提示を渋られたときは、遠慮せず確認してよい場面だと考えてください。
今度検査に来てもらうときは資格者証を見せてもらうようにします。
それだけで確認できるなら簡単ですね。
はい、提示を求めることは所有者の当然の権利です。
もし渋られるようなら遠慮なくお声がけください。
偽りその他不正の手段で資格者証を得た場合はどうなるのか

この場合は他の事情を考慮せず、一律に最も重い扱いになります。
不正取得は、法令違反や不誠実行為とは別枠で定められた処分事由で、資格そのものの取得過程に不正があった場合を指します。
このケースだけは加重ルールも軽減ルールも適用されません。
情状があっても数値が動かないという点で、他の処分事由よりも扱いが厳格です。
資格者証交付証明書や検査員名簿の公開といった仕組みも、そもそも交付が正当であることが前提になっています。
建物の所有者から見れば、この一点だけは例外なく資格取消しにつながると理解しておけば十分です。
資格を偽って取った場合は言い訳が効かないんですね。
厳しいけど当然の扱いだと思います。
そのとおりです、利用者の安全に直結する資格なので例外を設けていません。
だからこそ検査員は資格者証を大切に扱う必要があります。
処分のランクは加重や軽減でどう最終決定するのか

最終的にランクが7以上かどうかで、処分の重さが二段階に分かれます。
重大な悪意・暴力的行為や詐欺的行為、法令違反の長期化、常習性、社会的影響の大きさは、それぞれランクを3ずつ加重する事情です。
逆にやむを得ない事情や軽微な内容、自主的な是正・申告があればランクを1から3軽減できます。
一つの行為が複数の処分事由に当てはまる場合は、最も重い事由のランクを基準にします。
こうして決まった最終ランクが7以上であれば資格者証の返納命令、7未満であれば文書注意という二段階の処分になります。
所有者側からすると、返納命令を受けた検査員は資格そのものを失うという重い結果になる点を押さえておくとよいでしょう。
同じ違反でも事情によってこんなに変わるんですね。
自主的に直したかどうかも見られているとは知りませんでした。
はい、悪質さと反省の有無の両方が数値に反映される仕組みです。
だからこそ検査後の対応にも誠実さが求められます。
過去に処分歴がある検査員は同じ違反でどう扱いが変わるのか

何年前の処分まで影響するのかにもルールがあります。
過去に文書注意を受けていて今回も文書注意相当ならランクを1加重、今回が資格者証返納命令相当なら2加重というように組み合わせで幅が変わります。
過去の処分事由と今回の処分事由が同じ内容であれば、加重幅はさらに広がります。
一方で、過去の処分等が今回の行為から5年より前であれば、加重するランクを1軽減する救済もあります。
つまり同じ違反を繰り返すほど処分は重くなる一方、十分な年数が経てば扱いは多少和らぐということです。
検査業者を選ぶ側としては、処分歴の有無そのものよりも、日頃からの検査姿勢を見ることが大切です。
処分歴が残ると次からもずっと重く見られるんですね。
検査員さんにとっても身が引き締まる仕組みだと思います。
はい、そのぶん誠実に検査を続けている業者は信頼できるということでもあります。
気になる点があれば遠慮なくご相談ください。
よくある質問
まとめ
資格者証の確認や処分基準のことがよく分かりました!
次に検査をお願いするときはきちんと確認してみます。
検査員選びや報告書の内容に不安があるときは、お気軽にお声がけください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第12条第3項・第12条の2第3項・第12条の3第3項及び第4項・第88条第1項及び第3項
- 国土交通省「建築物調査員・建築設備等検査員の処分基準」(令和7年1月24日制定)
※本記事は建築基準法及び国土交通省が公表する処分基準にもとづき、一般的な内容を解説したものです。個別の事案における処分の要否・程度は特定行政庁及び国土交通省が判断します。検査員の選定や検査結果でお困りの際は、所轄の特定行政庁にご確認ください。





