店舗や事務所を運営していると、収納スペースが足りずに小さな増築をしたくなる場面があります。
しかし増築は建築基準法だけの話ではなく、床面積や階数が変わることで消防法令の基準にも影響します。
無届のまま増築を済ませてしまうと、建築基準法違反であると同時に消防法令違反にもなりかねません。
この記事では建築確認申請が必要になる増築の基準と、無届の増築が見つかったときにどう扱われるのかを整理します。
うちの倉庫、収納が足りなくて。
壁を少し外に出して増築しようかと思っているんですが。
増築の面積によっては、建築基準法の確認申請が必要になります。
消防法令にも影響することがあるので、順番に確認しましょう。
そんなに大掛かりな増築じゃないので、申請はいらないと思っていました。
面積や場所によっては申請が不要な場合もありますが、その境目を正しく知っておく必要があります。
今日は建築確認申請の基準から見ていきましょう。
- 店舗や事務所の増築は、防火地域・準防火地域の外であれば床面積10平方メートル以内は建築確認申請が不要ですが、それ以外は申請が必要です。
- 防火地域・準防火地域の中では、面積にかかわらず増築のたびに建築確認申請が必要です。
- 増築後の建物全体が延べ面積200平方メートルを超えたり2階建て以上になったりする場合も、増築部分の大小にかかわらず確認申請の対象です。
- 床面積や階数が増えると、その増改築部分について消防用設備等の設置基準が現行基準で判定し直されることがあります。
- 無確認のまま増築工事を行うと、建築基準法第99条により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象になり得ます。
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目次
立入検査でなぜ無届の増築が見つかるのか

そもそも増築の計画には、消防がどのように関わっているのかを確認します。
消防法第7条第1項は、建築物の増築等について確認をする権限を持つ行政庁は、工事施工地を管轄する消防長又は消防署長の同意を得なければ確認できないと定めています。
つまり本来、増築の計画は建築部局の審査だけでなく、消防による事前のチェックも経てから工事が始まります。
無届のまま増築を済ませてしまうと、この確認申請そのものを飛ばしているため、建築基準法上の審査と消防の事前チェックの両方を経ずに工事が行われたことになります。
立入検査で建物の構造を確認したときに、記録にない増築部分が見つかれば、まずこの手続がどこまで行われていたかが問題になります。
うちの倉庫の増築、そういえば工事のとき誰にも確認申請の話をされませんでした。
その場合、面積や場所によっては申請が不要だった可能性もあります。
次は申請が必要になる基準を具体的に見てみましょう。
建築確認申請が必要になる増築はどこからか

まず基準になる数字を確認します。
建築基準法第6条第2項は、防火地域及び準防火地域外での増築・改築・移転について、床面積の合計が10平方メートル以内なら確認申請の対象外とする例外を定めています。
反対に、防火地域・準防火地域の中ではこの例外が適用されず、面積にかかわらず増築のたびに確認申請が必要になります。
さらに、増築後に床面積の合計が200平方メートルを超える特殊建築物や、2階建て以上・延べ面積200平方メートル超になる建築物は、この面積の例外とは別に確認申請の対象です(同条第1項)。
「小さい増築だから大丈夫」という判断は、自分の建物が防火地域・準防火地域の内か外かを確認しないまま下すと外れることがあります。
うちの店は準防火地域みたいなんですが、その場合はどうなりますか。
準防火地域の中なら、面積が10平方メートル以下でも確認申請が必要です。
地域の指定は自治体の都市計画課で確認できます。
無届の増築が見つかるとどんな扱いになるのか

消防法令の側でも、どのような点に注意が必要かを確認します。
建築基準法第99条は、確認を受けずに増築等を行った場合の罰則を定めており、建築主だけでなく工事施工者が問われる場合もあります。
消防法令の側でも、床面積や階数が増えれば、その増改築部分について消防用設備等の設置基準を現行の基準で判定し直す仕組みがあり、届出のない増築ではこの判定そのものが漏れてしまいます。
また、増築によって避難経路がふさがれたり防火戸の開閉に支障が出たりすると、消防法第8条の2の4が定める避難施設の管理義務にも触れることがあります。
「増築部分が小さいから消防法令には関係ない」とは言い切れない理由がここにあります。
増築の面積だけじゃなくて、消防設備の基準まで見直されることがあるんですね。
はい。
詳しい判定の仕方は建物ごとに変わるので、増築を決める前に確認しておくと安心です。
小さな増築だから安心と考えるのはなぜ危ないのか

誤解しやすい点を整理します。
建築基準法第6条第1項のかっこ書きは、増築しようとする場合について「建築物が増築後において第一号又は第二号に規定する規模のものとなる場合を含む」と定めています。
これは増築する部分の面積ではなく、増築後の建物全体の規模が延べ面積200平方メートルを超えたり2階建て以上になったりする場合を指します。
つまり第6条第2項の10平方メートルという基準は「その増築部分だけの面積」の話であり、第1項のこのかっこ書きは「増築後の建物全体」の話という、別々の判定基準です。
小さな増築を繰り返してきた建物では、この2つの基準を両方確認しないと、思わぬところで確認申請が必要だったと分かることがあります。
うちの倉庫、何年かおきに少しずつ増築してきたので、全体の規模がどうなってるか把握できていません。
その場合はまず、現在の建物全体の延べ面積と階数を図面で確認するところから始めましょう。
増築を計画する前に何を確認すればよいか

明日から確認できる手順を整理します。
- 都市計画課で、増築を予定する土地が防火地域・準防火地域に指定されているかを確認する。
- 増築する部分の床面積と、増築後の建物全体の延べ面積・階数を図面でまとめる。
- 床面積が10平方メートルを超える場合、または防火地域・準防火地域内である場合は、建築士等に相談して確認申請の準備を進める。
- 増築後の延べ面積や階数の変化を所轄消防署にも伝え、消防用設備等への影響を確認する。
どちらも自分だけでは判断がつきにくい場合は、早めに建築士や所轄消防署に相談すると、工事が始まってからのやり直しを避けられます。
増築を思い立った時点でこの手順を踏んでおけば、建築基準法上も消防法令上も、無届のまま工事を進めてしまうリスクを減らせます。
まず都市計画課に確認の電話を入れてみます。
それが一番確実です。
面積と地域の両方が分かれば、その後の手続きもスムーズに進みます。
よくある質問
まとめ
増築の前に確認すべきことが、思ったよりたくさんありました!
工事の前に一度整理してみます。
その一手間が一番確実です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第7条第1項、第8条の2の4
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第6条第1項・第2項、第99条第1項第1号
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署または建築部局にご確認ください。





