石油ストーブがひっくり返った瞬間、まず何をすればよいか、とっさに判断できる人は多くありません。
消防庁は実大実験の結果をもとに、着火の有無にかかわらず取るべき手順を通知にまとめました。
ところが同じ「油の火」でも、天ぷら油の火災には正反対の対応が求められます。
2つの火を同じ感覚で消そうとすると、かえって被害を広げてしまいます。
詰所に石油ストーブを置いているんですが、ひっくり返ったときの対応を考えたことがなかったです。
実は消防庁が実験までして手順を通知に残しているんですよ。
落ち着いて引き起こすことが最優先です。
天ぷら油に火がついたときも、同じように水をかければいいんですよね。
いいえ、天ぷら油の火に水は絶対に使ってはいけません。
ここだけは正反対の対応を覚えてください。
- 石油ストーブが転倒したら、着火の有無にかかわらず落ち着いてすぐに引き起こす
- 転倒後30秒たっても73%は着火しないという実験結果がある
- 畳の上に置くのが基本で、板やリノリュームの上では絨毯を敷く
- 畳の上の消火は水バケツを一気にかけるか毛布で完全に覆うかのどちらか
- 天ぷら油の火災には絶対に水を使わない、ストーブ火災とは正反対の対応になる
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目次
石油ストーブが転倒したときなぜ実験までして通知が出されたのか

消防庁はこの火災を減らすため、自ら実験を行ったうえで手順を通知にまとめました。
発出したのは消防庁予防課長で、宛先は都道府県の消防主管部長です。
自治体を通じて住民に周知させる、いわば火災予防運動の教材として作られた通知だとわかります。
石油ストーブそのものを禁止したり構造基準を定めたりする通知ではなく、転倒後の初動対応だけに絞っている点が特徴です。
半世紀以上前の通知ですが、油が燃える物理現象を扱っているため、今の建物でも考え方はそのまま使えます。
うちの受付、冬場は石油ストーブを置いてるんですけど、転倒したときの対応なんて考えたこともなかったです。
多くの職場が同じ状況だと思います。
消防庁の実験に基づいた手順があるので、まずはそれを知っておきましょう。
どんな場所に置いた石油ストーブが対象になるのか

床の材質によって、転倒直後にすべきことと注意点が変わります。
実験では転倒後30秒たっても73%のストーブは着火しておらず、慌てて水をかける前に引き起こせないか確認する余地があります。
床が畳かリノリューム・板かでも被害の広がり方は大きく違い、板の場合は畳のおよそ3分の1の時間で同じ高さまで火が達します。
リノリュームや板の床にしか置けない場所では、あらかじめ絨毯を敷いておくだけで油の広がり方を抑えられます。
受付や詰所にストーブを置くときは、この床材の違いを踏まえて設置場所を選んでください。
うちはリノリュームの床なんですけど、絨毯を敷くだけでそんなに変わるんですか。
漏れた油が広がる速さがまったく違います。
絨毯を一枚敷くだけで初期の被害を抑えられます。
転倒直後は水バケツと毛布のどちらを使えばよいのか

どちらも道具の使い方を間違えると効果が半減します。
水バケツを使うときは、まず周囲の可燃物を取り除いてから水を汲みに行き、汲んだら一気にかけます。
放射型のストーブがうつぶせに倒れたときは横からの注水では芯に届かないため、必ず上からかけます。
毛布を使うときは隙間なく完全に覆うことが条件で、すき間から炎が漏れると効果が下がります。
どちらの方法も、あらかじめ満水の水バケツをストーブの近くに置いておくことで初動が早くなります。
毛布をかぶせるだけじゃだめなんですか。
隙間があると炎が漏れて広がることがあります。
足で踏みつけてでも完全に密閉することが条件です。
天ぷら油の火災と同じ対応をするとなぜ危険なのか

そしてこの通知には、油の火全般に共通する重大な注意も添えられています。
リノリュームや板に直接置いた場合、通知は毛布による方法は効果が期待できないとしていますが、油の流出を食い止められれば効果があるとも付け加えています。
一方、天ぷら油に火が入ったときは、水をかけると油が飛び散って火が拡大するため絶対に使ってはいけません。
天ぷら油の火災は、まずガス栓を閉め、鍋蓋で覆い、隙間を濡れ布巾でふさいで消します。
なお、現在の石油ストーブの多くには対震自動消火装置が付いていますが、古い機種や業務用の可搬型ストーブでは付いていないこともあり、この手順を知っておく意味は今も変わりません。
天ぷら油に火が入ったときも、ストーブと同じように水をかければいいんですよね。
いいえ、それは絶対にやってはいけません。
ガス栓を閉めて鍋蓋と濡れ布巾で覆ってください。
明日から何を確認しておけばよいのか

次の点を先に確認しておいてください。
古い機種や可搬型の業務用ストーブでは装置が無いこともあるため、思い込みで安心しないことが大切です。
ストーブの近くに満水の水バケツを常備し、周囲に燃えやすい物を置かないようにします。
リノリュームや板の床でしか置けない場所には絨毯を敷き、従業員には天ぷら油とストーブの消火方法は逆だと周知します。
これらは特別な設備投資が要らない対策なので、次の消防訓練の題材にそのまま使えます。
うちのストーブ、対震自動消火装置が付いてるか確認したことなかったです、今日確認してみます!
それが一番の第一歩です。
水バケツの用意もあわせて見ておいてください。
よくある質問
まとめ
水バケツと毛布の使い分け、それに天ぷら油との違い、しっかり覚えておきます!
それがいちばんの備えです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 石油ストーブをひつくりかえした場合の消火方法について(昭和43年3月1日 消防予第46号 消防庁予防課長)
- 同通知(注意)部分 天ぷら油による火災の消火方法に関する記載
- 石油ストーブの対震自動消火装置に関する一般的な製品安全情報(独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)等の公表資料)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





