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パッケージ型自動消火設備はなぜⅠ型しか同時放射区域をまとめて守れないのか|隣接区域の共用が認められる3つの条件を解説

パッケージ型自動消火設備はⅠ型だけ区域を守れるかを解説する記事のアイキャッチ画像

パッケージ型自動消火設備を選ぶとき、「1台で複数の部屋をまとめて守れるのか」という質問をよく受けます。
答えは設備の型式によって分かれ、しかも共用できる場合にも細かい条件が付きます。
条件を取り違えると、いざ火災のときに守られていない部屋が出てしまいます。
この記事では、同時放射区域という考え方から共用が認められる3つの条件まで整理して解説します。

うちの建物、部屋が細かく分かれているんですが。
パッケージ型自動消火設備は1台で全部の部屋をカバーできますか。

型式によって答えが変わります。
まずはⅠ型かⅡ型かを確認しましょう。

うちはⅠ型を検討しています。
それなら複数の部屋を1台でまとめて守れるということですか。

Ⅰ型でも条件を満たさなければ共用できません。
その条件を順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • パッケージ型自動消火設備は原則、壁や戸で区切られた部屋(同時放射区域)ごとに1台を設置します
  • 複数台で1つの区域を守る場合は同時に放射できるよう連動させる必要があります
  • 機器そのものを複数の区域で共用できるのはⅠ型だけです
  • 共用が認められるのは耐火構造の壁と防火戸で区画されている場合など3つの場合に限られます
  • 共用する場合も、いずれの区域でも30秒以内に薬剤を放射できる機器を使う必要があります

パッケージ型自動消火設備はⅠ型だけ同時放射区域を共用できることを示す図解(区域を決める・Ⅰ型かⅡ型かを確認する・共用できる条件をあてる・所轄消防署に相談するの4ステップ)

パッケージ型自動消火設備は何を単位に部屋を守るのか

壁で区切られた3つの部屋にそれぞれ設置されたパッケージ型自動消火設備と、13平方メートルを超える部屋を点線で2分割した図
パッケージ型自動消火設備は、建物のすべてを1台で守るわけではありません。
「同時放射区域」という単位ごとに、機器を割り当てていきます。
(パッケージ型自動消火設備の設置及び維持に関する技術上の基準を定める件 第四)一 同時放射区域は、原則としてパッケージ型自動消火設備を設置しようとする防火対象物又はその部分のうち、壁、床、天井、戸(ふすま、障子その他これらに類するものを除く。以下同じ。)等で区画されている居室、倉庫等の部分ごとに設定すること。
二 壁、床、天井、戸等で区画されている居室等の面積が十三平方メートルを超えている場合においては、同時放射区域を二以上に分割して、設定することができること。
同時放射区域は、壁や戸で仕切られた居室や倉庫ごとに決まります。
ふすまや障子のような仕切りは、区画とは数えません。
面積が13平方メートルを超える広い居室は、区域を2つ以上に分割して設定できます。
そして、設置する機器の防護面積は、必ずその同時放射区域の面積以上でなければなりません。
まずは図面で、部屋がどう区切られているかを確認することが出発点になります。

ふすまで仕切ってある部屋は別の区域になりますか。

いいえ、ふすまや障子は区画に数えません。
壁や戸で仕切られているかどうかで判断します。

一つの区域を複数台で守る場合と一台で複数区域を守る場合はどう違うのか

1つの区域を2台の設備が連動して守る図と、1台の設備が配管で2つの区域をつなぐ共用の図の対比
「複数台を使う」という言葉には、実は2つの違う場面があります。
どちらの話をしているのかを最初に区別しておく必要があります。
(同基準 第四)五 同時放射区域を二以上のパッケージ型自動消火設備により防護する場合にあっては、同時に放射できるように作動装置等を連動させること。
六 Ⅰ型にあっては、次に定めるところにより、消火薬剤、消火薬剤貯蔵容器等、受信装置、中継装置、作動装置等を二以上の同時放射区域において共用することができること。
1つの区域を2台以上で守る場合と、1台の機器を複数の区域にわたって使う場合は、まったく別の規定です。
前者は「連動」の話で、同じ区域を守る機器どうしが同時に放射できることが求められます。
後者は「共用」の話で、消火薬剤貯蔵容器や受信装置などの機器そのものを、隣の区域とまたいで使うことを指します。
この共用が認められるのは、次に見るとおりⅠ型に限られています
設計の打ち合わせで「複数台」という言葉が出たら、どちらの意味か必ず確認してください。

連動と共用は別の話なんですね。
混同しないように気をつけます。

そのとおりです。
次は共用が認められる条件を見ていきましょう。

隣接する区域の設備を共用できる3つの場合とは

耐火構造の壁と防火戸で区画された部屋に✓、薄い戸だけで仕切られた部屋に禁止マークが付いた対比図
Ⅰ型であっても、隣の区域と機器を共用してよいわけではありません。
原則は「共用しない」で、そこに3つの例外があるという構造です。
(同基準 第四第六号)㈠ 隣接する同時放射区域間の設備を共用しないこと。ただし、次の場合にあっては、この限りでないこと。
イ 隣接する同時放射区域が建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第百七条若しくは第百七条の二に規定する技術的基準に適合する壁若しくは間仕切壁又はこれらと同等以上の性能を有する壁若しくは間仕切壁で区画され、かつ、開口部に建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第九号の二ロに規定する防火設備である防火戸が設けられている場合
ロ 入所者が就寝に使用する居室以外であって、講堂、機能訓練室その他これらに類するもので、可燃物の集積量が少なく、かつ、延焼のおそれが少ないと認められる場所に設置する場合
ハ イ又はロに掲げる場合のほか、令第十二条第二項第三号の二に規定する床面積の合計が千平方メートル未満の防火対象物又はその部分に設置する場合であって、火災が発生した同時放射区域以外の同時放射区域に対応する防護区域に設ける放出口から消火薬剤が放射されないように設置する場合
共用が認められるのは、原則どおりの区画がされていない3つの例外にあたる場合だけです。
1つ目(イ)は、耐火構造の壁と防火戸できちんと区画されている場合です。
2つ目(ロ)は、就寝に使わない講堂や機能訓練室のように、可燃物が少なく延焼のおそれが少ない場所です。
3つ目(ハ)は、床面積の合計が1,000平方メートル未満の建物で、薬剤が他の区域へ漏れ出さない設置をした場合です。
どの例外にあたるかは、区画の構造と用途の両方から判断する必要があります。

