可動防煙壁は、大型の店舗やアトリウムなど、固定式の垂れ壁を設けにくい空間で防煙壁の代わりに使われる設備です。
令和7年7月1日施行の告示改正により、それまで特定建築物定期調査の対象だったこの設備の検査が、建築設備定期検査に一本化されました。
手動降下装置の操作性、連動の状況、煙感知器との連動、材質、防煙区画としての機能、そして中央管理室での監視という6つの視点から検査が行われます。
初めて検査結果表に登場したこの設備は、どこを見て何を判定すればよいのか順番に確認していきましょう。
うちのビルに大きな吹き抜けがあって、天井から降りてくる仕切り板みたいなものがあるんですが。
あれも定期検査の対象になるんでしょうか。
それは可動防煙壁ですね。
令和7年7月からは建築設備定期検査で確認することになっています。
今までは違ったんですか。
はい、以前は特定建築物定期調査の側で見ていました。
重複をなくすため、建築設備定期検査に一本化されたんです。
- 可動防煙壁は令和7年7月1日の告示改正で建築設備定期検査の対象に加わりました。
- 手動降下装置は片手で操作できることが正常な状態です。
- 手動操作時に連動する設備が正しく作動するかも確認します。
- 材質は不燃材料であることが判定基準の前提になります。
- 降下した状態で防煙区画としての機能を保てているかまで見届けます。
▼

目次
手動降下装置はなぜ片手で動かせてはいけないのか

この手動降下装置の操作性と、手動操作に連動する設備が正しく作動するかどうかの両方が検査の対象です。
片手操作を求めるのは、煙が充満し視界が悪化した中でも確実に降下させられるようにするためです。
一方の手がふさがっていても操作できることが前提になっており、両手が必要な構造は不適合と判定されます。
連動の確認は、手動操作したときに連動する設備が正しく作動するかを見る趣旨です。
検査当日は実際にレバーを操作し、連動する設備の作動状況まで確かめます。
うちのは結構重くて、両手じゃないと動かせない気がします。
それは要注意ですね。
次の定期検査で片手操作を実際に試してもらいましょう。
煙感知器と連動しない可動防煙壁はなぜ認められないのか

人が気づく前に降りてくることで、初期の段階から煙の流動を妨げる効果を発揮します。
実際に火をたくわけにはいかないため、発煙試験器で疑似的な煙を感知器に当てて反応を見ます。
手動操作だけが機能していても、火災発生時に居合わせた人が操作しなければ降下しないのでは実効性がありません。
だからこそ煙感知器との連動が独立した検査事項として置かれています。
点検のたびに、手動・自動の両方の経路を切り分けて確認することが実務のポイントです。
感知器と連動するところまで毎回確認するんですね。
はい、模擬的な煙で反応を見ます。
手動だけでは火災時に間に合わないこともありますから。
可動防煙壁の材質はなぜ不燃材料でなければならないのか

固定式の防煙壁と同じく、材質にも明確な基準が設けられています。
建築基準法施行令第126条の2第1項は、防煙壁を不燃材料で造るか覆うことを求めています。
可動式であっても、降下した状態で果たす役割は固定式の垂れ壁と変わらないため、同じ不燃材料の基準が適用されます。
検査では表面の仕上げ材だけでなく、芯材まで不燃材料で構成されているかを図面と現地の両方で確認します。
経年劣化で表面がはがれ下地が露出している場合も、材質の適合性を疑う手がかりになります。
見た目が布みたいなカーテンなんですが、それでも大丈夫なんですか。
素材が不燃材料であれば問題ありません。
見た目より中身の性能で判断します。
可動防煙壁の防煙区画はどこを見れば欠損がわかるのか

検査では壁そのものだけでなく、区画としての連続性が保たれているかを見ます。
可動防煙壁は下端が床面や隣接する壁・設備としっかり接し、隙間のない区画を作れて初めて機能します。
繰り返しの昇降で生地が擦り切れたり、ガイドレールから外れて脱落したりすると、煙が回り込む経路になります。
降下させた状態を実際に目視し、床面との接地状況や左右の納まりまで確認することが欠かせません。
古い建物では改修工事の際に周囲の造作が変わり、区画が崩れているケースもあるため注意が必要です。
降ろしてみないと分からないってことですか。
そのとおりです。
実際に作動させた状態まで見て初めて判定できます。
中央管理室での監視はどんな建物で必要になるのか

可動防煙壁についても、その制御と作動状態を中央管理室側から把握できるかが検査の対象です。
中央管理室での監視が求められるのは、大規模な建築物では火災時に全ての現場へ人がすぐに駆けつけられないためです。
可動防煙壁が降下したかどうか、正常に作動しているかどうかを中央管理室の表示盤で把握できることが前提になります。
検査では現地で実際に作動させ、その状態が中央管理室側にも正しく表示されるかを突き合わせて確認します。
表示だけが点灯していて実際の作動と食い違っている場合も、監視機能として機能していないと判断されます。
中央管理室が無い小さいビルはどうなるんですか。
その場合はこの項目自体が対象外になります。
建物の規模によって検査事項が変わる点も覚えておいてください。
よくある質問
まとめ
可動防煙壁のことがよく分かりました!
次の検査までに手動降下装置の動きを確認しておきます!
日頃の使用状況の確認が定期検査の結果にも直結します。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第12条第3項
- 建築基準法施行令第126条の2第1項
- 平成20年国土交通省告示第285号(最終改正:令和7年1月29日国土交通省告示第53号)別記第二号 排煙設備の検査結果表 三 可動防煙壁
※本記事は令和7年7月1日施行の告示改正を踏まえた一般的な解説です。個別の建築物における可動防煙壁の設置状況や検査結果の判定については、必ず有資格の検査員にご確認ください。掲載内容は執筆時点の法令に基づいており、その後の改正により現在の規定と異なる場合があります。




