非常用照明装置の点検表を見ていると、「配線」という一項目だけで検査の中身がまるで変わることに気づきます。
蓄電池を器具の中に内蔵しているか、器具の外に置いているかで、配線にかかる法令上の扱いがまったく違うからです。
さらに蓄電池内蔵形の中にも、2線引き・3線引き・4線引きという配線の種類があり、点灯の仕組みも異なります。
この記事では、東京都のマニュアルが示す配線例をもとに、それぞれの配線がどんな仕組みで、どこまで法令の防火規制を受けるのかを整理します。
非常用照明の検査で配線のことを聞かれたんですが、うちの照明は蓄電池が中に入ってるタイプなんです。
蓄電池を内蔵しているタイプなら、配線に耐火規制はかかりません。
ただ配線の種類によって点灯の仕組みも変わってきますよ。
配線の種類なんて意識したことがなかったです。
2線とか4線とか、そんなに違うものなんですか。
はい、点灯の仕方から法令上の扱いまで変わってきます。
順番に見ていきましょう。
- 蓄電池を内蔵した非常用照明器具は、配線に耐火規制がかからない。
- 2線引き配線は白熱灯専用で、平常時は消灯し停電時にのみ点灯する。
- 3線引き配線は蛍光灯併用形で、点滅スイッチによる点灯消灯と停電時の減光点灯を両立する。
- 4線引き配線は、一般照明と非常用照明を独立した2つの回路に分けている。
- 蓄電池や自家発電装置を照明器具と別に置く電源別置形は、配線全体が耐火規制の対象になる。
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目次
電池内蔵形の非常用照明器具はなぜ配線に耐火規制がかからないのか

まずは最も普及している、蓄電池を器具の中に内蔵する電池内蔵形から見ていきましょう。
告示が配線に防火措置を求めているのは、予備電源から照明器具に至る配線を火災の熱から守るためです。
電池内蔵形は蓄電池自体が器具の内部に組み込まれているため、外部を通って器具まで届く予備電源用の配線が存在しません。
器具の外に出ているのは常用の電源から充電のために引き込む通常の配線だけで、これは告示が定める防火措置の対象にはなりません。
検査ではまず器具の銘板や仕様を見て、電池内蔵形か電源別置形かを最初に切り分けることが実務の出発点になります。
うちの照明は蓄電池が中に入っているタイプなんですけど、それだけで検査の中身が変わるんですか。
はい、配線の耐火性能を確認する検査自体が不要になります。
まずはどちらのタイプか確認しましょう。
2線引き配線はなぜスイッチを持たない結線になっているのか

白熱灯を使う非常用照明の多くが、この方式を採用しています。
常用の電源とつながる線と、器具の内部で使う線の2本だけで構成され、平常時は消灯、停電時にのみ点灯するという単純な動きしかしません。
白熱灯は電源が入った瞬間に全光束で点灯する光源であるため、スイッチによる調光や予熱の仕組みを必要としません。
検査では、常用の電源が通じている状態で器具が消灯していること、停電を模擬したときに確実に点灯することの両方を確認します。
配線自体に耐火規制はかかりませんが、点灯の仕組みそのものは告示が定める性能を満たしている必要があります。
うちの非常灯、停電したときしか点かないんですけど、これで正常なんですか。
はい、それが2線引きの正しい状態です。
普段は消えていて当然ですよ。
3線引き配線(蛍光灯併用形)はなぜ点滅スイッチを持てるのか

その理由は、蛍光灯が白熱灯と違って一般照明としても使われる光源だからです。
常用の電源・点滅スイッチ経由の線・器具内部の線という3本の線で構成され、平常時は点滅スイッチで自由に点灯消灯でき、停電時には減光タイプで自動的に点灯します。
蛍光灯は放電開始までに時間がかかる光源のため、告示はラピッドスタート型又は即時点灯性回路に接続したスターター型に限定し、停電の瞬間でも遅れずに点灯することを求めています。
検査では、点滅スイッチによる平常時の動作と、停電を模擬したときの減光点灯への切り替わりの両方を確認します。
スイッチを日常的に使う分、スイッチ自体の故障や配線の緩みが起きやすい点にも注意が必要です。
うちの蛍光灯タイプの非常灯は、スイッチで点けたり消したりできるんです。
それは3線引き配線の蛍光灯併用形ですね。
停電時にはちゃんと減光点灯に切り替わりますよ。
4線引き配線はなぜ一般照明と非常用の回路を分けるのか

1台の器具の中に、一般照明と非常用照明という性格の違う2つの光源が同居しているためです。
一般照明(蛍光灯)用の白黒2線と、非常用照明(白熱灯)用の白黒2線をあわせた4本の線で構成され、平常時は一般照明側だけが自由に点灯消灯し、非常用照明側は常に消灯しています。
もし非常用照明の配線が一般照明の回路と共用されていれば、一般照明を消したときに非常用照明の自動点灯機能まで巻き込まれかねません。
告示が他の電気回路への接続を禁じているのは、こうした巻き添えを防ぐためで、4線引きはこの要求を1台の器具の中で満たす結線方法だといえます。
検査では、一般照明側の点灯消灯にかかわらず、非常用照明側が平常時消灯・停電時点灯の動きを保っているかを確認します。
1つの器具から蛍光灯と非常用の白熱灯、両方が出ているように見えるんですが、これは普通ですか。
それは4線引き配線の白熱灯組込み形ですね。
2つの回路が独立しているので安心してください。
検査ではこの配線の種類をどう見分ければよいのか

検査ではまず、平常時と停電時の点灯状態を実際に確かめることから始めます。
- 平常時消灯・停電時のみ点灯=2線引き(白熱灯専用)
- 平常時に点滅スイッチで点灯消灯でき、停電時は減光点灯=3線引き(蛍光灯併用形)
- 一般照明側は自由に点灯消灯し、非常用照明側は常に平常時消灯・停電時点灯=4線引き(白熱灯組込み形)
- 器具単体で完結し、周囲に蓄電池設備や自家発電装置への配線が見当たらない=電池内蔵形
電池内蔵形と判断できれば配線の耐火性能そのものは検査対象外となり、口出線・接続部・点灯状態の確認に重点が移ります。
一方、蓄電池設備や自家用発電装置が照明器具から離れた場所にある電源別置形だと分かれば、そこから器具までの配線全体が耐火規制の対象になるため、確認すべき事項が大きく増えます。
配線図や設計図書が手元にあれば最初に照らし合わせ、無ければ点灯状態と現地の配線ルートの両方から判断します。
最初の見分けを誤ると、後の検査項目そのものを取り違えることになるため、ここは慎重に確認したい工程です。
うちの照明がどの配線タイプか、見ただけでは分からない気がします。
平常時と停電時の点灯状態を見比べれば判断できます。
今回の検査で一緒に確認しましょう。
よくある質問
まとめ
配線の種類でここまで検査の視点が変わるとは知りませんでした!
次の検査までに自分の建物の照明も確認しておきます。
非常用照明の配線の見分け方が、検査の第一歩です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法施行令第126条の4・第126条の5
- 昭和45年建設省告示第1830号(非常用の照明装置の構造方法を定める件)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。実際の配線の種類や防火措置の状況は建築物ごとに異なります。個別の判断は所轄の特定行政庁や建築設備等検査員にご確認ください。