うちの建物は薄い引き戸で仕切っているだけです。
それでも共用できますか。

その仕切りだけでは3つの例外のどれにも当たりません。
用途や床面積から別の例外に当たらないか確認しましょう。

共用できてもなぜⅡ型は対象にならないのか

単独で設置されたパッケージ型自動消火設備と、複数区域に配管でつながる設備およびストップウォッチの図
ここまでの共用の話は、実はすべてⅠ型だけの規定です。
Ⅱ型を検討している場合は、考え方そのものが変わります。
(同基準 第四第六号)㈡ 共用する二以上の同時放射区域にそれぞれ対応する警戒区域において発生した火災を有効に感知することができ、かつ、火災が発生した同時放射区域に有効に消火薬剤を放出できるパッケージ型自動消火設備を用いること。
㈢ 作動装置が作動してから共用するいずれの同時放射区域内においても三十秒以内に消火薬剤を放射することができるパッケージ型自動消火設備を用いること。
Ⅱ型は延べ面積が小さい建物向けの簡易な型式で、共用そのものが想定されていません。
そもそも共用の規定は「Ⅰ型にあっては」という条文から始まっており、Ⅱ型には共用の道自体がありません
Ⅱ型を検討している建物で部屋が複数に分かれているなら、区域ごとに独立した機器を置く前提で計画する必要があります。
また、Ⅰ型で共用する場合も、いずれの区域でも30秒以内に消火薬剤を放射できる性能が求められます。
「共用できるはずだから機器は1台で十分」と決めつけず、型式と性能の両方を確認することが見落としを防ぐ鍵になります。

うちはⅡ型で検討していました。
共用は最初から考えなくてよいということですか。

そのとおりです。
Ⅱ型は区域ごとに機器を置く前提で台数を数えてください。

導入前に確認すべき手順とは

設計図を持つ担当者が消防署の窓口で相談している図
同時放射区域と共用の条件がわかったら、あとは順番に図面と照らし合わせるだけです。
最後に、明日から確認できる手順として整理します。
(同基準 第四)三 パッケージ型自動消火設備は、当該設備の防護面積(二以上のパッケージ型自動消火設備を組み合せて使用する場合にあっては、当該設備の防護面積の合計)が各同時放射区域の面積以上であるものを設置すること。
まずは図面で部屋の区画を確認し、それから型式と条件を当てはめていきます。
①壁・床・天井・戸の位置を確認し、同時放射区域の単位を図面上で区切ります。
②導入したい機器がⅠ型かⅡ型かを確認し、Ⅱ型なら区域ごとに機器を用意する前提に切り替えます。
③Ⅰ型で共用したい場合は、区画の構造・用途・床面積のいずれで3つの例外に当たるかを検討します。
④判断に迷う点があれば、図面を持って所轄消防署に事前相談することをおすすめします。

順番に確認していけば、うちの建物でも判断できそうです。

図面と条件を照らし合わせれば、方向性はすぐに見えてきます。
迷ったら早めに相談してください。

よくある質問

Qパッケージ型自動消火設備は1台で何平方メートルまで守れますか?
A防護面積は機器の性能で決まり、その面積が同時放射区域の面積以上である必要があります。同時放射区域自体は、壁や戸で区切られた居室・倉庫などの単位で設定します。
Q部屋の面積が広い場合はどうなりますか?
A面積が13平方メートルを超える居室等は、同時放射区域を2以上に分割して設定できます。分割した区域ごとに、防護面積を満たす機器を設置します。
QⅡ型を2つの部屋にまとめて使うことはできますか?
Aできません。区域をまとめて機器を共用できるのはⅠ型に限られており、Ⅱ型は区域ごとに独立した機器を設置する必要があります。
Q共用が認められた区域でも設置後に注意する点はありますか?
A共用する機器は、いずれの区域でも30秒以内に消火薬剤を放射できる性能を備えている必要があります。設置後の点検でも、この性能が維持されているかを確認します。

まとめ

同時放射区域は、壁・床・天井・戸で区切られた居室や倉庫ごとに設定する単位です
面積が13平方メートルを超える居室等は区域を2以上に分割できます
設置する機器の防護面積は同時放射区域の面積以上でなければなりません
複数台で1つの区域を守る場合は、同時に放射できるよう作動装置等を連動させます
機器そのものを複数区域で共用できるのはⅠ型だけです
共用が認められるのは、耐火構造の壁と防火戸による区画など3つの場合に限られます
共用する機器はいずれの区域でも30秒以内に薬剤を放射できる性能が必要です

同時放射区域と共用の条件、よくわかりました。
これで図面を見直せそうです。

区画や用途で判断に迷ったら、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • パッケージ型自動消火設備の設置及び維持に関する技術上の基準を定める件(平成十六年五月三十一日消防庁告示第十三号)第四
  • 必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成十六年総務省令第九十二号)第二条第二項
  • 消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)第十二条第二項第三号の二
  • 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第百七条・第百七条の二、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第九号の二ロ

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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